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7.ミダスの裏切り(2)
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「時は来たのだ!!」
ラズーンの街角、木箱の壇上で一人の男が叫んでいる。
「今こそ真実を知り、救いを求めるべきだ!」
ぼさぼさの髪、白い衣、如何にも修行者風の容貌、だが、瞳が妙に虚ろで昏い。
「『氷の双宮』にこそ、その救いはあるはずだ、なぜなら、あそこに『太皇(スーグ)』が居るのだから。だが、その『太皇(スーグ)』は何を為さっているのか、これほど人心が惑っているのに、姿も見せて下さらないとは何事であろう!」
「そうだ!」
「『太皇(スーグ)』はどうしたんだ!」
頃合いを見計らったように、男の前に集まった群衆の中から声が上がった。よく見れば、その男達も木箱の上に居る男同様、どこか不吉な、ものに憑かれたような眼をしているとはわかるだろうが、並み居る群衆は辻説法に心奪われ、合いの手の巧みさに気づかない。
「『太皇(スーグ)』は我らを見捨てられるのか?」
「我らは見捨てられたのか?!」
「『太皇(スーグ)』は何を為さっているのだ!」
「そうだ、何を為さってるのだ!」
「そもそも『太皇(スーグ)』とは何を為さっている方なのだ?!」
「何の為に、あの『氷の双宮』に籠もられているのだ?!」
男達の掛け合いのような叫びが続く。
「……そういや……そうだな…」
「『太皇(スーグ)』って……王様だよな……?」
「けど、何を…してくれてるんだ?」
「赤ん坊にミルクをくれるわけじゃないし」
「俺たちに給金をくれるわけでもないし」
「どうして…『氷の双宮』にいるんだ…?」
巧みに扇動された群衆がこそこそと囁き始めるのを、近くの店で買い物をしていた大柄な男が、品物を受け取りながらじっと聞いている。
「そもそも『氷の双宮』とは何なのだ? 『太皇(スーグ)』はなぜあそこに籠られるのだ、これほど世の中が不安定な時に?」
「何かあるのか?」
「何か、あそこにはあるんじゃないのか?!」
2人の仲間が、辻説法の男の問いを煽り立てる。
「何か…?」
「何かって……何だ?」
「そりゃお前、こんな戦だの何だのって言ってる時だから……身を守れるものじゃないのか?」
人々の囁きが不信を含む。
「武器か?」
「…おい…何かひょっとして……途轍もない武器じゃないのか?」
「武器だとしても、どうするんだ?」
「なあ、おい、俺達にそんなもの、ねえぞ」
「けど、ラズーンの『壁』があるから…」
「聴きたまえ、諸君!」
壇上の男は一層声を張り上げた。
「私は諸君の知らないことを知っている、だから警告するのだ!」
「それは何だ?!」
「教えてくれ!」
「そ、そうだ、教えてくれ!」
煽る声の尻馬に、1人が乗った。
「諸君……ラズーンは今、最大の危機に晒されている」
壇上の男は不意に声を低めた。しん、と静まる群衆に、
「『運命(リマイン)』と言う謎の軍が攻めて来ているのだ」
「え…?」
「何…?」
「っ」
買い物をしていた男はぎくりとしたように、壇上の男を振り返った。大柄な男に全く気づかない様子で、壇上の男は冷淡とも言える平坦な声でことばを継いだ。
ラズーンの街角、木箱の壇上で一人の男が叫んでいる。
「今こそ真実を知り、救いを求めるべきだ!」
ぼさぼさの髪、白い衣、如何にも修行者風の容貌、だが、瞳が妙に虚ろで昏い。
「『氷の双宮』にこそ、その救いはあるはずだ、なぜなら、あそこに『太皇(スーグ)』が居るのだから。だが、その『太皇(スーグ)』は何を為さっているのか、これほど人心が惑っているのに、姿も見せて下さらないとは何事であろう!」
「そうだ!」
「『太皇(スーグ)』はどうしたんだ!」
頃合いを見計らったように、男の前に集まった群衆の中から声が上がった。よく見れば、その男達も木箱の上に居る男同様、どこか不吉な、ものに憑かれたような眼をしているとはわかるだろうが、並み居る群衆は辻説法に心奪われ、合いの手の巧みさに気づかない。
「『太皇(スーグ)』は我らを見捨てられるのか?」
「我らは見捨てられたのか?!」
「『太皇(スーグ)』は何を為さっているのだ!」
「そうだ、何を為さってるのだ!」
「そもそも『太皇(スーグ)』とは何を為さっている方なのだ?!」
「何の為に、あの『氷の双宮』に籠もられているのだ?!」
男達の掛け合いのような叫びが続く。
「……そういや……そうだな…」
「『太皇(スーグ)』って……王様だよな……?」
「けど、何を…してくれてるんだ?」
「赤ん坊にミルクをくれるわけじゃないし」
「俺たちに給金をくれるわけでもないし」
「どうして…『氷の双宮』にいるんだ…?」
巧みに扇動された群衆がこそこそと囁き始めるのを、近くの店で買い物をしていた大柄な男が、品物を受け取りながらじっと聞いている。
「そもそも『氷の双宮』とは何なのだ? 『太皇(スーグ)』はなぜあそこに籠られるのだ、これほど世の中が不安定な時に?」
「何かあるのか?」
「何か、あそこにはあるんじゃないのか?!」
2人の仲間が、辻説法の男の問いを煽り立てる。
「何か…?」
「何かって……何だ?」
「そりゃお前、こんな戦だの何だのって言ってる時だから……身を守れるものじゃないのか?」
人々の囁きが不信を含む。
「武器か?」
「…おい…何かひょっとして……途轍もない武器じゃないのか?」
「武器だとしても、どうするんだ?」
「なあ、おい、俺達にそんなもの、ねえぞ」
「けど、ラズーンの『壁』があるから…」
「聴きたまえ、諸君!」
壇上の男は一層声を張り上げた。
「私は諸君の知らないことを知っている、だから警告するのだ!」
「それは何だ?!」
「教えてくれ!」
「そ、そうだ、教えてくれ!」
煽る声の尻馬に、1人が乗った。
「諸君……ラズーンは今、最大の危機に晒されている」
壇上の男は不意に声を低めた。しん、と静まる群衆に、
「『運命(リマイン)』と言う謎の軍が攻めて来ているのだ」
「え…?」
「何…?」
「っ」
買い物をしていた男はぎくりとしたように、壇上の男を振り返った。大柄な男に全く気づかない様子で、壇上の男は冷淡とも言える平坦な声でことばを継いだ。
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