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かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい2
おやすみの挨拶
しおりを挟む晩メシを食い、風呂も済ませ、微かな眠気と共にベッドに入り込んだ俺は、スマホを片手に動きを止めた。
千冬に、俺から「電話する」とは言ったものの、電話して、何を話せばいいのか。
寝る前だし、おやすみの挨拶でいいか?
…いいか。それくらいしか、話すことねぇもんな。
「よし」
SNSの千冬とのトーク画面を開く。
最後の会話は、この前の土曜の朝。
千冬から来た「おはようございます、伊織先輩」という一言。
千冬は本当にマメな奴で、毎日、朝と晩にこうやってメッセージを送ってくる。
時報か?
画面を操作して、通話の呼び出しボタンを押す。
『はい』
「ふっ、早っ」
呼び出し音がワンコールも鳴り切る前に、千冬の声がして、思わず吹き出した。
『ふふ、こんばんは。伊織先輩』
「おー」
毎日送られてくる挨拶のメッセージが、2日前の朝で最後だったのは、その後俺が、今朝まで千冬と一緒にいたからだ。
最も、メッセージを受け取ったあの時は、その晩に千冬と恋人同士になるなんて、まだ思ってもいなかったけどな…。
『もう寝るところですか?』
「おう。眠ぃからな」
『確かに眠そうですね。声が少し、とろんとしてます』
そんな声してるのか?
自分じゃ分かんねぇもんだな。
「千冬は?まだ寝ねぇの?」
『僕は動画作ってました』
「相変わらず熱心だな」
『でも、もう終わります』
千冬の声の向こうで、タイピングの音や、椅子の軋む音、何かのスイッチを切るような音なんかが聞こえてくる。
それらが静かになったところで、千冬の声が低く囁いた。
『僕も、伊織先輩と一緒にベッドに入りたいので』
「…、」
なんてことない一言なのに、千冬の声が妙に甘くて、俺は落ち着きなく布団から起き上がる。
…水。そうだ、寝る前に水を飲もう。
ベッドから降り、冷たいフローリングを素足で歩く。
大して物が入っていない小さな冷蔵庫から、冷えたミネラルウォーターを取り出し、そのまま口を付けた。
『……何か、飲んでるんですか?』
「ぷはっ、おう。水」
『……』
「ん?どうした?」
『…いえ。伊織先輩のこと、想像してただけです』
「へぇ?」
想像…?
水飲んでるところをか…?
…千冬、喉渇いてんのかな…。
『ベッドと冷蔵庫、近いんですね』
「ああ。お前のマンションと違って、狭いワンルームだからな」
冷たい水が通った喉が気持ちいい。
ミネラルウォーターを冷蔵庫にしまって、また冷たいフローリングを3歩。
ベッドに戻ると掛け布団の上に、ぼふん、と倒れ込んだ。
結構、眠くなってきたな…。
「今度、こっち来てみるか?」
『えっ!』
「狭ぇし、面白いもんもねぇけど」
『い、行っても、良いんですか…?』
「別に構わねぇよ。カゲヤンとかマロとかも、しょっちゅう来るしな。あいつらもこの辺住んでるから、…ふぁあ…、…適当に、集まって…鍋とか、よくやっててさ…」
千冬の喜びが滲む声に、口の端が緩んだ。
海外旅行でもプレゼントされたかのような反応だ。
おもしれー。
布団に身体が包まれる感覚に、ますます眠気が強くなる。
話しながら、欠伸が混ざった。
『伊織先輩?』
「んー…?」
スマホを耳元に置いたまま、もう腕は脱力し切っていた。
隣にいないのに、千冬の声がすぐ近くで聞こえる。
安心、する…。
『もう、寝ちゃいそうですね?』
「んー」
俺の眠気を邪魔しない、星空を溶かしたような声。
その声の向こうに、千冬の優しく細められた瞳が見える気がした。
千冬の家に泊めてもらう時は、いつも俺が先にベッドで寝てしまって、千冬は作業部屋にこもって、そのまま寝落ちしている。
だから、こうやって、寝る直前まで声が聞けるのは、初めてかもしれねぇ。
千冬の声、…やっぱ、好きだな…。
「ちふゆ…」
『なんですか?』
「………す…き……」
『っ、………』
朦朧とする意識。自分が実際に喋っているのか、頭の中で思っているだけなのか、それすら分かんねぇ。
でも、とにかくすごく心地良い気分だ。
『…先輩、今のって…、』
「すー…すー…」
『伊織先輩?』
『…はぁ。……眠れないんですけど…』
幸せな夢の中。
『僕も、大好きです。……おやすみなさい』
千冬の声が聞こえた気がした。
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