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かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい2
ポップコーン
2時間近くの映画がエンディングに差し掛かる。
この映画の主題歌が、カラフルな画面にシンクロするように流れ出した。
ポップながら激しさのある、おしゃれなロック調の曲。
最近ではどこに行っても耳にする曲で、映画を観てなかった俺ですら、メロディを知っている曲だ。
「いい曲ですね」
「おう」
隣の千冬が、繋がれた手をきゅっと握りながら、小声で俺に笑いかける。
音楽で声は聞こえないけど、おそらく「いい曲」と言った気がして、俺も笑って答えた。
物語中盤の切ないシーンで、俺がちょっと泣きそうになった時、さりげなく千冬に手を握られてから、繋がれたままになっていた。
もうじき映画も終わる。
もう泣けるシーンはないだろうし、そろそろ離しておきてぇけど……。
「千冬、手。もう大丈夫だから」
「?」
「手、だよ。マロたちに見られたら恥ずかしいから、そろそろ放そうぜ?」
…聞こえないらしい。
仕方ないよな。音楽は更に激しさを増して盛り上がって来ている。
なんとかジェスチャーで伝えようと、手を持ち上げた瞬間。
──カタン、ザアッ…
「あっ、」
「!」
手に引っ掛けて、ポップコーンのカップをひっくり返してしまった。
派手な音はしないけど、千冬の足元に白い粒が散らばる。
「悪ぃ!拾うわ!」
「えっ、」
アクシデントの拍子に、繋がれていた手は離れた。
俺は静かに椅子を降り、空のカップを片手に千冬の足の間にしゃがみ込んだ。
「結構落ちたな…、まだこんなに入ってたのか…」
「ちょ、僕がやりますから…」
千冬が何か言っている気がするけど、よく聞こえねぇ。
とにかく俺は、まだ映画を観ている人たちの邪魔にならないよう、コソコソと速やかにポップコーンを拾い集める。
すると、千冬が俺の肩を叩いた。
ポップコーン拾いを中断して、顔を上げる。
体幹が悪い俺は、そんな姿勢の変更だけでも身体がよろめき、咄嗟に千冬の内腿に手をついてしまった。
どこか持っていれば、身体は安定する。
悪ぃけど、支えにさせてもらうぞ。
「なんだよ?……あ?」
しゃがみ込んだまま、上目遣いに千冬を見ると、千冬は、俺を呼んだにも関わらず、顔を赤くしてフリーズしている。
こてん、と首を傾げる。
「なんだ?」と尋ねるジェスチャーだ。
「……っ、…」
千冬は、口元を手の甲で隠した。
瞼を少し下げ、ジトっとした目で俺を見下ろしている。
じっと俺を見てるけど…、何か喋ってんのか?
口元を隠してるせいで、全然分からねぇ。
手に持っていたカップを床に置き、千冬の両腿を支えにして、立膝の姿勢になる。
立膝になる時、千冬の腿に置いた手のひらが滑ってしまい、千冬の脚が少し跳ねた。
くすぐったかったか?ごめんな。と心で謝る。
でもこうすれば、顔の位置がもう少し千冬に近付くから、聞き取れるかもしれねぇし。
体勢を整えると、改めて千冬を見上げる。
「ちふゆ?」
名前を呼んでるんだぞ、と分かるように、少し大袈裟に唇を動かす。
「ゆ」、と唇を突き出し、再び首を傾げたところで、千冬は喉仏を上下させ、とうとう顔を背けた。
は?
どういうジェスチャーだ、それ?
千冬が見た方を俺も見てみるけど、特に何もない。
通路を挟んだ向こうの席の人たちは、スクリーンを真剣に見ている。
よく分かんねぇ。
まあ、大事な要件なら、もう一度呼んでくれるだろう。
そう思って俺はまた千冬の足元に屈んだ。
散らばったポップコーンは、あと半分ほど。
さっさと片付けよう。
全てを拾い集めた頃には、エンドロールが流れ出していた。
ラストのシーン、見逃したなぁ…。
またあとで千冬に教えてもらおうと考えながら、千冬をチラリと見る。
しかし千冬は、自分の膝に肘をついて、両手で顔を隠し項垂れていた。
そんな泣けるラストだったのか…?
気になって反対隣のマロを見ると、マロは軽蔑するような目で俺を見ていた。
……いや、なんでだよ?
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