公女は祖国を隣国に売ることに決めました。

彩柚月

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王太子の事情

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マリアといつか離れなければならない。それを考えると悲しくて苦しくて仕方ない。

嫌だ。離れたくない。離れなくても良い方法はないのか。婚約していなければ、いや、ダメだ。マリアを婚約者に据えるということは仕事をさせるということだ。

ちょっと待て?父はたくさん愛人を持っているじゃないか。マリアを愛人にしたら良いんじゃないか?正規の立場を与えられないことは心苦しいが、私の立場を考えて貰えれば、仕方ないことだ。わかってくれるだろう。その代わり、一生マリア以外の愛人を持たない。ただ1人、マリアだけを愛してゆこう。

早速マリアに言ってみた。

「それは…ダメだよ。リー君。」
「やはり愛人は嫌か?しかし、側妃ではやはり公務が生じてしまうし…いや、もちろん、そうなったら私も全力でサポートするつもりだが。」

「そうじゃなくて…リー君はお妃様は1人しか取らないんだって。後宮を使うのはは今代で最後にして閉鎖するって公言したって習ったよ。」

「は?」

そうなのか?ああ、そういえば、ロザリアは唯一の女性だと聞いたような。え?じゃあ、マリアを迎えるのは無理なのか?



側近達に聞くのは流石にはばかられるので、お馴染みの教育係にそれとなく聞いてみたら、ロザリアと婚約する為の条件として、カートレット家が要求したらしい。

どういうことだ?
ロザリアはそんなにも私と結婚したいと望んでいるのか?狭量にも、他に気持ちを向けることを嫌がっているということか?

なんということだ。
私の意思を無視して婚約を取り付けたあげく、勝手な条件をつけていたのか?

わけがわからない。

「ならば、ロザリアと婚姻を結ばなければ、愛人が持てるのか?」

ーーロザリア様は、殿下の唯一の女性です。
ーーそう陛下が定められました。

ならば父上に奏上するしかない。
愛人を持てるように、条件を変更してもらう。ロザリアだから無理だというなら婚約者の変更を。他にも相応しい身分の女性は居るではないか。



しかし返答は否だった。

「何を言っているのだ。お前を支えられるのはカートレット令嬢しか居らぬ。そして王カートレット家は王家を支えてくれる。よほどの瑕疵がない限りは王家に彼女を迎えることは決定している。お前は、令嬢が来てくれることを感謝して、彼女を大切にしなくてはならない。愛人などもっての他だ。」

「父上はたくさんの女性を愛しておられるではありませんか!」

「私が望んでそうしたと思っているのか?そうしなければお前は生まれなかったのだぞ?とにかく、ロザリア嬢が婚約者である限り、お前の唯一の女性はロザリア嬢だ。裏切るような真似をするな。王家の後継はお前しか居ないのだ。王家の人間として、正しい判断をすることだ。」

「では、ロザリアとの間に子が生まれなければ、愛人を持てるのですか?」

「その時は…。いや、そんな不確定な未来のことは考えなくとも良い。それに、例え後宮を作るとしても、置けるのはであって、ではない。誰でも良いわけではないのだ。」


ん?愛妾?
愛人と愛妾は違うのか?
つくづく言葉遊びが好きな方だ。


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