『ドラゴン・イン・ナ・シティ』

segakiyui

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第2章 『竜夢』

3.乱暴な嫁 「お日様が当たるとほっとしない?」(4)

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「…は…」
 貢は喘ぎながら股間に伏せられた陸斗の頭を押さえる。
「溶け…そ…」
 目の奥に過ぎる篠崎の引き攣った顔に苦笑する。まさか乗り込んでくるとは。
「貢?」
「ん……」
「気が逸れてる?」
「うん…もっと激しくして」
「…いいよ」
「…あ、……ああっ」
 跳ね上がった快感に叫びながら仰け反る。

「ネコ?」
 昨夜のことだった。
「ライヤーはカークを抱くけど、抱かれることもできたはずだよね?」
 脚本を眺めていた陸斗が言い出して、妙な汗が滲んだ。
「いや、あのね、まさか」
「そのまさか。試してみる気はないか?」
 陸斗がソファに凭れたまま、目を細めた。
 最近この人は綺麗になった。極上の手触りを約束するペルシャ猫みたいに、前からしなやかだった手足がもっと長く伸びやかになって、道行く男と言わず女と言わず、ふうっと飲み込まれるような顔で振り向いたり見送ったりする場面を何度も見た。
 あえて言えば、高層ビルの屋上手すりで、ズボンのポケットに両手を入れて、空をゆっくり仰ぎ見ている人のような。風が吹くたびに危うげにゆらりゆらりと揺れる。落ちそう、落ちる、けど落ちない、何してるの、何見てるの、何があるの。そうやってみんなが空を見上げてしまうような、誘うような体つき。
 確かにカークも綺麗な男で、人の視線を奪うような金色の針金みたいな気がするけれど、陸斗のこの綺麗さは似て非なるものだ。すごく細くて揺るぎもなく張られた弓の弦。色はきっと透明なんだろうけど、日差しを浴びて時々虹色に光る。
 そんな男が誘うから、頷くしかないんだろうけど。
「えーと、僕が、あなたに、抱かれる?」
 怖いな。
 えへらと笑って見せると、おいでおいでと招かれて、ソファの隣に座る。
「優しくしてやるから」
「初物だしね」
「痛い思いも気持ちよくしてあげるから」
「あ、痛いんだやっぱり」
「最近、眠れてないだろう?」
「っ」
 甘い声がふいに鋭く生真面目になって思わず浮かべていた笑みを引っ込める。
「貢」
「…いつから知って?」
「戻りたくないって呻いてた」
「………」
 顔に血が集まった。きっと初めてのことだ、貢が心の内を暴かれて狼狽えるなど。
「お日様が当たるとほっとしない?」
 ごくりと喉が鳴ったのは、陸斗の指が下半身を這い始めたからだ。柔らかく熱を引き出す指先は、陸斗の弱い部分を知っているのと同じぐらいに、貢の脆い部分を当てている。
「お前にお日様を当ててやるよ」
 だから安心しな?
 ちょっと斜に構えた声に、お願いします、と頷いて唇を開いた。
 それから。
「いや…」
 だめ、やめて、そんな風に。
「あ、う」
 シャワーを浴びて、なぜかソファの上で始められた行為に戸惑ったのは一瞬、いつも通りのキスから始まったのに陸斗の指先はまず中心を散々いたぶって吐き出させた。一緒にイきたいと言う懇願も無視され、何度もぎりぎりまで追い上げられては止められる繰り返しに、じれったいやら苦しいやら、頭が痺れたようになって駆け上がり、満足感に浸された辺りで後ろへの攻撃が始まる。温められたローションがゆっくりと這い降りる、その感覚に紛れ込むように差し込まれた指なのに、それでもぞわりと体が震えて寒くなった。
「あ、あの、本当に初めてで」
「一度も? 女の子にもしてもらってない?」
「女の子も、するのかな、そんなこ…っ」
 ゆっくりと出し入れされる。陸斗の細い指がすぼまった奥へ入りかけては出て行く。その度にゆるりと触れられる周囲に、包まれる股間の柔らかな果実。
「は…っ」
 寒さが少しましになって震えが止まる。優しく揉みしだかれるのが気持ちいい。触って欲しいのはまだ元気になっていない方、濡れそぼって辛いと思っていたら、ローションの掌で包まれてほっとする。緩んだのだろう、後ろにもう1本指が加わって、さすがに痛くて歯を食い縛る。
「う…っんっ」
 痛い、のに、もう片方の掌で弄ばれる中心が勃ち上がっていくのがわかった。
「変な……気分…」
「何…?」
 背中から陸斗が熱い体を寄せてくれる。
 お日様だ、とわけもなく思う。
 お日様が当たっている。
「あ…」
 腕から力が抜けて崩れた。ソファに敷かれたタオルに頬を落としながら、これって凄い格好だよとセルフ突っ込みするが、きゅうと指で絞られて目の奥で火花が散る。同時に1本抜かれて、ぼうっとしている間に思った以上に深く突っ込まれ、その瞬間。
「あふっっ…」
 撫で擦られた部分から震えと快感が駆け上がって声を上げた。腰の底をかき混ぜられる、いや摘まれて捏ねられているのか、初めてでもわかる、そこはもう、止められない場所だ。なのに、本当に心得たように陸斗が指の動きを抑えて、無意識に腰が揺れた。
「貢」
「ん…っ」
 視界が眩んで息が上がる。陸斗の声が動く気はないと教えて、我慢できなくて腰を前後に揺らせると、望んだ刺激が前と後ろから与えられて喘いだ。
「あ、あ…っ」
「もっと欲しい?」
「ん…」
「強請ってごらん」
「もっと……」
「素直に」
「もっと……頂戴…」
「こんな風に…?」
「ん…っはあっ」
 握られて擦られる。同時に後ろが2本の指で開かれて、3本目が入ろうとするのに震えが走った。息を詰める間もなく痛みと同時にずぶりと埋めこまれた指先に涙が溢れる。
 ああ、もう何もかも、奪われる。
 身体中の力が抜けて、しばらく後ろを犯して動き回る指に感覚を蹂躙される。やがて、引き抜かれた指の代わりにもっと太い、けれどぬるりとした温かなものが押し当てられて、そのまま入り込んでくる。
「あ、あああ、ああ…っ」
 喘いだ口から声が押し出された。それほど奥まで陸斗のものは入ってきた。思っていたよりうんと太く、うんと熱く、うんと鋭く、貢の体を刺し貫く。濡れた頬をタオルに押し付けて、顔を歪めて叫び続ける。痛い、熱い、苦しい、もう一杯一杯で、受け入れられないのに、まだ。
 陸斗が息を喘がせながら貢を背中から抱き締める。熱に絡まれて汗が滴り落ちる。
 温かいなんてものじゃない、焼かれる、焼き尽くされる、体の内側から、真っ赤な火で。
 よく知っていた。
「…え…?」
 涙で崩れた視界に、覗き込む顔が見えて瞬く。 
 薄笑いしている、若い男。
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