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第1章 『竜は街に居る』
7.どおおん「これ、本当のことなの?」(6)
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穏やかな朝だった。
コーヒーはとてもうまく淹れられたし、貢は少し遅れて起きた陸斗の寝顔を十分堪能した。
くったりと腕の中で解れている体は甘かった。繊細そうな鼻梁、長めの睫毛は普段は気づかない。細い腰に思った以上煽られて、手放したくなかったから抱きしめたまま眠っていた。
そんなことは今までなかった。
どんなに可愛い女の子でも、どんなに色っぽいお姉さんでも、終わってしまえばただの体で、自分が熱を注いだ後さえ見つけられないほど空っぽで、ベッドを占拠されているのが鬱陶しかった。けれどこうして、コーヒーを淹れてもまだ目覚めない陸斗の側にもう一度潜り込んで、起こさないようにそうっと抱きかかえて、日差しの中で見つめているのが気持ち良くて。
「…なんだろうね」
睫毛に溜まった雫は涙だろうか。
夜に泣かせた記憶はあるが、その後も泣かれていたのに気づかなかったのは問題だなんて考えている。
唇を当ててそっと吸い取った。
「…起きないといいな」
呟いて驚く。
「起きないと、だって?」
だって起きたら、この人はきっとさっさと僕の腕から出て行っちゃうよ。
キスマークをいっぱいつけた。バイトで見られてるようなところにはまだ付けなかったが、際どいところには何箇所も、誰かが陸斗を抱こうとしたらすぐにわかる所有を刻んだ。
『…い…たに…お前は…誰、だ…』
「痛いところ、突いてくるね」
さすがに『竜夢』の初期からのメンバーだけのことはある。貢がきっと演技経験者であること、劇団の内情に詳しいことなどは勘付かれている。ちょっと想像すれば、ネットで検索ぐらいかけるだろう。正体がバレるのも、そう先のことではない。その時、陸斗は抱かれてくれるだろうか。
「…もう経験を積みたい、は通用しないよね」
今日の予定はない。陸斗もバイトは朝から入っていなかったはずだ。今からもう一度、暴かせてもらって深くまで入って、逃げられないと教え込もうか。
でも、もう一度、こんな風に泣いちゃうかもしれない。
濡れた睫毛に胸がずくりと痛み、下半身が甘く揺れた。
「陸斗は役者、好きだよね」
関係を繋ぎ続けるためには、出自がどうであれ、貢は今ではライヤーを作りげたいと真剣に願っていると思わせるのが一番かも知れない、それにはあなたのカークが必要だと説得すれば。
頭の中で台詞を練る。
お詫びがしたい。無理をさせたから。あなたのカークが見たい。あなたのカークを愛するライヤーを演じたい。
夢がヒントをくれている、『人心売買』の伊谷貢は受け入れ難くとも、『塔京』のカークはミシェル・ライヤーを拒まない。寂しがりなこの人は、うまくいけば貢に愛されることを受け入れてくれるかも知れない、ライヤーに包まれるカークとして。
「…演じるのは得意だからね」
「ふ…」
ゆっくり陸斗を抱きしめながら目を閉じる。小さく吐息を漏らす相手を、今すぐにでも押さえつけて貫きたいのを堪える。
「ふふ…」
思わず笑いが溢れる。甘酸っぱくて切なくて、極上のジャムのような感情を味わう。
「…ああ…溶けそう…」
堪えきれずに耳を齧ると、ひ、と息を引いた陸斗が震えて瞬きして目を開けた。
コーヒーはとてもうまく淹れられたし、貢は少し遅れて起きた陸斗の寝顔を十分堪能した。
くったりと腕の中で解れている体は甘かった。繊細そうな鼻梁、長めの睫毛は普段は気づかない。細い腰に思った以上煽られて、手放したくなかったから抱きしめたまま眠っていた。
そんなことは今までなかった。
どんなに可愛い女の子でも、どんなに色っぽいお姉さんでも、終わってしまえばただの体で、自分が熱を注いだ後さえ見つけられないほど空っぽで、ベッドを占拠されているのが鬱陶しかった。けれどこうして、コーヒーを淹れてもまだ目覚めない陸斗の側にもう一度潜り込んで、起こさないようにそうっと抱きかかえて、日差しの中で見つめているのが気持ち良くて。
「…なんだろうね」
睫毛に溜まった雫は涙だろうか。
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「…起きないといいな」
呟いて驚く。
「起きないと、だって?」
だって起きたら、この人はきっとさっさと僕の腕から出て行っちゃうよ。
キスマークをいっぱいつけた。バイトで見られてるようなところにはまだ付けなかったが、際どいところには何箇所も、誰かが陸斗を抱こうとしたらすぐにわかる所有を刻んだ。
『…い…たに…お前は…誰、だ…』
「痛いところ、突いてくるね」
さすがに『竜夢』の初期からのメンバーだけのことはある。貢がきっと演技経験者であること、劇団の内情に詳しいことなどは勘付かれている。ちょっと想像すれば、ネットで検索ぐらいかけるだろう。正体がバレるのも、そう先のことではない。その時、陸斗は抱かれてくれるだろうか。
「…もう経験を積みたい、は通用しないよね」
今日の予定はない。陸斗もバイトは朝から入っていなかったはずだ。今からもう一度、暴かせてもらって深くまで入って、逃げられないと教え込もうか。
でも、もう一度、こんな風に泣いちゃうかもしれない。
濡れた睫毛に胸がずくりと痛み、下半身が甘く揺れた。
「陸斗は役者、好きだよね」
関係を繋ぎ続けるためには、出自がどうであれ、貢は今ではライヤーを作りげたいと真剣に願っていると思わせるのが一番かも知れない、それにはあなたのカークが必要だと説得すれば。
頭の中で台詞を練る。
お詫びがしたい。無理をさせたから。あなたのカークが見たい。あなたのカークを愛するライヤーを演じたい。
夢がヒントをくれている、『人心売買』の伊谷貢は受け入れ難くとも、『塔京』のカークはミシェル・ライヤーを拒まない。寂しがりなこの人は、うまくいけば貢に愛されることを受け入れてくれるかも知れない、ライヤーに包まれるカークとして。
「…演じるのは得意だからね」
「ふ…」
ゆっくり陸斗を抱きしめながら目を閉じる。小さく吐息を漏らす相手を、今すぐにでも押さえつけて貫きたいのを堪える。
「ふふ…」
思わず笑いが溢れる。甘酸っぱくて切なくて、極上のジャムのような感情を味わう。
「…ああ…溶けそう…」
堪えきれずに耳を齧ると、ひ、と息を引いた陸斗が震えて瞬きして目を開けた。
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