『segakiyui短編集』

segakiyui

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SSS88『幻想庭園』

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「ん…」
 僕は少し身動きして目を覚ました。また疲れて眠ってしまったらしい。
 真っ白い部屋の中、僕は全裸で横座りになっている。自分の体を見ると、ピンク色の皮膚に金色の産毛がぼんやりと輝いている。
 昨日の神経の使い方は酷かった。ほとんど10ルーム分も働いた。気怠い。眠い。ベッド、と思う。ふわふわの羽毛の塊。ゆっくり頭の中で想像する。白い和毛、暖かさ、柔らかさ、触れるとまとわりつく羽根……イメージが固まってくると、目を閉じて両手を差し伸べる。指で空気を掴んで形作る。羽の感触。そう、こうだ。つるっとした表面、付け根部分の感じないほど儚いふわふわの和毛……空気がはっきりと『それ』になると、それを増やしてゆく。羽毛。羽毛。たちまち僕の周りに羽毛の散る感じ。よし、うまい。目を開けると、天井から30cmほどしたあたりで、ふっと羽毛が現れ舞い降りてくる。降り積もる。床に、膝に、肩に、腕に、頭に……鼻の頭に一枚。
「ふふっ…」
 笑った僕は、次の瞬間、体を硬直させた。床から電気ショック。羽毛が消えていく。ショックは続く。金の髪が逆立ち、空中に蛇のようにゆらめき、伸ばした指先から青いスパークが散る。閃光、激痛、悲鳴、疲労。スパークが消え、僕は仰臥して倒れる。主人は気に入らなかったらしい。でも、何をすれば気に入るのか、あんまりよくわからない。時々、ガアガアとスピーカーが喚く。音だけ。意味はわからない。ショックの意味だけはわかる。青いスパークショックは「ヤメロ」。赤いスパークショックは「ヤレ」。
 びりっと床が震えた。はっとする間もなく、赤いスパークが僕を包む。立たずにはいられない。立って……立って……「仕事」を始めよう。さあ…。
 僕は倒れたまま、手を差し伸べる。雪。青い雪(ブルー・スノウ)。僕を埋めてしまう雪。感触は? 淡い、触れると消えそうな……青い青い氷の結晶。ふっと一瞬、手の間で何か溶けた。できた? できたらしい。目を開けると、白い天井から目にも鮮やかなスカイ・ブルーの雪が少し灰色に燻んで落ちてくる。もっと、もっとだ。雪が細かくなり、降りてくる量が増える。肌に落ちて、一瞬ボウッと蛍火のように輝いて溶けていく。いい出来だ。床に積もり、僕を覆っていく。淡い蛍光に照らされ、部屋が輝き始める。さあ、もう少しやってみよう。
 今後は月光バラ(ムーンライト・ローズ)だ。指先に細い茎。その先に剣先型の葉が数枚。突端のしなった茎に指一本分の間を空けて、幾つか小さな薄紅色の蕾をつける。一本分は注意深く作り上げておく。あとは複製すればいいだけだし。蕾は? 綻かけている。少し慌てて目を開け、花を点検する。茎の色が薄すぎたかな……深緑の方が……青い雪(ブルー・スノウ)にはよく合うんだけど。
 蕾がふうっと膨らんでいく。ああ、もう羽化の時期だ。体を起こして両手を高く差し上げると同時に、蕾が蛍光に照らされポーンと弾けた。きらきらと星粒が散っていく。背中に羽根を生やした、生まれたての小さな妖精達が、青い雪(ブルー・スノウ)の上に飛び降り突っ込み尻餅をつく。蕾は薔薇の形に開き、金粉銀粉の粉を撒き散らしている。その粉の一つ一つが種、落ちた所からすぐ芽が出、茎が伸び、蕾が膨らみ、蛍光の中で次々弾ける。妖精達の笑い声。花を散らせと叫んでいる。花が散り、その花弁を集めて妖精は着飾る。同じものを二度作ることは許されていないから、僕は彼らに別れを言い、次のものに取り掛かる。
 少し変わったもの。細長い棒、金属製、煌めく冷たい……銃。そう、二つだ。手で抱えられる、けれど威力は強い。ボタン、二つ。一つは熱い光、一つは冷たい光。硬い。表面は滑らか。色はブルー・ブラック。目を閉じ、手にそれを感じる………途端に、青いスパーク。銃は手の中で消え失せたのに、青いスパークは引き続き僕を打ちのめす。茶色の、乾いた、荒れた大地。死に切った世界。その中央に銃が一つ転がっている。銃が荒廃と結びつく。岩が崩れる。その力は銃から来ている。川が破壊される。その力も銃から来ている。壁は白く、画像は失われる。ガアガアと言う声、ぱしっと宥めるような赤いスパーク。僕は綺麗な黄金虫を作ろうとし始める。小さく、すべすべ、愛らしい眼の……。

『どうかね、MAN307723012は?」
『まだ、戦いの記憶を捨てられないみたいです。本当に困ったものです』
『あんなに地球をメチャメチャにしたのになあ』
『いつまで、この洗脳法を実施しますか?』
『MANがもっと無邪気になるまで、だな』
 MAN更生施設、「幻想計画」グループの責任者、DUCK12003250は、白い尾を振って答えた。

                             終わり
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