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◆ストーカーにいじめられてます。
いじめられっ子受け
佐藤湊
いじめっ子攻め
矢沢大地
◇◇◇
何がどうなってこうなった…?
頭を抱えたくなる気持ちを抑えている俺はこの春、田舎から都会の学校へと出てきたばかりの高校生。
佐藤 湊。1年5組。名前の通り、俺は、ごくごく平凡な男子高校生………だった。
かれこれ、入学式からもう2ヶ月は経過している。それなのに……全然クラスになじめてないってどういうことだっ!!!
…ま、まぁ、それもそのはず。すぐに開き直った。その理由には、深い深~い事情があるから。いつまで経ってもこの晴れない気持ちにはモヤモヤしている。
ガラッー
すると閉まっていた教室のドアが勢いよく開いた。
うっ。や、奴が来た…。
俺は今教室に入ってきた人物を見てぎゅっと体に力を入れた。…そうでもしないと震えが止まらないから。
「おっ!大地おっはー」
「昨日、大地がバスケの試合助っ人に来てくれて助かったわ。またよろしく頼むな」
「次は、サッカー部にも顔を出してくれよー」
ざわざわとその人物の周りにはすぐに、と言っていいほど人が集まる。所謂、これに世間では人気者というのだろう…。
ちっ何であんなのが…っ。
俺は拳にも力を入れる。
何で俺がその人気者、“矢沢大地”を敵対視しているのはそのうちわかる。
ガシッ
俺の肩に何者かの手が置かれた。
ほら、きた。
それはもう結構強い力だ。
「湊、おはよう」
クスッと笑みを溢しながら俺の顔を覗き、挨拶してきたのは、紛れもない、さっきチヤホヤされていた奴…矢沢大地である。
こんなイラつく声は、コイツしかいない。それに悲しいことに俺に話しかけてくるのもコイツだけ…。
俺はいつものように無視をかました。
「は?無視かよ」
気に障ったのか矢沢は、イラつき声が低くなっていた。…話しかけるな、外道。
「おい、聞いてんのか?無視すんな」
誰にも聞こえないような小さな声で俺の耳元で言った。心の中では、悪態ばかりついてる俺だけどチキンな性格であるため現実では恐ろしくて言えない。
「な、なに…?」
言葉を発するのも一苦労。恐る恐る顔をあげ、奴の顔を見る。
……っ!!
う、うわ~、めっちゃ不機嫌じゃん。露骨過ぎるよ。
「俺がせっかく、おはようって言ってやってんのに何偉そうに無視してんの?」
「ご、ごめん…その聞こえなくて」
うそでーす。めっちゃ聞こえていました。
ははは。
「へぇ…そんな嘘までついて俺を怒らせたいの?」
「え、え?」
とりあえず、ものすごく怖いので謝っておいた。
「まあ、今日のところは許してやる。…次無視してみろ、殺す」
ヒッ…!こ、殺すだと…!?馬鹿なの?!たった今、殺人予告を堂々と普通にされちゃいましたけど。
次に矢沢のことを無視したらきっと空に昇っているのだろう。と遠い空を眺めた。
ねぇねぇ。絶対、これっていじめだよね…。
ただいま、現代文の時間。
…けど、なんだこれ。教科書を開いたら『バカ』『アホ』などの文句が殴り書きで書かれているのを発見してしまった。う、嘘だろ…。とうとうここまでやるのか。もうショックを受けるもなにも呆れてるわ。しかも、ココ今授業でやってる内容のとこだし。全く教科書の字が読めません…。
ち、畜生!俺が田舎者だからってこんな汚ねぇことしやがって…!!
一発殴ってやりたいくらいだ。隣で呑気に座っているやつを死ぬまで呪ってやりたい。そう俺と矢沢は、残念ながら隣同士。迂闊に睨んだりすることもできねぇ。そしたら、即死刑決定と言ったようなもんだ。
あーぁ。せっかく、買ってもらった教科書がもう使いものにならなくなった。心の中で深いため息を溢す。
「ーーはい。94ページ3行目から………佐藤くん。立って読みなさい」
え。お、俺!?いやいや待て待て先生!
まさか、こんなことがあった途端に指名されるとはタイミング悪すぎ。…最悪だ。
ん?待てよ…佐藤って苗字結構いるよな。日本一多いって聞いたことあるぞ。だから、まだ俺って決まったわけじゃない。
なんて、現実逃避してしまう。珍しいことにクラスに佐藤って苗字は俺だけだった。
「佐藤くん?ちゃんと起きてる?早く読みなさい」
先生が早く読めと催促してくる。ど、どうするか。この状況では到底読むことが不可能。
だって!教科書もろ落書きだもん!!
もうこうなったら、正直に!
「あ、あの…!「先生」
え?人がせっかく決心して打ち明けようとした時に横から遮られた。その声の持ち主は、矢沢だ。ここまで邪魔するか?と腹が立つ。
「矢沢くんどうしたの?」
「湊、実は教科書忘れてるみたいでーす」
は…?きっと俺の今の顔は間抜け面だ。こいつは何をでたらめなことを言ってるんだ。
今、手に持ってるんですけど。落書き入りの教科書。でも先生の位置からは見えなかったらしい。
「そうだったの?じゃあ仕方ないわね。矢沢くん、佐藤くんと机をくっつけて見せてあげなさい」
「はーい」
そう言って、机を寄せてきた。
…最悪。これに尽きる。
「ありがたく思えよ?ほら」
「あ、ありがとう…」
ク、クソっ!!
渡された教科書を受け取る。矢沢のやつ…本当何考えているのかわからない。きっと、この様子を見て、内心面白がっているに違いない。
まじ、いい性格してるよな。悪い意味で。
それから俺は本読みをして机をくっつけながら授業をした。その間、ずっと矢沢は、俺の髪をいじって遊んでいた。腹が立った。
俺ってば、よくこんなん耐えているよな…。でも絶対こいつには負けたくないし。けど、このままじゃきっと身が持たない。ストレスでどうにかなりそう。
「湊の髪ってサラサラだな」
とりあえず、今は席替え希望。
そして現代文の授業が終わり、やっと矢沢から解放されると思ったとき。
ん…?あれ。もう授業って終わったよな?なのに、まだくっつけたままの俺の机と矢沢の机。困る。…非常に困る。なぜ、早く元の位置に戻らないんだ。
あー、もしかしてあれか。『なんで俺がわざわざ机を動かせないといけねぇんだよ』的な?うわ、性格鬼。恐ろしいな。はぁ…なるほど。つまり、俺が自ら寄せろということか。
でもよ…もう俺のところ寄るスペース少ししかねぇんだわ。だって、矢沢から寄せてきたからもちろん矢沢側にスペースがあるというわけで…。俺のところなんか、通路ぐらいしかあいてねぇわ。こんちくしょう。でもしょうがないか。暗黙の命令みたいなのされてるもんだし。俺は、ゆっくりと机を動かし始めた。
すると、『おい』と低い声で机をバンとされた。
「ど、どうしたの?矢沢くん…」
急に机を叩くもんだからびっくりした。
「てめぇ、なんで勝手に机動かしてんだよ」
「え…?」
お前の許可が必要なのかよ。
「それとも何?俺から離れて、その隣の上田とくっつきたいわけ?」
はぁ?
「ち、ちが…」
おいおい、クソ沢!!周りを巻き込むな。どうしてそうなった。
「ふーん、良かったな上田。湊がお前と机くっつきたいんだってー」
矢沢は、わざとらしく大声でそう言い放った。それを聞いたクラスメイト達が『まじかよ!』とつられて騒ぎだした。お前らは小学生か!!上田くんごめんよ。俺のせいで巻き込まれっちまって…。
申し訳ない気持ちで上田くんを見ると顔を真っ赤にして怒っている?感じだった。本当ごめん…俺のせいじゃなくて全部矢沢のせいだから。俺は、これ以上問題を大きくしたら危ないと思い、机をまた動かし矢沢の元へとしぶしぶ戻した。
…助けてほしいです、誰でもいいから。
やっと地獄から抜け出して放課後。
うーーーっ。自由だぜ。この瞬間ほど嬉しいことはない。俺はすぐさま帰る準備をして教室を後にした。
バイトでも始めようかな…。だって、田舎に住んでいる親の仕送りだけじゃまた新しい教科書買う余裕なんて無さそうだし。そんなことを思いながら靴箱から靴を取り出して履いていると。
門を出る寸前の上田くんの姿が見えた。あんまり…というか、一度も話したことないけど今日のこと謝っておこうかな。何の罪もない俺が、勝手に恨まれたら嫌だし。
よし、勇気をだせ!!勇気だ!!チキンを克服しろ!!そんな俺が今日がんばって隣の席のクラスメイトに声をかけます!
俺は走って上田くんを追った。
「あ、あの…上田くん!!」
柄にもなく慣れない大声を出して上田くんの肩を掴んだ。
「え…え!?さ、佐藤!?」
上田くんは、俺だとわかり目を見開き、そのあとまた顔を赤くしてイラついているようだった。あぁ、やっぱりまだ怒っていたのか。
「きゅ、急に呼び止めてごめんね。…今日は迷惑をかけて本当にごめんなさい!!」
俺は深々と頭を下げた。でも返ってきた言葉が
「なにが?」
え?わかっていない感じだった。
「え、えっと俺のせいで…皆から何かいろいろ言われっちゃってた…」
「別に気にしてないけど…?」
「え!?」
ま、ま、まじ!?
「それに、佐藤からまさか話しかけてくれるなんて嬉しいなー。今日ついてるかも」
聞き間違いだと思った。
「う、嬉しい…!?」
「うん。なんつーか、佐藤って高嶺の花っていうか、誰も恐れ多くて話しかけられねぇつうかさ、」
た、たかねのはな?誰も話しかけられない??
一体どういうことなんだ?
言っている意味がわからなくて首を傾ける。
「お、俺って皆に嫌われてるってこと…?」
まぁ、言われなくて知ってたけど。
「はーー!?なんで、佐藤を皆嫌うんだよ!それはありえないから。…こ、この際言わせてもらうけどさ…俺実は佐藤に一目惚…「おい、湊!!」
上田くんが必死に何かを伝えようとしたときに突然、名前を呼ばれた。
振りかえるとそこには…矢沢がいた。
「ど、どうしたの?矢沢くん」
なんというタイミングなんだ。
「どうしたのじゃねぇーよ!!一緒に今日は帰るって約束しただろ」
「えっ?」
ええぇぇぇーー!?約束?
いつだよ、それ。そんなのしてないし。
「ていうか、上田じゃん。何?こいつに何か用でもあった?」
「し、失礼しましたああああーー!!!」
あ、上田くん!!矢沢を見るなり、ものすごいスピードで上田くんは逃げていった。隣で『クソ平凡が近づきやがって…』と矢沢が呟いていたとは知らない。
「あ、あの…矢沢くん。い、一緒に帰るって約束してないよね?」
してないはず。いやしてない。
平気で嘘をつくな嘘を。
お前のせいで上田くんが逃げていったぞ。どうしてくれるんだ。
「別にそんなこと今はどうでもいいだろ。アイツと何話していた?」
俺の両肩を掴み、ものすごい形相で俺を睨んでいた。
…こ、こわ。
「え、えっと…今日のことを謝っていただけ…」
「今日のこと?」
「う、うん。俺のせいで上田くん周りからいろいろ言われちゃってたから…」
元はと言えば、発端はお前だからな!!
俺が代わりに謝ってやってんだ!感謝しろ。
「あー、あれのことね」
ふん。やっと思い出したか。
「でも上田くん、別に怒ってないみたいだったから良かった…」
結局、最後まで話聞けなかったな。
「へぇ、わざわざアイツに謝っていたってことか」
「う、うん」
コクりと頷く。
そもそも、なんでこんな口が悪くて性格も最悪なやつが人気者なんだ。ふざけんな。ありえないだろ。
ぽんっ。
「よし、ほら帰るぞー」
「え?」
頭をぽんっとされてなぜか、奴の鞄を渡された。
なにこれ。
「それ、落とすんじゃねぇぞ。持っとけ」
は、はいいいいい!?パシリ扱いかよっ!!
ったく、コイツ悪だ。
捨ててやるぞオラ。でもその瞬間、恐ろしいことが起きるって目に見えている。悪いやつに目をつけられた結果がこれ。せっかく、楽しい放課後もドン底に落とされた。
「おっせーぞ。早く行くぞ」
「う、うん」
俺、なぜか学校イチの人気者にいじめられてます。
次の日。昨日は散々だった。矢沢と一緒に帰る羽目になるし、一番ありえなかったのは、鞄を人に持たせたことだ。人としてなっていない。自分のは自分で持てよ。しかも、アイツずっと帰り道、鼻歌うたってたんだぜ?正気か?まじ殺そうかと思ったぜ…。一生懸命、制御した。偉いもんだ。俺じゃなかったらアイツ100回は殺されている気がする。
一応、俺が住んでいるアパートと逆方向にある矢沢の家。普段なら徒歩20分くらいの帰宅が一時間もかかった。なにせ、アイツんちまで鞄を持ったんだからな。いらつくことに結構、家が豪邸だった。
裕福な家庭に育ったやつは人を人間として見ていないようだな。と、偏った見方をしてしまう。
あぁ、俺の時間を返せと訴えたくなるものだ。一秒たりとも無駄にしたくない。
あと、昨日と違って変化があったことがある。朝いつも通り学校に着いて教室に入り自分の席に着くと…隣の上田くんが座っていた所に別の奴が座っていた。誰かが話をしているのを盗み聞きしてみると、上田くんは目が悪いと言って前の席の人と席を交換したみたいだった。どうせなら上田くんじゃなくて、矢沢と交換してほしいくらいだ。でもどうして急に席を交換したんだ?と疑問に思った。目が悪いとは言え…急すぎる。
でもすぐに理解できた。あ、あれかと思った。
昨日、上田くんは別に俺のこと嫌ってないって言っていたけど、実際は心の奥では『まじ佐藤嫌い死んで』くらい思っていたんだろう。嫌いじゃないって言った自分が気持ち悪くなってこうしちゃいられないみたいな。
上田くんって優しいから直接俺には酷いこと言わなかったんだ。悲しすぎる優しさありがとう。ガクリとなった。
…俺、多分この学校で友達作る自信ねぇ。不可能に近いと悟った高校一年生の春。
高校生って人生で一番楽しい時期でいっぱい青春できるって聞いたのに…現実はあまくないもんだな。はは…と心の中で力なく笑った。これも全部アイツ(矢沢)のせいだーーー!!!
滅べ、矢沢!!とまた、皆に囲まれて楽しいに笑っている矢沢を隣で呪った。
そして4時間目、体育。
俺が一番教科の中で好きな授業。
昔っから体を動かすことが好きな俺はこう見えてスポーツは結構得意。特にバスケが好き。
そして、嬉しいことに今日の体育の種目はバスケ。
バスケはシュートをきめた時の気持ち良さがたまんない。
「えぇ、これより10分間、先生が決めた各チームごとに試合するぞ。早く並びなさい」
体育の先生は時間にうるさい。俺はそそくさと同じチームの列に並んだ。
バスケのルールは初心者が多いので本格的なバスケの試合ではない。とにかく気軽にやる練習みたいな感じだ。あまり、ルールは厳しくない。緩い感じ。
「では、両チーム一人ずつ前に出てこい」
同じチームの奴が一人、前に出て相手チームも出てきた。うわ、相手チームのやつ、矢沢じゃん。スカした顔がまた腹立つ。絶対、この勝負負けらんね。より一層俺に火がついた。
そして、ジャンプボールで試合が開始した。
ジャンプボールで見事に矢沢が触って相手チームにボールが渡った。スタートは悪いけど、これからどんどん点をとってやるんだ。
すると、試合開始からたった15秒で点数をきめられた。
う、うそだろ…はやくね?
「矢沢ナイスーー」
きめたのは矢沢だった。序盤からおいしいところを持っていきやがった。
でも俺たちもまだ負けと決まったわけじゃねぇ。
これから追いあげるんだ。矢沢がシュートをきめたからボールの権利は俺たちチーム。
上手くパスを交わして、俺のとこにやっとパスボールがまわってきた。
やった!よし、このままシュートをきめてやる。
ドリブルしながら相手を避けていく。
3人くらい抜いた。ふふっ、俺ってば田舎町にある唯一の体育館で小さい頃からやってんだ。バスケ部ではなかったけど、日頃の実力をなめんな。
そして、ここ都会だから公園にバスケットゴールを見つけたとき衝撃を受け、いまだって休日やっている。
ダンクは身長的にもジャンプ力的にも無理があるから普通にきめないといけない。
…よし、ここだ!!今だと思って、誰も前にいないのを確認し絶好の位置でボールをゴールに向かって投げた。
入れ!!そう念を込める。
よし、入る!と思った瞬間、誰かが手を伸ばしてボールが跳ね返った。
え?うそだろ。
あともう少しで入りそうだったのに突然手が出てきてきめることができなかった。
それを阻止したのは言うまでもない。
「残念だったな、湊」
バカにしたような笑みを浮かべる矢沢。つまり、矢沢が俺のシュートを阻止したのだ。
ま、まじかよ…最悪だ。それ反則だろ。まあ、ルールも緩いので矢沢がしたことはファウルにならない。
それから10分もすぎ、俺たちチームは呆気なく負けた。矢沢最強という声が飛び交った。別に矢沢はバスケ部でもなんでもない。それが余計に気にさわる。こっちは、終わった今でも息があがっているのに矢沢は涼しげな顔をしている。
俺がシュート決める時だけ本来のルールを破る矢沢。今度からルールは厳しくしてくれと、そう願った。
レベルの差を見せつけられ、俺は一人更衣室に行った。タオルで汗をふき、まだ顔が熱かったのでトイレの洗面所で顔を洗おうと移動した。
鏡にうつる自分。顔が赤くなっている。すぐさまジャーっと水を出して顔を洗う。うー、少しさっぱりしたかも。また更衣室に戻って、タオルで顔をふこうとした。けど。…あれ?ない。
さっきまで使っていたタオルがない。おかしいな…。
トイレには持っていってないし、ここにちゃんと置いてたのに。まぁ、そのうち出てくるだろ。俺は諦め、シャツの袖で拭いた。
タオルはあれから戻ってこず、行方不明。別にタオルの一枚たいしたことないけど、結構気に入ってたやつだった。まあ、誰かが間違えて俺のを持っていったんだろーけど。大事なものを学校に持ってきた俺が悪い。
さてさて現実逃避はここまでにしとくか。今は俺が嫌いな数学。しかも小テスト中でもあるのだ。昨日の夜、ちゃんと勉強すれば良かったと後悔してももう遅い。
え、えっと……なになに。
次の式を因数分解せよ。だって?
せよって何だよ、解いてやってんのに何で偉そうなんだ。と、どうでもいいことにケチをつける。
【問1】(a+2)x+a+2
ん…?その前に因数分解ってなんだっけ?…しまった、忘れた。よし、とばそう。俺は気を取り直して次の問題にうつった。えー、次の問題は。
16の平方根ね。
おっ、これなら解ける。楽勝楽勝と±4と書くつもりが±8と書いてしまった。よくある間違いだ。すぐさま、いけないと思い消しゴムを取り出そうとした。
消しゴム…消しゴム…ん?
な、ない!!
どうしてだ。さっきの授業の時まで確かにあったはずだ。俺が目を離したのは休み時間少し寝てた時ぐらいだ。そんな無くなるはずないだろう。誰かが俺の消しゴムを盗んだとか…?いやいや、そう決めつけるのはよくない。今どき消しゴム盗むやついないだろ。小学生じゃあるまいし。
多分、どこかに落としてしまったんだろうな…。タオルといい、消しゴムといい、俺の私物が最近、無くなっている気がする。
何かに取り憑かれているのか?もしかして、矢沢がまた俺に嫌がらせするために俺の物を隠したとか?それはいくらなんでもないよな…。だって、矢沢はいつも周りに囲まれていてそんな余裕なんてないと思うし。
やっぱ俺、霊的なものが憑いてるんじゃね!?
―――――
………。
帰り道。近くの公園で一人バスケをしていたら辺りはもう薄暗くなっていて、もう少しで日が沈みそうだった。そろそろ帰ろうと思って鞄を持ち公園をあとにした。そこまでは何も変わらないいつも日常だった。
…後ろに誰かいる気配がする。なんか、ずっとついてきてるというか、痛いくらいの視線を感じる。
…ガサッー。
ビクッ!ど、どどうした俺。きっと猫かなんかがいるだけなのにそんなビビるなって。田舎で育ったんだからこんなの別に平気だろ。
でもさっきから俺のあとをついてきている奴が後ろにいる。足音だって聞こえるし…ただの気のせいだったらいいけど、さっき俺が止まったときその足音も止まったんだ…。これは間違えようがねぇだろ。俺のあとをついてきてるとしか考えらんねぇよ。
でもこんな俺なんかをストーカーして楽しいのかよって話だ。俺はどこにでもいる男子高校生だし。
よし。覚悟を決めろ俺。もうこうなったら、家までダッシュだ。そう思って、俺は勢いよく走った。すると、恐ろしいことに後ろの足音も走る音に変わったのが聞こえてきた。
う、うそぉーー!?本気出さなくていいからー!
なんで、俺が走ったら走るんだー!!半泣きな俺。お、俺は男だろ!ここは逃げずに堂々と追ってきている奴を確かめろ。と、心の中で自分に投げ掛ける。
「はぁはぁ…」
どうしよう、息もあがってきた。俺は決心して、曲がり角に曲がり立ち止まって待ち伏せすることに決めた。
こ、こいやぁーーー!!
足はガクガクだ。がんばって強がってみるけど怖いものは怖い。も、もし、殺人犯とか通り魔とかだったら俺、死ににいくようなことしてねぇか!?
と、途中で重大なことに気がついた。ブルブルと震えながらも構える。
…。
あれ?
数分が経過した。もう気づくと足音が聞こえていなかった。曲がり角からゆっくりとひょっこり顔を出し確認したが誰もいなかった。
…も、もしかして気のせいだったのか?
俺の考えすぎ?
うわ。なにそれちょー恥ずかしいじゃん。
くしゃっと前髪を触る。だよな。そうだよな。誰も俺なんかあとをつけたりとかありえねぇわ。ビビって損したわー。
無事アパートに到着した。やっと家だ…。そうだ、ハガキとか届いてないか確認しないと。前、郵便受けを見ていなくて、母さんが送った手紙を放っておいたから電話でものすごく怒られたことがあるから毎日確認するようにしている。
ガチャ
郵便受けを開ける。
「えっ」
俺は固まった。
きょ、今日もだ…。
昨日は赤いバラ。今日は…
「赤いチューリップ?」
一体、誰がこんなものを…。
とりあえず、そのままにしておくのもあれなので手にとって持ちかえる。
花たちは、一応グラスに入れて飾っている。
昨日のバラと一緒にチューリップもその横に添えた。
一体、こんなことする奴誰なんだ…。俺もしかしてモテ気?俺のことを想ってくれている女の子でもいるのかな?
だって赤いバラの花言葉は『愛情』『熱烈な恋』で赤いチューリップは『愛の告白』『永遠の愛』とかTVで言ってたし…。
でも、いくらなんでも怖いというか…。本当最近おかしなことばかり起こるよな。頻繁に私物は無くなるし、誰かにあとをつけられてる気がするし。
それにこの花だって…。もしかして、新手の嫌がらせか何かか?別に俺になんの危害がないからいいけど結構悩むわ…。
誰かに恨まれることしてないよな?
うん。してない。だって、人とあんまり関わってねぇもん。相談したいけど相談する相手が第一いないし…。ま、いっか。これもなんかの気のせいとかだろ。
あーもう考えすぎたから疲れた。早く寝よ。ご飯と風呂は明日でいいか…。俺は、この時大きな問題として考えず時間の流れるままで流れろと投げやりにまとめた。
「ゴクン…」
俺は、今日も郵便受けを開けるため息を呑んだ。震える手を動かして恐る恐る開けた。
「まただ…」
花を送ってきた“男”からの手紙が入っていた。
もうここ最近毎日俺宛てに愛の言葉が書かれた手紙が入っている。
バラ、チューリップの他にたくさんの花をプレゼントされた。そしてこの前、花ではなくて、黒い封筒の手紙が送られるようになった。差出人の名前なんてどこにも書いてない。一番最初の手紙を読んだとき身が凍った思いをしたのは初めての経験だった。
――――――――
湊へ
どう花は気に入ってくれた?
湊にそろそろ俺の愛を知ってほしくて
毎日送ったんだんだけど
気がついてくれたかな?
…愛してる。ものすごく湊のこと愛してる。
早く独り占めにしたい。
好きで好きでたまらないんだ。
今日も可愛かったよ。
今度、湊の笑顔も見てみたいな。
――――――――
この手紙の主は俺を使っていたため相手が男だってことがわかった。しかも怖いことに俺の名前を知っている。これが一番最初の手紙の内容だった。
なんだよ…この気持ち悪い手紙は。愛してるとか何考えてんだ。怖すぎる。俺なんかしたか…?思いあたることはない。
そう、俺はストーカーされている。最初は、イタズラだと思った。でも相手は本気っぽい。嫌がらせに近い気がするけど。嫌がらせの内容は、まあよくあるものだ。俺が出したゴミが次の日漁られてたり、何回かピンポンダッシュとかされたり。
この程度のことを男の俺が警察に言うのもなぁ…なんて思って放置している状態だ。逆にこんなことして飽きないのかよって感じだ。男にストーカーされるって何のコメディーだよ。全く笑えない。
花を送っているのは、女の子だと思っていたのにまさかの男だったという真実にショックを受けたのは言うまでもない。
あ、今日はなんて書いてあんだろ…。さっき郵便受けから取り出した手紙を見る。
この前は、愛してるだらけの怖い手紙。その前は大好き、昨日は結婚の約束だった。
警察に本当、通報したいよ。だけど、男にストーカーされてますなんて言いにくいし…。気が引ける。それに学校にまで噂になったら矢沢は面白がってネタにしそうだし。とりあえず、手紙を開けて見ることにした。
――――――――
湊へ
湊好きだよ。
早く俺の気持ちに気づけよ、バーカ。
いつも頭ん中、お前でいっぱい。
昨日、湊とHしている夢を見たんだ。
可愛く啼いていて俺を欲しがっててさ
とにかく興奮した。
朝起きたら、射精してた。
いつか本物の湊としたいな。
それまで俺理性保てるかな?笑
あ、あと最近元気ないみたいだけど大丈夫?
俺は心配だよ。
じゃあ、またね愛してる。
――――――――
……うわああああ。
まじ怖いよ。
読み終えた時、鳥肌が半端なかった。元気ないのはお前のせいだ。手紙の向こうの相手に言ってやりたい。
…ってなんで知っている!?
もしかして俺の身近にいる奴の仕業!?それはそれでとてつもなく超怖い。身の危険がすぐそばにあるとわかって恐ろしくなった。クシャクシャと手紙を丸める。そして、ポケットに突っ込んだ。あぁ…今から学校か…気が重たい。
――――
……。
「湊、おはよう」
必ずと言っていいほど、朝毎日挨拶してくる矢沢が鬱陶しい。でも無視したら殺されるので一応返事をしとく。
「お、おはよ…」
「最近、お前元気ねぇよな」
「え?あ、うん。ちょっと寝不足でさ…」
矢沢が急にそう言うからちょっと驚いた。
すぐに寝不足だと誤魔化した。
「ふーん。ちゃんと寝ろよ」
「え?う、うん…」
お前本当にあの矢沢か?いつもは冷たいくせに今日はやけに優しい言葉だ。
なんか…キモっ。
でも少しコイツのこと見直したかも。ちゃんと、人を心配する良心はあるみたいだ。とにかく、今は朝のことでだるい…。
さっき、矢沢のこと見直したってやつ、やっぱ取り消す。前言撤回。コイツはやっぱ、クソだ。最低なクズだ。昼休み、俺はすぐに売れ切れになる人気商品のやきそばパンを買うため購買に行った。
購買は、いつも混んでいる。そのやきそばパンが置いてあるところには行列ができている。俺もその列に並んだ。やきそばパン…早く食べたい。 あれはもう言葉で表せないほどの美味しさ。
一度食べたら忘れられない味。そして、とうとう俺の番までまわってきた。
うわっ。あぶねぇ!ラスト一つじゃん!やきそばパンを取ろうとした時だった。
「え?」
目の前にあったはずのやきそばパンがなくなった。
「おばさん、これください」
「はいよ、280円」
隣を見ると、やきそばパンを持っている矢沢の姿。
「や、矢沢くん…それ俺が買おうと思ってたやつ…」
勝手に横取りしやがって何様だ!!
「へぇ、そうなんだ。また明日がんばれ」
「…」
手を振ってどっか行きやがった。明日がんばれだと…?てめぇ、よくもそんなことを!やっぱり矢沢は、クソ沢のままでした。
ちなみに俺は、イチゴジャムパンを買った。
ふぅ…。今日はタクシーで帰宅した。
結構お金かかったけどまたストーカーにあとをつけられたら怖いから。
郵便受けは、もうかなりのダメージを受けたので開けてない。
ベッドにダイブする。はぁ…。俺って世界一ついてない男なのか。学校では友達できねぇし、矢沢という男に嫌がらせされるし家に帰ってきたらストーカーで精神的にやられるし。まさかのWパンチ。俺どこにも逃げ場がないじゃん。
ふと、机の片隅に目がいった。
あっ。
あれってこの前、コンビニでもらったバイト募集の雑誌じゃん。
ちょっと考える。…き、気晴らしにバイト始めようかな。逃げ場所を探しに。
それから、カフェの裏方のバイトを始めて1週間ちょっとになる。唯一、ストーカーのことを考えなくていいし、お金も稼げて一石二鳥。
このカフェは、ログハウス調の外装にピッタリなカントリーっぽい内装で居心地のいい空間を作っている。
ほぼ、女性の客で満員。カップルで来る人達も多い。結構、流行りの店なのだ。俺がこのカフェに働こうと思ったのは、特別時給がいいからとかそういうものじゃない。まず、結構家から近いことと、夜遅くなったら店長がバイト生を家まで送ってくれるという特権つきだったからだ。バイトを初めて本当良かったと思った。従業員の人達は皆優しくて、こんな俺に休憩時間とかに話しかけてきてくれる。とてもありがたい。
高校生になって、初めて心の底から楽しいって思えた。今青春してるって感じ。
「あ、湊ちゃん。そこのスプーンとってくれる?」
「このデザインが可愛いやつですか?」
「そうそれそれ!」
「どうぞ」
「ありがとう!」
こちらの綺麗なお姉さんは、斉藤さんといって実はもうすぐ30歳になるらしい。初めて会ったときは、二十歳くらいだと思っていた。斉藤さんは、会計担当でたまにこうやって裏方の仕事を手伝ってくれる。ちなみに俺の主な仕事内容はお皿洗いとか清掃、机ふきとか。
斉藤さんが『佐藤くんものすごく美形なんだからウェイターやってよー』とかおかしなことを言っていたけど俺には絶対無理。すぐに断ったけどね。それに俺が美形って何のギャグなのかなって思った。
まあ、斉藤さんのことだから誰にでも同じこと言っているんだろうな。そう思いながらも、洗い終わった食器を乾燥機にかけ、すでに乾燥を終えている食器を棚に並べた。
「あ、あの、佐藤くん!」
「あ、美月ちゃんどうしたの?お疲れさま」
俺と同い年の桜木美月ちゃん。容姿はふわふわしていて可愛い。ここでは、接客担当。
「こ、これ…あまりものだけど食べる?」
「カップケーキ…?」
「佐藤くんのためにとっておいたんだ」
「お、俺のために?」
美月ちゃんはコクリと頷く。
「いいの?ありがとう。嬉しいな」
女の子からおかし(あまりものだけど)をもらえるなんて。
本当、ここの人達っていい人ばかり。
カランー…
裏口の扉が開いた。
「佐藤くん、桜木さん。今日もお疲れさま。さあ、帰る準備をしておいで」
「あ、店長さん。お疲れさまです」
「お疲れさまです」
俺と美月ちゃんはペコリと頭を下げる。店長は、三十代後半。とても整った顔をしたいつも笑顔の魅力溢れる男性。
「佐藤くん、本当もったいないなぁ。今度ウェイターの仕事してみないか?」
「え?お、俺がですか?無理です…。そんなことしたらお客が減りますよ」
「ははっ!佐藤くんは面白いねぇ~。ネガティブというか」
俺の言った言葉のどこに笑ったのかよくわからない。本当のことを言っただけなのにこうも笑われると恥ずかしい。
「さ、早く準備しておいで。車で待ってるからね」
店長は、それだけ言って外に出て行った。
俺は、男専用の更衣室に荷物を取りに行ってエプロンをとりロッカーにかけた。
―――――
―――
……。
あれから、店長に車で送ってもらい、今は帰宅して家。
「ふぅ…。疲れたぁ」
俺はそのままベッドにダイブ。すると、ポケットに入れていた携帯が振動した。
「…ん?メール?」
携帯会社からのお知らせメールかなんかと思って開いてみると
―――――――――――――
湊お帰り。
今の車の男誰?
―――――――――――――
「はっ…?」
知らないアドレスからのメール。悪戯メールにしても、こんなタイミングよく送るなんて不可能。
…ストーカーのやつから?なんで、俺のアドレス知ってんだ!?震え上がった。てことは、さっきまで俺の家の近くにいたってことだろ!?ま、ま、待って本当怖い。俺は布団にくるみ、身を守る体勢になった。
すると、またピロリーンと携帯が鳴った。ま、またかよ!?俺は全身に寒気が襲う。…で、でもまだわからない。決めつけるのはよくない。母さんからかもしれないしさ…。そうだよ、俺は男だろ。これくらい平気だ。布団から顔をだし、携帯に恐る恐る手を伸ばす。
自然と指先が震える。
ゴクリと息を呑んだ。
――――――――
言い忘れてた。
浮気したら許さない。
――――――――
さっきの知らないメールと同じアドレスから送られてきたものだった。
ちょ、浮気って何?そもそも俺、誰とも付き合ってないよな?まともじゃないな……。あっ。て、ことはだな。あれか、単なる間違いメールってやつ。
そう思うだけで少しホッとした。まじ、びっくりしたし。タイミングとか俺と合っていたからビビってしまった。もし、これがストーカーからだったらそう簡単に俺のメールアドレスを知ることなんてできないだろう。だって、いつもズボンのポケットに肌身離さず持ってるし。
ふぅ、一息吐いて携帯をテーブルに置く。そしてまた布団にこもる。もう、寝よ…。俺は何も考えたくなかったので目を閉じた。
次の日。
「おい、湊。お前いつも放課後なにしてんの?」
「え?」
5時間目があともう少しで始まる時に突然、隣の矢沢の野郎に声をかけられた。
「だって、この前は元気なかったのに、ここ最近放課後になるとウキウキしながら帰るじゃん。…なんで?」
ウキウキ…?俺が?
お、矢沢でもわかっちゃう系?
だってそれは俺の楽しみにしているカフェのバイトがある時間だから。でも、絶対コイツには教えねぇ。
「べ、別にいつも通りだと思うけど…?」
俺は気づかれないように言葉をかわす。
「ふーん」
聞いてきたくせに興味のないような態度が返ってきて気に食わない。その反応にムカついたがでもコイツだけには絶対バイトをしていることをバレたくない。今後、気づかれないように注意すると心に決めた。
そして、バイトの時間。
「え――――……?」
俺は、目の前のある光景に目を疑った。なんで…なんで?これほどまでに運のない奴いるか?
「皆さん、初めまして。そこにいる湊と同じ高校に通っている矢沢大地といいます。これからよろしくお願いします」
さっき、店長が皆集まるようにと言ってきたから早めに準備して行ってみると奴がいた。
「矢沢くん、よろしくね。湊ちゃんと一緒の学校だったのね。わからないことがあったら私に何でも聞いて」
斉藤さんはポンッと任せなさいと胸を叩いた。
「わ、私は、接客をやってます。桜木美月です。同じ接客担当同士がんばろうね」
「うん。ありがとう」
ニコニコ微笑む矢沢。
なんで、お前がここにいる。俺聞いてないぞ、お前が入るなんて。嘘だろ。これは何かの悪い夢だ…。こんなの俺…信じない。信じないぞ。い、いいいやだああああ。
皆、各自分の仕事についた。
「――――…おーい、湊」
ビクッ
俺は背筋が凍った。
「や、矢沢くん…。び、びっくりしたよ。まさか、ここでバイトするなんて…」
「俺の方がびっくりだよ。まさか湊がバイトしているなんて」
「ははっ…。俺がバイトしてるって変かな…?」
小さく笑って、目線を下に向けた。
だって、矢沢が怖ぇもん!!
「別に変じゃないけど、ただお前が接客担当じゃなくて良かったと思った」
「え…?」
遠回しにお前は顔を出すなと言っているのか?めっちゃ腹立つ。ぶっ殺してぇ!!
「何それ。睨んでる?ああ、でも俺知ってるよ?湊が性格悪いこと」
ニヤリと口角をあげる。
「……」
性格悪い…?誰が誰にいってんの。
「心ん中では俺のことムカついてたり、ぶっ殺してぇとか思っているんだろ?」
「……っ!」
な、なぜそれを!
「ほらね、図星。学校にいるときも時々、俺の目をぬすんで睨んでるもんなー……。まあ可愛かったけど」
「こ、こんのクソ沢!!」
自然と口からポロって出てしまった。
いけないと思って口を押さえても今さら遅い。
「ははっ。今の何?俺のことクソ沢って呼んでたの?ふふ、まあ別にいいけど…」
「い、今のはちが…っ」
「そう言ったこと覚悟しとけよ」
ビクッ
「……っ!」
俺、どうした。チキンのくせに、何つい口を溢してるんだ。失態。その言葉だけじゃ済まされない。
「矢沢くん。教えることがあるからちょっと来て」
斉藤さんが矢沢を呼んだ。
「はーい。今行きます。…じゃあまた後でな」
耳元で囁かれ、不敵な笑みを浮かべて矢沢は斉藤さんの所に行った。
…誰か嘘だと言ってくれ。
ポツンと佇む俺。
なんで、矢沢がここにバイトしに来てるんだ。
よそに行けよ!!
せっかくの俺の心の癒しがっ!
とうとう矢沢の前でクソ沢って言ってしまった。
後悔している。…いいや。俺、何言ってたんだ。後悔なんてしていない。アイツはクソ沢だろ!今までしてきた仕打ちを考えてみろ!!されてきたさまざまな嫌がらせを頭に浮かべる…どう考えてもアイツが悪いな。
そうだよ。俺は何も悪いことはしていない。正当なことを言ったまでだ。堂々としてればいいだよ、俺は。矢沢は空気。エアーだ。
俺は、そそくさと自分の仕事をし始めた。
――――――
―――
「あ、佐藤くん」
「店長さんお疲れさまです。どうしたんですか?」
時間はまだ8時をまわったところ。
終わるのは一時間後の9時。
「悪いんだけど、今日は家に送ることができないんだ」
「え?」
「急用が入ってしまってね。佐藤くん本当すまない。あとの皆にはもう伝えてあるから」
「そ、そうなんですか…。あ、でも大丈夫です!!忙しいですもんね。仕方ないです!それに俺、結構家近いんで気にしないでください」
「佐藤くんありがとう」
「いえ、店長さんにはいつもお世話になってるんで」
店長は、最後の最後まで申し訳なさそうに謝って先に仕事をあがった。
きょ、今日は厄日なのですか…あ、違ったか、俺は毎日厄日だ。(白目)
現在21時。もう店は戸締まりを終え、俺は男子更衣室でエプロンをロッカーにかけていた。
「…よぉ、湊」
「うわぁっ」
後ろから、口を押さえながら矢沢に羽交い締めされた。
「う゛ーーっ!!う゛」
く、くく苦しい!!!
「今、ここ俺たち二人しかいないんだぜ?他のやつらは帰った」
う゛っ。
何か知らないけど、矢沢が俺を殺しそうだ。
あ、そういえばさっき覚悟しとけよとか言われたな。なんだよ、クソ沢って言ったくらいで怒るなよ。
「う゛っ…ふぁ」
やばい。もう、このままだったら俺の命に関わる。こんな奴のせいで死んでたまるかってんだ。俺は思いっきり足を強く、矢沢の足を目掛けて踏んでやった。
「痛いじゃん」
やっと、口を塞いでいた手が離れた。
「はぁ…っ、お前、急に何なんだよ。俺を殺す気かよ!?はは!でも残念だったな!死んでたまるか!この性悪っ!!」
キッと矢沢の胸ぐらを掴んで今までのことが爆発した俺は矢沢に牙をむいた。もうどうなっても知らないけど俺は怒っているんだ。
「へぇ…。言うね」
身長差があるせいか自然と奴に上から目線で見下ろされる。
「もう今までお前には迷惑してたんだ。我慢できない。学校で変な嫌がらせしてくるし何なんだよ!!」
言ってやった。
俺、言ってやったぞ!
「だって、お前いじめるの面白いじゃん」
ククッと笑う。
「………」
面白い?
…ふざけんな。俺がどれだけ気持ちを踏みにじみられたことか…ッ!!きっと、お前には俺の気持ちはわからない。そうだ。人気者のお前なんかに理解できるはずがない。なにいっても意味ないんだ。
「…もういい。お前を相手にするだけで時間の無駄だ。もう帰る」
パタンとロッカーのドアを閉めて、鞄を持つ。
「おい」
すると、矢沢に声をかけられる。
「もう何」
面倒くさそうに振り向いた。
「今日、店長が送れないって聞いたか?」
「……聞いたけど」
「ふーん。そっか」
やべ。そうだった。
今日、店長が急用入って送ることができないって言っていたな。
店長には大丈夫だとか言ったけど……
どどどどどうしよう!?
一人で帰るのが怖いとか言えねぇ。別に幽霊や暗いのが苦手とかそういうのじゃない。
ストーカーだよ。ストーカー。もしストーカーとばったり会ってしまったらというのが一番怖い。
ど、どうしよう…。急に怖くなって一歩も前に進めない。後ろをチラッと見る。矢沢も帰る準備ができていた。
…これだ。
「おい、矢沢!」
「矢沢…?もう“矢沢くん”って呼ばないんだ。随分、急に偉くなったね」
「う、うるさい。それよりお前、今までの罰として俺の鞄を家まで持て!」
鞄をあげて奴の方に向ける。
「なんで?」
「お、お前覚えてねぇのかよ。散々嫌がらせして、俺前に一回だけお前の鞄を家まで持って行ったことあるんだぞ!だからお前も持てよ!!」
…うぅ。言い終えて思った。
何言ってたんだ俺。力の差では圧倒的に矢沢の方が上。ケンカとか殴り合いになったら確実、俺敗北決定。
「ね、遠回しに一緒に帰りたいとか言ってる?」
「は、はぁー!?ち、違うし!!早く鞄持てよ!」
誰が好き好んでお前となんか帰るかよ!!
すると、矢沢が近づいてきた。
手を前に出される。
うっ。これは殴られる!
俺はぎゅっと体に力をいれ目を閉じた。
「……別にいいよ。持ってやっても」
「え…?」
ま、まじ…?ゆっくりと目を開ける。矢沢が俺の鞄を取った。正直、殴られるかと思った。
う、嘘だろ…。少し拍子抜けした。
「何、驚いた顔してんの。言ったのお前だろ」
「そ、そうだけど…本当に持ってくれるとは」
今までの矢沢からしてありえないことだった。
「じゃあ、持たない方がいい?」
「い、いいいいや持て!!絶対持て!!いいな!」
「はいはい。わかったから早く出るぞ」
矢沢が歩き出す。ひとまず、矢沢に鞄を持たせることに成功した。…俺ってやる時はやる男じゃん!!
―――――
―――――――
………。
「よ、よし。ご苦労だった。じゃあな」
俺はアパートに着くと矢沢から鞄を奪い取り、そそくさと階段をあがる。
「湊」
すぐに名前を呼ばれた。
「何」
仕方なく、後ろを振り向く。
「これ、佐藤って書かれてるけど、お前のポスト?」
矢沢は、俺のポストを指差していた。
「……そうだよ」
まあ、今は開けてないけど。また変な手紙が入っていると思うと、もう恐ろしくて開けられない。
「ふーん」
ガチャー
矢沢は、何食わぬ顔をして、そのポストを開けた。
「お、おい!!ちょ、矢沢!なに勝手にッ」
すぐさま階段をおりて矢沢を退けた。
バサバサバサーッ
すると、すごい数の黒い封筒の手紙が落ちてきた。
こ、こんなに…。
顔をひきつった。まだ、ストーカーの奴、こんなのやってたのかよ…。恐ろしくて鳥肌が立った。
「湊…それ「う、うるさい!!」
矢沢の声を遮る。すぐさま手紙を全部、拾い上げ鞄の中に突っ込んだ。もし、手紙を開けて内容を見られたらやばい。絶対、変な誤解されて俺は学校の笑い者。
「もう、お前帰れよっ!じゃあな」
クルッと方向転換して階段をあがる。ったく、あんにゃろー!!勝手に人のポスト、開けやがって!プライバシーの侵害だ!!
「おい待て。湊」
階段をあがっていたけど奴に手をつかまれ呼び止められた。
「なに。もう帰れって言ったじゃん」
「は?ここまで鞄を持ってきた人に対してその態度はねぇんじゃねぇの?茶を出せ茶を」
「お、お前…図々しいぞ!!…てうわっ!」
ギュウ
なぜか、急に抱きつかれる。
「や…ざわ!ちょ、はっ!!」
ケツを触られた。
「おい、てめぇ!…どこ触って!!」
「みっけ。これカギだよね?」
後ろのポケットのズボンに入れていたカギを取られた。
「返せ!!」
なぜ、俺がそこにカギをしまっていることを知っている!?でもすぐにバイトの時男子更衣室で知ったんだとすぐに理解した。邪魔になるからロッカーにいれてるし。多分、そこを見られてたんだな。
「嫌だね。あ、このドアに佐藤って書かれてる。ここだな」
矢沢はニヤリと笑ってすぐさま鍵穴にカギを突っ込んだ。
ガチャ
そして、開いたと同時に堂々と勝手に入って行った矢沢。
「や、矢沢!」
俺も大慌てで矢沢の侵入を防ごうとするがもうどんどん中に入って行きやがった。
………最悪だ。
矢沢はすでに俺のベッドの上に座っていた。
こいつデリカシー無さすぎ。
「お前、いい加減にしろよ」
「うっせ、茶」
「はぁ…」
ありえない。大嫌いな奴が俺のベッドの上に座っている。これほど屈辱的なことはない。まあ、茶を入れたら絶対帰ってもらう。俺はすぐさま冷蔵庫に手を伸ばす。
「なあー…湊」
「何」
今、茶を探してんだ。少しは黙ってろ。
お茶、お茶…
昨日ペットボトルのお茶を買ったはずなんだけどな。どこだ?
「何でバイト始めたわけ?」
おっ、あった!!
や~いお茶を発見!冷蔵庫から取り出す。
「ふん、バイト始めたのはお前が人の教科書に落書きしたせいで使いもんにならなくなったからそれを買うためだ」
嫌みを込めて言ってやった。
「あっ、あれバレていたのか」
「て、てめぇ!!」
拳を作ったがおさえた。
ここでムキになるな…。俺はペットボトルのキャップを外し、コップに注ぐ。毒とかいれてやりたいけど、こんな奴のせいで警察に捕まれたくない。
「ほら、茶」
「雑だな。しかも冷たい」
「仕方ないだろ。文句言うな」
てめぇはじじぃか。
「はいはい」
矢沢は、コップを受けとると舐めまわすかのように飲んでいる。飲み方キモいぞ。
「あ、そういえば湊、連絡先交換しようよ」
「はっ、なんで」
「いいじゃん。学校もバイト先も一緒なんだし。教えてくれたらすぐに帰るからさ」
「……」
矢沢の性格本当嫌い。教えなかったら遅くまで居るとか言いそう。
「…本当にすぐ帰るか?」
「当たり前」
約束は守るぜとか言ってるけど信用できない。でも俺は早く帰ってほしいため、しぶしぶ携帯を出した。
「じゃあ、今からメール送るから登録よろしく」
「わかった」
仕方なく交換した。奴からすぐにメールが届いた。
「…え?」
これは何かの見間違いか?二、三回瞬きをした。
昨日受信した間違いメールと矢沢から今、送られてきたアドレスが一緒だった。
なん…で…?
「湊」
ビクッ
突然、恐怖が襲った。それに少し矢沢の様子が変。
「俺が送った花。…飾ってくれてたんだ」
「は、花…?」
矢沢の指差した所にはグラスに飾ってあったあの花があった。それはストーカーからの…。放っておいていたから今は触っていない。そのままにしていた。
何で花のことを…。
しかも俺が送った花って言ったよな?!
「…っ!まさか」
手紙を送ってきた男って…
「ははっ、バレちゃったか。そうだよ今、気づいちゃった?」
ククッと笑う。バレちゃったかって…おい、ストーカーの正体って矢沢…?
バッ。
俺はすぐさま玄関に向かって走った。
でも
「だめだよ、行っちゃ…」
すぐにつかまれ、身動きが取れなくなった。
「な、なに…すんの…」
「あーあ、怯えちゃって本当可愛いな俺の湊は…」
「な、何言ってんだ…や、矢沢…俺に近づくな…っ」
や、やだやだやだやだ。体中が震えている。不敵な笑みを浮かべて笑う矢沢。
絶体絶命。俺、クラスメイトにストーカーされてたみたいです。
何で矢沢は俺なんかに嫌がらせするんだ…。
「湊、愛してる。好きだよ」
や、やめろキモいキモい!奴の唇が近づいてきた。俺はがっちりと顔を固定され抵抗すらできない。
「ーーんん…ッ!」
俺と矢沢の唇が重なった。そうキスされたのだ。しかも同じ男に。ただただ気持ち悪い感覚しかしない。
「気持ちいい?…やっと、湊の家に入ることができた…しかもキスまで…ハァ」
息をあげる矢沢。それが恐怖となってとてつもなく怖い。た、助けて…。こうなるんだったら、ストーカー被害を警察に出しとくんだったと後悔しても遅い。何で、俺は今まで気づかなかったんだ。でもまさかこいつがストーカーの正体だったなんてわかるかよ。
ゴシゴシと口を袖で拭った。
「何やってんの。それ傷つく」
今の態度にムカついたのか、矢沢は俺を担いだ。
「おい、下ろせ!!…なに、する気だ…っ」
力一杯出す声も震えていて威力を感じない。
「ちょっとは黙れないの?俺の口でまた塞ぐよ?今まで俺に逆らえなかったくせに…まあ、俺はこっちの方が好きだけど。てか、どんな湊でも好き」
気持ち悪い愛の言葉。
ドサッー
ベッドの上におろされた。
「ずっと、湊が好きだった。入学式初めて会った時からずっとね」
うっとりした熱い目が俺にそそがれる。
「何バカなこと言ってんの…。俺、男。お前も男だろ!しかも好きだった?ふざけんな。嫌がらせして俺をいじめたくせに」
よく言うぜ。ククッ笑いながら矢沢は俺の上に馬乗りをして両手で押さえつけた。
「性別なんて関係ない。俺が湊に嫌がらせ?ふっ、勘違いだよ、それ。好きだからいじめちゃうって言葉知らないの?」
は?なんだ、その小学生染みた考え方は。
「知らん。それより退け!そして帰れよ…っ…むぐ」
口を押さえられる。
「そう、抵抗すんなよ。本気で怒るよ?」
「…んっ!」
また激しくキスをしてきた。
「んっ、…や、…矢沢…っ!ンッ」
口の中に舌を入れられ、何度も何度も貪るかのように角度をかえられた。深いキスが降ってくる。
「湊…湊…俺の湊…チュ…っ」
狂ったように俺の名前を呼ぶ。気持ち悪い感触。嫌なほど部屋に水の音が響く。
「…どう?俺とのキスは」
「はぁ…っ、!」
すぐさま空気を吸う。どうって…気持ち悪いんだよ。また息をさせないくらい俺の唇に吸い付いてくる。
「あ、そうだった。湊お前もうちょっと危機感持てよ」
「あ?はぁ…っ」
危機感?それよくお前が言えたな、今の状況で。
「体育の授業中、こっそり更衣室に忍び込んでお前の携帯いじった」
「は、はぁ!?」
お前、なに勝手なことしてんだよ!!
「ちゃんとロックとかしろよ。もし、俺じゃなかったらどうする気?まあ、湊のものに触れた奴がいたら許さないけど」
…あぁ、だから、俺のアドレス知ってたんだ。最初の間違いメールだと思っていたやつ。確かに携帯は肌身離さず持ち歩いているけど体育の授業なんか着替えと一緒に置いている。
「ねぇ聞いてる?俺のこと以外考えるな」
「お前、やってること犯罪だぞ!」
「はあ?犯罪?お互いの気持ちが一緒ならいいじゃん」
「俺は違う!!お前なんか嫌いだっ!!」
一緒にすんなっ。
「…へぇ、湊は素直じゃないね」
ビクッ
低い声を出し、俺の髪を耳にゆっくりとかける。そしてゆっくりとおりてきて耳元で囁いた。
「…お仕置きしちゃおうか」
「っ!な、」
「こっそり湊から頂いたタオルや消しゴムとかで、普段抜いていたけど、やっぱり本物の湊がいいよね」
ペラペラとおかしなことを言い出す。
…タオル?消しゴム?
それは俺の無くなって戻ってこなかったものたちだ。…っ!まさかお前に盗まれていたのか!?しかも頂いたって言葉の使い方間違ってる。
「もう、これ以上黙ってみていられなかったんだ。毎日ラブレターも書いたし、帰りだって陰から見守ってついてきた。それなのにバイトを始めてさ、しかも帰りは男と帰ってきて…。浮気だよね?その時はまじそうだと思った。だけど調べて俺もそこのバイトを始めてみて、あぁ、ただ送っていただけなんだって理解したよ。ごめんね。疑って。それなのに俺を拒んで…足りないの?俺じゃ満足できないの?ねぇ、湊」
恐ろしいほど、長々と話す。俺は頭が痛くなった。わけがわからねぇ…。一体なんなんだ。しかもラブレターって…俺にとっちゃあんなもんデスレターだ。精神的に追いやられて、命の危機を感じたくらい。今だって、矢沢に対してそれが芽生えて怖い。
「でも安心して?今から思う存分満たしてあげるから」
スッと、矢沢の手が下にいく。
「っ!?」
「すぐに感じさせてあげるからね」
矢沢は、ズボンの上から俺の股間を擦るように触った。
「ちょ…っぁ…」
「ふふっ。感じてきたかな?」
「や、やめろ……ンッ!」
それは感じてるとかじゃない。
不可抗力だ。
「湊、可愛い可愛いよ。愛してる俺だけの湊…ハァハァ」
ズボンのチャックをゆっくりとおろされる。
「おね…お願い…や、やめて…くぁ、ッ」
ビクビクとなり、上手く力が入らない。
やだ。やだやだやだやだ。
「俺、湊のことを思うだけでいつもココが硬くなるんだ」
俺の太股あたりに擦りつけてくる矢沢のそれ。膨張して主張してくる。
目に涙が浮かんだ。
「泣いてもだめだよ。だって、俺がせっかく毎朝ポストに入れた手紙を読んでないなんて…いくらなんでもありえないよ」
「うわぁっ!…ン」
ベルトも緩められ、ズボンを下げられた。俺の格好はシャツとパンツ一枚の姿になった。
すっごい、滑稽だ。
「乳首はどうなっているのかな?早く見たい」
獲物を捕らえる獣のような目をしてニヤリと笑った。
シャツのボタンを一つ一つ外していく。
「や、やめろ…っ!!」
ドンと押すけど恐ろしく力が入らない。
人間、恐怖で力が入らなくなる、というのはきっとこのことだ。
ほんのちょっとの力しか出せない。
「すっごい弱い力。あ、湊の可愛い…ぷっくらしていてピンク色。もうこんなに立って俺を感じてる。おいしそう」
シャツのボタンを全部外されて俺の乳首を見るなり変なことを言ってくる。前にいる奴は誰だ…?そう、思うほど今までの矢沢とは違った。様子はすっかりかわってここまで人は変貌するのかと俺は驚きと怖さでいっぱいいっぱいだった。
ビクっ!
すると、生温かい感触に襲われる。ペロペロと舌を出して、矢沢は俺の乳首を舐めまわしていた。
「おいひ…ぃ…。ちゅ…っ。俺以外に触らさせるなよ」
「う゛ーっ!う…ンッ」
次に矢沢は、徐々に舌を上へと滑らせた。俺の鎖骨あたりにたどりつくとチクリと痛みがはしる。
「ちゃんと、マーキングしとかないとね」
俺の悲痛の声も耳に入っていないのか、ふふっと笑った。
「そろそろここも触ってほしいのかな?」
矢沢は怪しく笑って、嫌らしい手つきでパンツの上から俺のソコを上から揉みはじめる。
「はぁ…っあッ、ン!」
なんとも言えない衝撃が襲う。
ビクビクと震える。
「…生で触ってほしい?じゃあ、脱がせてあげる」
「や、やだ…っやめろ、さわるなっ!」
これ以上やるとおかしくなる。でも呆気なくパンツを脱がされた。
う、うそだろ…。
羞恥で耐えられないし、涙が溢れてくる。
「可愛い。少し勃ってるね…小さくてここもピンクでかわいい。はぁっ…俺を感じてるんだ。湊…湊…っ」
上下にしごく。
なんで、俺がこんなことされなきゃいけないんだ…っ。抵抗してもすぐに阻止される。
されるがまま状態。
「湊に触って…っ、俺、夢を見てるみたいだ」
矢沢は気持ち良さそうな顔をして俺のソレを扱いながら言う。
本当夢であってほしい。
「はぁ…ぁ、…ふぁっ…ンッ」
だんだんとソコが熱を帯びてくる。
「はぁはぁ…っ、湊可愛い…好きだ大丈夫だ愛してるよ…っ」
や、やめろ…やめろっやめろやめろ!!
「――湊、ごめん…もう俺…我慢できない…俺のいれていい?」
「はぁっ…ん…な、に言って…あンッ!!!」
ズブッー
矢沢の指が俺の穴の中に侵入してきた。
「…ッ!…ぁ…ッ」
なんとも言えない痛みが襲う。
声にならない。
超、いてぇ…っ!!いれていい?と言う言葉がどういう意味なのか理解した。それと同時にとてつもない恐怖でいっぱいになる。
「大丈夫。安心して?初めてだから優しくする」
「や、…やめ…ろ…っ」
痛い。痛い。何が優しくするだ。
それに気持ち悪いんだよ。
男のケツの穴に指突っ込んで何がいいんだ。
俺は気持ち悪さと解放されたいとで変な気分だった。
「ぁッ…んン!」
急な違和感に痛み。
「どう?今、3本いれいたよ。あぁ湊の声可愛い…っ」
「お、…おまえ…きも…い …っ!ぬ、…抜け…よ…ン」
早く、その指を抜いてくれ。頭がまわらなくなる。
「――きもいだって?じゃあ、今から本物をあげるね」
ふふ、と笑う。そう恐ろしい言葉が聞こえた瞬間、固まったがすぐにでも逃げたくなった。
「うわぁ…っ!はン…ぁッ」
急に指を抜かれて腰に力が入らない。それでも、なんとか逃げ出そうと這っていこうするが止められる。
「そんな抵抗しないで。これからもっと気持ちよくしてあげるからさ」
「ぉ…ねがい…っ…やめ…て」
震える声。頬には涙が伝っている。
「ああ、また泣いて本当可愛い。もっと泣いて。はぁ…なんで湊はそんなに可愛いのかな。俺、もう我慢ができないよ」
矢沢は、ベルトをカチカチしながらファスナーをおろしズボンも下げて床に放り投げた。奴のボクサーパンツから主張したソレを見ると、気持ち悪さが増した。
「や、めろ…って…ッ」
これ以上、近づくなっ。
ベッドのシーツをぎゅっと掴む。
「怖がらなくていいよ」
「ひっ…」
矢沢の手が俺の頬に触れる。怖くて咄嗟に目をつぶってしまう。
ドサッー
「え…っ、うあっ!」
急に俺をうつぶせにさせて、ケツだけあげられた。
恥ずかしすぎる格好。
「もうちょっと足開こうか」
「い、いや…だぁッ!」
そう言っているのに俺の言葉が耳に入らないのか、勝手に、無理矢理開かせる。
うぅ…。
男にこんなことされるなんてなんで。
なんで俺なんだよ…っ。
「湊。俺の普通よりデカイけど、全部飲み込んでね」
「や、やめろ…ッ」
左目で、恐る恐る後ろを向くと矢沢がもうすでにボクサーパンツを脱いでいた。
うそ、だろ…。
「うッンン!ふぅ…ンッ‥はぁ‥ァ…ャア」
手で口を覆う事も出来ない俺は、自分とは思えない嫌になるほど鼻にかかる甘ったるい声がだだ漏れになっていた。
さっき、指を突っ込まれたからその余韻がまだ残っているせいだ。
「ヤバい。湊が可愛い過ぎるから…俺もこんな」
太モモに矢沢のソレを押しつけられた。
硬く太いそれは濡れていた。
矢沢はそのままソレを
スライドさせ、俺の穴にあてがった……
まさか…!
「ャ、止めろッ…それだけは」
この一線は男として死守したい。
「無理だよ、湊の中に俺のを入れるよ。俺今まで我慢してきたんだ。今さらやめてなんて言われても止められないよ。最後までする。…あぁ、夢にまでみた湊と…やっと湊と一つになれる…!!愛しい湊と一つに…ヤバイよ、想像しただけでイッちゃいそうなんたけど」
グッ!と勢いよく先端を入れられ一気に貫かれた。
う、そだと言ってくれ。
「ぅ…ァあっ…ッ!!!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
気持ち悪い!!
奴のがどんどん奥まで入ってくる。
「くッ…!ハァハァ凄い‥湊、凄い!湊の中凄い気持ち良いッ!…これが湊の中か…やっと一つになれた…ッ…今度は一緒にイこうね」
矢沢が中を探るようにゆっくりと動きだした。
散々、指で解かされたため、滑りやすくなっている。圧迫感で苦しくて、奴のものが入ってる感覚がハッキリ分かった。すると、矢沢が萎えかけていた俺のものを前に手を伸ばして扱き出した。それと同時に腰の打ちつけが速度を増してきて、俺は、身体をガクガクと揺すぶられる。
「あ…っァ…ンんッ!」
次は、うつぶせからお互いの顔が見れる仰向けにさせられた。
っ!そのせいで、矢沢と俺の接合している部分が丸見えだった。
「どう?俺たち、今繋がって一つになっているんだよ」
「ふ…ァあ…っんン…ッああん」
矢沢は気持ち良さそうな顔をして腰を動かすことをやめない。それどころか増すばかりだ。
「ふン…っ」
俺と矢沢しかいない部屋。
お互いの激しい吐息と、もの同士がぶつかり合う音、それに比例して軋むベッドと響く粘着質っぽい水の音。
矢沢が少し角度を変えて、
俺の足を上げたその時―
「…ヒャッ!?」
ビビッと電流が流れたような激しい快感。
衝撃がはしる。
「ココ?」
矢沢はわざとソコを狙って打ち付けてきた。
「だめ…ゃ…ァッ…ぁン…ッ!」
泣きながら首を振ってもがき喘ぐことしか出来ない。
「湊エロ…ッ。凄くいいよ。…ん…気持ち…イ?…俺…もう」
パンパンッ!と強く打ち付けてきた。
「んぅ!!ダメ…ッぁ…ひゃあッッん!!」
「…ンッ!」
ビュッ
ドュッ!
ビクビクッとなって、何もかもがはじけた。
ドクドクと中に注がれる感覚に身体が震えた。
「ハァ…ぁッ」
「はぁはぁ…気持ちよかったよ…湊はどうだった?」
そう言って、俺の方に向かって倒れてきた。
お互いの呼吸の荒さが行為の激しさを物語る。
…どうだった、だと?気持ちよくなれるはずなんかない。気持ち悪いだけだ。でも、それをまた正直に言ってコイツの気分を悪くさせたら、じゃあもう一回しようとか言いかねない。だから、スルーだ。
「はぁ、おい…もう抜け…!…ぁッ」
いまだに繋がったままの状態。
全身の気怠さと‥‥‥口元の矢沢の唾液。
不快でしかない。
「ふふっ、大丈夫?一生このままの方がいいけど仕方ないよね。…あ、そうだ!」
何かを思い出した矢沢はやっと接合していた部分から抜いてくれた。
そしてベッドから降りるとすぐに戻ってきた。
俺は、立とうとしたがガクガクなり、腰が痛くて起き上がることすらできなかった。
――カシャッ
「はっ!?」
今のってシャッター音か?
俺が驚いて矢沢を見ると、ニヤニヤとしながら携帯を俺に向けていて シャッター音を響かせた。
「ヤッ!止めろッ!!撮るなッ!」
こいつ…なにやってんだ?
なぜ、写真を…っ。
頭が真っ白になった。
「どうして?とても綺麗だよ、こんなに色っぽくてエロい湊を残さないと勿体ないじゃん。それに俺たちの初記念にさ」
「ふ、ふざけんな…っ。それで、脅すつもりなんだろ!!」
今すぐ、その写したやつを消去してもらわないと困る。
「ははっ、バレたか。湊はすぐわかっちゃうね」
「し、死ね!!」
そう言った瞬間、矢沢の表情がだんだん険しくなる。
「…おい、口が悪いぞ?さっきまで俺ので可愛く啼いていたくせにいい度胸だな?まだそう言える体力が残っていたのか?」
「や、矢沢…?ま、待って…や、やめ…っ」
まずい怒らせた、と思ったけどもう遅い。
足を広げられ矢沢が俺の中に出したアレが流れ出る様子を、濃いキスされてるところを俺のものを触って弄んでいるのを………羞恥に歪む泣き顔だって何枚も撮られた。
「やだ!撮るなッ…!」
っ!そして気づいてしまった。
矢沢のソレが勃起している事に。
「せっかくだし、繋ってるところも撮ろうよ」
そういうのを簡単に言い、携帯片手に俺の左乳首を摘みながら、何の悪びれもなく微笑んだ。
胸を舐められ、乳首を噛まれては吸われ、舌で押し潰される。
全身いたる所にキスをされ、赤い跡…所謂キスマークが俺の身体に散らばる。それも凄い数だ。
体勢をいろいろ変えられ再び挿入され犯された。
もちろん、それまでの間ずっと無理矢理撮影されていて、接合部や俺の勃起したソレ、イくときの顔まで…‥全てだ。
死にたくなった。
なんで、俺なんだと思った。
その日、俺は気を失うまで矢沢に犯され続けた。今までより最悪の日々が幕を開けたのだった。
あー、はい。皆さん、こんにちは。
俺、世界一ついていない男。名前は佐藤 湊。
ケツ掘られて、脱・処女とか何。まだ童貞卒業してないのに。笑えない。
男に後ろの穴、開発されちまった。ショックすぎるだろ。
あー、皆さんが聞きたいことはそういうことじゃないですよね。あの後、どうなったかってことですよね。
はぁ…、察してくれ。
気絶した俺を風呂に入れて、シーツも洗濯に出してくれたみたいだ。
まあ、起きたときには体は綺麗になって服を着ていて、変な置き手紙があった。
それはもう気持ち悪い内容だった。
―――――――――
俺の湊へ
これを読んでいる頃には
起きているかな?
ごめんね。
何も言わずに先に帰っちゃって。
俺がいなくて寂しいよね?
大丈夫。また連絡するから。
あと、隅々まで
湊の体を綺麗にしたからね。
湊…
もう俺のもの。
―――――――――
これほど、気持ち悪い置き手紙をもらったのは初めてだ。すぐにゴミ箱に捨てたけど。
次の日が土日だったからよかったけど…
あ、もちろんバイトは土日とも休んだ。
腰が痛くてまともに動けないし、バイト先に行けばアイツに会う可能性高いからという理由で休んだ。
そして、休みもあけて今は学校。保健室でサボり中。
だって、教室にいけばアイツがいるし嫌でも顔を見ないといけない。
それが嫌で、滅多にサボらない俺がサボってしまった。
保健室の先生には体調が悪いと伝えて、ベッドの上に横になった。
―――――――
―――――
―――
……。
「………と」
「お、……なと」
う…んっ。なんか、うるさい…。
「おい、湊!」
「ん…?」
まだ眠っていたいと思ったけど目を開けた瞬間、眠気がぶっ飛んだ。
「おはよう、湊」
「………」
もう、やだ。
目覚めたら、奴がいた。俺は一瞬にして表情を無くした。
「あんま可愛い顔して寝るなよ。歯止めがきかなくなって襲っちまうところだっただろ。それにもし俺以外の奴が湊のそんな可愛い顔見たら、だーめだから」
「………」
何言ってんだ、このバカは。
「あれ?まだ寝惚けてる?はは、もうしょうがないな」
チュッ
「は!?」
今、おでこにキスしやがった!?
「やっと、反応したか。…それより。なんで連絡したのに返事を返さない?」
にっこりと表情を崩さないまま、低い声でそんなことを言った。
あ、はぁ、そ、そうでした…。土日からずっとメールや着信があったのは知っていたけど返す気が起こらずそのままにしていた。最悪だよ。
「聞いてる?」
ギクッ
「き、聞いてるけど…それが何」
「何?ふざけんな。この俺を無視するほど大事な用事があったの?もしかして浮気か?あ?」
「ちょ、なんでそうなる」
「あーぁ、もう“あれ”バラまいちゃおうかな」
「あれ…?」
一体なんだよ…。
「もしかして、覚えてないの?はぁ…湊は本当危機感ないよね」
矢沢は、ため息を吐きながら自分の携帯を出して操作している。俺、結構重要なことを忘れてる気がする。矢沢は、携帯の画面を見てニヤリと笑う。
「はい、“コレ”」
画面を見せてくる。
「ん?…はっ!?」
目を瞬かせる。まじ、コイツ変態。最悪。
これ以上映し出されているそれを見ていたくなくて視線をそらす。
あの時の行為の写真が何枚もズラーとあって吐き気がした。せっかく、忘れたかった記憶を…完全によみがえってしまった。
「どう?結構いい感じに撮れてるでしょ」
矢沢はまた画面を眺めてニヤニヤしている。こいつ、絶対異常者だよ。悪趣味。
「すぐに消去しろ。まじ、お前最悪……っむぐ」
「おい、一体誰に口聞いてんだ?お前は一生俺に従っていればいいんだよ」
「…い、いひゃい…ッ」
頬を押さえつけられ痛い。くそッ。矢沢の野郎、何様だ!
「あ?その目はなんだよ。ご主人様に逆らう気か?」
「……ふ、ざけやがって!」
「ふーん。いいんだ。あれバラまいても」
「…っ!そ、それは」
冗談には聞こえない恐ろしさ。コイツならやりかねない。
人の痛いところをつきやがって。死んだらコイツ、ソッコー地獄だろ。
皆がわからなくても俺はわかる。
「これでわかった?湊は俺のものなんだよ」
いやいや、わかるかよ。知らんがな。全く、クソ沢っぷりを見せつけてくるな。
「また無視か?あ、言っとくけど俺、顔広いから皆の連絡先知ってるよ?」
「…~っ」
何なんだよ、まじ。確かに、あの俺の写真はやばいやつ。それを他の人にみられると非常に困る。
生きていけない。それか、地球から出ていかないといけない。
「バラまいてほしくなかったら大人しく俺の言うこと聞け」
「……」
「はい、は?」
「……………………………はい」
「聞こえないけど?」
「はいはい!!わかりました!聞けばいいんだろ!聞けば!!」
もうヤケになった。
「よし。いい子いい子」
よしよしと俺の頭を撫でる。その瞬間、鳥肌が立つ。
「さ、触るなっ!」
奴の手をすぐさま、はたく。
「いいの?皆にあれ送っても」
「…っ!わ、悪かったな」
俺はそれだけ言ってすぐにベッドからおりて教室に戻った。
残された保健室で矢沢が一人ボソッと
「……誰が湊の乱れてる姿を他の野郎に見せるかよ」
なんて呟いていたとは知らない。
授業は体育。さすがに体育の授業はサボれない。だって、一回休みごとに追加補習があるから。
「湊、お前、体育見学してろ」
「はぁ!?な、なんでだよ!!」
着替えを持って更衣室に入ろうとした時、矢沢が入り口から出てきて来て俺の前に立ち止まりそう言った。
いくらなんでも脅しのあれがあるからってそれは無理だぜ。
「前から思っていたんだけどさ、お前の白くて細い手足、そして華奢なラインが他の野郎の視線に入るのが嫌でしょうがなかった。だから見学な」
「なぜ、そうなる」
「湊は俺のこと好きだろ?言うこと聞けよ」
「いや、別に」
嫌いだ、大バカ野郎。
「じゃあ、早く俺を好きになれよ。湊の全て俺のものにしたい。支配したいから……はぁはぁ」
ゾワッー
い、今、鳥肌たったわ。
「きも沢、クソ沢、バカ沢」
「好き沢って言えよ」
「………」
なにこの、遊びは。好き沢とか……自分で言っててこいつは恥ずかしくないのか。それにこの前まで俺を散々いじめていたくせに何の風の吹きまわしだ。
これも新手のいじめなのか?多分そうだな。
そして、俺は周りをキョロキョロと誰も聞いてないか確認する。
ふぅ。
…良かった誰もいない。
「じゃあ、俺着替えてくるわ」
俺はそれだけ言ってスタスタと更衣室に入った。
「み、湊!!おい、待て」
「あ、大地ー、早く来いよー」
矢沢はすぐさま呼ばれ、連れていかれた。助かった。早く着替えなくては…!
―――――
―――
……。
体育着に着替えて見ると…なんだこれ。
無数の赤い痕。鎖骨や、足、よく見たら鎖骨にそれが散らばっていた。
…そうだった。あの時アイツにつけられたやつだ。
まだ消えてなかったのかよ…最悪。
くそ。あぁ、全部アイツの思い通りってことかよ!!!
腹が立って、怒りメーターがMAXになった。
「―――あれ?参加しないの」
「黙れ」
壁に凭れて座っている所に矢沢が近づいてきた。何が参加しないの?だよ。もし、俺が神様なら矢沢を即滅びさせる。
「あ、やっぱり何だかんだ言いつつ、言うこときくじゃん。嫌よ嫌よも好きのうちってやつか」
はい、それー。ポジティブすぎだから。
「黙っちゃって、照れてるの?」
はい、そこー!勘違い乙!!見てください、この鳥肌。照れるどころか拒絶反応でまくりですけどー。
「矢沢、お前少し黙れ」
「俺たちキスした仲じゃん。でもこんな美形にキスされたらドキドキするでしょ?」
「はいそれー。残念。お前、現実見ような!俺、男!男のキスでドキドキなんかするか」
※ただし、イケメンに限る。も通用しねぇからな。
「それ本当か?じゃあ、今キスしてみようか」
「い、いいいや!まじ、そんなんいいから!」
「いいから、いいから」
「お願い、まじやめてお願いお願いお願いお願い」
…こいつ、突然だけどスキンシップ激しくね!?
「ちょ、矢沢…ここ、学校」
「じゃあ、どこならいいの。待てない」
「待てないって…どこもだめに決まってるだろ」
お互いの顔の距離が近くなっていく。
キーンコーンカーンコーン
「チッ」
矢沢は舌打ちをする。
「た、助かった…」
チャイムが鳴り、矢沢はものすごく不機嫌な顔になる。
「邪魔が入った。後で、チャイム破壊しとくか」
隣で恐ろしい計画をしている。
チャイムくん大丈夫。破壊されてもすぐ助けてあげるから。そう、これが恩返し。
なんと、奇妙なことを考えているうちに体育担当の先生が来て点呼をとる。
「よーし、皆早く並べー」
その声とともに皆、順番に整列していく。
「あ、今日の見学者は佐藤と高瀬の二人か」
へぇー、俺以外に見学するやついたんだな。補習があるって皆滅多に休まないのに。
「じゃあ、皆は今やっている競技を先に進めてやっていなさい。…佐藤、高瀬お前ら二人はちょっと来い」
うっ…。絶対、怒られるわコレ。しぶしぶ、先生の前に行く。
「お前ら、やる気あんのか?体育着は?」
「あ、俺は朝から体調悪くて…」
俺は少しキツそうに演じた。
「あぁそういえば、佐藤は保健室に行っていたって聞いてたな。高瀬、お前は?」
「俺は、忘れちゃいました」
ははっと苦笑いの高瀬っていう奴。見た目は少しチャラくて制服を着崩している。顔は、まあ、女子にはモテそうな感じ。
「ほぅ、忘れるとはいい度胸だな」
あ、この鬼みたいな先生、忘れ物には厳しい先生だった。
「高瀬、お前は罰として体育館のまわりを佐藤をおぶって5周」
「え?俺を…!?」
急な先生の案に驚いた。
「佐藤は何もしなくていい。高瀬いいな?」
「はーい」
ちょ、待って。
男におぶられるとか俺の方が罰ゲーム受けてるみたいじゃねぇか!!
「はい、佐藤」
高瀬は下に屈んでもう準備している。
うそだろ…
「本気でやるの?」
てか、俺が嫌なんだけど。
「だって、あの先生怖いじゃん?ほら、見てよこっちを睨んでる。よっぽど休んだことが気に食わなかったみたい」
高瀬は、あれあれと指をさしながら言う。
「でも、俺…背負われたくないていうかさ…」
本当まじで苦痛なんだけど。
「別に誰も競技に集中して見てないって。ほら、早く乗って」
「え、でも」
「じゃあ、抱っこがいいわけ?」
「いやいや余計やだ」
「じゃあ早く乗ってよ。俺も早く終わらせたいし」
う、うーん。どうしようか。
どうもやる気になれないがここで俺が断ればあの先生に怒られるしなー…。
5周…早く終わらせろよ、高瀬くん。
「わ、わかった。今、乗るから」
俺はゆっくりと高瀬の肩に手をおき、そのまま背中に体を預けた。別に皆、競技に夢中だしいいか。
「よっと」
「う、わっ!」
急に立ち上がるのでびっくりする。俺は落ちないようにぎゅっと高瀬にしがみつく。
「佐藤、お前軽すぎ」
重くないかって聞こうとしたそばから、はっきりそう言われると男からしたら嬉しくない。
…なんか、プライドが傷つけられた気がする。
――――――
――――
………。
「お前、制服なのによくあんなに走れたな。俺少し酔った」
やっと地獄の5周が終わり、今は体育館の隅で休憩中。
「別に。元から運動とか得意だし」
「……」
うわ、コイツさらっと言いやがった。別にどうでもいいけど。
なんか、慣れないな。高校入ってあんまり、人と話したことないから。
「でも、意外だったな」
「ん?なにが」
意外って?
「佐藤って、気が弱い性格だと思ったけど結構男前だったんだな」
も、もしかして褒められてる…?
うそ、高瀬いい奴じゃん。
「あ、ありがと…」
そう言って、顔を横にそらす。
初めて言われたよ!!男前だなんて。ちょっと照れるわ。
「…今の反則っ」
高瀬は顔を赤らめて口を手で覆っている。
「どうした?」
「何でもない。なぁ、佐藤」
「んー?」
「髪触っていいか?」
「髪?別にいいけど」
どうぞ、と言って頭を傾ける。
「佐藤って、髪綺麗だよな。なんか手入れとかしてんの?」
「いや、特にしてないけど」
「うそ、まじで?こんな綺麗な黒髪初めてみた」
「はは、大袈裟だって。褒めてもなんも出ないけど」
「佐藤って、面白いな。あ、俺高瀬しょう。しょうって呼んでいいよ 」
「いいの?」
「もちろん。ぜひ呼んで」
「じゃあ、俺も湊でいいから」
「おう、よろしくな湊」
「うん。よろしく」
それから他愛もない会話していて、ふと、しょうがあることを言った。
「湊って、いつも一人だったのに、なんかやけに矢沢と仲いいよな」
「え?」
アイツと俺が…?
「俺、前から湊に話しかけたいなとか思っていたけど矢沢が湊の隣にいたから声かけられなかった」
「そ、それ本当?」
…こんな俺と話したかった?
しかも矢沢が隣にいたせいで声かけられなかったとか俺が友達できないのも矢沢のせいだったのか!?
「うん。あ、ちょっとここでは少し話しにくいからトイレに行ってもいい?」
「いいけど」
しょうがなんか、話したいことがあるからトイレに行こうと言う。
トイレの入り口の方まで来た。二人とも前の鏡に映ってる。
「あっ…しょう、話って?」
「えっと、じ、実はさ…」
しょうは、言いにくそうに言葉を濁らせてきた。ということは、本当に言いづらいことなんだろう。俺、なんか文句とか言われたりしないよな…?少し心配になる。
「お、俺、いつも湊を目で追っていたんだ…」
「…?」
…俺を目で追っていた?ど、どういうことだ?
すると急にギュっと、しょうが俺の腕を掴む。
「なんで…俺じゃないのって何度も思った」
ん?
「ちょ、ちょっと待って…ど、どういうこと?」
話がよく見えないんですけど。頭上にはハテナマークが浮かぶ。
「いつも隣にはアイツがいた。俺が入る隙間もないくらい」
「………」
うん。何言ってんだ。とりあえず、最後まで話を聞こう。
も、もしかしたら高校入って以来の『お、俺と友達にならねぇ?』の誘いかもしれない。俺はドキドキしながらそれを待つ。
すると、しょうは何かを決意した顔付きになった。やっぱり、これは……っ!!
「俺、湊が好きなんだ。だから恋人になって下さい」
「おお、恋人ね!いい………え?」
今、コイツなんて言った?友達になろうって言うのを期待してたのに予想もしなかった言葉を発した。
「へ、返事はいつでもいいからさ…」
「は?ちょ、今のは冗談だよね?」
「いや本気だけど?湊を狙っている奴多いから、矢沢のいない今がチャンスだと思って告白した」
真剣な顔。
嘘をついているようには見えない。
へぇー、俺が好きなんだ…。頬を強くつねった。
「…痛い」
これ、夢じゃないね。
「そんなにつねったら痛いよ」
「っ!」
しょうは可笑しそうに笑いながら俺の頬に優しく手を添える。
「今日初めて話せてよかった。しかも急に告白してごめん。…でも湊を見るたびにムラムラしてたまらなくなる」
「え」
「ちょっとだけでいいからキスしていいかな?」
「いや、ダメだろ」
俺はびっくりするくらい冷静に突っ込んだ。しょうの顔を見れば頬を赤く染めてハァハァ言っている。人の話聞いてるのか?さっきのしょうはどこに行ったと思うほどの豹変ぶりに驚かされる。
…コイツも、ただの変態じゃねぇか。
「湊、目閉じて?」
「ちょ、」
困る。そういうの困るから。お願いごめん。俺なんかした?
いつの間にか壁に追いやられて身動き取れないんですけど!!
「間近で見るとますますそそる」
「ま、待て!はやまるな!は、話せばわかる!!話せばわかるから!!」
必死に説得しようとする。
矢沢の他に俺とそういうことしたいってやつがいるなんて。
うわっ。やだやだ。やめろ!!
無理だ。俺にそんな気をもたないで、頼むから。
その前に男にモテてどうする。頭の中、混乱してパニックに陥っている。
その瞬間も徐々にしょうの顔が近づいてくる。
「話すのはキスしたあとでもいいじゃん」
「………」
この人、言葉通じねぇーよ。
俺は怖くなって震えてしまう。
「…震えてる。可愛い!実は俺、自分で言うのもなんだけどドがつくほどのSなんだ。…好きな子をものすごく泣かせたくなる性格なんだよ」
「……っ!」
満面の笑みを浮かべる高瀬氏。
エ、エス…?サド、サディスティックっていうあのS?いや、そう考えている時間はなさそうだ。
「しょ、しょう…?まず冷静になろうよ」
「ごめんね。湊を前にして冷静になんかいられないよ」
俺の言葉なんてコイツには伝わらないみたいだ。平然とした顔で今も俺の顔に近づいている。
「――……おーい、湊ー」
遠くの方で、俺を呼ぶ声がした。
いつもだったら、この声を聞くだけで嫌だけど今日だけは神様の声に聞こえた。
「や、矢ざ…むっ!?」
助けてもらおうと大声を出そうとするがすぐにしょうの手で覆われる。
「静かに。ここで邪魔されたらチャンスはもうない」
「うっ…ふん!」
俺の口元を押さえながらトイレの個室へと連れていく。
ま、待って…!嘘だろ。藻掻こうと、足を動かそうとするが祥の馬鹿力のせいで俺は呆気なく、一緒に個室に入り閉じ込められた。
「んん!っ」
「…――静かに。じゃないと今ここで犯す」
恐ろしいことを口にする。に、ににに二度と男に犯されたくねぇよ!!恐怖感が一気に全身へと伝わる。
「……――湊、どこにいる?返事しろ」
矢沢の声が近くまで聞こえてきた。
お願い。矢沢でもいい。誰でもいいから俺を助けてくれ。強く願うが現実はそうあまくはなかった。
「さっき確かにここに入って行ったのになぁ…おかしいな」
その矢沢の声が徐々に遠退いていく。ま、待って!待ってくれよ矢沢!!もう声は聞こえない。う、嘘だろ…最後の頼みの綱が………。
あのクソ沢!!お前はここまで役立たずなのか!お前に少しの希望を望んだ俺が馬鹿だった。と後悔しているそばから怪しげな光を放つしょうの顔が。
「やっと、消えてくれたみたい。あぁ、俺と湊の二人だけの空間。トイレの個室っていい“穴場”だね」
ふふっと、奇妙な笑みを浮かべ笑い出す。しょうとは対照的に笑えない俺。
「しょ、しょう…?本当にお前変だよ…」
「変?ふふっ、湊が言うならそうかもね」
コイツ……遠回しに無理だって言っているのに気づかないのか。
もういい。正直に言うか。矢沢と違って話せばわかるやつだろう。
「そ、その…俺とキスしたって何もないよ…?」
精一杯の声を振り絞って言った。
その前に俺の気持ちを考えろよ。なんて言ったらキレられそうだし…。
「なーに言ってんの。好きな子とのキスは特別なんだって」
……。結局コイツも矢沢と同じか。話しても無駄か。
「へ、へぇ…。で、でも俺しょうのことそんな目で見てないし」
刺激しないように、オブラートに包んだ。
「……ふーん。やっぱり、矢沢のことが好きなんだ」
そう言ったしょうの目は苛立ちに溢れていた。
え…!?オブラートに包んで言ったのに逆効果だったのか!?
しかも俺が矢沢を好き…?
「はぁ?それは断じてありえない!!」
ないないないと、首を振る。俺をホモにしないでくれ。お前らの仲間にするな。
「それ本当?」
「ほ、ほほ本当だってば!」
なんか、誤解されるの嫌なんだけど。矢沢は敵だ。
「じゃあ、誰か好きな人でもいるの?」
は?あ、す、好きな人…?
「いや、いないけど…」
「じゃあ、大丈夫だね」
「いや、よくないから!」
何笑顔で大丈夫とか言ってんだよ!!
こいつ、神経あるのか?
正気じゃねぇな。どこをどう考えて大丈夫に至ったんだよ。
「よし、キスしよっか」
「え、」
だから、なぜそうなる?不思議でたまらんわ。うわっ。もうなんか、ガッチリ俺の顔を固定して離さないようにしてるし!徐々に頬を赤く染めたしょうが近づいてくる。余裕がなくなる俺。う、うそだろ…や、やめろ…む、ムリ!!あと、数センチの所で俺はぎゅっと目を閉じる。
バッシャーン
ぽたぽた
「………え」
唇には何の感触も感じず目を開けると、そこにはずぶ濡れのしょう。そして、俺も濡れている。冷たっ!!!な、なにこれ、み、水……?上から水が大量に降ってきたみたいだ。
「――……おい、そこの二人。なにしてんだ」
頭上から低い声が響き渡る。上を見上げれば、バケツを持つ矢沢の姿があった。…どこぞの巨人みたいな現れ方をするな。
だけど、そういえばさっき脚立があったなと思い出した。
「あ、これはこれは矢沢じゃねぇか。…なに?こっちはお取り込み中なんだけど」
しょうは挑発染みたことを言う。
「お取り込み中…?ふざけんな。どう見ても湊が嫌がってんじゃねぇか」
矢沢…お前。この瞬間だけ、俺の中の矢沢は結構少し空気の読めるいい奴に昇格した。
「い、嫌がってないよな?湊」
少し焦ったように聞いてくる。俺に振るなよ。
「ご、ごめん…。い、嫌かも…?」
俺はなるべく傷つけないように配慮して言った。実際、現実はものすごく嫌だけどね。でもその途端にしょうは表情を無くす。
「う、…うそだ!!うそだうそだ!!!」
狂ったようにうそだ、うそだと喚き出した。はぁ…こっちが嘘だろって感じだわ。俺は呆れて何も言葉が出てこない。
「ほら、俺の言った通りじゃねぇか」
フッと笑ってなぜか誇らしげな矢沢。
「あぁ、わかった。矢沢に無理矢理言わされてるんだな!?俺にはわかるぞ!!」
「……。」
ダメだ。こいつ。てか、あんま俺の体を揺らさないで。
「おい、お前頭イカれてんじゃねぇの?俺の湊に気安く触んなよ」
矢沢はそう言ってあるものをしょうの頭に被せた。
「うわっ!な、なんだこれ!?」
目の前には、トイレの詰まりをとる道具…あれだ、すぽすぽやるヤツを頭に被せられている。ひとこと言っていい…?
……汚っ!
「み、湊!ちょ、ちょっと待って!」
俺は、今のうちに個室のカギを開け、外に出た。しょうの声は聞こえなかったことにしよう。だって、あのままあそこにいたら何されるかわからないし第一、あれを被ったやつのそばにいたくない。
矢沢は脚立から降りると俺の隣に来た。
「湊…大丈夫か?お前まで濡らせてしまって悪かった。ほら、これ俺のカーディガン」
「え、あ、ありがと…」
戸惑いながらも受け取った。えっと…こ、こいつ本当にあの矢沢?妙に優しい。俺にカーディガン渡すとか何か企んでいるのか?
まあ、お前のせいで濡れたのは本当のことだけど…。
で、でもなんかさ、急にこんなことされたら調子が狂うというか…。
…はっ。
て、俺何考えてんの!!相手はクソ沢!俺のストーカー!変態野郎!!
矢沢が優しいとかそんな縁起でもないこと考えるなっ。散れ!散れ散れ!
「湊、顔赤いけど大丈夫か?」
「べ、べべべ別に赤くなんかなってねぇよ!!見るなっ」
急に恥ずかしくなり、両手で顔を隠した。
う、うわぁ~…何、顔赤くなってんだよ!!キモいじゃん!!
ああ…マジ、俺の馬鹿野郎…っ。
「おい!よくも俺にあんなものを…っ!」
俺が顔を隠している所でしょうは、やっとあれを取って解放されたみたいだ。怒りを矢沢に向けている。そりゃあ、許せないよな。あんなものを被せられて。
「…てめぇみたいな雑魚が湊に近づくんじゃねぇよ」
すると同時に、矢沢は俺を隠すように背中の方に移動させた。
「や、やっぱりお前ら付き合ってたのかよ!!」
「うん、そうだよ。だから勝手に手出さないでくれる?俺以外のやつがさ、こいつに触れるの見るとすっげぇ腹立つから」
「ちょ、矢沢!お、お前なに言って…んぐっ」
何でたらめなことをペラペラと!と言うつもりだったけど口を手で塞がれて喋ることができない。
「湊は黙ってろ。俺があとは何とかするから安心してもいい」
「はっ…?」
いやいやいや!!お前に任せるだけで安心できねぇよ。大問題。絶対、変なこと言うに決まってるし!うん、それ確実だ。何を思って安心しろなのか意味がわからない。
「お前、湊にセクハラした容疑で通報するから」
「な、なに!?」
矢沢はポケットから携帯を出して110とある番号が書かれた画面を見せる。
「ま、待って…嘘だろ!?」
「これが冗談に見えるか?」
そう言う矢沢はすでに携帯を耳の方に構えていた。
いや、待って矢沢。お前はしょう以上の容疑で逮捕されるぞ。セクハラ以上のことをしたからな。うん。あれはレイプだ。
「じゃあ、早く消えろよ」
「クソッ。覚えてろ!」
しょうは矢沢を睨んで走ってその場を立ち去った。
「…さてと。湊」
ビクッ
「な、なに…」
助かったと思ったが危険はまだ継続中であった。
「何、のこのこアイツについて行ってんの?馬鹿なの?この危機感なし」
「だ、だって…しょうに話があるって言われて」
矢沢の怖さの迫力にやられる。
「それで告白されたんだろ?はぁ…許せない」
「な、なんで知ってんの…」
「そりゃあ、わかるよ。それより聞きたいことがあるんだけど」
「き、聞きたいこと?なんだよ」
「何で、アイツのこと名前呼びしてんの?俺は、苗字なのに」
「え?」
「小さいと思うけど、それだけで俺妬くから」
「意味がわからな…んンッ!」
口が塞がれる。
息が苦しくなり、口を少し開けたら奴の舌が入ってきて気持ち悪くなった。何度も角度をかえて後頭部も押さえつけられて俺を貪るような濃厚なキスをした。そして、数分後お互いの唾液が絡み合って糸が引いて離れた。
「はぁはぁ…ぁっ」
俺は腰が抜けて地面に尻がつく。急になにしやがる…っ。
「…感じた?いい子だ。そうやって俺だけを感じていればいいんだ」
矢沢もしゃがんで俺の目線の位置まで来るとまたキスをした。
「んっ…ぁ」
自然と声が漏れてしまう。
「声我慢しなくていいよ。湊の可愛い声もっと聞きたいから」
「…ンんっ!ん…」
トイレの中で響く俺の掠れた声と荒い吐息。
「俺の名前呼んでよ」
俺の髪を耳にかけながらそう言った。
「や、矢沢…はぁっ」
「違うでしょ。大地って呼んで」
俺の頬やおでこ、瞼などにリップ音を鳴らしながらキスを落としていく。
「ほら、早く」
「…うっ…だ、大地…っん」
「……」
無言のまま見つめてくる。
「ど、どうした…?」
「…やべ。結構キタ」
矢沢は自分で言わせたくせに何そんな嬉しそうな顔してんだ。
「湊、どうしよう…。俺今、興奮してる」
「えっ」
俺は徐々に顔が青ざめていく。発情期か。
「なぁ、湊お前可愛いな。どう?俺と付き合わね?」
何、そのキラキラ笑顔。
「急になに…。それってもしかして口説いてんの」
「そうだよ。だって愛のあるセックスしたいじゃん」
「ちょ、おまっ。セッ…って」
聞いた俺がバカだった。 いや、こいつに出会った時点でアウトだな。
いまだ、トイレの中にいる。俺を口説いたかと思いきや、腕を引き寄せトイレの個室に閉じ込めた。
…しょうと同じやり方じゃん。
「またその顔して…。めちゃくちゃキスしたくなるじゃねぇか」
「ちょ、んっ」
それは一瞬のことだった。また俺は強引にキスされる。肩を押さえつけられ、唇を矢沢のそれで覆われた。 口内を犯される。 舌も奴のそれで絡まり、吸い付かれた。
「んっや…っばかっ」
「ぐっ」
俺は矢沢の顔を殴れば胸元を突き飛ばした。矢沢はよろけながらもトイレに座る形になるが体勢を直し、顔を押さえた。
「グーはないんじゃねぇか?グーは」
「キスした罰だ!ばーか!」
俺が何も手が出せないと思ったら大間違いだ。
「悪かったって。あぁ、湊の顔もペロペロしたくなってきた」
そう言うと矢沢は舌をペロっと出す。それを見たら今さっき絡んだ舌の感触を思 い出してしまい、顔が熱くなった。
「バ、バカじゃねぇの!?もう知らね!帰る」
俺は扉の鍵をガチャと開ける。
「じゃあ俺も」
「は?」
俺が出ていくと一緒に矢沢も出た。そして何やら俺についてくる。
「ついてくるな!」
「やーだね。せっかく人が個室プレイをしようと考えてたのに」
「ひ、一人でやってろ!!」
俺を巻き込むな馬鹿。
「へぇ…。俺にそんな口きいていいんだ。ふ~ん」
っ!もうコイツ~っ。わざとだろ!!
俺への嫌がらせが半端ない。
「…また俺を脅す気だろ!」
「さぁ?なんのことやら。ほら行くぞー」
とぼけた顔をして、俺の腕を引っ張る。
「ど、どこに!?」
「ん?保健室だよ保健室」
「ほ、保健室って…お前…まさかまた変なことする気じゃねぇだろな!?」
「違うよ。湊、今シャツびしょびしょじゃん。だから、かわりの貸してもらおうとしただけ」
「へ、へぇ…」
信じがたいけど。お前が言うと説得力ないんだよ。
「ふふ。期待した?」
「し、してねぇし!てか、何を!?」
「わかってくるくせに」
フッと馬鹿にしたように鼻で笑う。こいつ、バカじゃねぇの。でも、まぁ保健室に行くことにした。だって、矢沢から借りたカーディガンなんて着ていても肝心の中身が濡れていたら意味ないし。
保健室に着き、保健の先生からタオルとシャツを貸してもらって着替え終わった。
「あ、そういえば体育抜け出して来たんだろ。あの鬼先生に怒られるぞ」
俺の前から立ち去れと込めて言ったつもりだけど多分伝わってないと思う。
「別に気にしなくていいよ。こっちが大事だから」
「…なんで、そう言うのサラって言うかなー。きもい」
「そう言いつつも顔赤くしてるね…。照れてる?可愛いなー本当。写メりたい」
息を荒くてまた変なこと考えてる様子の矢沢。
「ったく、頭どうかしてるぞ!もうお前なんか知らん。それじゃあ、バイバイさようなら」
俺は手を振って早く授業に戻れと言った。
「何今の台詞っ!録音しとけばよかった。はぁ、もったいない。可愛いよ…可愛い可愛い湊の全部可愛い。仕草とかたまらん」
「お、お前…っ。絶対、馬鹿にしてるだろ」
何が可愛い可愛いだよ。ふざけんな。
男に可愛いとか言って馬鹿だろ。都会のやつの考えてることなんか理解できん。第一、可愛いなんて言われても喜ぶ男とかいないだろ。普通に考えて嬉しくないしな。しかも仕草がたまらんって日本語の使い方合ってるか?矢沢と話すだけで頭が痛くなる。
多分これはもう矢沢病というウイルスかもしれない。…付き合ってられないぜ。
「また変なこと言って。俺が湊を馬鹿にするわけないだろ」
「どの口が言ってんだよ…」
この口だけど?とか言って笑う矢沢に殺意を覚えたのは言うまでもない。
「あ、せんせー」
すると突然、矢沢は何かを思い出したように大きな声で保健室の先生を呼ぶ。
「んー?どうしたの?矢沢くん」
「さっき、校長先生が先生のこと呼んでましたよ」
「あらそれ本当?」
「はい。急な用だったみたいですので早く行った方がいいと思います」
「急な用?それなら早く行かなきゃね。伝えてくれてありがとう。あ、それと佐藤くん」
「え、あ。はい何ですか?」
「奥でシャツ乾かしてるから乾いたら勝手に取っていいからね」
「あ、はい。わかりました。わざわざありがとうございます…」
俺はぺこっと頭を下げた。
「じゃあ、ちょっとあけるから、すぐに二人とも授業に戻りなさいよ」
そう言って先生は急いで出ていった。
「…ふぅ。やっと出て行ったか」
隣で矢沢がそう呟いた。
「これで二人っきりだね」
「は?」
何を言ってんだ。
「案外チョロいな。あんな嘘に引っかかるなんてさ」
矢沢は保健室のドアの鍵を閉めた。ちょ、今のは…
「えっと、あれってもしかして……嘘!?」
「そうだよ。だって邪魔だったし」
お前、よく先生に嘘つけたな。後でバレたらやばいぞ。
「いくら邪魔って……ちょ、矢沢!何やってんだ!!」
ベッドがあるの方に引っ張る。
「うわぁっ!なにすんだよもう」
「黙って」
そう言った途端、矢沢が俺に覆い被さった。今の俺はベッドと矢沢の間にいる形になる。
「お、お前…ほ、本当何する気だ……んンっ?!」
急に唇に吸い付いてきた。
「何って…さっきの続きだけど」
何その、『え、俺なんか変なこと言った?』みたいな顔は。
それに
「お、お前…変なことしないって言ったじゃん!またキスしやがって…っ」
話が違うぞ!口を拭きながら睨んだ。
「アレ信じたの?俺の性格わからないとだめでしょ」
「ふ、ふざけんな…っ」
「そう睨まないで。あと、今すっごいムカついたこと思い出したんだ」
「な、なに…」
見下ろす矢沢の目が冷たい感じがした。少し怖くなって、ベッドのシーツをぎゅっと握る。
「体育の時、アイツに何おぶられてんの。しかもぎゅって密着してさ…。髪とか触らすな」
命令形でズバズバ言ってくる。
「み、見てたのかよ」
あんな恥ずかしい姿、皆競技に集中して誰も見てないと思ったのに。それより、お前は俺のなんだと言いたい。
「湊は俺の彼女だろ?」
「え」
なぜ、俺が考えていたことを…!?
てか、彼女って…いつなったんだよ。俺男だし。
「全部、口に出てるよ。そういう湊も可愛くて好きだけど。でもこれからは俺に従ってもらわないと困る」
「なんで、俺がお前に従わなきゃならねぇんだよ」
口に出てたのか…。気をつけないとな。
「それは湊が俺のだから」
「はぁ、なに言ってるんだよ。矢沢もさ俺じゃなくて本当に自分にふさわしい人がいるはずだよ。俺も愛する人を見つけて幸せになりたいし」
「はっ?」
矢沢の顔が険しくなり歪む。
「だから、運命の人と幸せになりたいの」
ちゃんと、言わないと伝わらないからストレートに言った。だけど、真顔になった矢沢の目が、ゆらりと冷たい色に変わった。
「それ本気で言ってるのか?」
「そ、そうだけど…」
「許さない。愛する人……だと。あ?俺が運命の人じゃないと言いたいのか?俺以外のやつと、幸せになりたいのかよ」
「え、だ、だってそれが俺の気持ちだし…」
「お前は俺のものだって何度言えばわかるんだ。身体に教えないとわからないのか?…はは、それも悪くないな」
ふと、浮かべた笑みは酷薄そのもので背筋がひやりとする。
「お前を閉じ込めて、俺だけを見て、感じて、俺のためだけに呼吸をするようにしてやろうか?あ?」
これまでに見たこともない表情で俺を見る。
「な、なにを言って……言っとくけど俺はお前の思い通りにならないぞ」
こっちは一歩も引かないつもりだ。
「俺もあまり余裕がないんだ。刺激しないでくれ」
少し掠れた矢沢の声に、ぞくりと、また背筋が震える。
「じゃ、じゃあこれで、わかっただろ?俺の気持ち」
早く退いてと促す。俺の素直な気持ちはちゃんと伝えた。
「…わかっただと?ふざけんな。俺以外のやつとなんて許せない」
「は?…ちょ、や、やめろ!!」
矢沢は跨がりながら俺のシャツのボタンに手をかけ、ブチブチと外し脱がせていく。
「おいッ矢沢…!ま、さかここで」
危険を察知し、必死に抵抗するけど矢沢が上に乗っているので動くことができない。
「…そのまさかだよ。だから大人しくしようか」
「ま、待って…ここ学校だぞ!?いつ先生に見つかるか…ひゃ、っ!」
はだけたシャツの中に手を侵入させてきた。
「や、やめろって言っているだろ…っはぁ」
「大丈夫。俺もそんな鬼じゃないから入れたりしないよ」
「なんだ…それ、」
そういう問題じゃないだろ。そう投げ掛けたいけど、言葉が上手く繋げない。
「い…ッ!」
首の方に痛みが走る。
「また変な虫がつかないようにたくさん俺の印つけるね」
首の次に、身体の色んな箇所を噛まれる。気づくとあちこちに歯形の赤い痕が刻まれていた。
「や、矢沢…っ、もう…や、やだ」
「そう、泣きそうな顔しないで?これは湊のためなんだよ」
「…お、俺の…ため?」
どこがどう考えてそうなるんだ。俺のためだったらこんな酷いことしないだろ…。
「湊は知らないと思うけど、この学校にはたくさん湊を狙っているやつがいるんだ。今まで俺が陰でずっとお前を守ってきた」
「な、なにデタラメなこと言ってんだよ…っ!!意味わかんねぇよ!別にお前に守ってもらわなくても平気だ」
矢沢の発言は意味不明だ。お前が俺を守ってきた…?それ間違いだろ。人をいじめるのが守るって意味なら世の中は残酷このうえない。俺は力強く、振り絞って矢沢を押し退けた。矢沢は体勢が崩れ、その隙に俺はベッドから降りる。
「お前最悪だ!もう俺に近づくなっ!わかったな!!」
シャツのボタンを閉めながらそう言った。そして奥の部屋から乾かしている自分のシャツを取り急いで保健室から出ていった。
「…ふ、ふざけんな。俺を何だと思ってるんだ」
変なことしやがって…。
何が守ってきただ。言っていることとやってきたことが違いすぎる。
畜生。
こんなわかりやすいことに、簡単に騙されてたまるかよ!!
だけど、保健室から出るときにやけに矢沢の顔がちらついた。真剣な顔に、寂しげな表情だった。
ワケわかんなくなった。
俺は担任に気分が悪いと伝え、そのまま早退し帰宅した。
――――――
――――――――
……。
矢沢に会うのが怖いのであれから俺は学校を休んでいる。今日で3日目。もちろん、矢沢からの連絡とかたくさんきた。全て削除し、拒否した。
あと、矢沢は俺の住んでいるアパートとかに来ることもあった。
玄関のドアをドンドンしたり『湊ーいるか?今すぐ開けろ』という声もあった。まあ、全部居留守をつかったけどね。
もう矢沢と関わりたくなったからバイト先に電話してやめますと伝えた。店長さんは『もう少し頑張ってくれないか?』と最後まで言ってくれたけど俺はごめんなさいと言って謝った。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
俺だって、もう少しバイトをしたかった。皆、とても優しかったし楽しかった。仕事内容とかにも慣れてきた時に電話で急にやめるって言ったから皆驚いているかもしれない。迷惑をかけてしまった。
そして、仮病をつかって学校をサボっている俺は絶賛暇人中。ベッドの上でゴロゴロしている。
少し寝て時計を見ると、時刻は丁度am11:00になっていた。
そんな時だった。
ガチャー
奥の方で鍵がゆっくりと開いた音がした。
ん…?今のって、ウチの玄関の音?
う、嘘だろ?
…鍵は閉めたはずなのに。
もちろん、鍵は俺が持っている一つだけだ。
そう思った矢先にバタンと閉まる音が耳元に届いた。
そして、誰かが床をバタバタと走る足音らしきものも聞こえてきた。
え、ちょ、待って!?ど、どどど泥棒か?!ドアをピッキングされた!?
何も盗むものとかありません!!!!
ぎゅっと身構えて布団の中に隠れる。神様、仏様…どうかお助けください。もう学校とかサボったりしませんから!最後の光は神頼み。
バタバタと聞こえていた足音が近くなって止まった。
来るな!来るな来るな来るな来るな!!
「ーーー湊ッ!居るか!!」
すると、聞き覚えのある声が部屋に鳴り響く。
恐る恐る布団から顔を出す。
「や、矢沢…?な、なんでここに…」
「鍵はここの管理人に貸してもらった」
「管理人さん…が?」
鍵は管理人さんが渡したのか~っ!あとで、ひとこと言わないと。
「それより、なんでたくさん連絡したのに出なかった?」
「え、…?」
その途端に矢沢の手が振り下ろされる。…やばい、殴られる!反射的に目を瞑った。もしかして無視したこと絶対、怒って…そう思った。
だけど。
ぎゅっー
「…良かった。湊が無事で」
急に全身が温かさに包まれる。
「や、矢沢…?」
これって抱き締められてる…?
怒ってるんじゃ…?突然の矢沢の行動に少し放心する。
「心配だった。連絡しても繋がらないし、もしかして湊になんかあったんじゃないかって」
「矢沢…」
「でも何ともなくて良かった」
抱き締める力を強くする。少しだけ矢沢が震えている感じがした。
「べ、別に…なんともないよ。連絡無視してごめん」
矢沢がそんなに俺のこと心配していたなんて想像しなかった。
ただ俺は怒って休んで矢沢に比べたら子供みたいだったんだな。自分がしたことに情けなさを感じた。
「…明日は学校来いよ?」
「う、うん…わかった。その、そのさ…心配してくれてさんきゅ」
面と向かって言えないけど心配をかけた人に礼を言うのは当然のことだよな。
あんなに会いたくないと思ってたのに急に優しくされると調子が狂って俺らしくいられないのはなぜだろう。
――――――
―――――
………。
べ、別に矢沢のことは嫌いでもいつまでも避けていることなんてできないし学校にきた。
…のは良かったんだけど。
これは何だ。
「マジで!?すげえッ!本物の湊くん!」
「何でこんな所に一人でいるの!?」
二人は少し興奮気味に俺へと質問を投げかけてくる。本物の俺って…偽物とかいるのかよって突っ込みたくなる。
さっきの授業で教科書を忘れてしまい、理科室に忘れ物を取り行ったらこの男子生徒二人に絡まれた。
俺は圧倒されて言葉を紡げずに、交互に二人の男子生徒を見た。
上級生か?よくわからないけど。
「すげぇ、綺麗!俺…こんな近くで湊くんを見たの初めてだぜ!」
「俺もだよ。いつも矢沢が隣にいて簡単には近づけなかったからな!マジで超美少年かわいい」
男子生徒二人は間近で俺を見て感想を述べていた。何を言ってるんだ…この人たちは。
俺が可愛い?ふざけるな。そう言いたいけど上級生っぽいから言えない。
…チ、チキンとかそういうのじゃないからな別に。
暫く黙って、二人に顔を見られていた。な、何でそんな見てくるんだよ。気持ち悪い。そんな見られると穴があきそうなんだけど。俺はどうにもできず困っていた。
しかしこれが悪夢の始まりだった。
「ヤべぇ…、湊くんを見てたら俺、勃ってきちゃったぜ」
「お前も?実は俺もめちゃくちゃ興奮してる。こんな上玉を目の前にして反応しない方が変だよな?」
…はい?彼らの発した言葉に俺は耳を疑った。
「湊くんに近づける事なんて二度と無いかもしれない」
「あぁ、そうだな。しかも授業以外、こんな誰も来ない第二理科室に一人でいるなんてチャンスだよな?」
そう言った彼等は急に俺の腕を掴んだ。
「えっ」
かなり嫌な予感がする…。俺は本能的に危険を感じ取り、逃げようとしたが床に押し倒されてしまった。
一人が俺に馬乗りになりやがった。重い…、そして逃げられない。
「な、何する…っ、ど、退いてください!!」
腕で男の腹を押したがビクともしない。
「抵抗する湊くんも可愛いね」
俺に乗っている男が笑顔で見下ろす。
そして、もう一人が俺の両腕を掴むと、万歳の体勢で腕を押さえつけた。すると、乗ってる男が俺の頬に触れた後、制服のボタンに手をかけた。
「なっ!やッやめろ!!」
「そんなに怖がらないで大丈夫だよ~。ちょっと大人しくしててね」
ニッと怪しく笑い、俺の腕を押さえつけてる奴が赤子をあやすような声色で言う。
何が、どう大丈夫なんだ?
そして、今度は俺に乗ってる野郎が…
「湊くん、とりあえず脱ごうか?一人で脱ぎ脱ぎできまちゅか?」
と、ムカつくことに赤ちゃん言葉で俺に言う。
…って、は!?
「ぬ、脱ぐだとッ!!?」
コイツら絶対、俺のこと馬鹿にしてるだろ。
「だからさ、俺たちに湊くんの身体隅から隅まで見せてよ」
だんだんと俺は青い顔になる。
『――――湊は知らないと思うけど、この学校にはたくさん湊を狙っているやつがいるんだ。今まで俺が陰でずっとお前を守ってきた』
ふと、矢沢が言ったその言葉を思い出した。
ボタンを次々と外していく男を見上げた。
「止めろッつってるだろうが!今すぐ退け…っ」
下に敷かれながらも、上から目線で命令をした。もう年上とか関係ない。だけど、そう思ったが全く相手にされなかった。
「あれ?もしかして怒ってるの?」
「まあ、怒ったとこも可愛いね」
全てボタンを外し終えた男がシャツを掴み左右に開いた。
同時に二人からゴクリと唾をのみこむ音が聞こえてきた。
…こ、こ、コイツら正気か?
「…やべぇ。想像以上。白くて透き通った肌に、綺麗なピンク乳首」
「み、見んなよッ!…き、きき気持ち悪い!!俺を今すぐ離せ!」
屈辱感でいっぱいな俺は精一杯暴れて、拘束を解こうと思い体を捻ったが無理だった。
くそっ…。
…でも、次になぜか俺の首、鎖骨、胸元、腹などを指で押すように触っていく。ゾクリと震えた。
「ねえ、これは…アレだよね?」
指で、またその箇所を触ってくる。
「湊くん。コレって…キスマーク?」
「……え?」
男二人の言葉に俺は固まった。
男達も俺の体にある赤い痕を見て戸惑っているようだった。
キ、キスマーク?
俺はクエスチョンマークを浮かべたが、瞬時に矢沢とのことを思い出した。
俺が黙っていると驚いた表情を見せた。
「え?マジでそうなの?誰だよ、この欲深い女は」
「しょうがねぇだろ。相手はあの湊くん何だぜ?」
奴らは、コレを付けた相手が女だと思っているみたいだ。
確かに普通ならそう考えるのが妥当だが実際はそれ男(矢沢)だし。
さっきまで驚きの表情をしていた男らはお互いに目を合わせた後、ニヤリと笑い俺を見た。
「なぁ~んだ。湊くんもヤる事やってんだ」
「じゃあ、俺らとも楽しいことシようよ。女より気持ちよくさせてあげる」
そう言った男子生徒二人は同時に俺の胸に舌を這わせた。
「や、やめっ…はぁっ」
口を手で押さえつけられる。
「あまり大声出しちゃいけないよ」
「…んんふっ!!」
それにプラスで、腕を押さえている男は右胸を、乗っている男の方は左胸を唇と舌を使って愛撫した。
舌先で突起を高速で舐められては、チュウチュウと、はしたない音をたてられて吸引された。
「はっ…ん、ゃめろッ、いやだッ、ぁ あッ!」
「そんなに嫌がらないで。俺ら湊くんに気持ちよくなってもらうために頑張ってるんだよ?…でも、嫌がる湊くんもイイ!」
「はぁっ、…湊くんのとっても美味しい。それに…なんだかいい香り… 全身舐めまわしたくなる…」
そう言った二人は再度、俺の身体に舌を這わせた。
嫌だ…っ。唾液の感触がものすごく気持ち悪い。
俺はただ、忘れ物を取りに来ただけなのに…っ。
「やめろ…っ!!このカスども!離せっ……ぁン!」
俺の言葉に二人がピタリとやんだ。そして俺の顔を見る。二人の男は声に出して大笑いをした。
「ねぇ、湊くん。俺達にこんなとされたこと、誰かに言えるの?」
えっ?男の言葉に俺は言葉を失った。さらに追い討ちをかけるようにもう一人の男も言葉を続けた。
「俺達、湊くんが誰にも言えなくなるくらい、今から恥ずかしいこと、…することにしたよ」
俺の腕を押さえていた男が自らのベルトを外すとそれで俺の腕を縛った。完全に自由となった男は俺の下半身へと移動する。俺に乗っている男は両手でまた胸にある突起を弄りだした。
「や、やめろ…ッ!」
下半身に回り込んだ男は俺のベルトに手をかけ、 ズボンを脱がし始めた。
「いやだ、ヤダッ!!やめろ!」
男は俺の下着ごとズボンを掴むと、一気に膝まで下ろした。下半身が露になる。
「本当に男だったんだ…。こんなに可愛いのに、本当にチンコついてる…。でも湊くんが男でも興奮するけど」
「ふざけんな…っ!」
俺はこんなやつらに大事なところを見られ、恥ずかしさに泣きたくなり、歯を食いしばった。
「男でも良いじゃん。相手は湊くんだぜ?その辺の女を犯すより絶対に湊くんのほうが良いだろ」
「あぁ、そうだな。こんな美少年とヤれるチャンスなんて二度と無いかもしれないし」
「それにしても湊くんの“ココ”可愛いな…。イヤイヤ言ってるくせに少し勃ってるじゃん。乳首触られて反応しちゃったの?可愛い~」
二人は俺の中心部分を触り始めた。そして指で輪を作って上下に扱いたり、先を撫で回された。
「…っ、可愛い。美味しそう」
そして、二人の男は俺の股間に顔を埋めた。一人の男は先から根元まで咥え込まれ、口全体に含んだ。もう一人の男は、尻の穴部分を舌で舐めては優しく突く。
「やっ…やめろッ!!ヤっ…やだっ!!」
-ちゅっ、ちゅぱちゅぱ…
嫌な音が響く。
「はっ、ゃだぁあぁ…ッ、 あっ!」
ついに俺は泣いてしまった。
触るな…触るな。触るな触るな触るな触るな触るな触るな触るな触るな触るな!!!
触れられたくない。
嫌なのに…
刺激に下半身は反応してしまう。
「誰か…や、矢沢…助けて」
口からそう言葉が出た。自分でも知らないうちに矢沢の名前を呼んで求めていた。
矢沢…矢沢助けて…っ。
届かない声だとわかっていても矢沢矢沢と何度も呼んだ。
頭に浮かんだのは矢沢に助けに来てほしいということ。
自分でも何でそう思ったのかわからない。だけど、矢沢の顔が浮かんだ。
「…泣いてるの?そそるね。でも矢沢矢沢うるさいから黙って」
こいつらは涙なんか見てもやめる気は無さそうだ。それどころか、指示してくる。
「ふっ、んん…ぁ」
中心部を好き勝手されて完全に勃起をしてる。
嫌なはずなのに…身体が勝手に快楽を感じてしまう。生理現象だとしても嫌だ。それが悲しくて、悔しくてたまらない。そして、二人は容赦なく俺の股間に刺激を与え続けた。
「はぁ…やぁ、ん、ゃめ…あぁっ」
駄目だ…。 駄目だ…。もう、我慢出来なさそうだ。限界がもうそこまできている。イかされてしまいそう。
「ん、ん…っ」
もう少しで出る!って時に、二人は急に止まった。
「…あっ…」
イかないまま、変な感じが残る。
「湊くん、イきたい?イきたいよね?こんなになってるから苦しいよね?」
「湊くん、射精したかったら俺達に可愛くおねだりしてよ」
「なっ!?」
何だと!?お、おねだり?…そんなの、この俺がする訳無いだろ!そんなことするくらいなら死んだ方がマシだ。こいつらマジで頭大丈夫か?このバカどもの頭を爆破してやりたい気分だ。
こんなことになるんだったら矢沢の話をちゃんと聞いとくべきだった。相手が男でもそういうことをしたいという奴がいることを意識しておくべきだった。今さら後悔しても遅いけど。
だんだん熱くなってくる。快感に痺れて全身を駆け巡る熱が苦しくてたまらない。
「ほら、早くおねだり言わないの?」
「くっ、…だ、誰がっ…言うかよ」
俺は意地と根性だけでそう言い、顔をそらした。しかし、俺のこの生意気な態度を見て二人に火をつけてしまったようだった。
「素直じゃないね。じゃあ、そうだな。これから素直になる薬をあげようか」
…く、薬?
男はニヤリと笑みを俺に見せた。
そして、ポケットから錠剤みたいな物を取り出すと、 それを俺の口の中に入れた。
「やっ、何ッ!?」
ゴクンー
運悪く思わず、飲み込んでしまった。う、うそ…。何の薬かわからない。
「ふぇ…ゴホッゴホッ…ふっ」
吐き出そうとしてももう手遅れだった。もしかして…ど、毒薬!?
「お前、それはヤバくない?」
「大丈夫だって!効果が現れるまでにまだ時間あるから、挿入する頃には…ね?」
ふ、ふざけんな。
「お、お前ら…さ、さっきの薬は何なんだよ…っ」
怖い。聞きたくないけど、危ないものを飲まされたということになると心配になってくる。
「気分が高まって気持ちよくなる薬かな。簡単に言うと惚れ薬」
「ほ、惚れ薬だと…っ」
全然気分も良くないし、気持ち悪い。惚れ薬って一体、なんだよ…。頭が痛くなる。
「さてと、そろそろこっちも」
男達は俺の足からズボンを全て脱がせると、足を左右に大きく広げた。
「何をするんだッ!?」
流石の俺も恥ずかしさと驚きで彼らを見た。お尻を突き出した状態。なんとも言えない羞恥が襲う。
「すげぇ~、湊くんはアナルも桃色で綺麗だ!」
「おおッ!本当だスゲェ!やばいな…これは」
二人してまじまじと人のそこを見てくる。
「や、やめろっ!見るなッ!!これ以上俺に触るなッ! 」
…気持ち悪い。見せ物じゃないんだぞ。そしてさらなる屈辱が待ち受けていた。
「そう、怒らないで。あぁ…湊くんのアナルにチンコ挿入したらどうなんだろ」
はっ…? 恐ろしい言葉が聞こえた。できれば、モザイク越しにその言葉は聞きたかったくらいだ。でも、奴らの目は本気っぽかったので怖くなって身体が震えた。
しかも両足は上げられたままで俺は気を失いそうになるほどの羞恥に絶望した。何と言う屈辱。
「あぁ…っ」
すると、ガクガクとなってきてなぜか全身が熱くなってきた。息が乱れてしまう。
それどころか腰がジンジンを疼き、何ともいえない快感が支配した。
「おっ!効いてきたか。…じゃあ、ここも触って欲しくなって来たかな?」
ビクッ
男は円を描くように指を俺のケツの穴に宛がった。 …もう駄目かもしれない。そう諦めようと、心が緩みかけた時だった…
ーガラッ!
「湊ッ!!!!」
「「「!!?」」」
理科室に飛び込んできた男を見て、俺を含んだ3人は息をのんだ。
や、矢沢…?
矢沢は俺達を見て、表情をなくした。
「み…湊…?」
俺は両腕を頭上で縛られて挙げ句の果てには両足を大きく広げられている。 そして、勃起をして男達に足を広げられているという…死ぬほど恥ずかしい姿を矢沢に見られてしまった。
…もうやだ、本当に死にたい。確かに矢沢に助けて欲しいとは思っていた。だけど、こんな姿を見られたくは無かった。
…でも、もしも本当に助けが来るのなら矢沢が良い。変な矛盾もあり、脳内はパニック状態だ。俺自身、よくわからない。ただ、今の自分がとても惨めで、こんな姿を矢沢に見られたことがなぜか無性に悲しくて恥ずかしくて訳がわからなくて涙が流れた。
「や…やざわぁ…っ」
消えそうな声で矢沢を呼ぶと、矢沢は鬼のような形相になり、俺に変なことをしてきた男達を見た。
「…てめぇら…ブッ殺すッ!!!」
二人の男も矢沢の気配を感じ取ると、俺から離れて距離をとった。俺は、矢沢の顔を見て、自分でもおかしいと思うくらいさっきまでの恐怖や不安が止まって全身から力が抜けるように安心した。
「あともう少しで楽しめたのに邪魔しやがって」
「言っとくけど俺ら結構強いから」
俺に変なことをした二人は喧嘩なれしていそうな感じだ。しかも相手は二人。矢沢が不利だ。
「はっそんなの知ったことか」
矢沢はそう言って構わずに、一人に殴りかかった。矢沢は、すばやく空気を切って男一人の頬にヒットした。鈍い音がなって、男の体が回転して飛んで床に沈んだ。
「くそっ!舐めやがって…ッ」
続けて矢沢はもう一人の男に殴りかかる。だけど、かわされた。
「や、矢沢…っ」
俺は無意識に言葉を発す。今度は男の方が矢沢に殴りかかる。
-ドガッ!
と、音がして俺は恐怖のあまり顔をうつむけた。少しして顔をあげると矢沢は左手で男の拳を止め、右手で男の胸倉を掴むと思いっきり引き寄せ…
-ゴスンッ!
力強く頭突きをした。
男の顔面に矢沢の頭突きがヒットして、男は鼻血を出してよろめいてそのまま崩れ落ちた。
「よわっ。…てめぇらは地獄に落ちろよ」
矢沢はそう吐き捨てる。二人の男は白目を向いて気絶していた。矢沢は床に散らばった俺の制服を拾い集めると無言で近寄ってきた。そして、腕を拘束している男のベルトを外すと、床に放り投げる。
「や、矢沢…?うわっ」
俺の足をグイッと引っ張ると、乱暴にパンツとズボンを穿かせた。シャツも着せてくれた。
「……っ」
恥ずかしいことに俺のアレはまだ、勃ち上がったままだった…。
そして、どうしたんだろう…。なぜか全身が熱っぽくて苦しい。あいつらに触られて変とか言うわけじゃなくて徐々に時間をかけて熱を帯びていくのだ。
…やっぱりあの薬、毒薬だったのか?苦しい…熱い。
「湊、立てるか?」
矢沢の不機嫌そうな声。
「……ぅん」
熱くて震える体で立ち上がろうとした俺を見て矢沢は腰に手を回すと俺を抱き上げた。
「掴まってろ」
「…うん。あ、ありがと…」
自分の力では無理そうだったから素直に言うことを聞いた。
俺は矢沢のシャツを握り締めて、矢沢の胸に顔を埋めた。
や、矢沢の匂いがする…。どうしよう…、凄く胸がドキドキする。俺らしくない。もう訳がわからなくなって俺は矢沢の首に腕を回して抱きついた。
俺を抱き上げたまま何も言わずに歩き出す。怒っているのか…よくわからない。
矢沢は、床に倒れている男をわざと踏みつけた。
「邪魔だ。ゴミども」
そう低い声で言うなり、もう一人の男も蹴飛ばすと、そのまま理科室を出た。…矢沢はものすごい不機嫌の雰囲気を纏っていた。授業中だから静かだ。誰もいない廊下を歩く。
はぁ…っ。やばいかも…っ。さっきからずっと我慢していた身体の熱が耐えられなくなって変な気分になる。
「矢沢…や、矢沢…はぁ…っ」
「…湊?おい、大丈夫か!?」
俺を抱き締めたまま、顔を覗いて驚いた表情をする矢沢。
「…お、俺…さっきから身体が熱いんだ」
矢沢は何かに気づくような顔をした途端、眉間に皺を寄せた。
「湊、まさかと思うけどアイツ等に何か飲まされたか?」
矢沢の言葉に俺はコクりと頷く。
「やっぱり…」
「??」
矢沢の声に俺は首を傾げた。
「…許さない。湊にそんなモノ使うなんて…あいつらこのまま生かせておけねぇな。マジでぶっ殺す!!」
矢沢は再びキレた顔をして、奴らの所へ戻ろうとした。
「ま、待って…っ!」
俺は、すかさず矢沢の腕を握る。
「何でだよ!!」
「行かないで…矢沢」
「…なんで」
「っ、俺のそばにいてくれ…」
「……湊っ、…じゃないと俺、またお前に…」
「いい。…矢沢になら…変なことされてもいい…」
口が勝手に動く。今日の俺は変なんだ。 でも本当に思った。矢沢なら変なことされてもいいって…。矢沢の顔を見ると少し困った顔をしたけど…
「~ったく!!お前、マジ可愛すぎなんだよ!どうなっても知らねぇぞ?」
俺は頷く。
「べ、別にどうなってもいい…っ矢沢…助けてくれ」
「俺も今の湊とこれ以上いると我慢出来そうにない。…覚悟しとけよ? 」
矢沢はそう言うなり俺を抱っこしたまま、噛み付くようなキスをした。
…一体、俺は何を考えているのだろうか。
そして、矢沢は歩き出し、渡り廊下の先の空き教室に移動した。この空き教室は、滅多に誰も来なくて人通りも少ない。矢沢はその空き教室のスライド扉を開けて中へ入って俺をゆっくりとおろした。
どうしてだろ…。
矢沢を見てると胸がドキドキする。胸の高鳴る鼓動に加え、体の疼きが止まらない。
熱が噴出してしまいそう…。 勃起して苦しい。恥ずかしい…。そしてイかされること無く、あの男どもに散々身体を弄られ、そのままの状態だから余計だ…。
「矢沢…、はぁ…っ俺……もう限界かも…」
そう言って、矢沢の足にズボン越しに膨らんだそこを押し付けた。そして、矢沢に抱きついた。
俺、一体何をしているのだろう。これじゃあ、まるで矢沢を誘っているみたいじゃないか…。
でも、身体が疼いて仕方が無い。…苦しい、何とかして欲しい。
「矢沢に……シて欲しい…っ」
気が変になりそうなのだ。
「…ッ、くそッ!いいか?湊が俺を誘ったんだからな。薬で変になってたからって後で文句言っても俺は謝らないぞ?」
矢沢の言葉に俺は無言で頷いた。
今日の俺はどうかしている。
「もう湊、可愛い可愛い。俺今どうかなりそうなくらいだ。湊に変なことしたあいつらは絶対許さないけど」
矢沢はそう言って、屈んで俺のもズボンに手をかけ脱がせた。俺のは欲にまみれたように完全に勃ちあがっていた。
そして、俺は全部脱がされて生まれたままの姿になった。
「あいつらに触られたとこ、俺が全部綺麗にしてやる」
「や、矢沢ぁ…っんんン」
矢沢の唇が俺の唇に触れる。舌を吸われ、口内で唾液を掻き混ぜられ、唇を舐める。何度もお互いの舌を絡め合った。
「んはぁ…矢沢ぁ…」
「そんな顔して俺の名を呼んで…これ以上俺を興奮させるな馬鹿。めちゃくちゃにしたくなる。…気が狂いそうだ」
そして矢沢は俺の左胸に吸い付き、片手で右胸を弄り、あいた手で俺のを扱いた。
「ひゃぁあっ、やざわぁ…はぁあっ!!」
矢沢が俺のを上下に擦るたび、クチュクチュと卑猥な音を立てた。
「んぁッ、矢沢、もうだめ…くっ」
「出していいよ。ずっと我慢してたんだろ?」
そう言って矢沢は俺のを咥えて口に含んだ。
「あぁッ!」
-ドクドクッ!!
-ビュッ
俺は矢沢の口の中に射精をしてしまった。
矢沢は嫌な顔一つせずに俺が出したものをゴクリと飲んだ。
「ごちそうさま」
嫌な顔どころか、幸せそうに笑っている。
「まずは一発か…。まだ足りないだろ?これくらいじゃ治まらないよな?」
矢沢の言葉に俺は赤面した。
…ぅん。
まだまだ足りない…。もっともっとって求めて欲深くなる。
「本当はココを一番に触って欲しいんだろ」
「はうぅんッ!ぁっ…ンっ!」
矢沢の指が俺の中に入ってきた。
「…中、すごい熱い。薬のせいで奥が苦しい?…俺にどうして欲しい?言ってごらん」
「…え?どうって…」
「言わなきゃわからないよ?」
矢沢は意地悪な顔になる。
「………も、」
「も?」
「もっと…触って欲しい…」
「それだけ?」
「…や、やざわぁ」
「ごめん。少しいじめすぎた」
「えっ!!?ひゃっ」
矢沢は指を早く動かしてを激しく俺の中をかき回した。矢沢の指でされていると思うと何故だかわからないけど全身から快感がわきあがってきた。前までは、顔を見るだけでも嫌だった。そう、嫌いなはずだったのに…なんでこんなにも求めてしまうんだろ。
「はぁ…んはぁ…やざわ、あぁっ」
「…可愛い」
矢沢は少しだけ笑い、中から指を抜き取ると俺をぎゅっと強く抱きしめた。
「湊マジで可愛すぎ。…好きだ愛してる。俺だけしか見ないでくれ」
矢沢は幸せそうな表情で俺の頬にキスをした。なんだろ…この温かい気持ち。
「湊」
耳元で矢沢の低い声が囁く。矢沢はそのまま俺の耳にもキスをした。
「…ひゃぁっ…?」
耳元に囁かれると背筋がゾクゾクした。
「なぁ、湊…」
「…?」
「入れて良い?」
「……っ」
…そんなこと聞くなっ。恥ずかしくて何て答えていいのかわからない。矢沢は恥らう俺と目が合うなり口元を手で覆った。
「湊、その表情マジでヤバイって…」
矢沢はズボンのファスナーを下げて自分の反り勃っている一物を取り出した。俺は矢沢のソレを見て自然と体が強張った。矢沢は俺の異変に気づいたのか、優しく髪を撫でるとおでこにキスをした。
「そんなに怖がらなくてもいい…。全てを俺に預けて?俺が湊を満たしてあげるから」
俺は無言で矢沢を見た。その目、その言葉はどこまでも優しくて…。
気づいてしまったかも。
…何で矢沢を見ると安心するのか。
何でこんなにも温かい気持ちでいられるとか。
認めたくないけど…俺は……矢沢を好きになっていたみたいだ。
…矢沢大地が好き。
ムカつくし、最低な奴だし、意地悪だけど、気づいたら俺は矢沢のことが好きになっていた。矢沢になら身を捧げられると思った。この身体の疼きや胸の高鳴り快感はきっと薬だけのせいではない。
相手が矢沢だからよりいっそう熱くさせているのかも…。って、そう俺らしくないことを思うのも矢沢が好きだからかも…。
「な、なぁ…矢沢。俺、気づいたんだ…っ」
言うのが少し怖い。
だけど、言いたい。
「何に?」
「…矢沢は他の奴とは違うって…っ。アイツらに触られたときものすごく嫌だった。…だけど、矢沢だけなら触られたい。矢沢だけにしか触ってほしくない…っ」
「湊っ」
「だから…好きにして…いいよ?」
そう告げたら矢沢の目の色が変わった。
「お前マジでムカつく。そんな可愛いこと言うなよ。…俺が正常でいられる訳がないだろ。この際だから全て言う。湊に振り向いてもらいたくて、わざといじめたり気のない素振りもした。でもそれは結果湊を傷つけた。…すまなかった」
「矢沢…っ」
「でも俺はお前がすごく好き。今さら拒否しても俺は湊を抱く。湊が嫌だと言っても無理だ。我慢の限界」
今までしてきたことは本当に俺に苦痛を与えてきたのは確かだ。だけど、面と向かって謝って反省している姿を見ると嫌な気持ちはしない。
「矢沢なら…いいよ?」
好きにしていい…。
「湊、好きだ」
…うん。俺も。
「興奮しすぎてお前を壊してしまうかもしれない」
「…矢沢になら、壊されても良いかな?なんてね…うわぁっ」
「それ以上何も言わないで。もう限界」
矢沢はそう言って俺の胸の突起を舌で愛しそうに舐めた。
「んっ…ぁ…」
「可愛い…湊」
「ばっ、馬鹿やろう!…はぁっ…んンっ」
矢沢は目を細めて微笑むと俺の下半身に移動して股の間に入った。お尻を広げられ、奥が露にされる。
「…いいよね?」
「あんまりそこ見るな!…恥ずかしい…」
「見るよ。湊の恥ずかしい姿もっと俺に見せて」
矢沢は俺の下半身に顔を埋め、舌を這わせた。ぴちゃぴちゃと音を立てる。
「ひゃッ、そんな所…舐めたら…ぁん…汚い…っ…んン」
矢沢の舌が中に入ってきて、出入りする。熱は余計に熱くなり俺は腰をくねらせた。指でも穴を広げられた。
「やっ…はぁん、ぁ」
どうしよう…。凄く気持ちいい…っ。恥ずかしくて絶対に言えないけど…もっと奥まで触れて欲しい。
「そろそろ良いかな?」
矢沢は指を抜くと、自分の先端を俺のソコに宛がった。矢沢は俺の腰を持つと、ゆっくりと挿入してきた。
「あぁ、あっ…ふぁあッ、矢沢ぁ」
矢沢の熱くて固いのが俺の中に入ってきている。押し上げて奥へ奥へと矢沢のソレが俺の中へきている。
「湊の中…すげぇ、気持ちいい…っ」
矢沢は眉を寄せて、熱っぽい溜息を吐いた。同時に、矢沢のソレをキュッと締め付けてしまう。
「くっ、みなと…、やばい、マジで気持ちいい…ほら、全部入ったぜ?」
…矢沢のソレを埋め込んだ俺は体内から矢沢の熱を感じた。
…辛いけど、幸福な感覚。
俺は矢沢に向かってゆっくりと手を伸ばすと、矢沢は俺の手を握り締めた。
そして腰を動かし始めた。
「うはぁっ…ぁ、くぅ…あぁ」
始めはゆっくりと動かしていたものが徐々に速度を上げていく。パンパンッと激しい音がなる。
「あぁっん、ぁンッ!や、やざわぁ…っ」
「湊…、乱れた湊も…すごい可愛い…っはぁはぁ」
矢沢に激しく突き上げられ、中を掻き乱される。矢沢のソレで何度も擦られ突かれまくる。
すると、矢沢は突きながらも俺の唇に触れた。
「…んんっ…ン」
俺の舌に吸い付き、そのまま激しいキスをした。歯列をなぞったり、舌を絡ませてきたりして激しく矢沢と結びつく。
口でも下半身でも掻き乱され繋がっている。まるで本当に一つの存在になったかのようだ。
「湊…、そろそろ…」
「ン、矢沢ぁ…ッ!はぁあんッ!!」
矢沢に突き上げられるたび揺れる俺のソレはプルプルと震えながら勢いよく射精してしまった。
そして、矢沢は俺の中に出した。そして矢沢は俺の唇に貪り付いた。激しいキスを続ける。矢沢も俺も熱が冷め止まずに、そのまま行為を続けた。
中にある矢沢のソレは大きさや硬さは増すばかり。先程よりも滑りやすくなったソコを激しくまた動き出した。
お互いの唇が触れながらも矢沢は俺の脇元に手を差し入れると繋がったまま抱き上げた。
「…はぁっ、や、矢沢…ンん」
そこら辺に合った椅子に座った矢沢の上に、座る体勢で下から激しく突き上げられる。
それから矢沢は俺の首に舌で大きく舐め上げる。
「ひゃあっ…ぁあ…ぁッン…」
…おかしくなるっ。思考が崩壊するほどの快感に俺は怖くなった。…気持ちいい、凄く気持ち良過ぎて気が狂う。
矢沢はそんな俺を見てさらに興奮したのか、よりいっそう激しくしてきた。
「…ンっ…ぁ…はぁっ」
俺は矢沢に突き上げられる度に何度も射精してしまう。矢沢も俺の中に沢山の欲を出していた。
「湊ッ、好きッ!…湊ッ!!…ッ」
今度は床に下ろされ、俺は四つん這いの体勢をとらされた。
だけどもう身体に力が入らず腕で自分の体重を支えることが出来ない俺は胸を床に付け、尻だけを高く上げた恥ずかしいポーズになった。
そんな俺を矢沢はバックから激しく腰を打ちつけた。
沢山射精して、さらに小さくなった俺のソレが揺れまくる。矢沢は俺の背中に唇を這わせながら背後から思いっきり貫いた。
体力が残っていない俺は身体の限界が近かったのか、意識が飛びそうになった。
「やざわぁっ、もっ、らめぇっ、あッ!…はぁっ」
掠れた声で矢沢に言うと、矢沢は俺の声にまで反応してさらに激しくする。
「矢沢…好きだ…っ」
俺はそれだけ言葉を放ってあまりの激しさに意識を飛ばしたのだった。
―――――
―――――――
……。
あれから、数日が経過した。変わったことが二つある。ひとつ目は、俺を襲った二人の男は退学となったこと。
あとひとつは…
「みーなとっ」
学校へ行く途中、誰かに背後から抱き締められる。
…声だけで誰なのかわかった。
「な、なんだよ…矢沢」
「なんだよじゃないでしょ。恋人に“おはよう”くらいの挨拶しないの?」
ーそう、あとひとつ変わったこととは、こいつが俺の恋人になったっていうことだ。
「べ、別に…そんなのしなくてもいいだろ…」
こんな関係になれない俺。悔しいけど矢沢を好きと自覚してからまともに顔が見れなくなっている。
「ったく、素直じゃないな~っ。そういうとこも可愛いけど」
「っ!や、矢沢…うるさい」
恥ずかしくなって、そのまま矢沢を無視して歩き出す。
「湊ちょって待って。湊!湊ってば!」
無視だ無視。
「…おいコラ待てって言葉が聞こえねぇのか?」
ビクッ
矢沢の低く若干怒った声に背筋が凍った。
「や、矢沢…?」
恐る恐る後ろを振り向くと…
ちゅっー
「えっ」
矢沢がすぐ後ろにいて突然、キスをしてきた。
「や、矢沢!!…こんなとこでするなっ」
口元を覆う。こんな人通りの多い道で何堂々とキスしやがるんだ。今は通ってなかったから良かったものの。
「湊が俺を無視するから悪いんじゃん」
「…っ。で、でも誰か見てたらどうするんだよ」
「他の奴なんて関係ない。これから俺を無視するたび、キスするからよろしく」
「はぁ!?よろしくじゃねぇよ…むぐっ」
矢沢の手によって口を塞がれた。自分に都合が悪くなるといつもこれだ。
「“あの時”は、あーんなに素直だったのにな。あと自分が言った台詞覚えてる?」
ニヤリと勝ち誇ったように笑う。
「…っ!し、知らん!!覚えてない!!!」
あの時のことは、自分でも恥ずかしいことを言ったことはわかる。
けど、それを俺に聞くなよ…っ。
思い出すだけで顔に熱を帯びる。
「覚えてない?じゃあ、嫌でも思い出させてあげる」
矢沢は不敵な笑みを浮かべ、ズボンのポケットから携帯を出した。
「な、なんだよ…」
「いいからいいから」
これから、矢沢が何をするのかわからなくて戸惑う。
『ーー矢沢に……シて欲しい…っーーーだから…好きにして…いいよ?ーー』
すると、矢沢の携帯から最中の俺らしき声が聞こえてきた。
こ れ は っ 。
「っ!うわぁぁあやめろおおおお!!!」
俺はみるみるうちに顔が赤くなって大声を出して騒いだ。
「どう?思い出した?この時の湊すごく素直で可愛かった」
思い出に浸って表情を柔らかくする矢沢。
「ふざけんなっ。なんでそんなもの…まさか、お前アレ録音してたのかよ!?」
「そうだよ。俺湊の声好きだから」
「ぜ、絶対嘘だっ!そんなもの消せよ!!」
「嘘じゃないよ。嫌だね」
俺が矢沢の携帯に手を伸ばそうと頑張ったが呆気なく空を切った。
あんなの…残したままだったら恥ずかしいじゃねぇか…っ。
ありえない!!く、くそぅ…何としてでも消してもらわないと。
「矢沢……っ。お願いだから消去して?」
カシャッー
えっ。
「今の困った顔、ものすごく可愛かった!!保存保存永久保存」
「……矢沢、てめぇ」
今、写真撮りやがったな…っ。
「ごめんごめん。あまりにも湊が可愛かったからついね」
「ついじゃねぇだろ…」
俺は矢沢の腕にシャツに手を伸ばして少し握る。
「湊?」
「そんなのしなくてもさ…その、今はここに本物がいるだろ?」
俺がそう言うと矢沢は目を見開いて携帯を落とした。
言ってから正直思った。自分きも。そう思いながらも地面に落ちた携帯を拾った。矢沢が消してくれないんだったら自分で消すまでだ。
俺ってば天才とか口の端を上げて思ってると
「萌え萌え萌え萌え萌え萌えみなたん萌え萌え。今のさ、もう一回言って?」
鼻血を出した矢沢がそう言ってきた。
「嫌だよ」
もえもえうるさい。みなたんって何だよ。
あと、鼻血拭けよ。
心の中で突っ込みながらも俺は、矢沢の携帯を弄っていく。えーっと、データはフォルダに入っているよな。全てのフォルダというところをタッチしてそれを開けた。…ん?なんだ、コレは。指で画面をスライドしていく。
「おい。矢沢」
「ん?」
「てめぇ、ふざけてんのか」
そう言って俺は携帯の画面を矢沢に向けた。
「ふざけてる?どこが?湊が写ってるだけじゃん」
「それが問題なんだよ!!全部これ俺じゃねぇか!!」
そう、全てのフォルダを開けた瞬間、全部に俺が写っていた。
「く、くそ!!こんなもん」
―――――――――
全て消去しますか?
→Yes
―――――――――
よし、完了。
「ほらよ。全部消してやった」
渡した瞬間、矢沢は絶望した顔になる。
「ああ!俺の湊コレクションがぁ!!」
「ざまーみろ」
てめぇの場合盗撮が多い。嫌みを込めて言ってやった。
「……でも湊甘いな。もうすでに家のPCに保存している」
「ん?何か言ったか?」
ぶつぶつと何か呟いていてよく聞こえない。
「いや、なにも?あー悲しいなー」
やけに棒読みな気がするのは気のせいか…?
「あ、そうだ!」
「急に何」
突然、矢沢は何かを閃きだした。
「俺のデータ全て消えたからさ、今から二人の写真撮ろうよ」
「えー」
「湊は俺が好きなんだろ?両想いも含め記念にさ」
「……っ。ばか。し、仕方ねぇな…」
俺は矢沢にあまいのかな…。青空をバッグに矢沢が俺の頬に顔をくっつけてきた。
「じゃあ、いくぞ!笑って、はい、バタコ!!」
「チーズじゃなくて?」
変な掛け声に笑ってしまった。
カシャッー
シャッター音と共に俺の頬に矢沢がキスをした。
え…。
「や、矢沢!!またお前は勝手に…」
「よし。待ち受けとラ◯ンのアイコンにしよっと」
「や、やめろぉぉ!!」
俺は怒鳴った。
「嘘だよ。待ち受けにはするけど、皆が見るラ◯ンのアイコンにはしないよ。だって、これは俺だけのものだし」
矢沢はそう言って撮った写真を見ながら優しく微笑む。
「……っ。も、もう知らね!」
でも、そんな矢沢も含めて好きだなんて結構、俺ってば物好きかもしれないな。
そんなこんなでストーカーが恋人です。
俺は今、矢沢の家に遊びに来ている。
この前、他愛もない会話をして少し家族の話とかになっていたら急にうちに来いとかなって約束をしてしまった。
矢沢の家は前に一度、外見だけ見たことあったけど、実際、中にお邪魔して見るとやばいことがわかった。やはり、外見も立派だったら中身も立派だ。
俺の実家と比べものにならない。家具とか絶対高そうだし床なんてピカピカで、さっき廊下を歩いてきたけど大理石だった。
天井には豪華なことにシャンデリアがあり、美しい光を放っている。
生で…初めて見たかも。異空間に来たみたいだった。
階段を上がっていくと奧の部屋が矢沢の部屋みたいだ。
そして俺は今そこにいる。詳しく言うと矢沢のベッドの上で正座。
なんか、落ち着かない。
シンプルな部屋でトーンはホワイトが多い。
「湊?そんな緊張しなくても大丈夫だよ」
「べ、別にしてないし」
「ははっ、してる」
矢沢は俺を見るなり笑って俺が座っているベッドの横に腰を下ろした。
「な、なに…」
「んーちょっとね」
そう言うと矢沢は俺の頭を撫でて指に髪を通す。
「相変わらずサラサラしていて…気持ちいいな」
「お前、俺の髪触るの好きだよな…」
「うん、好き」
「うわっ、速答かよ」
そんなに早く答えられると反応しづらい。まあ、褒めてくれてる?のには有りがたいけどね。
「…そ、そんなに俺の髪触ってて楽しい?」
「楽しいよ永遠に触っていたいくらい。できるなら湊の髪になりたい」
それを真顔で言う矢沢に引く。
「もし、お前が俺の髪になったらすぐスキンヘッドにするけどね。お前やっぱ異常だよ」
髪になりたい願望、初めて聞いたぞ。
「まーたそんなこと言って。その異常な奴が好きな奴は誰かな?」
ニヤリと笑って俺の顎をクイッとあげる。
「…っ」
本当、たち悪い…。
「あ、でも湊のスキンヘッドも見てみたい…はぁはぁ」
「はぁ!?冗談に決まってるだろ!興奮するな気持ち悪い!!」
そう言う俺だけどこの異常な奴が好きな俺も異常になるのかな、なんて。
「あぁ、もう可愛い。我慢できない」
「ちょ、や、矢沢…っ?お前ふざけんなよ?」
ドサッと押し倒す。矢沢の目はまるで獲物を捕らえる獣の目をしていた。
――――――
――――――――
……。
あれから、何時間か経過した。矢沢が猛獣と化している最中だ。
「ンッ!……あッ……や、ざわ…ッ!」
身体が燃えるように熱い。数えるのが馬鹿らしいくらいに肌を合わせた。
でも、全てが幸せな気持ちだった。
「…っ両想いになっての初めてのセックスはどう?…はぁっ」
俺と矢沢しかいない部屋ではお互いの激しい吐息が響く。おかしくなるくらい気持ちがいい。
「き、きもち…いっ…やざわぁ…っ」
「俺も…最高にきもちいいよっ…湊ッ」
矢沢と繋って、揺らしてた腰の速度を上げピンポイントで俺の前立腺を狙って激しく突き上げる。それだけでも快感がすごいのに、手で俺のを激しく上下に扱く。中が焼けるように熱い。
矢沢は右手で俺のを扱き、左手で先端をクリクリと撫で回したかと思うと少し爪先を立てる。
「……ひゃっ、ぁン…んッ」
激しい快感に言葉にならない。
「ん…っア…んンッ!!」
「湊……可愛い…っイこう…… ンッ!」
ほぼ同時に俺は矢沢の手に、矢沢は俺の中に射精した。
はぁはぁと、二人の荒い息遣いだけが部屋に聞こえる。
矢沢は抜かずに、そのまま満足そうに微笑んだ。
今日のうちで何回イッたんだろう…。
でも俺…今すっごく幸せかも…っ。
「んっ…ちょ、や、矢沢…っ?」
「まだまだこれからだよ」
ゆったりとした動きでも、射精して敏感になっている俺はビクンッと快感が全身を巡る。そして矢沢はそんな俺に身体をギューーッと強く抱き締める。
「んんンっ…ぁ」
「ちゅっ…湊っ…ん…ぺろっ」
まるで子供が大好物のソフトクリームを舐めるように俺の唇にキスをする。すると徐々に唇を吸われ、噛み付く様な激しいキスをされる。
そして、俺の中に入っていた矢沢のモノの質量が増すのを感じた。
「矢沢…っん‥…す、少し…休憩させて…っ?」
俺は矢沢の両頬に掌を添え、矢沢と視線を真直ぐに合せて告げた。
一瞬、矢沢の瞳孔が開閉して…
「湊…湊…ッ!!」
「んっぁ…ぁはぁっ…ンん」
…逆効果だったかもしれない。矢沢のソレの大きさがさらに増した。 それどころか再び腰をぶつけてきた。
や、やばい…っ。気持ちよくて壊れそう…。そしてまた絡みつくようなキスをする。
「んっ…はぁんっ…」
お互いの唾液が混ざりあい、一つの液体となった唾液が俺の口から糸を引いたように零れ落ちた。
―――もう駄目、無理!
再び強い波が襲ってきた。快楽が波が俺を襲う。
気持ち良い、気持ち良過ぎてやばい…っ。
俺は自らも腰振り、ピークを迎える。
「あぁン…矢沢ぁ…っ!…はぁんっ…んンーッ!」
「湊ッ…愛してるッ!!」
俺たちは、一緒にはじけた。そして息をあげながら視線を矢沢に向けると矢沢は俺を見るなり微笑んだ。
「…湊っはぁはぁ…っ」
果てたあとでも吐息は止まらない。
「ふぅ…ンッ…はぁ…っ…」
手で口を覆う事も出来ない俺は感じた声がただ漏れ。
「ヤバイ…湊可愛い過ぎるっ…俺幸せ」
矢沢は、俺の中から抜いたあと優しくそっと抱き締める。
「俺も…っ幸せ…」
矢沢の背中に手をまわし、抱き返した。
最高の甘くて幸せな時間……――。二人の愛を確かめ合った。
―――――――
―――――。
それから二人でお風呂に入って俺は矢沢の家に泊まることになった。矢沢の両親は先週から旅行中で今はいないんだと。
次来たときは…挨拶しないとな。矢沢の両親ってどんな人なんだろ?気になる。
「みーなと。こっちおいで」
考えごとをしていたら矢沢が手招きをして俺を呼んだ。俺はその言葉の通り矢沢のところに来てその隣に座った。
「こっちに座って」
矢沢は膝の間のところを手でぽんぽんとする。俺はわかったと告げて少し戸惑いつつもそこに座った。
…なんか落ち着かない。
すると、お風呂あがりだったもんだから矢沢が後ろからドライヤーで俺の髪を乾かしてくれた。
そっか…髪濡れたままだった。
「や、矢沢」
「んー?なーに?」
「ありがとな…っ」
なんか、改めてお礼言うの…照れくさいな。
「ふふっ、どーいたしまして」
後ろから矢沢のクスリと笑う声が聞こえ恥ずかしくなる。
なんでかな…。矢沢のことがもっと知りたい。
「な、なぁ…矢沢。お、俺、矢沢のことあまり知ろうとしなかった。だから…そ、その…なんつーかさ、お前のこといろいろ…お、教えて…ください?」
なぜ、敬語?と自分でも思った。こうゆうの本当なれない。面と向かってうまく言えないから変になった。
でも知りたいって気持ち、…つ、伝わったかな…?
すると矢沢はドライヤーのスイッチを切って後ろから俺の方に顎を乗せた。
「うん。…毎日のように俺のこと聞かせてあげる」
耳元で囁きながらおまけにぺろっと舌で俺の耳朶を舐めた。
ビクッ
「ちょっ、おい!み、耳舐めるなよっ。あ、あと…俺のことも教えるからな」
また、矢沢にも俺のことも知ってほしいと思った。
「うん。湊のこともっと聞きたい。でもほんとんどは大丈夫。ずっと見てきたから湊のことならなんでもわかるよ俺」
「きゅ、急にストーカー発言かよっ」
まあ、ただしくは元ストーカーだけどな。ははっ。おかしくなって笑ってしまう。
「笑った…。湊の笑顔すごく好き。もっと笑って?」
小さい子をなだめるような口調。だけど、その目はその言葉はどこまでも優しくて…矢沢は優しく微笑んで俺の髪を撫でながら軽く口付けた。
「いつもそう笑っとけよ。こっちまで幸せになるから」
軽く笑った矢沢は、相変わらずで。…本当に相変わらずで。
口が悪くて意地悪で…強くて温かくて優しい俺の好きな人。
「お、俺も矢沢の笑顔好き…っ」
負けじと言った。
「可愛いこと言いやがって。また俺の元気になったんだけど?」
腰に当たるかたいもの…。
「ま、万年発情期っ!!」
さっきヤッたばっかなのにまた大きくなっている。
「それは湊限定だよ」
「…ば!……ば、ばかっ」
そんなこと本人の前で言うな。
「ははっ」
矢沢はそう笑って俺の頭を撫でる。優しい手の感触。自然と気持ちよくて目を細める。
「たまらない光景だな。食べたくなってきた」
「も、もう黙れっ!」
赤面の俺と、笑顔の矢沢。そんな俺たちは恋人同士で今とても幸せ。
ジリリリリ
目覚ましが鳴った。
昨日は矢沢のことをいろいろ教えてもらい、いつの間にか寝てしまっていた。
「う~ん…ふぁあ」
俺は欠伸をしながら体を起こす。矢沢の腕が俺の腰の位置にまわされていたけど退かした。
そして、目覚ましを止める。…ぐっすり寝れた。今何時だ…?
「8時…13分…だとっ!?」
俺は目を見開き、信じられなくて目覚まし時計を掴む。
やっぱり、8時13分だ。昨日は日曜日で今日は月曜日。つまり、学校なのだ。
「や、矢沢!!起きろ!矢沢!!」
俺は、ぐっすりと寝ている矢沢の体を揺すって必死に起こそうとする。
「んー、湊?どうしたの?」
目はまだ半分しか開いていないが矢沢が反応してくれた。
「どうしたの?じゃねーよ!!今日学校!遅刻する!!急げよ」
「学校ー?そんなもの休めばいいじゃんー」
「呑気なこと言いやがって。俺結構出席率やばいんだよ!!…もういい。俺だけ行くから」
ズル休みとかしてたからやばいんだよな。立ち上がったら、矢沢の腕が伸びてくる。
「うわっ!…もうなに?」
急に腕を掴まれたから体がよろける。
「湊が行くなら俺も行く」
「じゃ、じゃあ、早く準備しろ!」
それから、俺たちは大急ぎで学校に行く支度をした。
「湊」
「なんだよ」
制服に着替て、玄関で靴を履き終わって外に出た時矢沢が俺を呼び止める。
「ネクタイが曲がってる」
「あ、ありがと…」
急いで着替えたから、曲がっていることに気づかなかった。矢沢にネクタイを直してもらって俺たちは肩を並べて学校に向かう。
「湊。競走しよっか」
「は?」
何を言うと思いきや競走…?
「軽ーく、ゆっくり競走しよ」
「なんで、だよ」
「いーから。行くよ」
「あ、ちょ、ちょっと待てよ!」
急に矢沢が走り出す。俺もつられて走るけど、朝から走るのはやっぱりキツい。
はぁはぁ…と息があがる。それに矢沢は運動神経抜群だし敵うわけがない。そして、もうだめ降参と思ってその場に立ち止まる。
「はぁ…っや…ば」
矢沢、はやすぎるだろ。お前はボルトか。
すると、追ってこない俺に気づいたのか矢沢が戻ってきた。
「湊大丈夫かー?」
息一つあがっていない矢沢。お前人間じゃないだろ。俺は肩で息をする。
「はぁはぁ…っ。や、やっぱり、矢沢には勝てないなって」
「そりゃあな。百億年早い」
憎まれ口を叩きながらも、いっでも優しいその目が
「…湊?」
俺は好きだ。
「矢沢」
「ん?」
「…ちょっと目、閉じて?」
俺から初めてキスをした。矢沢を見ると、ポカンと固まっていた。
絶対、変だったよな…っ。
「ほら、早く行くぞ!」
俺は恥ずかしくなって、スタスタ歩き出す。
「湊待って!今の不意打ちじゃん…やばい嬉しくて死ねる!!」
そのあとまた、家に戻ろうと言ってきた。もちろん、学校なのでそれは無理だ。
「湊」
ぎゅっー
矢沢の手が俺に手に触れた。
「お、おい!こ、こんなとこで握るなって…っ」
「少しだけならいいでしょ?ねっ、少しだけ」
お願いと言ってくる。
「…す、少しだけだからな…」
俺もぎゅって握り返した。温かい。矢沢の手から伝わってくる。
「あ、そだ。湊、ちょっと待って」
手を握ったまま、一体どういうことなのか問おうとすると、矢沢が恭しく俺の手を少し持ち上げる。
「…?」
そして矢沢の唇が俺の薬指の上に触れた。
「……っ!」
驚いて手を引くと、矢沢がゆっくりと眼を細める。
「ここ予約しとく」
「え…?」
聞き直すと、矢沢は俺より先に歩き出す。
触れられた箇所が痺れるように熱い。ずっとドキドキしている。左手の薬指…つまり。
かぁぁと全身に熱を帯びた。恋がこんなに心臓に悪いものだと改めて思い知った。
「や、矢沢っ!ちょっと待てって!」
俺は矢沢の後ろを追いかける。
早く…早くお前の隣に行きたい。
早く…早くお前の顔が見たい。
晴れた青空が俺たちを祝うかのように笑っていると思った。
「湊おいで」
矢沢が立ち止まり後ろを振りかえって手を広げた。
「矢沢っ」
俺は矢沢に飛びつくように抱きついた。ふわっと矢沢のいい匂いがした。気づいたらこんなにも好きになっていた。
自分でもおかしいと思うくらい…最高に幸せ者です。
【完】
俺は、息をするのも忘れてた。
目があった時なんか、
心臓が止まると思ったくらい。
どうして?解らない。
初めての感情ーー……。
どうやったら
彼の気を惹くことができるのか。
初めての感情に
愛し方がわからない。
矢沢side
ミナトイズマイン。
(湊は俺のもの)
矢沢大地。俺に合う言葉は、テキトー。
テキトーに生きて、テキトーに付き合ってテキトーに終わる。誰も俺を本気にさせる奴なんていない。
…何をしてもつまらない。そんな毎日が続く。
でも俺は皆が羨むイケメンでスポーツは誰にも負けないほどの実力。周りの女どもが黙ってない。別にチヤホヤされるのは嫌いじゃない。逆に都合がいい。
だって、好きなときには遊んでそうでもないときには簡単に捨てることだってできる。
楽だ。
だけど、そんな日々の中に、俺の心を狂わす人物が現れたのだ。
もう何もかもが初めてだった。
…こんなに誰かに夢中になるのも
…こんなに知りたいと思うのも
こんなに好きだって思うのも…。
自分でも最初は驚いた。少し笑みがこぼれる。まさか、俺が…なんて思ったくらい。今までこんな気持ちになったことがないほど“彼”のことを考えているだけで幸せな気持ちだった。
ーー初めて出会ったあの日の衝撃は今も忘れない。
「ねぇ~大地ぃ、今日暇ぁ~?よかったらぁ私と遊ばなーい?」
甘ったるい声で俺の腕に胸を押し付けて組んできた知らねー女。多分、中学同じだったやつ。名前なんていちいち覚えてられるか。
「うーん今日?さあどうだろ」
適当に返事をかえす。めんどくさい。
「え~いいじゃない少しくらい」
上目遣いで言ってくる。…うぜぇ。
「これから、入学式だよ?もう帰って寝るかも」
遠回しに、お前と遊びたくないって言ってるの伝わらねぇのか?
「えーもうわかったわよ。じゃあ、次は絶対遊んでよね!!」
「はいはいわかった」
やっと折れてくれたみたいだ。俺はただ面倒くさくなりそうなので適当に言葉を交わした。
そう、今日は入学式がある。あと10分程度で始まるみたいだ。ちなみに俺が通う学校は男女共学だけど俺のクラスはほとんどが男だらけ。
元々男子校だったこともあるせいか他のクラスにも女子があまりいない。まあ、別に女に困ってないしどうでもいいかと投げやる。
クラスは6クラスある中の5組。
体育館の入り口の方には、俺と同じ真新しい制服に身を包んだ奴らがたくさんいた。
並べと先生の掛け声があったので5組のプレートを持っている人の所の列に並んだ。
1クラス2列ずつ並んでいる。俺も皆のあとに続いて並ぶ。
すると、俺の横を誰かが通り過ぎた。ものすごくいい匂いがした。すぐに目線が自然にそれを追う。
「すみません…前いいですか?」
俺が並んでいるすぐ隣の斜め前にいい匂いを放つその子がいた。
顔が見えた瞬間、俺は息をするのを忘れた。心臓が止まるかと思った。胸の奥から衝撃みたいなのが走り、鼓動がはやくなる。一瞬にして心を奪われた。
ーーー……これが
俺の一目惚れだった。
その子の名前は、佐藤湊。俺が心の底から欲しいと思った子。
それからは、もう俺は人が変わったように女遊びはやめ、その子に夢中だった。中学の頃から女子にはモテたし、街を歩けば綺麗なお姉さんが声をかけてくる。逆ナンも頻繁にされていたし、女には不自由していなかった。
恋心?
恋愛?
何ソレ?って感じだった。
また、喧嘩を売られても何故か勝ってしまう。自分で言うのもなんだが頭の回転も速いしピンチになっても良い案がすぐ浮かぶ。
人生って…楽勝だな。今まではそう思った。
出会ってしまった。
佐藤湊に。
今までとは違う。
欲しくてたまらない。
愛し方がわからない。
どうやったら気を惹かせることができるのか。
俺だけじゃなく皆もそうだろう。誰もが目線を“彼”に向けている。
『あいつ可愛くね』
『まじ、美男子って感じ狙っちゃーお』
俺と同じ考えかよ。
許さない。湊は渡さない。
強くそう思った。
そして俺は考えた。俺は冷静に物事を見極めて行動するタイプ。簡単にいうとずる賢い。あくまで人懐こい人物を装い、本心は悟られないようにする。まずは、どうやったら誰も湊に近づかせないようにするというのから考えた。
ふと、いいアイディアが浮かんだ。
俺が学校イチの人気者になって、湊を皆から嫌われ者にさせればいいんだ。歪んだ考えだったけど、その時の俺は必死だった。
…そしてその策が成功した。
ただ近づいて仲良しごっこの友達とかダメだ。だから、意地悪したりした。いじめたり嫌がらせをしたりした。
その時の湊の顔がとてつもなく可愛かった。
もっと困ってる顔がみたい。
もっともっと俺に色んな表情みせて。
自分でも思った以上に歪んでいた。もう好きで好きでたまらない。誰も俺を止められない。
それから俺は『湊、観察日記』というのを書くことにした。まあ、湊からしたらこれはただのストーカー日記だけどな。
―――――――――――
○月△日
運命の人に出会った
結婚したい
男だけど心の底から
好きだって思えた
つまり、一目惚れ
とりあえず
いい匂いがした
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
席が隣になった
やっぱり
運命なんだなって思った
その子の名前は佐藤湊
田舎育ち
血液型O型
バスケ好き
誕生日9月18日乙女座
『よろしく』って
小さな声で言われた
…なにそれ、すげぇ可愛い
追加
人見知りで
シャイなとこもある
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
気を惹きたくていじめた
困っていた
泣きそうだった
たまらなかった
ものすごく可愛い…どうしよう
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
最初は湊に嫌われてもいい
後から俺を
好きになってもらえばいい
俺が守っているおかげで
湊は狙われていない
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
ちょくちょく
俺の目を
盗んで睨むようになった
…勃った
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
朝、肩を触って
『おはよう』って言った
無視されてイラッてきたけど
可愛かったから許した
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊の教科書に
落書きした
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
現代文の時、俺が
昨日書いた落書きのせいで
教科書が読めないみたい
だったから俺のを貸した
そして机をくっつけた
俺とのラブラブ振りを
皆に見せつけてやった
貸した教科書は
湊が触ったので家宝にする
それに
湊のサラサラした髪を触った
ぺろぺろしたい
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
→続き
湊の隣に座っている上田に
殺意を覚えた
湊に近づいたから
次の日席を他の奴とかえさせた
でも湊に鞄を持たせて
一緒に帰った
…連れ込んで
いろいろシたかった
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊が無防備過ぎるので
帰る時は後ろから見張っている
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
体育があった
バスケで湊に勝った
悔しそうな顔して可愛かった
手加減すれば良かったかも
更衣室で湊が汗を拭いたタオルを
内緒で頂いた
そして消しゴムも取って
夜のおかずにした
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊に花を贈った
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
手紙も贈った
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊が最近
元気がない
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
夢で湊とHしている夢を見た
…あれはやばかった
朝起きたら射精してた
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊が最近
元気がないみたいだから
『ちゃんと寝ろよ』って言った
驚いた顔をしてた
弱っている時には
優しくするのが男ってもん
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
なんか
湊が最近嬉しそう
この前は元気なかったのに
誰が湊を癒しているの?
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
夜まで湊のアパートを
うろうろしてた
すると湊が
知らない男に車で送られてきた
誰、アイツ。
許せなかったので
湊にメールを送った
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
やっぱり、湊は俺を
裏切ってなかった
浮気とか言ってごめん
バイトだって知った
俺もそこにバイトを始めた
湊、
目が笑っていなかった
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
→続き
遠回しに俺と一緒に帰りたいって
言ってきた
性格が急に偉くなった
でも素の湊も好き
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
→続き
家まで送ったけど
ショックだった
俺が毎日贈ったラブレターを
読んでいなかった
それから
湊を美味しくいただきました
セックスがこんなに気持ちいいって
初めて思った
世界一幸福者
…もうやばい
俺幸せすぎる
湊の中にずっと嵌まっていたかった
たくさん写メを撮った
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊に連絡しているのに
返事が来ない
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊に避けられてる
でも保健室で見つけた
寝顔写メった
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
変な虫が湊に寄ってきた
だけどすぐに追い出してやった
てめぇごときが
湊に近づくな
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊を口説いた
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊がまた俺を避けている
悲しい
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊が学校を休んだ
電話やメールしても返事は来ない
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊がまた今日も休んだ
何かあったかもしれない
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊の家に行った
ドアをドンドンしても
インターホンを押しても返答なし
カギも開かない
本当に心配になってきた
湊がいないとやだ
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
管理人の人に事情を話し、
カギを貸してもらった
そしてドアを開けた
ベッドに湊がいた
すっごい心配したけど
大丈夫だったみたいだから
良かった
やっと眠れる
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
次の日、湊が学校に来た
安心したのも束の間、
湊が男二人組に襲われた
頭が真っ白になった
死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
→続き
男二人をぶっ潰したあと
湊は変な薬…多分媚薬を飲まされていた
許さない
だけど
『…好きにして…いいよ?』
って可愛い顔して言われた
理性がぶっ飛んだ
滅茶苦茶にしてやりたくなる言葉
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊を襲った奴らはもちろん退学
そして、俺たちは
晴れて恋人になった
両想いってこんなに嬉しいんだ
…本当これ現実だよね?
あとからドッキリでしたって言われても
もう遅いから
すごい嬉しい
嬉しくて死にそう
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
湊が俺んちに泊まった
二人でたくさん愛を確かめた
―――――――――――
―――――――――――
○月△日
朝、学校に行くとき、
湊から初めてキスをもらった
だから俺も湊の左手の薬指に
キスをおとした
将来ここに
俺が嵌める指輪の予約をした
直訳すると結婚の約束
―――――――――――
…………。
そして、今に至る。
学校が終わって帰り道。湊には、別に送らなくていいって言われたけどもっと一緒にいたいので送るって言った。
「なっ…矢沢。お前帰るの遅くなるぞ」
俺と湊の家は逆方向にあるため、そう心配してくる。別に気にしなくてもいいのに全く湊は可愛いな~。
「とか言ってさ、一緒に帰りたいくせに」
俺のにやけた顔に、湊は目をそらしてこっそりと頷いた。
「っ!!」
なに今の!!!まじ萌え天使すぎる。
俺と湊は肩を並べて夕暮れ道を歩いた。
「なー、湊」
「…なんだよ」
「緊張してる?」
「は、はぁ!?し、してねぇよ」
明らかに動揺する湊。もう何でこの子、こんなに可愛いのかな。責任取ってほしいくらいだよ。
「湊。好き。愛してる。湊の全部大好き」
後ろからぎゅーって抱き締めながら言った。
「きゅ、急になんだよ…もうっ。…こ、言葉攻めか?」
「そんなとこ」
「ふ、ふーん。お、俺も矢沢のぜ、全部…そ、その…す、好き…だ…ょ…っ」
言っている自分が恥ずかしくなったのか『うわ、恥ず!』と顔を覆う湊。
待って鼻血もんじゃんこれ。
湊、可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い。
もうどうしよう。何この可愛い生き物は。俺を萌え死させる気でしょ、ねぇってば。もうこんなに可愛いから俺の腕の中にずっと閉じ込めておきたい。
萌え死しながらも湊のアパートまで辿り着いた。
いろいろ、やばかったので湊の頭をポンッと撫でながら『じゃあまた明日』と言った。これが今自分の抑えられる目一杯のガマン。
「や、矢沢!」
すると、俺の腕をぎゅって湊は掴み別れ際にモジモジしながら
「…きょ、今日は…ちゅーしてくれないのか?」
「っ!!」
もちろん、させていただきました。
せっかく人が我慢しているのにまた、この子は俺を狂わす。やっぱり、湊は最強。敵う気なんてない。
ちゅーって言い方、エロいよ…はぁはぁ。もっと言って。やばい想像しただけで勃ってきた。
俺がはぁはぁしている側で湊は決意を決めた顔をする。
「あ、あとさ…
い、一回しか言わないからよく聞けよ。
…な、何回も練習したから大丈夫だと思うけど
噛んだらごめん…
か、かっこよくて
意地悪で
でも優しい矢沢大地が俺は
…す、好きです」
『噛んじゃった』と言う湊を見て、もう理性が抑えらない。
「ちょ、や、矢沢っン」
何回も練習したとか可愛すぎるんですけど。
今日も湊は可愛くて
俺を夢中にさせるのが得意です。
もちろん
責任は取ってもらうけどね。
【完】
~おまけ~
「みーなと。大好きって10回言ってみて?」
「え?もしかしてそれクイズ?」
「いいから言ってみて」
「だ、大好き大好き大好き大好き大好き……」
「……」
「ほ、ほら10回言っただろ!?何だよ」
「…10回じゃ足りない。もっと言って」
「ふざけるな…っ」
湊にそう言わせて楽しむ矢沢であった。
「こ、今度は俺から出す。真面目にやれよ。シャンデリアって10回言って」
「わかった。シャンデリアシャンデリアシャンデリア…」
「じゃあ、この世で一番美しいのは誰?」
「……………お前」
「ちゃんとやれ」
矢沢は、本当に真面目に言っただけだった。
【完】
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