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12.『白の塔』の攻防(1)
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「くっ…」
追い詰められて、ユーノは部屋へ逃げ込んだ。すぐに引きずり寄せた机や椅子で扉を押さえつける。
その場しのぎにしかならないことは重々わかっていたが、レスファートを庇いながらでは身動きが取れない。
窓の外にはバルコニー、いざとなれば飛び降りるしかないだろう。だが、それができるほど体が保つかどうか。腹の傷の痛みは、そうやすやすとユーノを解放してくれていない。
「あつつ…」
「だいじょうぶ、ユーノ」
「うん……だけど、どうして奴ら、こっちへ来たんだろうな」
流れ落ちる汗を拭いながら、ユーノはそれに応じる憶測を口に出すまいとした。
(まさか、アシャ達がやられた、なんて…)
締めつけてくるような痛みに右脇腹を押さえながら、ついつい目を閉じそうになる。
剣は血と脂に塗れてぼつぼつ役に立たなくなってきていた。
窓から入って来る朝日が眩い。傷の痛みを耐えるのと、走り回っていたせいで、汗がとめどなく流れてくる。息苦しさに喘げば傷の痛みがひどくなり、呼吸を押さえると肺が焼けつきそうになる。手足に力が入らなくなってきていて、さっき『運命(リマイン)』の剣を受け止めたときには、危うく剣を取り落としそうになった。
こんな状態でよくもレスファートを連れてここに逃げ込めたものだ。
(もつか?)
大きく息を吐いて、ユーノは壁と窓枠に腰をもたせかけ、両膝に手を当てて体を休ませた。座り込むと次には立てない、そんな感覚に腰を降ろせない。閉じた瞼の上を流れた汗が、目にしみ込んでひりひりする。
「ユーノ…」
不安そうなレスファートの声に、目を開けた。
目の前に澄んだアクアマリンの瞳が大きく見開かれている。心配を一杯にたたえて、すがるようにこちらを見つめている。紅潮した頬に乱れた銀糸のような髪をそっと払ってやりながら、ユーノは微笑んでみせた。
「大丈夫……少し休めばもつよ」
半分は自分に言い聞かせたつもりだが、答えたとたんに腹から痛みが駆け上がり、思わず顔を背けて呻いた。額に冷たい汗が吹き出て、体がぞくぞくする。腹からの出血は止まっていない。失われていくのは命と同じ、貴重な水分と気力だ。
「ユーノ! 傷、みせて!」
反応が鈍いユーノに不安になったのだろう、レスファートが叫んだ。
「大丈夫、だったら」
「だめ! 見せて!」
「…っ」
レスファートがユーノの手をこじ開けるようにして傷を確認し、息を呑む気配があった。ここに来て以来身に着けている淡い色のチュニックの右脇腹は、鮮やかな紅でずくずくだろう。外された手をすぐに戻せず喘ぐことしかできない。ごくり、と唾を呑み込んだレスファートがそっとチュニックを開いてくる。ぬるり、と開かれた場所から新しい血が流れ落ちていくのがわかって、また昏い霧が額に降りてくる。
「まってて!」
レスファートが急いでベッドに走った。シーツを引っ張り落とし、剣と口で必死に引き裂く。よれよれの、それでも何とか作り上げた包帯を手に戻ってきて、ユーノの傷にあてがい、何とか強く巻き付けようとしてくれる。
「、あり、がと」
呼吸を整えた。布を一所懸命押さえている小さな手にそっと手を重ね、見上げてくる涙で一杯の瞳に笑み返す。レスファートに手伝ってもらいながら、包帯をきつめに腹に巻き締めた。チュニックの前をのろのろと合わせ、腰紐をその上から強く巻く。
「少しは、もつ」
締め付けられた痛みより、それで補強された感覚があるのはまずい。思っている以上に疲弊しているし、血が足りなくなっている。
ふらつく体を起こすと、レスファートが寄り添って支えてくれた。柔らかくて温かなぬくもりに一瞬の憩いを得る間さえなく、扉の外で激しい音が響き出した。どしん、どしん、とぶつかる音、ぎしぎしときしんで膨らむ扉、いよいよ押し入ってくるつもりらしい。
「こっち…」
レスファートに支えられながら、窓をバルコニーへと開け放つ。扉を睨みつつ、後じさりして、穏やかに輝かしく降る夜明けの光の中に立つ。
(いよいよ、最後の戦い、か)
冷たくて寒い覚悟。
脳裏を掠めるアシャの笑顔、セレドの父母やレアナやセアラ、動乱の世界はなるほど辺境の小娘が擦り抜けるには荷が重かったということか、それでも。
(他に方法なんかなかった)
少しでも生き延びる道を探し続けて、それがこの背後に頼るものもない虚空にしか繋がっていないなら、それでも十分に頑張った方なのだろう。
レスファートの小さな頭を見下ろす。
(何とか、レスだけでも)
考えろ、レスファートを逃がせる方法はないのか。と、
「クエアアーッ!」
空を裂く鋭い声がユーノの耳を貫いた。
「、サマルッ!」
振り仰ぐユーノの目に、上りつつある太陽を背に白いクフィラの姿が影絵のように見えた。みるみる急降下してくるその足に、何かきらきらするものが掴まれている。ふらつく体を支えながら、剣を握った右手を伸ばしたところへ、サマルカンドが体重を殺して舞い降りてくる。
「これ…アシャの…!」
思わず声を上げた。
サマルカンドの持って来た黄金の短剣を受け取る。長剣を捨て、それに持ち替える。
(アシャは無事なんだ)
短剣は汚れていない。生気に満ちて輝いている。
(アシャが、生きている)
そう思うだけで、体に新しい力が湧いてくる。
「クエアッ!」
「何?」
サマルカンドが叫び声を上げて翼を広げ、金色の目を『紅(あか)の塔』に向けて数回羽ばたいてみせた。
「ああ、そうか、アシャ達がこっちに向かってる?」
「クエッ!」
ユーノは『紅(あか)の塔』に目をやった。
基底部から少し手前、砂煙を上げて『白の塔』に近づいてきつつある一隊を確認する。
「助かったよ、サマル、お前がもう少し大きければ、私を運んでもらうんだけど…」
労ってやりながら、ふと気づく。
「お前、レスなら運べる?」
「クゥ?」
「ユーノ!」
レスファートがぎらりと目を光らせた。
「だめ! ユーノ一人のこして行けないもん! ユーノけがしてるじゃないか! 一人でいたら、ユーノは!」
込み上げてきた涙をこらえ切れずに、ぶん、と強く首を振って、再びユーノを睨み上げる。
「ユーノ、死んじゃう!」
「違うって、レス」
ユーノはせっかく巻き締めてもらった包帯を解き始めた。
「万に一つでも生き残る可能性があるなら、それに賭ける」
「何するの、ユーノ!」
解かれるシーツは既に朱に染まっている。レスファートが悲鳴を上げてすがりつこうとする。
「いいかい、レス」
乱れかける呼吸を何とか整えた。
「あそこはもう、もたない」
扉を指差す。間もなく破られるだろう。一刻の猶予もない。
「サマル、ここを掴んで」
もがこうとするレスファートの肩をサマルカンドに掴ませる。服の上から、それでもぎちりと握られて痛そうに顔をしかめるレスファートの胴にシーツを巻き、サマルカンドの足に結ぶ。
「ここは狭い。私達二人がいたら、必ずどちらか一人、まずくすれば二人ともやられてしまう」
飛び降りるなら命はあっても大怪我をする。けれど、サマルカンドに減速してもらえれば、軟着陸できるはずだ。
「アシャが短剣を届けてくれたから、これでかなり頑張れるよ」
黄金の短剣を示して微笑んだ。
「だから、レス、アシャの所に先に行って、待ってて」
「でも、ユーノ!」
体に巻かれたシーツの紅に体を強張らせていたレスファートは、身をよじらせてユーノの腕を掴んだ。
「ユーノ!」
ばき、と嫌な耳障りな音がして、扉が壊れた。隙間が開くのをもどかしがるように、怒声と歓声を上げて、荒くれた様子の男達が押し入ってくる。
「いやだ、ユーっ」
「レス…っ、お願い…っ……行けっ、サマル!」
レスファートを何とかバルコニーの手すりへ押し上げ、座らせ、クフィラに命じて背中を向ける。
「 クエ…ッ!」
肩越しに、レスファートの重さに一旦がくりと沈みながら、それでも翼をきしらせるようにゆっくりと、サマルカンドが舞い上がる。
「ユーノぉおお!」
悲鳴のようなレスファートの呼び声に、ユーノは少し苦笑し、振り返って見送った。
明るい空に遠ざかっていく姿に安堵の吐息を漏らす。
今度ばかりはどこまでもつか、ましてやレスファートと無事再会できるかどうか、全く保証がない。
「いたぞ、あそこだ!」「いた!」
背後に響き渡る蛮声に、ことさら泰然と振り返る。一瞬止まっていた右脇腹の血が、堪えかねたようにびちゃりとチュニックの内側を濡らしながら零れ落ちる。
「…」
無言で剣を構えた。喘ぐ呼吸を少しずつ整える。
先頭に立っているのは見覚えのある『運命(リマイン)』の真紅の瞳、それが右手の黄金の剣を、続いてユーノの目をまっすぐに捉える。
両者の呼吸がふっ、と重なった。
(来る!)
次の瞬間、ユーノと『運命(リマイン)』の剣はお互いの命に牙を立てた。
「レス!」
アシャは『紅(あか)の塔』と『白の塔』のほぼ中間でへたっているサマルカンドと、それと絡み合うようにもがいて暴れているレスファートを見つけた。
「運んだのか、サマル。よし、よくやった…」
アシャの褒めことばは、レスファートの体に巻き付いている、目を射るような紅の布に途切れる。
「はやくほどいて、アシャ! ユーノがあぶないの!」
じたばたするレスファートの体から、ようようシーツの切れ端らしい布を取り去る。それは赤と朱と紅のまだらに染め分けられ、ところどころにねっとりとした血の塊さえこびりつかせている凄惨なものだった。
「ユーノの…ほうたいなの…」
馬に乗せられたレスファートが、馬の腹を蹴りつけるアシャに泣き出しながら訴えた。
「きずに…してあげた…ばっか…なのに……すぐに……だめになっちゃ……」
しゃくりあげる少年を、アシャは片手で強く抱きかかえてやった。怯えたように体を震わせながら、レスファートがしがみついてくる。
「ユーノは今どこにいる?」
「バ、バルコニー…っ」
掠れたレスファートの声に、より顔をしかめて唇を噛む。
(月獣(ハーン)の傷さえ癒えていないのに)
胸をかきむしられるような痛みが感覚全てを支配していく。
(俺がまだ治しきっていないのに)
これほどの無力感を味わったことなどない。
(今また一人で、敵刃に晒されて……こんなに血を流して)
ぎり、と無意識に噛み締めた歯が嫌な音をたてる。
(俺が、ようやく、血を止めてやったのに)
引き裂かれた傷を一つ一つ手当して。
(ようやく、動くときに顔を歪めなくなって)
なのに、また。
(そして、また、俺は側にいない)
「アシャぁ」
縋るようなレスファートの声に我に返る。
「しゃべるな、レス、舌を噛むぞ」
それでなくても、後の者が追いつけないほど馬の速度を上げている。
それでも、レスファートは必死にことばを続けた。
「ユーノ…だいじょうぶ……だよね……?」
「当たり前だ」
(それを、俺に確かめるのか)
大丈夫でなくてどうする。自分が辿りつけない間に、ユーノを失ってしまったなら。
生きている間に紡ぐ全ての祈りの力を、今この一瞬に集められるならば、今のアシャは何を引き換えにするだろう。
(命か、世界か)
レスファートを抱えた体を出来る限り馬の背に伏せて、アシャはひたすらに『白の塔』を目指した。必死に追いついて来た左右のイルファとテオも強張った顔、三騎の蹄が大地を削り、砂埃を舞い上がらせる。目の前の『白の塔』が引き寄せられるように、みるみる間近に迫ってくる。
「サマル、ユーノを!」
「クェアッ!」
クフィラが白い翼を剣の刃のように閃かせて、バルコニーへと空を翔た。
「イルファ! テオ! 基底部へ!」
「おうよ!」
「はいっ!」
二人が残りの配下を引き連れて『白の塔』基底部の入り口に突っ込んでいく。
それを横目に、アシャは少し離れた所で馬を止め、片手を真上に上げた。
これほど頭の回りがよくて次の手を的確に打ってくるなら、もう一つ先まで打たれている可能性がある。そちらを止めておかなくてはならない。
「アシャ?」
「…黙って」
「う…ん」
不審げなレスファートを制し、アシャは目を閉じた。
額に乱れ落ちてくる髪から、吹き付けてくる荒々しい風から、ユーノを襲っているだろう刃も、この一瞬は頭から閉め出し、気持ちを整え研ぎすます。一歩間違えば、この場を違う空間に落ち込ませてしまう。
「視察官(オペ)の任として、この地を止める、アシャの名のもとに」
「アシャ…? あ…っ」
アシャの片手から溢れた金色の光に、レスファートが小さく声を上げて目を閉じた。光は目に見えぬほどの薄い膜の波動となって、アシャ達を取り巻いて揺れ、やがて、二つの塔を含む辺り一体を覆う黄金の天蓋となる。明け方の空を遮り燃え上がらせる金の布に、ようよう薄目を開けたレスファートが目を見張る。
「アシャ……これ……なに……?」
「今にわかる」
曖昧な笑みでレスファートを逸らそうとしたが、相手が揺らがない瞳で凝視しているのに苦笑した。
「…外からの敵を封じた。もっとも、中のものを外に出さない力もあるが」
自分が『運命(リマイン)』に破れることはあり得ない。最悪ただ一人生き残るなら、それはアシャに決まっている。
だが。
(ただ一人、なら)
そこにユーノの命がないと納得することなど、きっとできない。
万が一、アシャが『暴走』したのなら、『太皇(スーグ)』率いる『泉の狩人(オーミノ)』が駆けつけるか、野戦部隊(シーガリオン)が包囲するまで、致命的な破壊を封じなくてはならない。
(自ら放ったオーラに包まれて消滅する)
それも構わないと、既に自分の中では結論が出ていることだが。
(世界を永遠の闇で支配するぐらいなら)
あの渺々と寒い草原の遺跡でそう決めた。
(所詮、産まれるはずのなかった命に、幸福な未来など望めるはずもなかったのだと)
「でも、アシャ」
殺伐とした想いに沈みかけたアシャを、レスファートが呼び戻した。
「ぼくたち、どうして出ればいいの?」
きょとんとした表情はアシャの絶望を透かし見た気配はなかった。最愛のユーノの危機に見事駆けつけた、だからきっと間に合うはず、だからきっと皆で、この二つの塔から再び旅を始めるのだ、そう信じて疑わない瞳に虚を突かれた。
「あれは、なくなるの?」
黄金の天蓋がしずしずと広がり落ちてくる様子を指差す。
「…そのときは」
「うん?」
「封印を解く」
「ふういん?」
なおも問い続けようとしたレスファートの声は、響き渡ったイルファのどら声にかき消される。
「だめだぞ、アシャ!」
基底部でのやりあいに手こずりながら、珍しく弱音を吐く。
「こいつら、どこにいやがったんだ! 手練ばかりで、とても上まで辿りつけねえ!」
アシャが見やれば、イルファだからこそ報告できる余裕がある状態、テオは押し寄せる相手に呑まれまいと必死だ。
同時に、下からの迎撃が伝わったのだろう、バルコニーでの剣戟が激しさを増し、思わずはっとする。
「ユーノ!」
ほっそりとした人影が一人、バルコニーの端に追い詰められていた。円柱の間から見える下半身が妙に赤黒いばかりか、攻撃を避け、躱し、受け止めるたびにバルコニーに叩きつけられる、その手すりにべったりとした黒い汚れがなすり付けられていく。
「ユーノッ!」
背筋を駆け上がる悪寒、あれは血、ではないのか。
バルコニーの人影にアシャの叫びが届いたのだろうか、ふっと一瞬肩越しに振り向きかけた、その隙に打ち込んだ相手の剣を受け止めたのは短剣、金色の光が殺気立った横顔を照らす。
(間違いない!)
「イルファ!」
バルコニーを凝視したまま、馬を寄せていく。
「何としてでも敵を減らせ!」
「その、つもり、だが、な!」
手近の四人をぶっ飛ばし、再び基底部の入り口に突進しながら、イルファが叫ぶ。
「テオ、行くぜえ!」
「お、おう…っ!」
掠れた声が必死に応じる。
追い詰められて、ユーノは部屋へ逃げ込んだ。すぐに引きずり寄せた机や椅子で扉を押さえつける。
その場しのぎにしかならないことは重々わかっていたが、レスファートを庇いながらでは身動きが取れない。
窓の外にはバルコニー、いざとなれば飛び降りるしかないだろう。だが、それができるほど体が保つかどうか。腹の傷の痛みは、そうやすやすとユーノを解放してくれていない。
「あつつ…」
「だいじょうぶ、ユーノ」
「うん……だけど、どうして奴ら、こっちへ来たんだろうな」
流れ落ちる汗を拭いながら、ユーノはそれに応じる憶測を口に出すまいとした。
(まさか、アシャ達がやられた、なんて…)
締めつけてくるような痛みに右脇腹を押さえながら、ついつい目を閉じそうになる。
剣は血と脂に塗れてぼつぼつ役に立たなくなってきていた。
窓から入って来る朝日が眩い。傷の痛みを耐えるのと、走り回っていたせいで、汗がとめどなく流れてくる。息苦しさに喘げば傷の痛みがひどくなり、呼吸を押さえると肺が焼けつきそうになる。手足に力が入らなくなってきていて、さっき『運命(リマイン)』の剣を受け止めたときには、危うく剣を取り落としそうになった。
こんな状態でよくもレスファートを連れてここに逃げ込めたものだ。
(もつか?)
大きく息を吐いて、ユーノは壁と窓枠に腰をもたせかけ、両膝に手を当てて体を休ませた。座り込むと次には立てない、そんな感覚に腰を降ろせない。閉じた瞼の上を流れた汗が、目にしみ込んでひりひりする。
「ユーノ…」
不安そうなレスファートの声に、目を開けた。
目の前に澄んだアクアマリンの瞳が大きく見開かれている。心配を一杯にたたえて、すがるようにこちらを見つめている。紅潮した頬に乱れた銀糸のような髪をそっと払ってやりながら、ユーノは微笑んでみせた。
「大丈夫……少し休めばもつよ」
半分は自分に言い聞かせたつもりだが、答えたとたんに腹から痛みが駆け上がり、思わず顔を背けて呻いた。額に冷たい汗が吹き出て、体がぞくぞくする。腹からの出血は止まっていない。失われていくのは命と同じ、貴重な水分と気力だ。
「ユーノ! 傷、みせて!」
反応が鈍いユーノに不安になったのだろう、レスファートが叫んだ。
「大丈夫、だったら」
「だめ! 見せて!」
「…っ」
レスファートがユーノの手をこじ開けるようにして傷を確認し、息を呑む気配があった。ここに来て以来身に着けている淡い色のチュニックの右脇腹は、鮮やかな紅でずくずくだろう。外された手をすぐに戻せず喘ぐことしかできない。ごくり、と唾を呑み込んだレスファートがそっとチュニックを開いてくる。ぬるり、と開かれた場所から新しい血が流れ落ちていくのがわかって、また昏い霧が額に降りてくる。
「まってて!」
レスファートが急いでベッドに走った。シーツを引っ張り落とし、剣と口で必死に引き裂く。よれよれの、それでも何とか作り上げた包帯を手に戻ってきて、ユーノの傷にあてがい、何とか強く巻き付けようとしてくれる。
「、あり、がと」
呼吸を整えた。布を一所懸命押さえている小さな手にそっと手を重ね、見上げてくる涙で一杯の瞳に笑み返す。レスファートに手伝ってもらいながら、包帯をきつめに腹に巻き締めた。チュニックの前をのろのろと合わせ、腰紐をその上から強く巻く。
「少しは、もつ」
締め付けられた痛みより、それで補強された感覚があるのはまずい。思っている以上に疲弊しているし、血が足りなくなっている。
ふらつく体を起こすと、レスファートが寄り添って支えてくれた。柔らかくて温かなぬくもりに一瞬の憩いを得る間さえなく、扉の外で激しい音が響き出した。どしん、どしん、とぶつかる音、ぎしぎしときしんで膨らむ扉、いよいよ押し入ってくるつもりらしい。
「こっち…」
レスファートに支えられながら、窓をバルコニーへと開け放つ。扉を睨みつつ、後じさりして、穏やかに輝かしく降る夜明けの光の中に立つ。
(いよいよ、最後の戦い、か)
冷たくて寒い覚悟。
脳裏を掠めるアシャの笑顔、セレドの父母やレアナやセアラ、動乱の世界はなるほど辺境の小娘が擦り抜けるには荷が重かったということか、それでも。
(他に方法なんかなかった)
少しでも生き延びる道を探し続けて、それがこの背後に頼るものもない虚空にしか繋がっていないなら、それでも十分に頑張った方なのだろう。
レスファートの小さな頭を見下ろす。
(何とか、レスだけでも)
考えろ、レスファートを逃がせる方法はないのか。と、
「クエアアーッ!」
空を裂く鋭い声がユーノの耳を貫いた。
「、サマルッ!」
振り仰ぐユーノの目に、上りつつある太陽を背に白いクフィラの姿が影絵のように見えた。みるみる急降下してくるその足に、何かきらきらするものが掴まれている。ふらつく体を支えながら、剣を握った右手を伸ばしたところへ、サマルカンドが体重を殺して舞い降りてくる。
「これ…アシャの…!」
思わず声を上げた。
サマルカンドの持って来た黄金の短剣を受け取る。長剣を捨て、それに持ち替える。
(アシャは無事なんだ)
短剣は汚れていない。生気に満ちて輝いている。
(アシャが、生きている)
そう思うだけで、体に新しい力が湧いてくる。
「クエアッ!」
「何?」
サマルカンドが叫び声を上げて翼を広げ、金色の目を『紅(あか)の塔』に向けて数回羽ばたいてみせた。
「ああ、そうか、アシャ達がこっちに向かってる?」
「クエッ!」
ユーノは『紅(あか)の塔』に目をやった。
基底部から少し手前、砂煙を上げて『白の塔』に近づいてきつつある一隊を確認する。
「助かったよ、サマル、お前がもう少し大きければ、私を運んでもらうんだけど…」
労ってやりながら、ふと気づく。
「お前、レスなら運べる?」
「クゥ?」
「ユーノ!」
レスファートがぎらりと目を光らせた。
「だめ! ユーノ一人のこして行けないもん! ユーノけがしてるじゃないか! 一人でいたら、ユーノは!」
込み上げてきた涙をこらえ切れずに、ぶん、と強く首を振って、再びユーノを睨み上げる。
「ユーノ、死んじゃう!」
「違うって、レス」
ユーノはせっかく巻き締めてもらった包帯を解き始めた。
「万に一つでも生き残る可能性があるなら、それに賭ける」
「何するの、ユーノ!」
解かれるシーツは既に朱に染まっている。レスファートが悲鳴を上げてすがりつこうとする。
「いいかい、レス」
乱れかける呼吸を何とか整えた。
「あそこはもう、もたない」
扉を指差す。間もなく破られるだろう。一刻の猶予もない。
「サマル、ここを掴んで」
もがこうとするレスファートの肩をサマルカンドに掴ませる。服の上から、それでもぎちりと握られて痛そうに顔をしかめるレスファートの胴にシーツを巻き、サマルカンドの足に結ぶ。
「ここは狭い。私達二人がいたら、必ずどちらか一人、まずくすれば二人ともやられてしまう」
飛び降りるなら命はあっても大怪我をする。けれど、サマルカンドに減速してもらえれば、軟着陸できるはずだ。
「アシャが短剣を届けてくれたから、これでかなり頑張れるよ」
黄金の短剣を示して微笑んだ。
「だから、レス、アシャの所に先に行って、待ってて」
「でも、ユーノ!」
体に巻かれたシーツの紅に体を強張らせていたレスファートは、身をよじらせてユーノの腕を掴んだ。
「ユーノ!」
ばき、と嫌な耳障りな音がして、扉が壊れた。隙間が開くのをもどかしがるように、怒声と歓声を上げて、荒くれた様子の男達が押し入ってくる。
「いやだ、ユーっ」
「レス…っ、お願い…っ……行けっ、サマル!」
レスファートを何とかバルコニーの手すりへ押し上げ、座らせ、クフィラに命じて背中を向ける。
「 クエ…ッ!」
肩越しに、レスファートの重さに一旦がくりと沈みながら、それでも翼をきしらせるようにゆっくりと、サマルカンドが舞い上がる。
「ユーノぉおお!」
悲鳴のようなレスファートの呼び声に、ユーノは少し苦笑し、振り返って見送った。
明るい空に遠ざかっていく姿に安堵の吐息を漏らす。
今度ばかりはどこまでもつか、ましてやレスファートと無事再会できるかどうか、全く保証がない。
「いたぞ、あそこだ!」「いた!」
背後に響き渡る蛮声に、ことさら泰然と振り返る。一瞬止まっていた右脇腹の血が、堪えかねたようにびちゃりとチュニックの内側を濡らしながら零れ落ちる。
「…」
無言で剣を構えた。喘ぐ呼吸を少しずつ整える。
先頭に立っているのは見覚えのある『運命(リマイン)』の真紅の瞳、それが右手の黄金の剣を、続いてユーノの目をまっすぐに捉える。
両者の呼吸がふっ、と重なった。
(来る!)
次の瞬間、ユーノと『運命(リマイン)』の剣はお互いの命に牙を立てた。
「レス!」
アシャは『紅(あか)の塔』と『白の塔』のほぼ中間でへたっているサマルカンドと、それと絡み合うようにもがいて暴れているレスファートを見つけた。
「運んだのか、サマル。よし、よくやった…」
アシャの褒めことばは、レスファートの体に巻き付いている、目を射るような紅の布に途切れる。
「はやくほどいて、アシャ! ユーノがあぶないの!」
じたばたするレスファートの体から、ようようシーツの切れ端らしい布を取り去る。それは赤と朱と紅のまだらに染め分けられ、ところどころにねっとりとした血の塊さえこびりつかせている凄惨なものだった。
「ユーノの…ほうたいなの…」
馬に乗せられたレスファートが、馬の腹を蹴りつけるアシャに泣き出しながら訴えた。
「きずに…してあげた…ばっか…なのに……すぐに……だめになっちゃ……」
しゃくりあげる少年を、アシャは片手で強く抱きかかえてやった。怯えたように体を震わせながら、レスファートがしがみついてくる。
「ユーノは今どこにいる?」
「バ、バルコニー…っ」
掠れたレスファートの声に、より顔をしかめて唇を噛む。
(月獣(ハーン)の傷さえ癒えていないのに)
胸をかきむしられるような痛みが感覚全てを支配していく。
(俺がまだ治しきっていないのに)
これほどの無力感を味わったことなどない。
(今また一人で、敵刃に晒されて……こんなに血を流して)
ぎり、と無意識に噛み締めた歯が嫌な音をたてる。
(俺が、ようやく、血を止めてやったのに)
引き裂かれた傷を一つ一つ手当して。
(ようやく、動くときに顔を歪めなくなって)
なのに、また。
(そして、また、俺は側にいない)
「アシャぁ」
縋るようなレスファートの声に我に返る。
「しゃべるな、レス、舌を噛むぞ」
それでなくても、後の者が追いつけないほど馬の速度を上げている。
それでも、レスファートは必死にことばを続けた。
「ユーノ…だいじょうぶ……だよね……?」
「当たり前だ」
(それを、俺に確かめるのか)
大丈夫でなくてどうする。自分が辿りつけない間に、ユーノを失ってしまったなら。
生きている間に紡ぐ全ての祈りの力を、今この一瞬に集められるならば、今のアシャは何を引き換えにするだろう。
(命か、世界か)
レスファートを抱えた体を出来る限り馬の背に伏せて、アシャはひたすらに『白の塔』を目指した。必死に追いついて来た左右のイルファとテオも強張った顔、三騎の蹄が大地を削り、砂埃を舞い上がらせる。目の前の『白の塔』が引き寄せられるように、みるみる間近に迫ってくる。
「サマル、ユーノを!」
「クェアッ!」
クフィラが白い翼を剣の刃のように閃かせて、バルコニーへと空を翔た。
「イルファ! テオ! 基底部へ!」
「おうよ!」
「はいっ!」
二人が残りの配下を引き連れて『白の塔』基底部の入り口に突っ込んでいく。
それを横目に、アシャは少し離れた所で馬を止め、片手を真上に上げた。
これほど頭の回りがよくて次の手を的確に打ってくるなら、もう一つ先まで打たれている可能性がある。そちらを止めておかなくてはならない。
「アシャ?」
「…黙って」
「う…ん」
不審げなレスファートを制し、アシャは目を閉じた。
額に乱れ落ちてくる髪から、吹き付けてくる荒々しい風から、ユーノを襲っているだろう刃も、この一瞬は頭から閉め出し、気持ちを整え研ぎすます。一歩間違えば、この場を違う空間に落ち込ませてしまう。
「視察官(オペ)の任として、この地を止める、アシャの名のもとに」
「アシャ…? あ…っ」
アシャの片手から溢れた金色の光に、レスファートが小さく声を上げて目を閉じた。光は目に見えぬほどの薄い膜の波動となって、アシャ達を取り巻いて揺れ、やがて、二つの塔を含む辺り一体を覆う黄金の天蓋となる。明け方の空を遮り燃え上がらせる金の布に、ようよう薄目を開けたレスファートが目を見張る。
「アシャ……これ……なに……?」
「今にわかる」
曖昧な笑みでレスファートを逸らそうとしたが、相手が揺らがない瞳で凝視しているのに苦笑した。
「…外からの敵を封じた。もっとも、中のものを外に出さない力もあるが」
自分が『運命(リマイン)』に破れることはあり得ない。最悪ただ一人生き残るなら、それはアシャに決まっている。
だが。
(ただ一人、なら)
そこにユーノの命がないと納得することなど、きっとできない。
万が一、アシャが『暴走』したのなら、『太皇(スーグ)』率いる『泉の狩人(オーミノ)』が駆けつけるか、野戦部隊(シーガリオン)が包囲するまで、致命的な破壊を封じなくてはならない。
(自ら放ったオーラに包まれて消滅する)
それも構わないと、既に自分の中では結論が出ていることだが。
(世界を永遠の闇で支配するぐらいなら)
あの渺々と寒い草原の遺跡でそう決めた。
(所詮、産まれるはずのなかった命に、幸福な未来など望めるはずもなかったのだと)
「でも、アシャ」
殺伐とした想いに沈みかけたアシャを、レスファートが呼び戻した。
「ぼくたち、どうして出ればいいの?」
きょとんとした表情はアシャの絶望を透かし見た気配はなかった。最愛のユーノの危機に見事駆けつけた、だからきっと間に合うはず、だからきっと皆で、この二つの塔から再び旅を始めるのだ、そう信じて疑わない瞳に虚を突かれた。
「あれは、なくなるの?」
黄金の天蓋がしずしずと広がり落ちてくる様子を指差す。
「…そのときは」
「うん?」
「封印を解く」
「ふういん?」
なおも問い続けようとしたレスファートの声は、響き渡ったイルファのどら声にかき消される。
「だめだぞ、アシャ!」
基底部でのやりあいに手こずりながら、珍しく弱音を吐く。
「こいつら、どこにいやがったんだ! 手練ばかりで、とても上まで辿りつけねえ!」
アシャが見やれば、イルファだからこそ報告できる余裕がある状態、テオは押し寄せる相手に呑まれまいと必死だ。
同時に、下からの迎撃が伝わったのだろう、バルコニーでの剣戟が激しさを増し、思わずはっとする。
「ユーノ!」
ほっそりとした人影が一人、バルコニーの端に追い詰められていた。円柱の間から見える下半身が妙に赤黒いばかりか、攻撃を避け、躱し、受け止めるたびにバルコニーに叩きつけられる、その手すりにべったりとした黒い汚れがなすり付けられていく。
「ユーノッ!」
背筋を駆け上がる悪寒、あれは血、ではないのか。
バルコニーの人影にアシャの叫びが届いたのだろうか、ふっと一瞬肩越しに振り向きかけた、その隙に打ち込んだ相手の剣を受け止めたのは短剣、金色の光が殺気立った横顔を照らす。
(間違いない!)
「イルファ!」
バルコニーを凝視したまま、馬を寄せていく。
「何としてでも敵を減らせ!」
「その、つもり、だが、な!」
手近の四人をぶっ飛ばし、再び基底部の入り口に突進しながら、イルファが叫ぶ。
「テオ、行くぜえ!」
「お、おう…っ!」
掠れた声が必死に応じる。
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