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第2章 『竜夢』
2.ライオンが居る 「大事なものなんて何もない」(1)
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「大事なものなんて何もない」
スーツ姿の陸斗が、テーブルに両手を突き、カメラを真っ直ぐ見据えて呟く。囁き声にしか聞こえないほどの音量だが、訓練された喉は確実にことばを聴衆に届ける。
「『塔京』も配下も、全ては駒に過ぎない。私の舞台で踊る贄でしかない」
薄く笑みを広げた唇が、声を出さずに『オウライカ』と動く。
「世界を継ぐのはあなただけだ」
画面が一瞬暗転し、今度は机に腰掛けている舜が、カメラを全く見ないで視線を上げたまま話す。
「大事なものなんて何もない」
優しくて虚ろな声が周囲の暗闇に響く。
「俺の命も、世界の行方も、意味なんてない」
目を閉じる、長い睫毛が伏せられる。
「……」
何も聞こえなかったはずなのに、オウライカ、と聞いてしまうのは、直前に刷り込まれた画像の印象か。
「あなただけが、俺を人に留めている」
再び画面が暗転し、再び灯った光の中、テーブルの奥に立つ影の人物が断じる。
「大事なものなんて何もない」
ゆっくりと垂らしていた両手を引き寄せ、静かに体を抱く仕草、無音の中で衣擦れだけが聞こえるような気がする光景、ゆらりと動いた人影が光の中へ、テーブルの側へ歩み寄って来そうに見えて、聴衆が息を飲んだ瞬間。
「オウライカ」
幻聴を肯定されたようにほっとする間も無く、冷酷な声が切り捨てる。
「あなたさえも」
暗転し、三度光が当たったテーブルに、1人の男が座っている。
書類を見やり、ペンを取り、書き物をし、不意に気づいたように目を上げる。
「…」
スーツ姿の禄が目を細めて微笑んだ。
「大事なものなんて何もない」
同じセリフが繰り返される。
ペンを置き、両手を書類の上で組み、禄は少し目を閉じた。
「……君以外には」
画面が真っ暗になる。
その奥から、声が宣言する。
「『竜は街に居る』、開演」
スーツ姿の陸斗が、テーブルに両手を突き、カメラを真っ直ぐ見据えて呟く。囁き声にしか聞こえないほどの音量だが、訓練された喉は確実にことばを聴衆に届ける。
「『塔京』も配下も、全ては駒に過ぎない。私の舞台で踊る贄でしかない」
薄く笑みを広げた唇が、声を出さずに『オウライカ』と動く。
「世界を継ぐのはあなただけだ」
画面が一瞬暗転し、今度は机に腰掛けている舜が、カメラを全く見ないで視線を上げたまま話す。
「大事なものなんて何もない」
優しくて虚ろな声が周囲の暗闇に響く。
「俺の命も、世界の行方も、意味なんてない」
目を閉じる、長い睫毛が伏せられる。
「……」
何も聞こえなかったはずなのに、オウライカ、と聞いてしまうのは、直前に刷り込まれた画像の印象か。
「あなただけが、俺を人に留めている」
再び画面が暗転し、再び灯った光の中、テーブルの奥に立つ影の人物が断じる。
「大事なものなんて何もない」
ゆっくりと垂らしていた両手を引き寄せ、静かに体を抱く仕草、無音の中で衣擦れだけが聞こえるような気がする光景、ゆらりと動いた人影が光の中へ、テーブルの側へ歩み寄って来そうに見えて、聴衆が息を飲んだ瞬間。
「オウライカ」
幻聴を肯定されたようにほっとする間も無く、冷酷な声が切り捨てる。
「あなたさえも」
暗転し、三度光が当たったテーブルに、1人の男が座っている。
書類を見やり、ペンを取り、書き物をし、不意に気づいたように目を上げる。
「…」
スーツ姿の禄が目を細めて微笑んだ。
「大事なものなんて何もない」
同じセリフが繰り返される。
ペンを置き、両手を書類の上で組み、禄は少し目を閉じた。
「……君以外には」
画面が真っ暗になる。
その奥から、声が宣言する。
「『竜は街に居る』、開演」
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