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『村一番の大きな木』
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村一番の大きな木には、ずっと抱えている悩み事がありました。
それは、どうして自分は世界で一番大きな木ではないのだろう、ということでした。
木は、陽射しがじりじりするような暑い日になると、決まって、枝に止まっている小鳥に言うのでした。
「なあ、小鳥。どうして、わしは世界で一番大きな木ではないのだろうな」
「木のおじさん。世界で一番大きな木になりたいの?」
「そうとも。そうすれば、こんな暑い日でも、お前たちのような小鳥を、たくさん涼ませてやれるだろうに」
「そうね」
小鳥は頷きました。
「けれども、そんな大きな木だったら、私とこうしてお話をすることはできないでしょうね。だって、どの枝に止まっているのか、きっとわからなくなってしまうでしょうから」
村一番の大きな木は、なるほど、小鳥の言う通りだと思い、しばらくは小鳥と話せる幸せを感じるのですが、野原を剥いでいきそうな風の強い日には、やはりこう呟いてしまうのです。
「なあ、小鳥。こんな風の日には、わしが世界で一番大きな木だったらと思わずにはいられない。そうすれば、お前も、そんなに体を縮めずに、安心して休んでいられるだろうに」
「それはそうでしょうね」
小鳥は風に飛ばされないように脚を踏ん張りながら答えます。
「けれども、あんまり大きな木だから、どこが一番安全なのか、私はうろうろ探さなくてはならないでしょうね。そうしているうちに、きっと風にさらわれてしまうでしょうよ」
村一番の大きな木は、やはり、なるほど小鳥の言う通りだと思って、小鳥に少しでも風が当たらぬように、枝を広げて幹の近くに呼んでやるのでした。
それでも、ある雪の積もった夜。
「なあ、小鳥。わしは、こんな夜にこそ、村一番の大きな木であるよりは、世界で一番大きな木であったほうがいいと思う。どうしてって、こんな夜こそ、世界で一番大きな木であったなら、たくさんの旅人が、わしの枝や根っこの間でゆっくり休めるだろうから」
そうして、村一番の大きな木は、小鳥のことばを待ちましたが、小鳥は一向に答えてくれません。
「小鳥、小鳥、どうしたのだね」
幹の側で体を休めていた小鳥は、低い声で言いました。
「木のおじさん。お別れしなくてはならないようです」
「それはどういうことだね、小鳥」
「本当は、もっと早く、南の島へ行かなくてはならなかったのだけど、とうとう時機を逃してしまいました」
木は驚いて、もう一度尋ねました。
「どういうことだね、小鳥」
「世界で一番大きな木になりたいと、あなたはいつも言っていました。それは、私には、世界で一番寂しいのだと聞こえたのです。私はちっぽけだけど、あなたほど寂しいわけではない。だから、あなたが世界で一番大きくなるまで、あなたの側にいようと思ったのです」
木は黙って、小鳥の話を聞いていました。
「でも、もうお別れのようです。さようなら、村一番の大きな木のおじさん」
それきり、小鳥のことばは途切れました。
後には、しんしん降る雪と、村一番の大きな木が残されているばかり。
やがて、静まり返った闇の中で、木は小さく小さく呟きました。
「小鳥、小鳥。わしは、いま、世界で一番大きな木になっているよ。見えるかい、小鳥。お前が成らせてくれたのだ」
雪はほのかな光を漂わせながら、木とその枝で眠る小鳥の上に積もっていきました。
終わり
それは、どうして自分は世界で一番大きな木ではないのだろう、ということでした。
木は、陽射しがじりじりするような暑い日になると、決まって、枝に止まっている小鳥に言うのでした。
「なあ、小鳥。どうして、わしは世界で一番大きな木ではないのだろうな」
「木のおじさん。世界で一番大きな木になりたいの?」
「そうとも。そうすれば、こんな暑い日でも、お前たちのような小鳥を、たくさん涼ませてやれるだろうに」
「そうね」
小鳥は頷きました。
「けれども、そんな大きな木だったら、私とこうしてお話をすることはできないでしょうね。だって、どの枝に止まっているのか、きっとわからなくなってしまうでしょうから」
村一番の大きな木は、なるほど、小鳥の言う通りだと思い、しばらくは小鳥と話せる幸せを感じるのですが、野原を剥いでいきそうな風の強い日には、やはりこう呟いてしまうのです。
「なあ、小鳥。こんな風の日には、わしが世界で一番大きな木だったらと思わずにはいられない。そうすれば、お前も、そんなに体を縮めずに、安心して休んでいられるだろうに」
「それはそうでしょうね」
小鳥は風に飛ばされないように脚を踏ん張りながら答えます。
「けれども、あんまり大きな木だから、どこが一番安全なのか、私はうろうろ探さなくてはならないでしょうね。そうしているうちに、きっと風にさらわれてしまうでしょうよ」
村一番の大きな木は、やはり、なるほど小鳥の言う通りだと思って、小鳥に少しでも風が当たらぬように、枝を広げて幹の近くに呼んでやるのでした。
それでも、ある雪の積もった夜。
「なあ、小鳥。わしは、こんな夜にこそ、村一番の大きな木であるよりは、世界で一番大きな木であったほうがいいと思う。どうしてって、こんな夜こそ、世界で一番大きな木であったなら、たくさんの旅人が、わしの枝や根っこの間でゆっくり休めるだろうから」
そうして、村一番の大きな木は、小鳥のことばを待ちましたが、小鳥は一向に答えてくれません。
「小鳥、小鳥、どうしたのだね」
幹の側で体を休めていた小鳥は、低い声で言いました。
「木のおじさん。お別れしなくてはならないようです」
「それはどういうことだね、小鳥」
「本当は、もっと早く、南の島へ行かなくてはならなかったのだけど、とうとう時機を逃してしまいました」
木は驚いて、もう一度尋ねました。
「どういうことだね、小鳥」
「世界で一番大きな木になりたいと、あなたはいつも言っていました。それは、私には、世界で一番寂しいのだと聞こえたのです。私はちっぽけだけど、あなたほど寂しいわけではない。だから、あなたが世界で一番大きくなるまで、あなたの側にいようと思ったのです」
木は黙って、小鳥の話を聞いていました。
「でも、もうお別れのようです。さようなら、村一番の大きな木のおじさん」
それきり、小鳥のことばは途切れました。
後には、しんしん降る雪と、村一番の大きな木が残されているばかり。
やがて、静まり返った闇の中で、木は小さく小さく呟きました。
「小鳥、小鳥。わしは、いま、世界で一番大きな木になっているよ。見えるかい、小鳥。お前が成らせてくれたのだ」
雪はほのかな光を漂わせながら、木とその枝で眠る小鳥の上に積もっていきました。
終わり
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