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3章 証拠と証明
第10話 冒険者らしいこと
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カナイチ、アドランとアルベルトパーティーはあの森……
グラットンベアが被害男性を食い殺した現場となった森を護衛しながら進んでいる。
馬車がカラカラと軋む音を立てて進んでいるが、太った行商人はビクビクと震えていた。
「し、しかし、怖いですね……
わ、私はもう戦闘とかできませんから本当に頼みますよ」
「任せてくれ。
この森に俺達より強い魔獣はいねえからよ」
「そ、そうは言っても最近まで男性がグラットンベアに食い殺されたんですよ。
私達行商人からすれば震え上がるくらいの恐怖なんですよ」
その行商人の言う通り、彼はブルブルと怯えて震えていた。
グラットンベアのことを聞いてアルベルト達は微妙な顔をした。
事件の詳細は外部に漏らしてはいけないとギルドから釘を刺されたからだ。
証拠がない以上、それが漏れて、もし彼女が怒って証拠でもあるのかと言われたら困る。
だから、この件については外部……
犯人以外の一般市民には何も報告していないのである。
「大丈夫ですよ!
魔獣が出ても私の拳で倒しますよ!」
「アドランって本当にそういうの凄いよね……
以前、大木に拳でヒビ入れて折った時はビビったよ」
「何か言った?
カナイチくん」
「いえ、何も」
ただ、カナイチも周囲を真剣に見渡している。
特に茂みなどは人一倍注意して観察している。
「そうそう。
あたし達盗賊はこうして周囲を警戒するの大事なのよ。
お宝探しもロマンあっていいけどね」
「まあ、カナイチほど盗賊に似合ってなさそうな冒険者も珍しいけどな!」
「カナイチ?
ああ、町の人が噂してましたね。
物探しならカナイチに頼めと……
アナタが……」
「いえ、そういう依頼を受けているうちにそう言う評価になってしまって……」
「いやいや、お前のそれはただの物探し名人じゃないだろ」
「気をつけてよ、おっさん。
あんたのことすぐにわかっちゃうかもよ」
「ハハっ、まさか」
「そうですよ。
僕にわかるのは精々ーー」
不意にカナイチは手を伸ばして行商人に握手しようとする。
「ん?」
行商人は何をするのかわからず、ついカナイチと握手をする。
「……アナタ、昔冒険者ですね。
当時の武器はハンマー。
引退した理由は多分、膝の故障」
「……え?」
行商人は驚いたようにカナイチを見つめていた。
「えっと……
言いましたっけ?
私が昔、冒険者だったの」
「……いえ。
え?
まさか、合っているんですか!?」
「……全部正解です……
ハンマーなんてしばらく使ってなかったのに……」
「ど、どうして!?
どうして、わかったんだ!?」
「簡単だよ。
荷物を馬車に入れる時もそうだったけど、おじさんは足を引きずっていた。
痛みで顔を顰めることはなかったけど、とにかく動かしにくそうだった」
「で、でも、それでは私の武器がハンマーだったことも冒険者だったこともわかりませんよね?」
「確かにそれだけじゃわかりませんが、握手した時にハンマーを持った人特有のマメがありますから。
それにさっきおじさんはもう戦闘は無理って言っていたし……
多分、おじさんは冒険者をしていて道具とか珍しいものを店の商品として売っていた。
けど、戦いの影響で膝を悪くして、だから冒険者を引退して商売だけするようになった……
でしょ」
「そ、その通りです……
以前はゴブリン程度なら問題なく倒していましたが魔獣との戦いで本格的に悪くなりまして……
冒険者ランクもそこまで高くないですし、思い切って引退したんですよ」
「す、凄いね……
私達……
依頼主が元冒険者なの気づかなかったよな」
「お、おい……
下手したら俺達の秘密バレるんじゃーー」
「いや、アルベルトがティーナさんのことが大好きなの周りにバレーー」
「それ言うな!!」
ただ、さっきまでの暗い雰囲気から明るい雰囲気に戻った。
「まあ、それよりもそろそろ着くわよ」
アドランは呆れたように指をさすと煙突から出た煙が立ち上っていた。
「……どうやら、奴さんもね」
「え?」
村に近い場所でゴブリンが集団で飛び出してきた。
「ゴブリン」
「運が悪いね、あいつらも」
「そうだな」
ゴブリンの狙いは行商人の積荷だが、アルベルト達は恐れずに堂々としている。
「私も行きます!」
アドランも構えを取りゴブリンを睨みつける。
「アナタは?」
「僕は基本的に援護かな」
「ああ、ここは俺達に任せておけ!」
そういうとアルベルトは剣での刺突でゴブリンに牽制する。
ゴブリンは慌てて避けるが、その隙を逃さずメリッサに切り刻まれる。
「はあああああ!
えいりゃあああ!」
アドランも鋭い拳でゴブリンの顎をぶん殴る。
背後に回り攻撃するゴブリンにも対応し、蹴りで粉砕する。
「《スリープ・ニードル》」
カナイチの指から針が生成され、ゴブリンに目掛けて投げ飛ばす。
針に命中したゴブリンは欠伸をしてからぐっすりとその場で眠りこけた。
「わわっ、こっちに来た!」
「下がって!」
カナイチは行商人の前に立ち棒切れを拾う。
「《ブラスト・ショット》!」
棒切れを蹴りゴブリンに命中し怯ませた。
「はあああ!」
そのゴブリンをアドランが蹴り飛ばす。
アルベルト達の目の前に現れたゴブリンは全員伸びていた。
「お、終わった……」
「お疲れ」
「カナイチって状態異常とか風属性の攻撃は得意けど、正直あまり強くないよな」
「そうなんです。
人間相手ならなんとかできますが、それ以上になると」
「た、タハハ……」
「それに対してアドランちゃんは凄いよ」
「まだスキル使ってないんでしょ?」
「ええ、そうです。
でも、まだまだ先輩達には遠く及びませんよ」
(おいおい、どこまで強くなるんだよ、アドラン)
カナイチは苦笑していた。
グラットンベアが被害男性を食い殺した現場となった森を護衛しながら進んでいる。
馬車がカラカラと軋む音を立てて進んでいるが、太った行商人はビクビクと震えていた。
「し、しかし、怖いですね……
わ、私はもう戦闘とかできませんから本当に頼みますよ」
「任せてくれ。
この森に俺達より強い魔獣はいねえからよ」
「そ、そうは言っても最近まで男性がグラットンベアに食い殺されたんですよ。
私達行商人からすれば震え上がるくらいの恐怖なんですよ」
その行商人の言う通り、彼はブルブルと怯えて震えていた。
グラットンベアのことを聞いてアルベルト達は微妙な顔をした。
事件の詳細は外部に漏らしてはいけないとギルドから釘を刺されたからだ。
証拠がない以上、それが漏れて、もし彼女が怒って証拠でもあるのかと言われたら困る。
だから、この件については外部……
犯人以外の一般市民には何も報告していないのである。
「大丈夫ですよ!
魔獣が出ても私の拳で倒しますよ!」
「アドランって本当にそういうの凄いよね……
以前、大木に拳でヒビ入れて折った時はビビったよ」
「何か言った?
カナイチくん」
「いえ、何も」
ただ、カナイチも周囲を真剣に見渡している。
特に茂みなどは人一倍注意して観察している。
「そうそう。
あたし達盗賊はこうして周囲を警戒するの大事なのよ。
お宝探しもロマンあっていいけどね」
「まあ、カナイチほど盗賊に似合ってなさそうな冒険者も珍しいけどな!」
「カナイチ?
ああ、町の人が噂してましたね。
物探しならカナイチに頼めと……
アナタが……」
「いえ、そういう依頼を受けているうちにそう言う評価になってしまって……」
「いやいや、お前のそれはただの物探し名人じゃないだろ」
「気をつけてよ、おっさん。
あんたのことすぐにわかっちゃうかもよ」
「ハハっ、まさか」
「そうですよ。
僕にわかるのは精々ーー」
不意にカナイチは手を伸ばして行商人に握手しようとする。
「ん?」
行商人は何をするのかわからず、ついカナイチと握手をする。
「……アナタ、昔冒険者ですね。
当時の武器はハンマー。
引退した理由は多分、膝の故障」
「……え?」
行商人は驚いたようにカナイチを見つめていた。
「えっと……
言いましたっけ?
私が昔、冒険者だったの」
「……いえ。
え?
まさか、合っているんですか!?」
「……全部正解です……
ハンマーなんてしばらく使ってなかったのに……」
「ど、どうして!?
どうして、わかったんだ!?」
「簡単だよ。
荷物を馬車に入れる時もそうだったけど、おじさんは足を引きずっていた。
痛みで顔を顰めることはなかったけど、とにかく動かしにくそうだった」
「で、でも、それでは私の武器がハンマーだったことも冒険者だったこともわかりませんよね?」
「確かにそれだけじゃわかりませんが、握手した時にハンマーを持った人特有のマメがありますから。
それにさっきおじさんはもう戦闘は無理って言っていたし……
多分、おじさんは冒険者をしていて道具とか珍しいものを店の商品として売っていた。
けど、戦いの影響で膝を悪くして、だから冒険者を引退して商売だけするようになった……
でしょ」
「そ、その通りです……
以前はゴブリン程度なら問題なく倒していましたが魔獣との戦いで本格的に悪くなりまして……
冒険者ランクもそこまで高くないですし、思い切って引退したんですよ」
「す、凄いね……
私達……
依頼主が元冒険者なの気づかなかったよな」
「お、おい……
下手したら俺達の秘密バレるんじゃーー」
「いや、アルベルトがティーナさんのことが大好きなの周りにバレーー」
「それ言うな!!」
ただ、さっきまでの暗い雰囲気から明るい雰囲気に戻った。
「まあ、それよりもそろそろ着くわよ」
アドランは呆れたように指をさすと煙突から出た煙が立ち上っていた。
「……どうやら、奴さんもね」
「え?」
村に近い場所でゴブリンが集団で飛び出してきた。
「ゴブリン」
「運が悪いね、あいつらも」
「そうだな」
ゴブリンの狙いは行商人の積荷だが、アルベルト達は恐れずに堂々としている。
「私も行きます!」
アドランも構えを取りゴブリンを睨みつける。
「アナタは?」
「僕は基本的に援護かな」
「ああ、ここは俺達に任せておけ!」
そういうとアルベルトは剣での刺突でゴブリンに牽制する。
ゴブリンは慌てて避けるが、その隙を逃さずメリッサに切り刻まれる。
「はあああああ!
えいりゃあああ!」
アドランも鋭い拳でゴブリンの顎をぶん殴る。
背後に回り攻撃するゴブリンにも対応し、蹴りで粉砕する。
「《スリープ・ニードル》」
カナイチの指から針が生成され、ゴブリンに目掛けて投げ飛ばす。
針に命中したゴブリンは欠伸をしてからぐっすりとその場で眠りこけた。
「わわっ、こっちに来た!」
「下がって!」
カナイチは行商人の前に立ち棒切れを拾う。
「《ブラスト・ショット》!」
棒切れを蹴りゴブリンに命中し怯ませた。
「はあああ!」
そのゴブリンをアドランが蹴り飛ばす。
アルベルト達の目の前に現れたゴブリンは全員伸びていた。
「お、終わった……」
「お疲れ」
「カナイチって状態異常とか風属性の攻撃は得意けど、正直あまり強くないよな」
「そうなんです。
人間相手ならなんとかできますが、それ以上になると」
「た、タハハ……」
「それに対してアドランちゃんは凄いよ」
「まだスキル使ってないんでしょ?」
「ええ、そうです。
でも、まだまだ先輩達には遠く及びませんよ」
(おいおい、どこまで強くなるんだよ、アドラン)
カナイチは苦笑していた。
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