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第3章 『異世界』
1.ご当地キャラ 「好きなものばかり増えて、困る」(4)
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「明かり全部つけてもらって、ライトもそのままでいいんで」
「工場、でしかなくなるけど」
「大丈夫」
訝しげな伊谷にウィンクして応じ、運転席に梯子を使って駆け上がり、各務さんにお願いをする。
「できます?」
「はい、何とか。老眼なんで見落としたらすみません」
実直に謝られて、もう一つ提案をする。
「じゃあ、俺が指を鳴らしたら手を伸ばす方向へってことで」
「…やってみます」
各務が頷いてくれたので、舜はくるりと振り返って、ぱあん、と一つ手を叩いた。
工場内のスタッフ、残り3人が舜を見上げる。
「やあ、みんな! 今日は工場見学にようこそ!」
「…舜?」
不思議そうな顔で首を傾げる禄、凄く可愛い。
「今日は俺が君達にこいつがどんな風に動けるのか、見せてあげるよ。けれど気をつけて、こいつは実は竜なんだ!」
「そう来るか」
頷いたのは輝夜だ。意図を察してくれている。すぐに、
「嘘つけ、ただのショベルカーじゃないか!」
朗々と声を張り上げ、反応を返してくれた。
「いやいやそれが。俺がこうして指を鳴らすと、ほら!」
舜は指を鳴らし、腕を伸ばす。各務がほとんど遅れずにアームを緩やかに伸び上がらせた。
「俺は魔法使い! 竜は俺の意のままに動く! さあ、遊ぼう、竜よ!」
立て続けに指を鳴らし、手を伸ばせば、各務は信じられないほど滑らかに指示に応じた。禄の頭上を掠め、輝夜と伊谷の間を掬い上げ、旋回しながら伸び上がる。
「……凄い」
舜も思わず感嘆してしまった。こんなに自由自在にショベルカーが動き回るなんて思わなかった。
呆気にとられて見上げる3人、けれどこれで終わりじゃない。
芝居は巨大なごっこ遊びだ。現実とは違う舞台装置で、現実を映し出し、世界に客を引き摺り込む。けれども、その夢は容易く破れ水泡に変わる。夢から醒めさせない方法はただ一つ、役者がその夢を生きることだ。
「こいつが竜だと言う証拠を見せよう、竜は空を飛ぶものだろう、さあ!」
舜はショベルカーにつけられている梯子を跳ね飛ぶように駆け上がった。上へ上へ、アームを登り、その途中で「うわっ」と体を翻らせる。誰もが息を呑んだ、緊張が走った、舜が足を踏み外して落ちたと見えたはずだ、だが。
風速40メートル、いやもっとか。
梯子を持った舜は片手だけの保持で空中に舞う、まるで強い風に晒されたように。
「こ…ら……いきなり…飛び上がったら…びっくり……す…だろ…」
苦笑いしながら梯子に取り付き、何とか体制を立て直しながらぼやく声は、途切れ途切れに響かせる、風に巻かれて上手く届かないように。
「このやんちゃ坊主…! でも俺はお前が好きだよ、こうやって夜空を飛ぶのも、星明かりを見るのも!」
指を鳴らして手を差し伸べ、アームを先へと伸ばさせながら、舜は体を低める、風の抵抗を減らすように。伊谷が工場の明かりを消し、光源はショベルカーに絡むライトだけになる。
凄く良くわかってくれてるじゃん。
舜は胸に息を吸い込む。
本当に、本当に、まるで星の海を飛翔する竜の背中にいるようだ。
「ほんと、好きなものばかり増えて、困るよなあっ!」
アームの先端で体を波打たせながら、舜は笑い声を上げた。
「工場、でしかなくなるけど」
「大丈夫」
訝しげな伊谷にウィンクして応じ、運転席に梯子を使って駆け上がり、各務さんにお願いをする。
「できます?」
「はい、何とか。老眼なんで見落としたらすみません」
実直に謝られて、もう一つ提案をする。
「じゃあ、俺が指を鳴らしたら手を伸ばす方向へってことで」
「…やってみます」
各務が頷いてくれたので、舜はくるりと振り返って、ぱあん、と一つ手を叩いた。
工場内のスタッフ、残り3人が舜を見上げる。
「やあ、みんな! 今日は工場見学にようこそ!」
「…舜?」
不思議そうな顔で首を傾げる禄、凄く可愛い。
「今日は俺が君達にこいつがどんな風に動けるのか、見せてあげるよ。けれど気をつけて、こいつは実は竜なんだ!」
「そう来るか」
頷いたのは輝夜だ。意図を察してくれている。すぐに、
「嘘つけ、ただのショベルカーじゃないか!」
朗々と声を張り上げ、反応を返してくれた。
「いやいやそれが。俺がこうして指を鳴らすと、ほら!」
舜は指を鳴らし、腕を伸ばす。各務がほとんど遅れずにアームを緩やかに伸び上がらせた。
「俺は魔法使い! 竜は俺の意のままに動く! さあ、遊ぼう、竜よ!」
立て続けに指を鳴らし、手を伸ばせば、各務は信じられないほど滑らかに指示に応じた。禄の頭上を掠め、輝夜と伊谷の間を掬い上げ、旋回しながら伸び上がる。
「……凄い」
舜も思わず感嘆してしまった。こんなに自由自在にショベルカーが動き回るなんて思わなかった。
呆気にとられて見上げる3人、けれどこれで終わりじゃない。
芝居は巨大なごっこ遊びだ。現実とは違う舞台装置で、現実を映し出し、世界に客を引き摺り込む。けれども、その夢は容易く破れ水泡に変わる。夢から醒めさせない方法はただ一つ、役者がその夢を生きることだ。
「こいつが竜だと言う証拠を見せよう、竜は空を飛ぶものだろう、さあ!」
舜はショベルカーにつけられている梯子を跳ね飛ぶように駆け上がった。上へ上へ、アームを登り、その途中で「うわっ」と体を翻らせる。誰もが息を呑んだ、緊張が走った、舜が足を踏み外して落ちたと見えたはずだ、だが。
風速40メートル、いやもっとか。
梯子を持った舜は片手だけの保持で空中に舞う、まるで強い風に晒されたように。
「こ…ら……いきなり…飛び上がったら…びっくり……す…だろ…」
苦笑いしながら梯子に取り付き、何とか体制を立て直しながらぼやく声は、途切れ途切れに響かせる、風に巻かれて上手く届かないように。
「このやんちゃ坊主…! でも俺はお前が好きだよ、こうやって夜空を飛ぶのも、星明かりを見るのも!」
指を鳴らして手を差し伸べ、アームを先へと伸ばさせながら、舜は体を低める、風の抵抗を減らすように。伊谷が工場の明かりを消し、光源はショベルカーに絡むライトだけになる。
凄く良くわかってくれてるじゃん。
舜は胸に息を吸い込む。
本当に、本当に、まるで星の海を飛翔する竜の背中にいるようだ。
「ほんと、好きなものばかり増えて、困るよなあっ!」
アームの先端で体を波打たせながら、舜は笑い声を上げた。
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