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13.麦の女王(3)
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「ユーノ、こちらを向いておくれ」
「その愛らしい唇を僕に捧げておくれ」
「かわいいユーノ」
「愛らしいユーノ」
「ユーノ、あなたの耳は、麦の調べをも聴き取れそうな美しさを持っている。あなたの髪は、そよ風になびいて明るい光を放ち…」
ばかの一つ覚えのようにひたすら褒め讃えるもの、何やら書きつけたものを持ってきて読み上げるもの、入れ代わり立ち代わりのひっきりなしの求愛にさすがにうんざりしてきたユーノだったが、そのうちの一人の声に顔を向けた。
「瞳の夜を私にくれないか。かわりに私は眩い朝をお前にあげよう」
(ラオカーンの詩だ)
純白のラフレスの花を差し出していた若者は、自分一人が女王の目に止まったと知って、ますます熱心にことばを続けた。
「ああ、青き空の不思議を教えてくれ、私は地の実りを返すから。緑の風の行く先へ走り去る白い少女よ、その素足に飾る白きラフレスよ」
しっかりした眉、まっすぐで誠実そうな眼差し、豊かな声には真摯な響きがある。
(レアナ姉さまがよく詩ってたっけ)
思わず、差し出されたラフレスを受け取った。相手が嬉しそうに顔をほころばせるのを、辛い思いで見返す。
(けれどこれもまた、幻の光景…)
視界が揺らぐ。
(あれは何て言ったっけ……白き花よ、許されるなら……だっけ)
ラフレスを渡してくれた相手がなおも先を続けようとしたとき、唐突に扉が開いた。入ってきた人物を見て、求婚者達が次々と決まり悪そうな顔で出て行く。
「それでは、ユーノ、また」
「ユーノ、次こそ、僕を選んで下さい」
「ユーノ、私の夜はあなたのものです」
最後に、例のラオカーンの詩を詠った男が、やはりラオカーンの別れの句を告げて立ち去った。
「何だ?」
次々と去って行く男達に、入って来たアシャがきょとんとした顔でユーノを振り向く。
「全部振ったのか?」
「あなたに恐れをなしたんだろ、とても勝ち目がないって」
「ふうん?」
アシャは己の影響に気づいていないらしい。軽く首を傾げたが、最後の一人が出て行くと、思い出したようにラフレスをユーノに渡そうとし、手を止めた。
「もう、あるんだな」
「いいよ、もらっとく」
ふう、と溜め息をついて、ユーノはアシャの手から花を受け取った。瞬間、触れた指先にどきりとした胸の音をごまかすように、部屋の中を示して笑う。
「すごいだろ?」
「花屋が開けるな」
「ボクもそう思う」
少しためらったのは、花を手放したくなかったからだ。アシャから花を捧げられることなど、きっとこの先はない。
けれど。
(これもきっと、幻で)
思い切って、アシャのラフレスを他の花と同様、テーブルの上に置く。
「ラオカーンの詩を知っているのがいたな」
アシャはちらっとテーブルの上のもう一本のラフレスに目をやり、続いて扉を振り向いた。
「ああ、カズン、とか言う人だよ。二、三年、旅をしてたことがあるんだって」
「そうか」
アシャは顔を戻した。しらっとした顔で、それ以上口説き文句を続けるつもりもなく、
「国によっては、ラオカーンで一日が明け、一日が終わるところがあるからな」
アシャは祭りに参加はしているが、ユーノに求愛しなくてはならない義理はない。
(ちぇっ)
切なくなった自分の気持ちに目を閉じ、話題を変える。
「レアナ姉さまがよく歌ってた。アシャ、何か好きなの、ある?」
「そうだな…」
アシャは無造作に長椅子のユーノの隣に腰を降ろした。
村一番の上等な布ばり椅子だということだが、かなりの年代物で二人が座るときしんだ音をたてる。そっと距離を置こうにもへたに体を端に寄せると脚が危うそうだ。
「俺としては…」
アシャは何か考え込むような目でちらりとユーノを見た。
今日のユーノはドレスに白い薄物とレース、髪飾りは麦と花とリボンで組み合わされた花冠だ。初めて装ったものより素朴に見えるだろうが、ユーノはこちらの方が好きだ。
(でもアシャはどう思う?)
「『宵の女神に』が気に入ってるかな」
ラオカーンには恋の詩が多い。たとえ、ユーノに向けてではなくても、アシャの声でラオカーンが聞ける。
僅かな期待に胸が躍る。
「どんなの、だっけ?」
「ああ、こんなのだ」
有名なやつだから、知ってるんじゃないか。
さりげなく視線を逸らせたアシャが、息を改めた。
「白き花よ
許されるなら、その花弁に口づけん」
びく、と思わず体が強張った。
アシャは気づいていないらしく、声に集中して続きを詩う。
「夜闇は葉ずれとともに打ち寄せ
今、彼の女性(ひと)の白き手に…」
優しい響き、甘い声色。
(まいった、な)
苦笑する視界が滲む。
(好きなものも、同じなのか)
離れていても呼び合う魂とはこういうものか。側に居なくても、願いを重ね合う恋人達の絆を見せつけられて、胸が切なくて苦しい。
(いつまでたっても、届かない、気持ち…)
歪みそうになる顔を平静に保とうとして、堪え切れずに唇を噛み、瞼を伏せる。
(いつまでたっても、届くわけがない、気持ち…)
わかっていたことではないのか、そんなことはとっくの昔に。
ユーノの脳裏を、初めての夜会の記憶が流れて行く。
十歳の時、だった。
他国の王子達が訪ねて来て、セレドの三人の姫にと、三着のドレスを贈り物とした。
セレディス皇はおおいに喜び、幸いに王子達も三人兄弟ということで、彼らを夜会に迎え、三人の娘にもてなさせることとした。
贈られたドレスは純白、ラフレスの細工の花飾りが添えられ、胸元には青の宝石、レースとフリルは金糸銀糸で手の込んだ縫い取りと飾り刺繍をされた豪華な美しいものだった。はしゃいだ娘達はドレスを身に着け、それぞれ得意満面で鏡の前に立ったのだが……一人だけ、ユーノは不安に立ち竦んだ。
どこか、似合わない。
侍女も『それ』に気がついた。
あれやこれやと他の二人より手をかけた。髪を特別に整えた。宝石も多めに飾りつけた。唇に紅を濃いめにさし、ラスレスの生花も添えた。それでようやく、少しは見栄えがよくなったと思われたのだろう、レアナとセアラとともに広間に送り出された。
皇女達が広間に現れると、人々はわあっと華やかな歓声を上げて迎えてくれた。王子達も目を輝かせて笑み崩れる。
(喜んでくれてる)
ユーノはほっとした。少し緊張がほぐれて、無造作に髪をとき流したレアナ、おしゃまに結い上げたセアラを見た。二人と同じぐらい、自分も美しく見えているのだと思うと、喜びはさらに跳ね上がった。
夜会は滞りなく進んで、やがてダンスが始まった。
セレディス皇の合図で王子達が歩み寄ってくる。一番上の王子が頬を赤らめながらレアナに申し込む。一番下の王子がにこにことセアラを誘って中央へ出て行く。
(次は私なんだ)
胸をどきどきさせて待つユーノの耳に、広間の賑やかな嬌声を縫って、唐突に一つの呟きが届いた。
「損だな」
(え?)
思わず目を見張って中の王子を見ると、相手はうらやましそうにレアナを、そしてセアラと踊る弟の姿を眺めている。気づけば、客達の視線はただの一つも、次に申し込まれるだろうユーノには向けられていない。
ぼそりと続いたことばが聞こえているとは思っていないのだろう、それほど小さな呟きのつもりなのだろう。だが。
「真ん中にはいつも残り物が来るんだよな…」
(のこり、もの…)
顔が熱くなって身が竦んだ。
(私は…)
不安になって父母を振り返ると、中の王子がユーノと踊るのをひたすら無邪気に待っているように、微笑んでこちらを見守っているセレディス皇とミアナの姿が見えた。視線にうろたえて、再び中の王子を見ると、相手は複雑な表情でちらりとユーノを見やり、そそくさと目を逸らせ、忌々しそうに舌打ちをする。
(困って……るんだ)
胸の中で、理解が弾けた。
(私と踊りたくなくて……困ってるんだ)
客達が歓声を上げて迎えたのは、ましてや、王子達が目を輝かせて待ったのは。
(私じゃ、なかった?)
すう、っと血の気が引いた。
(そう、か)
俯いた。
視界の端で髪に飾ったラフレスの花弁が揺れて、滲んだ。
(そう…か……)
唇をそっと、やがて、きつく噛む。
(そう…なんだ…)
それからふいに顔を上げ、これみよがしににやりと笑って、身を翻した。後ろに控えていたサルトの手を掴んで誘う。
「踊ろう、サルト!」
(ごめんよ)
「で、でも、ユーナ様!」
「いいから!」
(ごめんよ、サルト)
戸惑いたじろぐサルトを無理矢理引っ張り出す。
客がざわめいた。ミアナが不快そうに眉を寄せ、セレディスがむっつりと顔をしかめる。
そして、その中で、なぜかはっきりと聞こえた中の王子の深く大きな吐息、背中を向けた瞬間の安堵の表情。
(き・か・ざっ・た・の・に・な)
サルトが困った様子で振り回されているのに笑い、ことさらはしゃぎながら、胸の中でことばを一つ一つ放り投げた。
(姉さまより・セアラより・時間・かけて・もらったのに・な)
昔話がある。
森一番の醜い鳥がきれいになりたいばっかりに、落ちていた羽根や葉っぱや網のように編まれた虫の巣を集めて自分を飾りつけるのだ。けれど、見かけた鳥の仲間から羽根を奪われ、風の精に葉っぱを吹き飛ばされ、銀糸のような虫の巣網も逃げ惑うときに自分で破いてしまう。傷を負い、痛みに泣きながら、ぼろぼろになって自分の寝所に帰って行く鳥の、虚栄心を嘲笑う話なのだ。
(けれど、醜い鳥だって、ちょっとだけ、きれいになってみたかっただけだろうに)
あの話の残酷さは、きっとレアナ達にはわからない。
娘達を健やかに育てようと、ミアナがその話を繰り返すたび、ユーノは辛くてたまらなかった。
ぼろぼろになって拾い集めた銀糸の巣網を引きずるあの鳥と、必死に着飾って、それでも王子に拒まれる自分のどこにどんな差があろう。
「ユーナ様、どうかなさったのですか」
「なんでもない、なんでもないよ、サルト、いつもの悪ふざけだ、だから」
もっとみんなを驚かせよう。
ことさらにっこり笑って、ユーノはサルトを振り回した。
夜会が終わって、もちろん、ユーノは、せっかくの会で客人である王子に礼を失したと、ひどく父母に怒られた。皇族としてあるまじき振舞いだと。
けれど、誰もユーノの無礼の理由は聞かなかった。
ただ、ユーノは『変わっている』のだ、ということになった。
それから、ユーノは夜会に出なくなった。
大抵は、皇宮の庭でカザドを見張りながら、木の枝の上やレノの背で、華やかに盛り上がる夜会を眺めていた。
レアナが舞う。セアラが笑う。明かりとざわめきが眩くて、何度も目を逸らしたけれど、いつの間にか、じっと見つめてしまう。
今でもはっきり覚えている。
夜会の座では、レアナが必ずセレディス皇に促されて、ラオカーンの詩を歌うのだ。
「白き花よ
許されるなら、その花弁に口づけん……」
伸びやかな澄んだ声が広間を見たし、人々をうっとりと微笑ませるのを、ユーノは暗闇から何度も一人で見てきた。
(許されるなら、か)
記憶の中のレアナの姿に魅入りながら、今も思う。
(あの時、泣き出していたなら、私は夜会に出られていたのかな、皇女の一人として)
そう、ひどい扱いだと泣き出していたなら。
父母は心配し、ユーノは慰められ、そして、あの、中の王子こそ礼儀知らずとして叱責されていたのだろう。
(それは、辛いよ、なあ…)
他国の宮殿で、自国では王子とあがめられている者がののしられるのは。
それに、中の王子が踊れなかったのは、彼の失礼というよりは、見劣りする容姿で生まれてしまった自分のせいだ、きっと。
(だって、サルト以外、聞かなかった)
どうしてあんなことをしたのか、と。何があったのだと。
どこかで皆、思っていたからではないのか。三人並んだ時、飾りつけてはいるが美しさにほど遠いユーノを眺め、中の王子の気の進まぬ様子にどこか同情し共感した、あの皇女と踊らなくてはならないのか、気の毒なことだ、と。
だからこそ、あの後誰も彼を咎めなかった、彼の兄弟でさえも。
あれほどたくさんの人の中で感じた、竦むような思いは、誰もユーノを守ってはくれないのだという理解。
(飾りを剥ぎとられて、泣いている、鳥)
それでも。
ソレデモ、ユメハ、ミラレルカモト。
願って。
願った、だけだ、けど。
(きっと、それが間違いだったんだ)
きっと、女に生まれたことさえ、きっと。
(許されるなら)
少女でいい、と許されるなら。
誰かに助けを求めていい、と許されるなら。
(求められるのは、いつもいつも、私、ではない)
すっかり慣れているはずのつもりだったのに。
(ばか…だなあ……)
アシャのことになると、まだ胸が切なく揺れてしまう。
「……そして
柔らかき褥(しとね)へと誘う
許されるなら、その眠りに
とこしえの愛を誓いて
その心を得んとする
愚かなるかな
恋する我は……」
アシャの声は甘やかせるように優しい。
その声にただ浸るだけ、それで満足するしかないのだろう、ユーノには。
(破れて引きずる、銀糸、いや金色の網…)
強く握ったら粉々になって消える、儚く美しい夢の網。
それほど保つわけがないとわかりながら、それでも必死に手を添え、支え、転がっても怪我をしても手放さず、胸に守り抱えて持ち帰り、ほっとして微笑んで手を開けばそこには何もなく。
(振り返って見送る、やすやすと、当然のように波打たせて攫っていく、白い手の持ち主)
ああ、そうなんだ。
あれは、私のものでは、なかったんだ……。
納得と、理解と。
空っぽの傷だらけの両手をぶら下げて。
きっとまた、苦笑いする、自分の愚かさに。
(何度繰り返せば…気が済むんだ、と)
「ユーノ?」
「なっ、なにっ」
ぼんやりとしてたのを、ふいに顎を掬われ押し上げられ、ぎょっとする。深くたゆとうような紫の目が覗き込んでいて、どぎまぎした。
「目が潤んでる」
「っ」
指摘されて顔を背けかけたが、アシャはそれを許さなかった。
「どうした?」
ラオカーンの詩を歌ったのと同じ柔らかな声で問われて、瞬間、心が崩れそうになるのを、必死に振り切った。
「な、なんでもない、気のせいだろ?」
急いでアシャの手を払い、顔を振った。滲みかけた涙を飲み下す。
「それより、アシャ」
「うん?」
訝しげなアシャを、逆に真正面から見据えて、
「麦祭に参加したの、何か理由があるんだろ?」
「どうしてだ」
「イルファが、神殿の肝試しの話が出たとたん、アシャの態度が変わったって言ってたけど」
「へえ、わかってたのか」
ひょい、と片方の眉を上げてみせた。
アシャの気持ちがそちらへ流れたのにほっとしたの半分、がっかりしたの半分で、
「じゃあ、やっぱり何かあるんだ」
「実はあの神殿のある場所に宙道(シノイ)の出入り口がある」
「出入り口?」
ユーノは首を傾げた。宙道(シノイ)自体が今一つ掴めていないのだから、出入り口と言われても想像がつかない。
「神殿を建てるぐらいだから、あそこは聖地化してるんだろう。とすると、そうそうあっさり出入り出来なくなってるんだろう」
「ああ、それで」
ようやく得心がいった。
「祭りの最終日の肝試しをうまく利用しようというわけか」
「まあ、そういうことだ」
アシャはにやりと笑った。
(何だ、やっぱり、他の理由、なのか)
つい、そう思ってユーノは苦笑した。期待なんて何度も裏切られて捨てているのに、忘れたころに蘇ってくる。
それでなくても、このアシャという男は、己の影響力がわかっていないところがある。
(ほんと、無神経なやつだ)
まるで、ユーノの心のぼやきを聞いたように、アシャがぬけぬけとした口調で尋ねてきた。
「ところで、俺への返事は?」
(ほら、な)
ユーノは胸の中で吐息をついた。
「返事って何だよ」
「ラオカーンの『宵の女神に』は求愛の詩なんだぞ」
「あ、そうなの」
さりげなく応えながら、正直なもので心臓の鼓動が跳ね上がる。
(違う違う、これは遊び、祭りの間のお芝居だ)
ユーノは自分に言い聞かせた。
(お芝居にはお芝居で、だよね)
「だーめ」
にっこり白々しく笑って応える。
「回答は祭りの最終日までなし」
「そいつはひどい。焦がれ死にしたら、どうしてくれる?」
アシャがわずかに目を細めて、唇をとがらせて見せる。わかっているのかいないのか、子どもっぽい表情にどきりとするような艶がある。
「死ねば」
突き放した。
「おいおい…」
アシャがひくっと引き攣る。
「それとも何か、レスファートに張り合う気なのかい?」
「レス、ね。なるほど、強敵だな。うん、じゃあ、レスに譲ろう、今回は」
(人の気も知らないで)
さすがにむっとした。
「アシャってさ」
「うん?」
「大概鈍感な男だよね」
「鈍感?」
目を見開いて無邪気に首を傾げている。本当に呆れた男だ。
「それで一体、何人くどいてる?」
「何人って」
「あ、男性も含めて、でいいけど?」
「ユーノッ!」
くしゃりと顰められたアシャの顔に、少しだけ気が晴れた。
「その愛らしい唇を僕に捧げておくれ」
「かわいいユーノ」
「愛らしいユーノ」
「ユーノ、あなたの耳は、麦の調べをも聴き取れそうな美しさを持っている。あなたの髪は、そよ風になびいて明るい光を放ち…」
ばかの一つ覚えのようにひたすら褒め讃えるもの、何やら書きつけたものを持ってきて読み上げるもの、入れ代わり立ち代わりのひっきりなしの求愛にさすがにうんざりしてきたユーノだったが、そのうちの一人の声に顔を向けた。
「瞳の夜を私にくれないか。かわりに私は眩い朝をお前にあげよう」
(ラオカーンの詩だ)
純白のラフレスの花を差し出していた若者は、自分一人が女王の目に止まったと知って、ますます熱心にことばを続けた。
「ああ、青き空の不思議を教えてくれ、私は地の実りを返すから。緑の風の行く先へ走り去る白い少女よ、その素足に飾る白きラフレスよ」
しっかりした眉、まっすぐで誠実そうな眼差し、豊かな声には真摯な響きがある。
(レアナ姉さまがよく詩ってたっけ)
思わず、差し出されたラフレスを受け取った。相手が嬉しそうに顔をほころばせるのを、辛い思いで見返す。
(けれどこれもまた、幻の光景…)
視界が揺らぐ。
(あれは何て言ったっけ……白き花よ、許されるなら……だっけ)
ラフレスを渡してくれた相手がなおも先を続けようとしたとき、唐突に扉が開いた。入ってきた人物を見て、求婚者達が次々と決まり悪そうな顔で出て行く。
「それでは、ユーノ、また」
「ユーノ、次こそ、僕を選んで下さい」
「ユーノ、私の夜はあなたのものです」
最後に、例のラオカーンの詩を詠った男が、やはりラオカーンの別れの句を告げて立ち去った。
「何だ?」
次々と去って行く男達に、入って来たアシャがきょとんとした顔でユーノを振り向く。
「全部振ったのか?」
「あなたに恐れをなしたんだろ、とても勝ち目がないって」
「ふうん?」
アシャは己の影響に気づいていないらしい。軽く首を傾げたが、最後の一人が出て行くと、思い出したようにラフレスをユーノに渡そうとし、手を止めた。
「もう、あるんだな」
「いいよ、もらっとく」
ふう、と溜め息をついて、ユーノはアシャの手から花を受け取った。瞬間、触れた指先にどきりとした胸の音をごまかすように、部屋の中を示して笑う。
「すごいだろ?」
「花屋が開けるな」
「ボクもそう思う」
少しためらったのは、花を手放したくなかったからだ。アシャから花を捧げられることなど、きっとこの先はない。
けれど。
(これもきっと、幻で)
思い切って、アシャのラフレスを他の花と同様、テーブルの上に置く。
「ラオカーンの詩を知っているのがいたな」
アシャはちらっとテーブルの上のもう一本のラフレスに目をやり、続いて扉を振り向いた。
「ああ、カズン、とか言う人だよ。二、三年、旅をしてたことがあるんだって」
「そうか」
アシャは顔を戻した。しらっとした顔で、それ以上口説き文句を続けるつもりもなく、
「国によっては、ラオカーンで一日が明け、一日が終わるところがあるからな」
アシャは祭りに参加はしているが、ユーノに求愛しなくてはならない義理はない。
(ちぇっ)
切なくなった自分の気持ちに目を閉じ、話題を変える。
「レアナ姉さまがよく歌ってた。アシャ、何か好きなの、ある?」
「そうだな…」
アシャは無造作に長椅子のユーノの隣に腰を降ろした。
村一番の上等な布ばり椅子だということだが、かなりの年代物で二人が座るときしんだ音をたてる。そっと距離を置こうにもへたに体を端に寄せると脚が危うそうだ。
「俺としては…」
アシャは何か考え込むような目でちらりとユーノを見た。
今日のユーノはドレスに白い薄物とレース、髪飾りは麦と花とリボンで組み合わされた花冠だ。初めて装ったものより素朴に見えるだろうが、ユーノはこちらの方が好きだ。
(でもアシャはどう思う?)
「『宵の女神に』が気に入ってるかな」
ラオカーンには恋の詩が多い。たとえ、ユーノに向けてではなくても、アシャの声でラオカーンが聞ける。
僅かな期待に胸が躍る。
「どんなの、だっけ?」
「ああ、こんなのだ」
有名なやつだから、知ってるんじゃないか。
さりげなく視線を逸らせたアシャが、息を改めた。
「白き花よ
許されるなら、その花弁に口づけん」
びく、と思わず体が強張った。
アシャは気づいていないらしく、声に集中して続きを詩う。
「夜闇は葉ずれとともに打ち寄せ
今、彼の女性(ひと)の白き手に…」
優しい響き、甘い声色。
(まいった、な)
苦笑する視界が滲む。
(好きなものも、同じなのか)
離れていても呼び合う魂とはこういうものか。側に居なくても、願いを重ね合う恋人達の絆を見せつけられて、胸が切なくて苦しい。
(いつまでたっても、届かない、気持ち…)
歪みそうになる顔を平静に保とうとして、堪え切れずに唇を噛み、瞼を伏せる。
(いつまでたっても、届くわけがない、気持ち…)
わかっていたことではないのか、そんなことはとっくの昔に。
ユーノの脳裏を、初めての夜会の記憶が流れて行く。
十歳の時、だった。
他国の王子達が訪ねて来て、セレドの三人の姫にと、三着のドレスを贈り物とした。
セレディス皇はおおいに喜び、幸いに王子達も三人兄弟ということで、彼らを夜会に迎え、三人の娘にもてなさせることとした。
贈られたドレスは純白、ラフレスの細工の花飾りが添えられ、胸元には青の宝石、レースとフリルは金糸銀糸で手の込んだ縫い取りと飾り刺繍をされた豪華な美しいものだった。はしゃいだ娘達はドレスを身に着け、それぞれ得意満面で鏡の前に立ったのだが……一人だけ、ユーノは不安に立ち竦んだ。
どこか、似合わない。
侍女も『それ』に気がついた。
あれやこれやと他の二人より手をかけた。髪を特別に整えた。宝石も多めに飾りつけた。唇に紅を濃いめにさし、ラスレスの生花も添えた。それでようやく、少しは見栄えがよくなったと思われたのだろう、レアナとセアラとともに広間に送り出された。
皇女達が広間に現れると、人々はわあっと華やかな歓声を上げて迎えてくれた。王子達も目を輝かせて笑み崩れる。
(喜んでくれてる)
ユーノはほっとした。少し緊張がほぐれて、無造作に髪をとき流したレアナ、おしゃまに結い上げたセアラを見た。二人と同じぐらい、自分も美しく見えているのだと思うと、喜びはさらに跳ね上がった。
夜会は滞りなく進んで、やがてダンスが始まった。
セレディス皇の合図で王子達が歩み寄ってくる。一番上の王子が頬を赤らめながらレアナに申し込む。一番下の王子がにこにことセアラを誘って中央へ出て行く。
(次は私なんだ)
胸をどきどきさせて待つユーノの耳に、広間の賑やかな嬌声を縫って、唐突に一つの呟きが届いた。
「損だな」
(え?)
思わず目を見張って中の王子を見ると、相手はうらやましそうにレアナを、そしてセアラと踊る弟の姿を眺めている。気づけば、客達の視線はただの一つも、次に申し込まれるだろうユーノには向けられていない。
ぼそりと続いたことばが聞こえているとは思っていないのだろう、それほど小さな呟きのつもりなのだろう。だが。
「真ん中にはいつも残り物が来るんだよな…」
(のこり、もの…)
顔が熱くなって身が竦んだ。
(私は…)
不安になって父母を振り返ると、中の王子がユーノと踊るのをひたすら無邪気に待っているように、微笑んでこちらを見守っているセレディス皇とミアナの姿が見えた。視線にうろたえて、再び中の王子を見ると、相手は複雑な表情でちらりとユーノを見やり、そそくさと目を逸らせ、忌々しそうに舌打ちをする。
(困って……るんだ)
胸の中で、理解が弾けた。
(私と踊りたくなくて……困ってるんだ)
客達が歓声を上げて迎えたのは、ましてや、王子達が目を輝かせて待ったのは。
(私じゃ、なかった?)
すう、っと血の気が引いた。
(そう、か)
俯いた。
視界の端で髪に飾ったラフレスの花弁が揺れて、滲んだ。
(そう…か……)
唇をそっと、やがて、きつく噛む。
(そう…なんだ…)
それからふいに顔を上げ、これみよがしににやりと笑って、身を翻した。後ろに控えていたサルトの手を掴んで誘う。
「踊ろう、サルト!」
(ごめんよ)
「で、でも、ユーナ様!」
「いいから!」
(ごめんよ、サルト)
戸惑いたじろぐサルトを無理矢理引っ張り出す。
客がざわめいた。ミアナが不快そうに眉を寄せ、セレディスがむっつりと顔をしかめる。
そして、その中で、なぜかはっきりと聞こえた中の王子の深く大きな吐息、背中を向けた瞬間の安堵の表情。
(き・か・ざっ・た・の・に・な)
サルトが困った様子で振り回されているのに笑い、ことさらはしゃぎながら、胸の中でことばを一つ一つ放り投げた。
(姉さまより・セアラより・時間・かけて・もらったのに・な)
昔話がある。
森一番の醜い鳥がきれいになりたいばっかりに、落ちていた羽根や葉っぱや網のように編まれた虫の巣を集めて自分を飾りつけるのだ。けれど、見かけた鳥の仲間から羽根を奪われ、風の精に葉っぱを吹き飛ばされ、銀糸のような虫の巣網も逃げ惑うときに自分で破いてしまう。傷を負い、痛みに泣きながら、ぼろぼろになって自分の寝所に帰って行く鳥の、虚栄心を嘲笑う話なのだ。
(けれど、醜い鳥だって、ちょっとだけ、きれいになってみたかっただけだろうに)
あの話の残酷さは、きっとレアナ達にはわからない。
娘達を健やかに育てようと、ミアナがその話を繰り返すたび、ユーノは辛くてたまらなかった。
ぼろぼろになって拾い集めた銀糸の巣網を引きずるあの鳥と、必死に着飾って、それでも王子に拒まれる自分のどこにどんな差があろう。
「ユーナ様、どうかなさったのですか」
「なんでもない、なんでもないよ、サルト、いつもの悪ふざけだ、だから」
もっとみんなを驚かせよう。
ことさらにっこり笑って、ユーノはサルトを振り回した。
夜会が終わって、もちろん、ユーノは、せっかくの会で客人である王子に礼を失したと、ひどく父母に怒られた。皇族としてあるまじき振舞いだと。
けれど、誰もユーノの無礼の理由は聞かなかった。
ただ、ユーノは『変わっている』のだ、ということになった。
それから、ユーノは夜会に出なくなった。
大抵は、皇宮の庭でカザドを見張りながら、木の枝の上やレノの背で、華やかに盛り上がる夜会を眺めていた。
レアナが舞う。セアラが笑う。明かりとざわめきが眩くて、何度も目を逸らしたけれど、いつの間にか、じっと見つめてしまう。
今でもはっきり覚えている。
夜会の座では、レアナが必ずセレディス皇に促されて、ラオカーンの詩を歌うのだ。
「白き花よ
許されるなら、その花弁に口づけん……」
伸びやかな澄んだ声が広間を見たし、人々をうっとりと微笑ませるのを、ユーノは暗闇から何度も一人で見てきた。
(許されるなら、か)
記憶の中のレアナの姿に魅入りながら、今も思う。
(あの時、泣き出していたなら、私は夜会に出られていたのかな、皇女の一人として)
そう、ひどい扱いだと泣き出していたなら。
父母は心配し、ユーノは慰められ、そして、あの、中の王子こそ礼儀知らずとして叱責されていたのだろう。
(それは、辛いよ、なあ…)
他国の宮殿で、自国では王子とあがめられている者がののしられるのは。
それに、中の王子が踊れなかったのは、彼の失礼というよりは、見劣りする容姿で生まれてしまった自分のせいだ、きっと。
(だって、サルト以外、聞かなかった)
どうしてあんなことをしたのか、と。何があったのだと。
どこかで皆、思っていたからではないのか。三人並んだ時、飾りつけてはいるが美しさにほど遠いユーノを眺め、中の王子の気の進まぬ様子にどこか同情し共感した、あの皇女と踊らなくてはならないのか、気の毒なことだ、と。
だからこそ、あの後誰も彼を咎めなかった、彼の兄弟でさえも。
あれほどたくさんの人の中で感じた、竦むような思いは、誰もユーノを守ってはくれないのだという理解。
(飾りを剥ぎとられて、泣いている、鳥)
それでも。
ソレデモ、ユメハ、ミラレルカモト。
願って。
願った、だけだ、けど。
(きっと、それが間違いだったんだ)
きっと、女に生まれたことさえ、きっと。
(許されるなら)
少女でいい、と許されるなら。
誰かに助けを求めていい、と許されるなら。
(求められるのは、いつもいつも、私、ではない)
すっかり慣れているはずのつもりだったのに。
(ばか…だなあ……)
アシャのことになると、まだ胸が切なく揺れてしまう。
「……そして
柔らかき褥(しとね)へと誘う
許されるなら、その眠りに
とこしえの愛を誓いて
その心を得んとする
愚かなるかな
恋する我は……」
アシャの声は甘やかせるように優しい。
その声にただ浸るだけ、それで満足するしかないのだろう、ユーノには。
(破れて引きずる、銀糸、いや金色の網…)
強く握ったら粉々になって消える、儚く美しい夢の網。
それほど保つわけがないとわかりながら、それでも必死に手を添え、支え、転がっても怪我をしても手放さず、胸に守り抱えて持ち帰り、ほっとして微笑んで手を開けばそこには何もなく。
(振り返って見送る、やすやすと、当然のように波打たせて攫っていく、白い手の持ち主)
ああ、そうなんだ。
あれは、私のものでは、なかったんだ……。
納得と、理解と。
空っぽの傷だらけの両手をぶら下げて。
きっとまた、苦笑いする、自分の愚かさに。
(何度繰り返せば…気が済むんだ、と)
「ユーノ?」
「なっ、なにっ」
ぼんやりとしてたのを、ふいに顎を掬われ押し上げられ、ぎょっとする。深くたゆとうような紫の目が覗き込んでいて、どぎまぎした。
「目が潤んでる」
「っ」
指摘されて顔を背けかけたが、アシャはそれを許さなかった。
「どうした?」
ラオカーンの詩を歌ったのと同じ柔らかな声で問われて、瞬間、心が崩れそうになるのを、必死に振り切った。
「な、なんでもない、気のせいだろ?」
急いでアシャの手を払い、顔を振った。滲みかけた涙を飲み下す。
「それより、アシャ」
「うん?」
訝しげなアシャを、逆に真正面から見据えて、
「麦祭に参加したの、何か理由があるんだろ?」
「どうしてだ」
「イルファが、神殿の肝試しの話が出たとたん、アシャの態度が変わったって言ってたけど」
「へえ、わかってたのか」
ひょい、と片方の眉を上げてみせた。
アシャの気持ちがそちらへ流れたのにほっとしたの半分、がっかりしたの半分で、
「じゃあ、やっぱり何かあるんだ」
「実はあの神殿のある場所に宙道(シノイ)の出入り口がある」
「出入り口?」
ユーノは首を傾げた。宙道(シノイ)自体が今一つ掴めていないのだから、出入り口と言われても想像がつかない。
「神殿を建てるぐらいだから、あそこは聖地化してるんだろう。とすると、そうそうあっさり出入り出来なくなってるんだろう」
「ああ、それで」
ようやく得心がいった。
「祭りの最終日の肝試しをうまく利用しようというわけか」
「まあ、そういうことだ」
アシャはにやりと笑った。
(何だ、やっぱり、他の理由、なのか)
つい、そう思ってユーノは苦笑した。期待なんて何度も裏切られて捨てているのに、忘れたころに蘇ってくる。
それでなくても、このアシャという男は、己の影響力がわかっていないところがある。
(ほんと、無神経なやつだ)
まるで、ユーノの心のぼやきを聞いたように、アシャがぬけぬけとした口調で尋ねてきた。
「ところで、俺への返事は?」
(ほら、な)
ユーノは胸の中で吐息をついた。
「返事って何だよ」
「ラオカーンの『宵の女神に』は求愛の詩なんだぞ」
「あ、そうなの」
さりげなく応えながら、正直なもので心臓の鼓動が跳ね上がる。
(違う違う、これは遊び、祭りの間のお芝居だ)
ユーノは自分に言い聞かせた。
(お芝居にはお芝居で、だよね)
「だーめ」
にっこり白々しく笑って応える。
「回答は祭りの最終日までなし」
「そいつはひどい。焦がれ死にしたら、どうしてくれる?」
アシャがわずかに目を細めて、唇をとがらせて見せる。わかっているのかいないのか、子どもっぽい表情にどきりとするような艶がある。
「死ねば」
突き放した。
「おいおい…」
アシャがひくっと引き攣る。
「それとも何か、レスファートに張り合う気なのかい?」
「レス、ね。なるほど、強敵だな。うん、じゃあ、レスに譲ろう、今回は」
(人の気も知らないで)
さすがにむっとした。
「アシャってさ」
「うん?」
「大概鈍感な男だよね」
「鈍感?」
目を見開いて無邪気に首を傾げている。本当に呆れた男だ。
「それで一体、何人くどいてる?」
「何人って」
「あ、男性も含めて、でいいけど?」
「ユーノッ!」
くしゃりと顰められたアシャの顔に、少しだけ気が晴れた。
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