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柔らかく今にも崩れそうな格好で万里が男に抱かれてた。
その身体の線は俺も覚えがある。男に何をされてもいいよと同意する優しい甘い弛み。
頭の片隅を掠めたのはあの不愉快な香水で、あいつか、と思った瞬間に、ハンドルを思いきり叩きつけてクラクションを鳴らしてた。はっとして振り返った万里の顔が白くて光ってて、相手の男は顔なんて見なかった。ただただ苛立たしくて悔しくて、何で万里の腕に居るのが自分じゃないのかと思ったとたん、馬鹿馬鹿しくて切なくて。
そんなこと、決まってる。俺はホモで、万里はヘテロで。俺は男が好きで、万里も男が好きで。ホモじゃない、男が。俺じゃない、男が。
女にはバイってないの、そう考えて一層馬鹿馬鹿しくて情けなくなった。女のバイって、そりゃ、男も女もってことでしょう。でもって、男が好きな女なら、ホモの男はどうしようもないもんでしょう。なのに、なんで俺はこんなふうに、万里にどんどん落ちてってるの。
これって覚えがあるよね、と思い出したのはホモだと自覚したあたりのこと。女を好きになるもんだと思っていたのに、どうにもこうにもやたらと気持ちを魅かれてくのが、男ばかりだとわかってうろたえて怖かった。一体このままどうなるんだろう、俺の人生、どこへ行くんだろうと焦ったけれど、諦めてしまえばそれなりに男同士の方が楽しめることも気楽なことも多いと言う気がして、もう今はそれに違和感さえなくなっていたのに。
部屋に戻ればシャワーの音が激しくて、きっとまた万里は泣いている。きっとまた辛いことがあって、それをあいつが慰めてたのに、俺が邪魔したから一層辛くてしんどくなって。
そう思ったら何だか苦しくて、テレビのスイッチを入れたら裸の女がはしゃぎ回っていてうんざりした。どこがいいんだろうね、これの? なんかめんどくさそうで、うるさそうで、暑苦しそうでややこしそう。
しばらくじっと眺めていて、それらの女に何も感じないのに気づく。溜め息ついてテレビを消して、まだざあざあ響いているシャワーの音を耳にして、そのシャワーの下で柔らかく弛んでた万里の身体を思い出して、ふいにどきっとしてしまった。きわどいところが熱くなる。
欲しいな。欲しい。万里が欲しい。それは、一番始めに男が欲しかった時の気持ちそっくりで。
そっか、と呆気に取られながら思い出した。
あの時だって、男に抱かれることなんて想像しなかったし、方法だって知らなかった。なのに、どうして今は慣れてしまってるかって言うと。
ゆっくり立ち上がって、浴室に向かう。ノックして唾を呑み込み、声をかける。
「万里?」
「…っ、何……っ」
「もう出てきなよ」
「……匂い、まだ取れてないと思う」
「いいから」
「ん、じゃあ、出るから」
「うん」
「……そこ、退いてて」
「どうして?」
「……どうしてって」
「……じゃ、ベッドにいるから」
「……要……っ??」
吹っ飛んだ万里の声を背中にちょっと笑って、さっさと寝室に入った。服はまだ脱がないでいいよね。今日が初めてで、何をどうしたらいいかもわかんないんだし。万里は服着てくるのかな。そのままだと……嬉しいかもしれない。
何だか妙にどきどきしてきた。
その身体の線は俺も覚えがある。男に何をされてもいいよと同意する優しい甘い弛み。
頭の片隅を掠めたのはあの不愉快な香水で、あいつか、と思った瞬間に、ハンドルを思いきり叩きつけてクラクションを鳴らしてた。はっとして振り返った万里の顔が白くて光ってて、相手の男は顔なんて見なかった。ただただ苛立たしくて悔しくて、何で万里の腕に居るのが自分じゃないのかと思ったとたん、馬鹿馬鹿しくて切なくて。
そんなこと、決まってる。俺はホモで、万里はヘテロで。俺は男が好きで、万里も男が好きで。ホモじゃない、男が。俺じゃない、男が。
女にはバイってないの、そう考えて一層馬鹿馬鹿しくて情けなくなった。女のバイって、そりゃ、男も女もってことでしょう。でもって、男が好きな女なら、ホモの男はどうしようもないもんでしょう。なのに、なんで俺はこんなふうに、万里にどんどん落ちてってるの。
これって覚えがあるよね、と思い出したのはホモだと自覚したあたりのこと。女を好きになるもんだと思っていたのに、どうにもこうにもやたらと気持ちを魅かれてくのが、男ばかりだとわかってうろたえて怖かった。一体このままどうなるんだろう、俺の人生、どこへ行くんだろうと焦ったけれど、諦めてしまえばそれなりに男同士の方が楽しめることも気楽なことも多いと言う気がして、もう今はそれに違和感さえなくなっていたのに。
部屋に戻ればシャワーの音が激しくて、きっとまた万里は泣いている。きっとまた辛いことがあって、それをあいつが慰めてたのに、俺が邪魔したから一層辛くてしんどくなって。
そう思ったら何だか苦しくて、テレビのスイッチを入れたら裸の女がはしゃぎ回っていてうんざりした。どこがいいんだろうね、これの? なんかめんどくさそうで、うるさそうで、暑苦しそうでややこしそう。
しばらくじっと眺めていて、それらの女に何も感じないのに気づく。溜め息ついてテレビを消して、まだざあざあ響いているシャワーの音を耳にして、そのシャワーの下で柔らかく弛んでた万里の身体を思い出して、ふいにどきっとしてしまった。きわどいところが熱くなる。
欲しいな。欲しい。万里が欲しい。それは、一番始めに男が欲しかった時の気持ちそっくりで。
そっか、と呆気に取られながら思い出した。
あの時だって、男に抱かれることなんて想像しなかったし、方法だって知らなかった。なのに、どうして今は慣れてしまってるかって言うと。
ゆっくり立ち上がって、浴室に向かう。ノックして唾を呑み込み、声をかける。
「万里?」
「…っ、何……っ」
「もう出てきなよ」
「……匂い、まだ取れてないと思う」
「いいから」
「ん、じゃあ、出るから」
「うん」
「……そこ、退いてて」
「どうして?」
「……どうしてって」
「……じゃ、ベッドにいるから」
「……要……っ??」
吹っ飛んだ万里の声を背中にちょっと笑って、さっさと寝室に入った。服はまだ脱がないでいいよね。今日が初めてで、何をどうしたらいいかもわかんないんだし。万里は服着てくるのかな。そのままだと……嬉しいかもしれない。
何だか妙にどきどきしてきた。
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