『segakiyui短編集』

segakiyui

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『小人の靴音』

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 カタ、カタ、カタン。
 とても小さな音が響きました。
 おしっこに行きたくなって目を開けたひろしは、驚いて耳をすませました。
 カタカタ、カタン。
「ほら、だめだよ、それじゃ」
 囁くような声が叱ります。
 どうやら、ランドセルが置いてある、机のあたりから聞こえてくるようです。
「もっと元気に、気持ちいい音で鳴らすんだ」
「ごめんなさい」
 優しい声が謝りました。
 ひろしはそっとベッドから起きました。そっとそっと、机の側に近づきます。
 カーテンの隙間から届く、月の光に照らされて、2人の小人が机の上で踊っていました。
 小さな帽子にシャツとズボン、小さな靴がぴかぴか光っています。
「そら、もう一度」
 1人が言うと、もう1人が腰に手を当て、靴を勢いよく鳴らし出しました。
 カタカタ、カタン、カタカタカタン、カタカタカタン。
「うん、いい。とってもいい」
 腕組みをして耳を傾けていた1人はにこにこしました。
「それならいい。初めて学校に行く子だって、きっとつられて走り出す。気持ち良くって元気になるぞ」
「はい。ありがとうございました」
 踊っていた小人も真っ赤になった頬で笑いました。
「ひろし君は明日から学校なんです。ぼく、ひろし君に、うんと楽しく、学校に行って欲しいんです」
「大丈夫だ、きっとそれなら…」
「くしゃん!!」
 ひろしは思わずくしゃみをしてしまいました。
「きゃっ!」
 小人達は悲鳴を上げて、ぴょい、とランドセルの中に飛び込みました。
「あ、待って!」
 ひろしが呼んでも出てきません。
 しばらく待って諦めて、ひろしはおしっこを済ませました。ベッドに入ろうとして、ふと、ランドセルを持ってみました。
 カタ、カタン。
 小さな音が中でします。開けてみても、何も居ません。
「そうだ」
 ひろしはランドセルを背負って歩いてみました。背中で音が響きます。
 カタカタカタン。カタカタカタン。
 小人の靴音そっくりです。
 ひろしはにっこり笑いました。

                          終わり
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