『ドラゴン・イン・ナ・シティ』

segakiyui

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第1章 『竜は街に居る』

1.どこにでもある日常「誰だって一度くらいは」(2)

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「誰だって、一度くらいは、さぁ」
 風柳舜は駅前で両手を広げて見せる。
 相手はついさっき改札口で話しかけた女の子2人だ。この近くに住んでいて、しかも大学生で時間もあって、アルバイトは昨日辞めたばかりだと言うから、声をかけてみた。
「ばっちり舞台で決めたくない?」
「ないない」
 1人が照れ臭そうに手を振る。
「そりゃ、風柳さんぐらいカッコ良かったら、そんなことも考えるだろうけど」
 もう1人が唇を尖らせる。
「え、俺、かっこよくないよ」
「またまたあ」
 くすくす笑って女の子達は顔を見合わせる。
「そんな派手な赤い髪に染めて、平然としてられる人なんていないって」
「そうそうまるでゲームのキャラみたいじゃん。ねえ」
 あらら、逆効果だったか。
 舜は心の中で肩を竦めた。
 それでも虹色とかショッキンググリーンは避けたのになあ。本来の栗毛の方がよかったかな。
「あたしら、そんなの無理無理無理」
「いやでもさ、体験してみるって、大事でしょ?」
「いやいや失敗したら、恥ずかしいし」
「そうそう、役者なんて柄じゃないし」
 ねええと声を合わせる2人に困り果てる。
「…そんなに難しく考えなくていいのになあ」
 じゃあね、と去っていく2人にまたね、と手を振りながらしょんぼりした。
「一回でもやってみれば面白いのに」
 もう一度チラシを眺める。
 舜が看板を務める劇団『竜夢』はいい劇団だと思うのに、役者も客もなかなか集まらない。25歳になっても遊んでられていいわよね、とまた妹に詰られる。
「綺麗な竜だったなあ…」
 今朝の夢を思い出した。まるで『竜は街に居る』の予告編みたいでわくわくした。
 あれを見たい演ってみたい。
 大好きなSF『鋼鉄都市』ほどクールじゃないけど、それはそれで楽しいぞきっと。
「よしっ」
 舜は気を取り直して、次の子を探して近寄っていく。
「ねえねえ、君って演劇に興味ある?」
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