『ラズーン』第六部

segakiyui

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2.灰色塔(ガルン・デイトス)(7)

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「大体狡いんだよね、リヒャルティは」
 ギャティがぼやけば、
「全くだ」
 バルカが応じる。双子だけに息の合い方も完璧で、交互に自分達の長を罵倒する。
「始めて会った時からこすかった」
「剣の勝負を挑んできたくせに、トドメが短剣なんてありか?」
「そりゃ、こっちも用意はしていたよ、けど、公の弟だろ、使えるわけはないじゃないか」
「その立場をいつも利用してだな」
「今度のことにしたって、どうしてリヒャルティが戦場で、僕らがジーフォ公のお目付になるんだ?」
「2人で1組、いいじゃないか、だとよ」
「いいじゃないか、が聞いて呆れる。自分こそ『星の剣士』(ニスフェル)の側につきたかったくせして」
「それで、また、バカな怪我してくるんだぜ、あの人は」
「やだねー、バカな主人持つと、気苦労が多くていけないよ」
「全くだ」
 本筋はリヒャルティがユーノに付き、自分達がジーフォ公の見張りなどと言う『つまらない』仕事に回された不満、なのだが、言っていることが微妙にずれていっている。
「いつかの、あれ、なんだったっけ」
「グォルン狩りだろ、反乱分子鎮圧」
「そうそう。あの時だって、危険な役目1人で買っちゃって、僕達を放っていったし」
「ミダス辺境の『運命(リマイン)』探索だって1人で行ったしな。挙げ句の果てに3日寝込む怪我して帰ってくるし」
「あの人が寝込んだ日には『金羽根』がおとなしくなっていけないよ、皆、何か沈んじゃって」
「殺気立ってた奴もいたしな。リヒャルティを斬った奴が生きてるって聞いた途端、飛び出しかけたのも」
「あれ、バルカじゃなかったっけ」
「そう言うお前だろ、2週間後に辺境区の『運命(リマイン)』追い回したの」
「…」
「……ズルイよな、1人で行っちまうなんて」
「ああ」
 何のことはない、2人もリヒャルティが自分達を置いていってしまったことが心配でならないのだが、それを口に出せるほど素直な性格でないのは宣告承知、特に、長があれほど開けっぴろげな性格だけに、どうしても屈折せざるを得ない。
「あの人のことだから、『星の剣士』(ニスフェル)が死ぬようなことがあったら、生きて帰ってくるつもりはないだろうし……」
 それでもつい、不安げな口調になったギャティに、バルカがからかいを向ける。
「何だ、お前、リヒャルティが心配なのか」
「違うよ!」
 むっとしたようにギャティが言い返す。
「ただ、あの人は阿呆だから」
「バカだしな」
「すぐカッとなるし」
「楽天的だし」
 どちらからともなく目を合わせる。溜め息混じりに同時に一言、
「どうしてあんな人に惚れちまってるのかな…」
「しっ」
 次の瞬間、ギャティが素早く制した。バルカも身を潜める。
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