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『サンタの靴下』
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「ほぅぅ」
重い溜息が聞こえて来て、トナカイはひょいと顔を上げました。
「ふぅぅ…」
どうやら、サンタクロースのいる部屋から聞こえて来るようです。
「はぁああああ」
溜息が3回繰り返されると、さすがに気になって、トナカイは鼻面で戸を押し開けて、サンタクロースの部屋に入りました。
赤と白のしましまのパジャマ、雪のように白い頭にやはりしましまの帽子を被って、サンタクロースは戸口に背を向け、赤々と燃える暖炉の前に座っています。もっくりふっくりした体が、溜息をつく度小さくなっていったように、背中を丸めて膝を抱えているのです。
トナカイはそっとそっとサンタクロースに近寄り、顔を覗き込みました。
「ふむむむむ……」
「どうしたのです、サンタクロース」
「おお、トナカイか……いや、困っているのじゃ」
「何をそんなに困っていらっしゃるんですか?」
「まあ、これを見てごらん」
「おや、なんて可愛い靴下だろう!」
サンタクロースが見せたのは、サンタクロースのパジャマとお揃いの赤と白のしましまの靴下でした。お手製らしく、靴下はとてもきれいに編んであって、足首のところに『S』としゃれた飾り文字の刺繍がしてあり、その横に少々不揃いでぴんぴん糸の出たボンボンがついています。
「わしの靴下だそうだよ」
「何ですって」
トナカイは黒い丸い瞳をパチパチ瞬きました。
「あなたの靴下? けれど、片方しかないじゃありませんか」
「いやいや、つまり、わしへのプレゼントを入れる靴下、なのじゃ」
「あなたへのプレゼント…」
トナカイは訳が分からなくなり、きょとんとサンタクロースを見つめました。
「町に住む女の子が、わしにプレゼントを送ってくれると言うのじゃ。それで、欲しいものを手紙に書いて送って欲しいと言うのじゃよ」
「それは良かったじゃありませんか」
トナカイは嬉しくなって笑いました。
「あなたはいつも贈ってばかりですからね。一度ぐらい構いませんよ」
「じゃが、トナカイ」
サンタクロースは相変わらず困り顔で答えました。
「わしはそれで困っておる」
「どうしてですか?」
「欲しいものがないのじゃよ」
「新しい服は?」
「いやいや、わしはあの服が好きで、まだ他のは欲しくない」
「新しい袋は?」
「今の袋はたくさん入って、しかも丈夫じゃ。あれに勝るものはない」
「新しいソリは?」
「長い間使って、ようやく使いやすくなってきたところじゃ」
「弱りましたね」
トナカイも一緒に考え込んでしまいました。
「一体どう返事を書けばいいでしょう」
夜更け過ぎまで考えましたが、どうにもいい案が見つかりません。
その夜は仕方なしに眠りました。
翌朝は12月22日。
世界中の子ども達に上げるプレゼントを集めるので、サンタクロースもトナカイも大忙しです。集めて来た品物をきれいな紙に包み、色とりどりのリボンで結びながら、サンタクロースは楽しくてなりません。明後日には子ども達へ届けるのです。きっと喜ぶ顔が待っているでしょう。
「トナカイよ、わしはこうして子ども達にプレゼントを配る時が何より楽しい」
「私もそうです、サンタクロース……そうだ!」
不意にトナカイは思いつきました。
「あの子の靴下の返事がわかりましたよ」
「何々? ……ふんふん……それはいい! そうしよう」
そうしてサンタクロースはすぐさま返事を書きました。
翌日の昼、町の女の子はサンタクロースからの手紙を受け取りました。
「わあ、サンタさんからのお返事。欲しいものは何かしら」
ところが封筒に入っていた紙には、こう書いてあります。
『明日の夜の9時に、家の一番大きな窓を開けて下さい』
「いったいどういうことかしら」
女の子は不思議に思いながらも、夜の9時に家の一番大きな窓を開けました。と、驚いたことに、すぐ外にトナカイのソリに乗ったサンタクロースがいるのです。
「まあ」
「こんばんは、さあお乗り」
勧められるままに女の子は窓を越えてソリに足を乗せました。ふわりと動くソリに慌てて腰をおろします。
「乗ったかね、さあ行こう!」
気がつくとサンタクロースの隣には白い大きな袋が置いてありました。
これをみんなに配るんだ。
女の子はドキドキしました。
サンタクロースは夜の空にトナカイのソリを走らせます。鈴の音を響かせて山を越え、森を越え、大きな海も越えました。
「おお、そうだ、忘れておった」
途中でサンタクロースは女の子に、小さな赤い三角の、先に白いボンボンのついて帽子を被せました。
「今夜はわしの仕事を手伝っておくれ。そうすれば、わしの欲しいものがわかるから」
「はい」
女の子はその夜一晩、サンタクロースと一緒に世界中の子どもにプレゼントを送りました。冷たい風が鼻と耳に当たって痛いほどですが、それでも明日の朝の子ども達の喜ぶ顔が浮かぶと、楽しくてなりません。隣を見上げると、サンタクロースはにこにことソリを走らせ続けています。
贈ることが喜びなのだ。他には何も要らないのだ。
気づいた女の子は、自分もにこにこしながら、サンタクロースの隣に座り続けておりました。
重い溜息が聞こえて来て、トナカイはひょいと顔を上げました。
「ふぅぅ…」
どうやら、サンタクロースのいる部屋から聞こえて来るようです。
「はぁああああ」
溜息が3回繰り返されると、さすがに気になって、トナカイは鼻面で戸を押し開けて、サンタクロースの部屋に入りました。
赤と白のしましまのパジャマ、雪のように白い頭にやはりしましまの帽子を被って、サンタクロースは戸口に背を向け、赤々と燃える暖炉の前に座っています。もっくりふっくりした体が、溜息をつく度小さくなっていったように、背中を丸めて膝を抱えているのです。
トナカイはそっとそっとサンタクロースに近寄り、顔を覗き込みました。
「ふむむむむ……」
「どうしたのです、サンタクロース」
「おお、トナカイか……いや、困っているのじゃ」
「何をそんなに困っていらっしゃるんですか?」
「まあ、これを見てごらん」
「おや、なんて可愛い靴下だろう!」
サンタクロースが見せたのは、サンタクロースのパジャマとお揃いの赤と白のしましまの靴下でした。お手製らしく、靴下はとてもきれいに編んであって、足首のところに『S』としゃれた飾り文字の刺繍がしてあり、その横に少々不揃いでぴんぴん糸の出たボンボンがついています。
「わしの靴下だそうだよ」
「何ですって」
トナカイは黒い丸い瞳をパチパチ瞬きました。
「あなたの靴下? けれど、片方しかないじゃありませんか」
「いやいや、つまり、わしへのプレゼントを入れる靴下、なのじゃ」
「あなたへのプレゼント…」
トナカイは訳が分からなくなり、きょとんとサンタクロースを見つめました。
「町に住む女の子が、わしにプレゼントを送ってくれると言うのじゃ。それで、欲しいものを手紙に書いて送って欲しいと言うのじゃよ」
「それは良かったじゃありませんか」
トナカイは嬉しくなって笑いました。
「あなたはいつも贈ってばかりですからね。一度ぐらい構いませんよ」
「じゃが、トナカイ」
サンタクロースは相変わらず困り顔で答えました。
「わしはそれで困っておる」
「どうしてですか?」
「欲しいものがないのじゃよ」
「新しい服は?」
「いやいや、わしはあの服が好きで、まだ他のは欲しくない」
「新しい袋は?」
「今の袋はたくさん入って、しかも丈夫じゃ。あれに勝るものはない」
「新しいソリは?」
「長い間使って、ようやく使いやすくなってきたところじゃ」
「弱りましたね」
トナカイも一緒に考え込んでしまいました。
「一体どう返事を書けばいいでしょう」
夜更け過ぎまで考えましたが、どうにもいい案が見つかりません。
その夜は仕方なしに眠りました。
翌朝は12月22日。
世界中の子ども達に上げるプレゼントを集めるので、サンタクロースもトナカイも大忙しです。集めて来た品物をきれいな紙に包み、色とりどりのリボンで結びながら、サンタクロースは楽しくてなりません。明後日には子ども達へ届けるのです。きっと喜ぶ顔が待っているでしょう。
「トナカイよ、わしはこうして子ども達にプレゼントを配る時が何より楽しい」
「私もそうです、サンタクロース……そうだ!」
不意にトナカイは思いつきました。
「あの子の靴下の返事がわかりましたよ」
「何々? ……ふんふん……それはいい! そうしよう」
そうしてサンタクロースはすぐさま返事を書きました。
翌日の昼、町の女の子はサンタクロースからの手紙を受け取りました。
「わあ、サンタさんからのお返事。欲しいものは何かしら」
ところが封筒に入っていた紙には、こう書いてあります。
『明日の夜の9時に、家の一番大きな窓を開けて下さい』
「いったいどういうことかしら」
女の子は不思議に思いながらも、夜の9時に家の一番大きな窓を開けました。と、驚いたことに、すぐ外にトナカイのソリに乗ったサンタクロースがいるのです。
「まあ」
「こんばんは、さあお乗り」
勧められるままに女の子は窓を越えてソリに足を乗せました。ふわりと動くソリに慌てて腰をおろします。
「乗ったかね、さあ行こう!」
気がつくとサンタクロースの隣には白い大きな袋が置いてありました。
これをみんなに配るんだ。
女の子はドキドキしました。
サンタクロースは夜の空にトナカイのソリを走らせます。鈴の音を響かせて山を越え、森を越え、大きな海も越えました。
「おお、そうだ、忘れておった」
途中でサンタクロースは女の子に、小さな赤い三角の、先に白いボンボンのついて帽子を被せました。
「今夜はわしの仕事を手伝っておくれ。そうすれば、わしの欲しいものがわかるから」
「はい」
女の子はその夜一晩、サンタクロースと一緒に世界中の子どもにプレゼントを送りました。冷たい風が鼻と耳に当たって痛いほどですが、それでも明日の朝の子ども達の喜ぶ顔が浮かぶと、楽しくてなりません。隣を見上げると、サンタクロースはにこにことソリを走らせ続けています。
贈ることが喜びなのだ。他には何も要らないのだ。
気づいた女の子は、自分もにこにこしながら、サンタクロースの隣に座り続けておりました。
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