上 下
99 / 122
考えることが増えました

第99話 答え

しおりを挟む
「あの…!私と結婚しませんか!」
「……え?」

私は突然の提案に驚く。え、どういうこと?

「あの…」

黙っているのも良くないので、とりあえずなにか返そうとする。

トンッ

すると、急に私の肩に誰かが手を載せた。後ろを確認すると…

「エリオット様!?何故ここに!」
「いやあちょっと、な?」

よく見ると、少しエリオット様の呼吸が乱れているように感じる。ここまで走ってきたのかな?なんでだろ?

「それで、アルド殿…でしたっけ?悪いがこいつは俺が先約さきなんで、お引き取り願います。」
「わっ」

エリオット様が後ろから私を抱きしめながら言う。

「……っ」

アルド様は苦虫を噛み潰したような顔をする。

「お言葉ですが…エリオット殿、あなたは女性との噂が絶えないでは無いですか。そのような方にシェルシェーレ嬢をお任せする訳にはまいりません。」
「噂は噂でしょう?なんなら調べてくれてもいい。今現在俺が関係を持ってる女性は彼女だけです。」

エリオット様は私の肩をポンと叩きながら話す。

「…いや、別に私達もいわゆる"関係"は無いですけどね?」

私はすかさずツッコミをいれる。

「で、でも今はってことであって、元々あったのは事実でしょう?そんな人間が突然変われるとは思えません。」
「いやあ、人間案外1度の出会いで変われるもんですよ?」

エリオット様は、今度は私の頭に手を載せる。

「……」
「大体、どうしてそんなシェルシェーレ嬢…シェリーを気にかけるんです?極端な話、こいつが変な男に引っかかったってあなたには関係ないでしょう。」
「そ、そんなの、シェルシェーレ嬢に好意があるからに決まって…!」
「…それは、半分本当ですが、半分は嘘なのでは?」

ここで、私が2人の会話に割って入る。

「…え?」
「あなたが私に向けている感情は、恋愛的な好意というより、心配とか同情に近いものですよね?」
「それは…」
「なにか事情があるのでは?」
「…実は、姉が過去にそういう男に引っかかって、辛い目にあったことがあって…姉の相手はフォーゲル男爵ではなかったのですが…シェルシェーレ嬢とフォーゲル男爵が一緒にいるのを見て、思い出してしまったんです。」
「なるほど、そういう事でしたか。」
「その、差し出がましいことをしているのは分かっています。でも、シェルシェーレ嬢には姉のようにはなって欲しくないんです…!」
「ご心配ありがとうございます。でも、何も心配いりませんよ?フォーゲル男爵…エリオット様は、人を不用意に傷つけるような人ではありませんから。」
「……」

アルド様は、少し迷いのある表情を見せる。後ろからはエリオット様の視線を感じる。

「それに、仮にエリオット様が私に悪意を持って近づいてきていたとして、私を出し抜こうなんて100年早いですよ。」

私は満面の笑みで補足する。エリオット様の顔が引きつった気がするけど、気にしない気にしない。

「…そうですね。すみません、私の見当違いだったようです。その、よろしければ、同じ研究員同士仲良くして貰えると助かります。」
「ええ、もちろんです。これからもよろしくお願いします、アルド様。」

こうして一連の騒動は幕を閉じたのであった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

札束艦隊

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:260

無能と言われた召喚者、詐欺スキルにて有能以上へと至る

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,052pt お気に入り:264

北の国から ~公女様の婿選び~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

転生魔王は勇者ああああを子育て中

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:26

「また会おうね」と手を振る君は、なぜか泣いていた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

病んでる僕は、

BL / 連載中 24h.ポイント:624pt お気に入り:453

処理中です...