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エピローグ
しおりを挟む「で、マルチバースって何?」
と、陽葵は瑠奏に聞いた。だって、蓮くんが後で瑠奏に説明してもらえって言ってたもん。
「あー……それを陽葵に説明するのかあ……。蓮くん、盛大な宿題を残して行ってくれたわね。」
軽く嫌味とも軽口とも取れる口調で、瑠奏は言った。でも、どうやら、説明してくれようとして、考え込んでいるようなので、黙って待っていた。
「うんとね。定義が広すぎて、どう説明していいかわからないから、まず、言葉の意味から言うよ。マルチは複数の、バースは宇宙を意味するユニバースの略。合わせてマルチバースって造語でね。そのまま、たくさんの宇宙。って思ったら良いよ。」
「宇宙はひとつじゃないの?」
「っていう、仮説ね。ビッグバンは知ってるでしょ。そこから生まれた宇宙ということになってるけど、果たしてその宇宙はひとつだけだったのか。って話から始まるんだけど……これ、話すと長くなるし、どうせ理解できないでしょ。だから、これもまた、たくさんの宇宙がある理由も、たくさん仮説がある。って思えば良いよ。」
「理解できるかもしれないじゃん……。」
「そう?じゃあ、ビッグバン以降に生まれた宇宙は果たしてこの宇宙だけなのか他にも生まれたとするなら同じ内容物を含んでいるのかってことを議論しなくちゃいけなくてもしも内容物が違うならそれは混じり合うことのない水滴のような存在かもしれないから干渉できなくてそれはアメンボが水の上を走るのと同じで昔は足に空気を含ませてるからとか油がとか体が軽いからとかいろいろ言われてたけど本当は足の分子構造が「ごめん!ストップ!」」
「全然わからない。」
「でしょうね。これ、私も言葉だけで説明しきれる自信がない。」
「じゃあ、わかりやすく。」
「陽葵に必要な説明は、蓮くんに関することでしょ。これはね。数あるマルチバースの仮説の中でも、かなりファンタジー寄りで、今じゃあんまり支持してる人は居ないと思うんだけど、」
と、一息入れてから続ける。
「いわゆるパラレルワールド。選択によって増える宇宙だね。私がここで、右に曲がるを選択する。でも、左に曲がった選択をした場合の宇宙が、その瞬間生まれる。これをどんどん繰り返すの。でも、そうするとね。」
「うん。」
「宇宙は、すっごいたくさんあるってことになって、その宇宙が存在するには無限のスペースが必要になる。だって、人間だけでも80億人も居るんだよ。ひとりひとりが選択する度に増えてたら膨大な数になるでしょ。人だけじゃない。動物や植物。微生物から風邪や水、ほんの少しのきっかけで、違う結果になったことを、すべて新しい宇宙として創られているとしたら、もう、考えるのも嫌になるくらいたくさんの宇宙だらけ。それを解決する仮説として、別次元もどんどん生まれるって説があって、でも、次元が違うから、本来は触れ合うことはないはずなんだ。」
「でも、」
「そう。その別次元の人と、会ってしまった。」
「だいたい、そうやって選択の違いを反映していったら、一番端と端同士は、もう全く違う宇宙になってる。できる過程によっては、隣あった宇宙でも、一周回って別世界みたいな状態になっててもおかしくないのに、あの世界は何か近かったって言ったよね。」
「うん。」
「方法はわからないけど、あのオジサンが、出来てすぐの宇宙を何らかの方法で捕まえたんだと思う。選択の違いで分離しかけたけど離れるな!って楔を打ったんだろうね。そして、道を作った。」
「うん……?」
「もう混乱してるよね。とにかく、一部がくっついた双子みたいな宇宙だったんだよ。」
「なんとなくわかる。双子の玉子みたいなの連想した。」
「そんな感じの印象でいいよ。でも、そうすると問題がひとつあって。」
「うん?」
「くっついたままの双子っていうのは、栄養が片方に流れる。これはもう別の話になっちゃうから、また今度ね。今はそういうものだと認識して。栄養を片側に流し続けると、当然片方は栄養が足りなくて死んじゃう。それを塞ぐために、あのオジサンは薄い壁を作ってた。」
「その壁が敗れた?」
「そう。だから、滞留してた栄養、つまり質量が片側に流れ込みかけた。くっついてる以上、もうどちらかが壊れるしかない。だから、質量の流動を止めるために、質量を同じにした。空気も温度を同じしたら、一瞬、流れは緩やかになるでしょ。その瞬間を作って、その上で、壁を閉じた。これで、双子宇宙の分離は完了。」
「つまり?」
「もう、今頃は、あの蓮くんの居た宇宙は、この宇宙の隣にはない。今この瞬間も新しい次元が生まれて、どんどん離れていってるはずね。」
「そっかあ。じゃあもう、どんな奇跡があっても、2度と会えないんだね。」
「そうだね。でも、私達は、彼が存在してることを知ってるから。それで充分じゃない?」
「うん。そうだね。私達は、どの世界で生まれても、きっと惹かれ合うし。」
「そして私は失恋する、と。」
「ごめんって。」
「良いわよ。陽葵が蓮くんを忘れる前に、新しい恋人作っちゃうから。」
「その時は、目一杯応援します。」
「もちろんそうしてもらいましょう。」
こうやって、何気なく毎日は過ぎていく。
もう会えないあなた、きっと幸せで居てね。
私も、あなたを好きなまま、幸せになるから。
——本当に終わり——
文才がなさすぎて、話の中に入れられなかった仕組的なことを、ザックリと説明しました。
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