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4.2人の軍師(17)
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「えっ」
驚いて体を起こすと、アシャはひどく美味しいものを手に入れた獣のように満足そうな表情になっている。煌めいた紫の瞳が、したたかな色を浮かべて微笑んだ。
「東へ…行かない…?」
「ああ」
見上げるユーノに静かに腕を解いてくれる。体が夜気にさらされてひんやりしたが、それよりも聞き取った内容が信じられずに問い直す。
「でも……皆、あなたが東へ出陣すると…」
「東へか? それこそ囮とわかっている戦いに自ら乗り込めと言うのか?」
「だって…」
「西はお前が押さえてくれた。ギヌアが西からかけた陽動は失敗だ。同時に東からかけた陽動も失敗したとしたら、ギヌアは動くと思うか?」
かけられた謎に慌ただしく思考を巡らせる。
「…私なら、動かない。兵を分散させて、もう一度策を練って」
「仮に、東の陽動が成功して、そちらへラズーンの主力が動くとしたら?」
「中央を狙う。今なら主力が抜けている……っ!」
「その通り」
アシャはにやりと笑った。
「今俺が動いたと見せれば、ギヌアが……『運命(リマイン)』の本隊が動いてくる」
「でも…東は? 囮とは言え、あなたが出なけりゃ、『銀羽根』の長を失っている、グードス一人でまとめきれるとは思えないよ。押されて東から中央へ攻め込まれてもしたら、それこそ中央で挟み撃ち…」
「いい読みだな、ユーノ」
アシャは悪戯っぽい顔で口元を綻ばせた。
「ラズーンには俺はともかく、セシ公がいる、ラズーン最高の軍師が、な」
「えらく買い被られたものですね」
「っ」
突然現れた影にユーノは竦んだが、アシャは驚かなかった。
「おや、お気付きでしたか」
「これでも人の気配には敏感でね。特に掛け替えのない逢瀬を邪魔されたとあっては」
「アシャ!!」
こんな時にまでふざけるのかよ、と罵りかけたユーノを軽くいなして、アシャはすっと側を離れ、身を翻した。
「何か飲み物を取ってこよう。セシ公、ユーノに概略を説明してやってくれ」
「承知しました」
広間に入っていくアシャを一礼して見送るセシ公に尋ねる。
「……いつからおられたんですか」
「ついさっきですよ」
にこりとセシ公は笑った。
「無粋な真似はしたくなかったが、そうのんびりもしていられなくてね……しかし」
紫の衣の肩に乱れた銀に近い金髪を払って、
「第三者から見ていると、これほど面白いものもないが……そのうちにアシャ殿が発狂せねば良いですが」
「は?」
「お分かりになってませんね、その顔では」
含みのある微笑に思わず警戒する。
「何を」
「まあ良い……こじれたほうがうまくいく場合も無きにしもあらずですし……ここは高みの見物と洒落込みましょうか」
「??」
セシ公は一人楽しげだが、言ってる意味がよくわからない。
「あの…」
「ところで」
くるりと表情を改めて、セシ公は切り出した。
「東の一件ですが、実は…」
「え……え……っ?!」
続いたセシ公のことばに、ユーノは思わず声を上げた。
驚いて体を起こすと、アシャはひどく美味しいものを手に入れた獣のように満足そうな表情になっている。煌めいた紫の瞳が、したたかな色を浮かべて微笑んだ。
「東へ…行かない…?」
「ああ」
見上げるユーノに静かに腕を解いてくれる。体が夜気にさらされてひんやりしたが、それよりも聞き取った内容が信じられずに問い直す。
「でも……皆、あなたが東へ出陣すると…」
「東へか? それこそ囮とわかっている戦いに自ら乗り込めと言うのか?」
「だって…」
「西はお前が押さえてくれた。ギヌアが西からかけた陽動は失敗だ。同時に東からかけた陽動も失敗したとしたら、ギヌアは動くと思うか?」
かけられた謎に慌ただしく思考を巡らせる。
「…私なら、動かない。兵を分散させて、もう一度策を練って」
「仮に、東の陽動が成功して、そちらへラズーンの主力が動くとしたら?」
「中央を狙う。今なら主力が抜けている……っ!」
「その通り」
アシャはにやりと笑った。
「今俺が動いたと見せれば、ギヌアが……『運命(リマイン)』の本隊が動いてくる」
「でも…東は? 囮とは言え、あなたが出なけりゃ、『銀羽根』の長を失っている、グードス一人でまとめきれるとは思えないよ。押されて東から中央へ攻め込まれてもしたら、それこそ中央で挟み撃ち…」
「いい読みだな、ユーノ」
アシャは悪戯っぽい顔で口元を綻ばせた。
「ラズーンには俺はともかく、セシ公がいる、ラズーン最高の軍師が、な」
「えらく買い被られたものですね」
「っ」
突然現れた影にユーノは竦んだが、アシャは驚かなかった。
「おや、お気付きでしたか」
「これでも人の気配には敏感でね。特に掛け替えのない逢瀬を邪魔されたとあっては」
「アシャ!!」
こんな時にまでふざけるのかよ、と罵りかけたユーノを軽くいなして、アシャはすっと側を離れ、身を翻した。
「何か飲み物を取ってこよう。セシ公、ユーノに概略を説明してやってくれ」
「承知しました」
広間に入っていくアシャを一礼して見送るセシ公に尋ねる。
「……いつからおられたんですか」
「ついさっきですよ」
にこりとセシ公は笑った。
「無粋な真似はしたくなかったが、そうのんびりもしていられなくてね……しかし」
紫の衣の肩に乱れた銀に近い金髪を払って、
「第三者から見ていると、これほど面白いものもないが……そのうちにアシャ殿が発狂せねば良いですが」
「は?」
「お分かりになってませんね、その顔では」
含みのある微笑に思わず警戒する。
「何を」
「まあ良い……こじれたほうがうまくいく場合も無きにしもあらずですし……ここは高みの見物と洒落込みましょうか」
「??」
セシ公は一人楽しげだが、言ってる意味がよくわからない。
「あの…」
「ところで」
くるりと表情を改めて、セシ公は切り出した。
「東の一件ですが、実は…」
「え……え……っ?!」
続いたセシ公のことばに、ユーノは思わず声を上げた。
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