『segakiyui短編集』

segakiyui

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SSS99『遠い帰還』

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「ねえ、まだですか?」
 尋ねたが上官はまだあっちだこっちだと地図と司令書を開いている。

 俺達、これで本隊に戻れんのかねえ?
 道端のマリアさまは赤子を抱いて心配そうだ。
 そういや、生まれたのは男の子だって聞いたけど、まだ顔さえ見ていない。
 どうして部隊を仕切ることになっちゃったんだろうな、この人は。
 地図を見ながら困りきった顔をしている男から目を逸らせて、勝手に決めた故郷の方角を見遣る。

 早く帰らなくちゃな。
 早く帰って、俺がオヤジだって覚えさせなくちゃ。
 戦争が終われば。
 全てきっと元通りになるはずなんだ。
 別れ話だって一時の気の迷いだったってことになるはずなんだ。
「……畜生」

 どうしてこの上官が方向音痴だって、誰も教えておいてくれなかったんだよ。

                                                   終わり
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