『segakiyui短編集』

segakiyui

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SSS106『冬の飲み物』

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 店内は混んでいた。ちょうど昼食時に当たっていたのだろう。久しぶりにあった啓介は、昔と変わらず大仰な身振り手振りで話し続ける。
「やっぱり、女ってのは旬のもんだよ」
 にやにや笑いながら、煙草の煙を無造作に吹き上げた。喫煙室が少ないこの頃、順は啓介のために喫煙席を選んだが、その辺りの配慮を全く気づかない。世界は自分のためにあると豪語して憚らない、尊大な態度も同じだ。
「そうかな」
 さりげなく煙を避けて食後のコーヒーを飲む。
「そうさ。この間の美代なんか、冬用の女だぜ。ホットミルクみたいなもんで、寒い時にはベッタリ熱くても許せるが、夏場なんか飲めたもんじゃない。……まあ? 季節構わずホットしか飲まないお前に、女の旬なて分かんないだろうけどな」
「…」
 順はのんびりとコーヒーを啜りながら外を見る。同じように窓の外へ視線を送った啓介が、
「やべ」
 ひょいと肩を竦めた。
「どうした?」
「美代だ。どうしてこんなところに…ちっ、来やがった……やあ!」
 入ってきてするする近づいて来た女性に、初めて気づいたように啓介は手を挙げる。今までの不満顔を拭い去って、偶然恋人に会えて嬉しい、そんな顔を装う。だが、女性は啓介がいないかのように、にこやかに微笑んだまま順を覗き込んだ。
「お待たせ」
「え?」
 ぽかんとする啓介に、順は薄笑いを浮かべつつ、美代を見上げる。
「いいの、あったかい? ああ、今、啓介に女の『旬』の話を聞いていたんだ」
「つまんない話してたのね」
 ほ、と小さく吐息した美代は、
「ねえ、行きましょ。本当に美味しいものを知らない人から聞く話じゃないわよ」
「言い過ぎだよ」
 順は苦笑を広げながら立ち上がる。
「すまんな、啓介。今日は先約があったんだ。言えば良かったんだけど、言い出しにくくって。また、いい話を聞かせてくれよ。ここ、奢るな?」
 呆然とする啓介に、順は手を振り、席から離れた。

                                 終わり
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