嫌われ者の僕

みるきぃ

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完璧な幼なじみ

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【会長(神影)side】



ハンカチを握りしめる。このハンカチは以前、俺様が指をケガした時にアイツがくれたもの。



未だにこんなの大切に持ってる自分。お守りみたいにいつもポケットにしまっている。自分でもさすがに引いた。何度か捨てようと思ったができなかった。



「…っくそ。あいつのことばかり」



あいつが頭から離れなくて、苦しめられる。何なんだあいつは一体。あいつに似合うだろうドレスを必死に悩んで選んだり、鬼ごっこで捕まえてダンス相手にさせるなんて。







前にあいつに『お前なんて誰のそばにもいなくていい』と言ったことがある。俺のそばにだけいればいいなんて考えていた。


俺様は学園で優秀な存在だ。なのに、あんな地味で何の取り柄もない奴が欲しいなんて。






「…行くか」


もうあいつはドレスに着替えて待っている。迎えに行ってやらねぇと。スーツに着替え、何回も髪型をチェックした。なんか俺、恋してるみたいでキモい。




ハンカチを取り出して、口元に当てる。



「今、俺様が行くから待ってろ」


よし、と気合を入れてパーティーが行われている会場へと向かった。







────
────────
────────────


……。






『きゃー!会長様だわ!』

『髪型かっこいい!』

『色気がダダ漏れ』


女みたいな喋り方で鳥肌が立つ。




着いたはいいものの、何だあれ。遠くに一際目立つ俺様が選んだドレスを着たあいつ。





「ちっ、道あけろ」



普段みたいに、隠れとけばいいものの。何でじっとして待っていられないんだ。そう思って近づいていくが目を疑った。あいつと一緒にいるのって煌じゃねぇか。

しかもスプーンを間接キスしてやがる。






「…おい、煌。何、人のもんに手ぇ出してんだ?」



思った以上に低い声が出た。

苛立ちを抑えつつ、俺様の選んだドレスを身に纏ったあいつを背後から腕を回し抱きしめ、煌を睨んだ。









「神、影…?」



煌は、楽しんでいるところを邪魔されたといういかにも嫌な顔をする。周りからは俺様の突然の行動に驚きの声があがる。





「ちっ」


できるだけ目立つようなことはしなくない。ここにいたら騒ぎが更に酷くなりそうだ。


そう思った俺はまずどこか静かになる場所へ移動することに決めた。







「こいつは俺様がもらっていく」


「へ、か、会長さん…?」



すぐにあおいの手を引いて人気のない舞台裏に誘導した。






ガチャ


そして、誰も中に入ってこれないように鍵を閉める。途中、煌の止める声が聞こえたけど無視だ。

今日は俺様だけがこいつを独り占めにしようと…ってなんだ、この幼稚な考え。

先程とは違って静寂に包まれる。この二人しかいない空間に妙に緊張した。俺様は欲しいと思ったものは昔から簡単に手にはいった。だから、こんな上手くいかないことに慣れていない。お前が頭から離れなくて、毎日イライラしてこんな感情今までに感じたことなかった。


なんだよ、これ…。こいつの心が欲しい。あの時からずっと。

誰かに対して心が欲しいと思ったのはお前が初めてだ。



「…おい、いい加減顔あげろ、もう怒ってねぇから」




俺様が怖いのかさっきからあおいは口を閉ざしたままだった。

生意気。…むかつく。




「お、お前…なかなか似合ってるじゃねぇか。俺様はやっぱりセンスがいいな」


こんな状況なのに、俺様が選んだドレス着てクソ可愛いとか思っている場合ではない。





つーか、この俺様が褒めてやってんのに





「いい加減、俺様を見ろッ!」


こいつの両頬に手を添えて無理やり俺のところに向かせた。






え…



「っ!?」


だ、誰だ…こいつ、言葉を失った。ばっちり目が合う。ドクンッと、心臓の鼓動が速くなる。

心から綺麗だと思った。自分の顔が熱を帯びていくのがわかる。





「か、会長さん…、その…ご、ごめんなさい…」




そのビクビクと怯えて、震えている声は間違いなくあおいだった。う、嘘だろ…。




「別に怒っていないから謝らなくてもいいが…、お前…あおいなのか」


頭が本当についていかない。だって、俺様が知っているあおいは地味でとんでもなくダサくて、美とかけ離れている奴だ。目の前にいる奴と同一人物というのか……。




いやいや、全然違いすぎている。俺様は本当にこいつがあおいなのか信じられなかった。小さな声で『は、はい』と、頷いた。



「あ、あの…光姫さん、えっと会長さんのお姉さんから聞きました。こ、この素敵なドレスありがとうございます…っ」


一生懸命話す姿があおいと同じ。


普段はすごくダサい眼鏡をしているのに……こいつの素顔初めてみた。すげぇ…好みだ。こいつの全て。




「か、会長さん…?」



さっきから黙ってずっと見ていたから、不思議そうに俺に問いかける。




「わりぃ…つい、お前に見惚れてしまっていた」


「へ、?」


「綺麗だ」


「そ、そそそんな…おお恐れ多いです!」


「この俺様が言ってんだ、…それに」


「…、?」



「お前の素顔、初めてみた」






「え、あ、あの、ごめんなさい!…へ、変ですよね」



手で顔を隠そうとするあおいの腕を掴み、阻止する。




「誰も変なんて言っていない」


「…っ」




…やばい。静まれ。心臓がうるさい。

こんなの俺様らしくない。




「なぁ…あおい」


落ち着け、変な気起こすな。でも俺の考えとは反対に、気がついたらあおいの頬に手を当てていた。




「もっと近くでよく見せろ」


「へっ…あ、あのっ」



こいつを今すぐ俺様のものにしたい。





…地味で嫌われ者のお前も。

優しくて行動がいちいち可愛いお前も。

震えて俺に怯えるお前も。

こんなに綺麗なお前も。


──全て、俺様だけのものにしたい。





欲だけが次々に溢れ出てきて……もっと、もっと、こいつに触れたい。顔の距離がどんどん縮まる中、誰かがあおいの口元を押さえた。






「──────これ以上はダメだよ」



あおいの口元を押さえたのは、ここにいるはずのない殺気漂う新條ゆうだった。



なんで、こいつがいるんだ…。確か長い間、休みをもらっていたはずだ。



「…あおい、探したよ」


「ゆ、ゆう…?」


あおいの視線が俺様から奴に移る。




「帰ってきたらあおいの姿がなくて」


「ご、ごめんね…、何も言わずに黙って出てきちゃって…」




あともう少しだったというのに突然現れた新條ゆうに苛つき、そういえばこの二人仲が良かったと気がついた。正直、忘れていた。




「こうやってあおいに会えたから謝ることないよ。それにすごく可愛いね」


「か、可愛くないよ…っ」



俺様の時より、更に顔を赤く染めるあおいにもムカついた。二人だけの世界を作ってやがる。

ち…ッ。楽しくも、面白くもねぇ。こんなはずではなかった。



「おい。今、こいつは俺様と話してんだ。勝手に出てきて何の用だよ」



俺は横取りされるのが一番嫌いだ。



「何の用?ふふ、俺的には何で二人が一緒にいるか不思議だけどね」



表面では笑っているが、目が笑ってなく睨みを利かせ、すぐにでも人を殺せそうなオーラが漂っていた。な、なんだ、こいつ…。



「俺様と、こいつはこれからみんなの前でダンスすんだよ」


「わっ!」



あおいの肩を寄せ、俺のところに来させる。




「…へぇ」


「だから俺たちの邪魔をするな」



これ以上、二人の時間を無駄にできるか。俺様はあおいを惚れさせる。




「そ、そういえば…、ゆうはなんでここに?」


あおいが俺様に肩を抱かれながら、尋ねる。





「俺も用事があってね」



「用事…?」



「そう。俺が帰ってきたことを知った先生に呼ばれて、急に代表になってね」



「だ、代表…?」



待て…嫌な予感がする。




「パーティーでダンスを踊る代表になったんだ、急に」




くそっ、嘘だろ。だけど、この学園には決まりがあった。パーティーでダンスを踊る代表は学園イチの成績優秀者と。確かにこいつが代表だった。しかし、急に長い間休むということになって、俺が代わりに代表となったというのに。…タイミングが悪すぎる。




「…俺は、聞いてないぞ。そんなことッ」



「っ!か、会長さん…?」



あおいの肩を抱き寄せている手に力が入る。渡さない。





「ねぇ、そういうのやめてもらえるかな?……あおいが怖がってる」



「俺様が最初だったんだ。あとから入ってきて何なんだよ」




「そんなの知らないよ。俺だって、さっき言われたことだからね。……早くその手、はなしてもらえる?」



クソッ

「あおい…っ。こっち来い!」


あおいの手を引いて、違う場所へ移動する。代表じゃないならどこか遠くの場所で二人きりになればいい。



「それは困るな」



その低い声と、共に俺たちの足は止まる。




「ゆ、ゆう…」



俺が掴んでいる反対側のあおいの手を掴んでいた。







「ねぇ、あおい。俺のダンスの相手になって?」




驚きのあまり、血の気が引いた。




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