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「アシャ!」
考えに沈んでいたアシャは、不意に部屋を揺るがす大音声と共に、イルファに飛びかかられ、のしかかられて思わず咳き込んだ。
「生きてるなら生きてるって言えよなあ…おい!」
目を白黒させているアシャに構わず、イルファは喚き、次第に涙声になった。
「お前が死んだら、俺は生きていく『甲斐』がない!!」
「あ、あのな…」
ひきつりかけて、側に居るセシ公に気づく。イルファの醜態に微苦笑しながら、妙に鋭くアシャを見る、その眼に察するものがあった。
(気づいたか?)
真昼でも見える金のオーラ、素人でも気づく『魔』の匂い、『情報屋』のセシ公がわからない方がおかしい。だがセシ公は、平然とイルファの肩を叩き、
「イルファ殿、アシャ殿も病み上がりで疲れていることでしょう、東の戦いも一段落落ち着いた頃、こちらの打つ手はレスファート様まかせですし、今の所は向こうの出方を待つしかない……アシャ殿には1~2日、じっくり休んでおいて頂きましょう。…アシャ殿」
体を起こしたアシャに、物問いたげな、けれど何かを考え続けているような眼を向け、セシ公はにっこり艶やかに笑った。
「戦況は落ち着かれてからお教えします……よろしいですね」
「一つだけ……ユーノは?」
「まだお戻りではありませんが、ご無事です。さあ、イルファ殿」
「あ、ああ」
名残惜しそうなイルファを促し、セシ公は部屋を出て行った。見送ったアシャは、戸口に立ったまま、入ってきていないレスファートを見つける。
「レス?」
「……」
銀髪の少年は、アシャの声にも動こうとしなかった。薄い色の瞳で射るようにアシャを見つめている。
「レス? どうした? 入って来いよ」
「……」
「レ…」
なおも声を掛けかけてアシャはことばを失った。レスファートはレクスファ国の皇子、人の心を読み、感じる事をその才とする……。
「レス……」
(そうか)
微かに笑って見せる。レスは動かない。微笑を深めて、アシャは言った。
「見えるんだな、レスファート?」
「……」
「感じるか、俺の心を?」
レスファートの答えはない。アシャはゆっくりとベッドに仰向けになり、目を閉じた。
「大丈夫だ。ありがとう…行ってくれ」
唐突に側に人の気配がした。が、刺客であっても、既に逃げる気のなくなっているアシャは、ぼんやりと目を開けただけだ。
「っ……」
目の前一杯にレスファートの顔があって、アシャはぎくりとした。澄んだアクアマリンがアシャの心を見透かすように覗き込む。と、その瞳がうっすらと光を帯びて濡れた。
「レス?」
不審に思って起き上がる。アシャの脚の上に馬乗りになっていたレスファートが、小首を傾げてそっと両手を差し伸べた。守るように優しく、アシャの首に手を回し、頭を抱き寄せてくれる。
「レ、レス…」
思いも掛けないレスファートの振る舞いに呆気にとられたアシャの耳に、甘い声が届いた。
「アシャ……ぼくを殺したい?」
「っ」
「殺したいなら構わないよ、あなたの心は『マ』の匂いがするもの……けれど……泣いているの」
「レ…ス…」
「悲しいって泣いている……とっても…かなしいって」
「レ…」
大の男が、と思いはした。が、アシャは熱いものが頬を伝うのを止められなかった。
考えに沈んでいたアシャは、不意に部屋を揺るがす大音声と共に、イルファに飛びかかられ、のしかかられて思わず咳き込んだ。
「生きてるなら生きてるって言えよなあ…おい!」
目を白黒させているアシャに構わず、イルファは喚き、次第に涙声になった。
「お前が死んだら、俺は生きていく『甲斐』がない!!」
「あ、あのな…」
ひきつりかけて、側に居るセシ公に気づく。イルファの醜態に微苦笑しながら、妙に鋭くアシャを見る、その眼に察するものがあった。
(気づいたか?)
真昼でも見える金のオーラ、素人でも気づく『魔』の匂い、『情報屋』のセシ公がわからない方がおかしい。だがセシ公は、平然とイルファの肩を叩き、
「イルファ殿、アシャ殿も病み上がりで疲れていることでしょう、東の戦いも一段落落ち着いた頃、こちらの打つ手はレスファート様まかせですし、今の所は向こうの出方を待つしかない……アシャ殿には1~2日、じっくり休んでおいて頂きましょう。…アシャ殿」
体を起こしたアシャに、物問いたげな、けれど何かを考え続けているような眼を向け、セシ公はにっこり艶やかに笑った。
「戦況は落ち着かれてからお教えします……よろしいですね」
「一つだけ……ユーノは?」
「まだお戻りではありませんが、ご無事です。さあ、イルファ殿」
「あ、ああ」
名残惜しそうなイルファを促し、セシ公は部屋を出て行った。見送ったアシャは、戸口に立ったまま、入ってきていないレスファートを見つける。
「レス?」
「……」
銀髪の少年は、アシャの声にも動こうとしなかった。薄い色の瞳で射るようにアシャを見つめている。
「レス? どうした? 入って来いよ」
「……」
「レ…」
なおも声を掛けかけてアシャはことばを失った。レスファートはレクスファ国の皇子、人の心を読み、感じる事をその才とする……。
「レス……」
(そうか)
微かに笑って見せる。レスは動かない。微笑を深めて、アシャは言った。
「見えるんだな、レスファート?」
「……」
「感じるか、俺の心を?」
レスファートの答えはない。アシャはゆっくりとベッドに仰向けになり、目を閉じた。
「大丈夫だ。ありがとう…行ってくれ」
唐突に側に人の気配がした。が、刺客であっても、既に逃げる気のなくなっているアシャは、ぼんやりと目を開けただけだ。
「っ……」
目の前一杯にレスファートの顔があって、アシャはぎくりとした。澄んだアクアマリンがアシャの心を見透かすように覗き込む。と、その瞳がうっすらと光を帯びて濡れた。
「レス?」
不審に思って起き上がる。アシャの脚の上に馬乗りになっていたレスファートが、小首を傾げてそっと両手を差し伸べた。守るように優しく、アシャの首に手を回し、頭を抱き寄せてくれる。
「レ、レス…」
思いも掛けないレスファートの振る舞いに呆気にとられたアシャの耳に、甘い声が届いた。
「アシャ……ぼくを殺したい?」
「っ」
「殺したいなら構わないよ、あなたの心は『マ』の匂いがするもの……けれど……泣いているの」
「レ…ス…」
「悲しいって泣いている……とっても…かなしいって」
「レ…」
大の男が、と思いはした。が、アシャは熱いものが頬を伝うのを止められなかった。
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