『ドラゴン・イン・ナ・シティ』

segakiyui

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第1章 『竜は街に居る』

1.どこにでもある日常「誰だって一度くらいは」(3)

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 綺麗な竜だったなあ。
 バイト先のカフェで手を拭きながら、輝夜陸斗は溜め息をついて目を閉じ夢を思い出す。
 目を奪うほどの色、きらきら光輝を纏って、空へ駆け上がって行く姿。
「輝夜さん」
「あ、はい」
「こちら、2番テーブルへ」
「わかりました」
 渡されたマフィンとココアのセットを持って行くと、丸テーブルに陣取っていた女子高校生達が目配せして突き合う。
「お待たせしました」
「お待たせされました」
 くすくすと笑う女の子達が無遠慮な視線を茶色のエプロンの腰のあたりへ投げてくる。
「ヤバイヤバイ」「女子より細い?」「膨らむなあイメージ」
 ああ、この会話はそっち系か。
 思わず小さく溜め息を突く。
 そりゃ確かに間違ってないけれど。大好きなのは同じ劇団『竜夢』のスター、風柳舜で、しかも見事にノンケだけど。27の男が25の男に片思いしても痛いだけだってわかってるけど。
「ご注文は以上でしょうか」
 それでも微笑むと、素早く目配せが飛んで、
「あ、すみませーん、ブルーベリーマフィンも追加で」
「…承りました」
 伝票に書き込み背中を向けると、尻のあたりに痛いほど視線が突き刺さる。
 ああ、早く家に帰って、赤い炊飯器でご飯炊いて、その間にネットで美味しいものを検索して、ストレス発散したい。
 もう一度、夢で見た竜の姿を思い起こしつつ、マスターに注文追加を伝える。
「…またか」
「お願いします」
「まあこっちはいいけどねえ、売り上げ伸びるから」
 それからぼそりと聞こえよがしに、
「誰だって一度くらいは誘いに乗ろうって気になるだろうになあ」
 陸斗は溜め息をそっと重ねた。
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