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無用な薬は毒になる
どんなに優しい微笑みも
どんなに甘い囁きも
突き放すときには潔く
心残り一つも感じさせず
痛む胸も震える吐息も
にじむ声さえ嘘にして
一瞬の夢
幻の時
存在したかどうかもわからぬ
それほど淡い記憶の果てへ
緩やかに今消え失せる
8
「まずは謝っておく」
十日後、中谷の病室に顔を見せたキィは、険しく顔をしかめたまま言った。
「田尾を取り逃がした」
それがよほど不愉快だったのだろう。苦い口調で、
「考えられるかぎりの手は打ったのだが、どこへどう隠れたのか、何の網にもひっかからない。お前の傷害については立証は難しくなった」
「殺人未遂だぞ、間違えるな」
「…そうしておこう」
中谷がまぜっ返すのに、キィは平然と応じた。
「それから、『ソシアル』についても、残念だが、今のところ打つ手がない。笙子が歌わなければ、確かに自殺者が出る可能性は減る。だが…」
キィはますます不機嫌な顔になった。
「笙子に歌うなと言うことは、死んでいろと言うことと同じだ。わたしとしては、そうするぐらいなら、他の人間がいなくなってくれるほうがすっきりしていいと思っている」
「あいかわらずだな」
中谷は苦笑した。
キィのこの、何があっても笙子が一番大事な存在だという態度は、どれほど笙子の支えになってきただろう、そう思って、何度目かの嫉妬を抱く。
(無駄なあがき、という奴だけどな)
「で…打つ手はまったくないのか」
「ない…こともない…だが…」
キィは言いよどみ、やがて思い切ったように、
「それこそ、笙子の問題だ。いっそのこと、彼女の『声』が本当に、暗示を消すぐらいの力を持ってくれればいいんだ。だが、それも…」
「難しいか」
中谷は考え込んだ。
(罪悪感を打ち消す力、か)
そんな力が、本当に人間に生み出せるものだろうか。
『そんな力』がみんな欲しくて、いろんな宗教に頼っているのが現状ではないのか。
第一、この間の話からすると、笙子自身がひどい傷を抱えているのだ。その自分の傷を治さずに、人の傷など治せるのだろうか。
確かに今まではそうできた。だが、今の笙子では、人間の『負い目』を刺激する『ソシアル』に対抗するにも、弱点をさらして歩いているようなものだろう。
「まあ、しばらく『周囲』に死んでもらうことにしよう」
キィはあっさりと言い切った。
「ところで、お前の方の経過はいいのか」
まんざら演技でもないらしい仕草で、キィは中谷の腹の辺りをのぞき込んだ。どうやら、この間の笙子の落ち込みを、多少なりとも回復させたことで、中谷に対する評価が上がったらしい。
「まあな。ぎりぎりで、死に損なったみたいだな」
「殺してほしくなったら言ってくれ、わたしがいつでも役に立とう。お前には十分恨みがあるからな」
物騒なことをさらりと口にした。
「しかし……もうそろそろシャワーに入れるんじゃないのか?」
軽く眉をしかめてつぶやいたキィに、中谷はぎくりとした。
「ずいぶん汗臭いぞ」
強ばった体を気づかれまいと、ことさらさり気なく応じる。
「ああ、そうだな、抜糸も済んだし、入れるんだろうな」
「入れるんだろうなって……まだ試してないのか?」
キィは訝しげな顔を中谷に向けた。
「まだ……説明を受けていなかったから」
苦しい言い訳をしながら、キィの凝視から顔を背ける。
「ふうん? 髭も……剃ってないようだな……むさ苦しいのがもっと見苦しくなっているみたいだが」
探るような視線になったのを、肩を竦めて苦笑して見せる。
「なんだ? 男には興味がなかったはずだろ?」
「洗面もまだタオルを使ってると聞いたが」
今度は明確な意図を持ってキィが尋ねた。まっすぐな視線を中谷に向ける。
「中谷……水が怖いのか?」
「ばかな」
平然と笑い返したつもりが唇が引きつれたのがわかった。
「じゃあ、シャワーに入れ」
「ああ、入るよ、お前が帰ったらな」
「いや、今すぐだ」
「何?」
「ここは個室だ。そこにあるだろ、シャワー室が」
中谷は無意識に固まった。ごく、と唾を飲み下し、自分が凍りついたようにキィを見返しているのに気づく。
「は、はは」
上げた声が掠れていた。
「なんだなんだ、宗旨変えか? 俺みたいなむさいのを選ばなくても、お前なら見栄えのするやつがいくらでも手に入る…」
「笙子が」
びく、と体が震えた。
「気にしている」
「……何、を」
「お前が、意識が戻ってからこっち、水を使いたがらない、と」
今度こそ確実にことばを失ってしまった。
まさか気づかれているとは思わなかった。確かに毎日昼からの面会時間には顔を見せている笙子だが、側にいるのは一時間ほどのことだったし、その間ぐらい飲み物を口にしなくてもわからないだろうと思っていた。
「使いたがらないだけじゃない、飲み物もコップから飲めないそうだな? 蓋のあるカップにストローを入れてならかろうじて飲める。だが、それもやっと昨日からだ。傷の回復に比べてまだベッドを離れられないのは、飲み食いが十分できなかったせいだ。固形物は大丈夫でも、流動物、特に滴るほど水に近いものは口にできない。だから点滴するしかなくて……」
「違う」
中谷は声を絞り出した。布団の下の足が震えだしたのを必死に押さえ付ける。
「誰からそんなこと…」
「笙子に言われて看護師から。医師にも確かめた。中谷、お前ひょっとしてまだ」
「違う」
中谷は首を振った。口調に嘲りを響かせて、
「天下の『ハレルヤ・ボイス』が関わっている以上、間違いがあっちゃいけないってか? 安心しろ、俺は大丈夫だ、笙子が心配するようなことは」
「中谷」
キィが眉をひそめた。憂いの浮かんだ顔に思わずひやりとすると、相手は険しい口調で続けた。
「お前が呼び捨てにするな」
「……あ……すまん」
「わたしはお前がさっさと回復して、一刻も早く笙子の側から消えてくれることを望んでいるんだ」
「ああ、わかってる」
話が逸れたのにほっとしたのも束の間だった。
「と言うことで、わたしにはお前の回復を見届け、笙子の不安を取り除く義務がある。これからすぐにシャワーを浴びてもらう」
「待て…」
「もちろん、医師にも確認済みだ」
キィは立ち上がると、ベッドの下の衣装缶を勝手に引出して開いた。手近のタオルと着替えを取り出し、中谷の目の前に突き出す。
「さ、行け」
「……お前って……ほんと嫌なやつだな」
中谷は溜息をついた。きっと中谷がシャワーに入らない限り、キィは側を離れないつもりで来ているのだろう。タオルと着替えを手にして、のろのろとベッドから降りる。
部屋の隅には小さいながら洗面所つきのシャワー室がある。さすがキィの手配した部屋だけあって、支払額が恐ろしいところだった。今回の入院に関する限りこちらで持つと言ってくれていなければ、すぐに大部屋に移っている。
じっと自分の動作を検分するように眺めているキィの視線を浴びながらシャワー室のドアを開けると、使っていなかったのに水の匂いが押し寄せて、思わず立ち止まってしまった。
「中谷……お前」
「…入るよ」
「痩せたな?」
「……ヘンタイ」
吐き捨ててキィの視界を遮るようにシャワー室に入り、ドアを閉める。
洗面所で汗じみた寝巻きを脱ぎ捨てながら、自分の顔を鏡で見た。もう無精髭ではおさまらないほどに伸びた髭の底に、澱んだように青白い皮膚、異様に大きく見開かれている目がはっきりと怯えている。
「くそっ……」
本当は動けるようになってすぐ、髭を剃ろうとしてここに入ったのだ。始めは微かな違和感だった。何かの音が聞こえた気がして、それでも無理に押し殺して蛇口のコックを捻り、水を流しながら髭を剃った。久しぶりにさっぱりして、無精髭さえない自分の顔を見たら笙子はどう思うだろうかと、そんな他愛ない空想を楽しみ、さて、コックを捻って水を止め始めたとき、それは起こった。
止まりかけて滴る水。透明でぽとぽとと落ちるその音が、いやに耳についた。しっかりと蛇口のコックを捻る。強く捻る。水が止まる、だが、止まり切らない。落ちる。落ちる。不安が過る。止まらない水に苛立ちが募り、焦りが広がる。強く捻る。まだ止まらない。まだ、止まらない。なお捻る……そして、気づく。水は一滴ももう落ちていないことに。それなのに、耳の内側で、体の奥で、滴る水の音が聞こえる。
恐怖が募った。その水の滴りが流れに変わったときに、何が、起こるのか、中谷は知っている……。
「…っ」
乱れかけた呼吸に中谷は我に返った。首を強く振り、顔を擦り、下着を蹴り捨て、腹の傷がずきりと疼くのをことさら無視してシャワーの下に立つ。それでも、すぐにコックに手が延ばせない。
「中谷?」
「うるせえな!」
ドアの外から促すようにキィの声が響いて、中谷は震えている手に舌打ちしながら、一気にコックを捻った。ばしゃっ、と派手な飛沫が降り落ちてきて、一瞬息を詰める。うっかりしていて水だけだ。いくら夏に向かう季節とはいえ、水浴びにはまだ早い。急いで湯のコックも捻りながら、汚れが流されていく快感と安堵に吐息をついた。
(何だ……大丈夫じゃねえか)
あれは回復途中の気の迷いというやつで、『ソシアル』の暗示が残っていたとかいうのではないのだろう。
ほっとして温度を上げ、備えつけのボディシャンプーで髪も顔も体も一気に泡立て汚れを流し落とす。
(気持ちいい)
体と同時に気持ちも弛んだ。自分がどれほど緊張していたか思い知って、いささか情けない。これで『ジャーナル』の中谷とは高岡が聞いたらがっくりするだろう。いや、お前も人の子だってことだと大笑いするか。
(そうだ、連絡を入れてない)
刺されて病院に運び込まれた、その直後に病室へ現れたみたいだが、中谷の意識が戻っていなかったので顔を合わせていない。それ以降姿を見せていないが、修羅場を潜ってる部下の一人一人の安否を心配するような男でもないから、気にはしていない。むしろ、ものにすると言った『ハレルヤ・ボイス』の記事が書き辛くなってる自分がいて、今はかえって顔を合わせない方が気楽だ。
(笙子)
澄んだ黒い瞳を思い出して、中谷は我知らず微笑んだ。
(俺のことを気にしてくれた)
正直なもので体の方が微妙に反応してしまう。シャワーに叩かれたせいか、熱っぽく潤んでくるような気配があって、慌て気味に水に切り替えてさっさと止めた。
「よし、と」
ほら、大丈夫だったじゃねえか。
そうつぶやきかけた中谷はシャワーの下から立ち去ろうとして、ぽたぼた、と雫を肩に受けた。やっぱりどっか上の空だったかな、と苦笑して適当にもう一度手を延ばしてコックを締める。だが、また、ぽたぽたぽた、と雫が滴る気配がして、仕方ねえなあ、ここは緩いのかよ、と顔を上げたとたん、声にならない悲鳴があがった。コックを握った手にはまだぽたぽたと水が当たる気配があるのに、視界に入ったのは一雫も水を垂らしていないシャワーヘッドで。
「う…ぁ」
全身の血が引いた。揺らめいて倒れかけた体が支え切れない。どん、と壁にぶつかって、その衝撃で俯いた視界に腹の傷がぱくん、と口を開いたのが目に入る。それはみるみる真っ赤な液体を音をたてて吐き出しはじめる。
「あ……ああ……あ…っ」
「中谷? おい、どうした?」
「水が……血が……」
ぽた、とシャワーヘッドから止めたはずの水滴が光りながら落ちてきた。蛇口からも、ぽた、ぽた、ぽた、ときらめきながら水滴が落ちる。中谷の体から、いつの間にかシャワーヘッドと似たような形に突き出していた下半身のものから、奇妙に歪んだ裂け目のような腹の傷から、ぽた、ぽた、ぽた、と雫が滴り落ちていく。赤の、透明の、いや、銀の、白の雫が、止めようとしても止められない、内側からの圧力に、押されて。
いやだ、たすけて。
座り込んだ足が、膝が、体ががくがく震え出す。けれど、体の奥が疼くように熱くて。身動きができない、あの日のように。自分の体なのに、自分の思うように動かなくて、煽られる、暴走する、過熱する頭に真紅の霧がかかっていく。とろけていく感覚が、ぞっとするほど気持ちいいのに、心が闇に塗り潰される。
もう、やめて。
誰かがささやく。大丈夫よ、誰だってあること、すぐに終わるわ、自然なこと、当たり前のこと。
違う。
胸の中で激しくかぶりを振ってもがくのは、中学生になったばかりの自分の姿だ。風呂場で、籠る熱気にあてられてのぼせたから、いや、そうじゃない。
これは、違う。
震えが止まらない。滑らかな感触が、張りつく髪の毛が、上気した顔の母親が、なぜ自分の目線より下から見上げてくるんだ? がたがた全身震わせて、寒いのか? いや、熱い、熱くて気が狂いそうだ。手でしっかり湯舟を掴んでいないと、落ちる、背後から、熱い湯の中へ、今さっきまで浸かっていたところへ、ああ、けれど、体が揺れてじっとしていられない、足が跳ねる、体を竦めて、絶頂が近い、けど、これは違う、これはこれは、違う違う違う、だって。
『おにいちゃんっ?』
「ひ…ぅっ」
(み・ゆ・き)
その瞬間、耳の奥に弾けた声に、中谷は息を引いた。視界が眩む。体が崩れる。
(み・ゆ・き・に・み・ら・れ・た)
下半身に熱い飛沫が弾けた。振り返る幻の視界にはっきり映るのは、呆然とした顔の深雪の姿だ。意識を飛ばしそうな快感に体を解放されながら、同時に果てしない奈落に落ち込む恐怖。頬を濡らしていた涙が流れ落ちるシャワーに消される。突き放されて湯舟の中に沈む自分の体が桜色に染まっているのが目に焼き付く。興奮の名残りにまだ疼いている体が。深雪が不安そうに尋ねる声がみるみる遠ざかっていく。
『何してるの、おかあさん?』
「ぅあ…ああ……っ」
悲鳴をあげるしかなかった。
響いてくる声から、内側に満ちる水音から、耳を封じ意識を切り離すためには。
それでも、滴る水の音が、中谷を侵す。
一番遠くに押しやっていた記憶が、水音に呼び覚まされて。
ぽたっ……。ぽたぽた……っ。ぽたぽたぽた………。
滴っているのは、水なのか、それとも、中谷の吐いたもの、なのか……。
深雪を見るとあの日の記憶が甦る、体の奥で蠢く妖しい火を感じ取る、意識しまいと切り離していたのに、あの瞳に見つめられると、まばゆげな、あの瞳、中谷を兄としてではなく男として見つめるかのような、あの瞳に晒されると、まるで別のスイッチが入るように不安定に揺れ出す自分を感じ取る。深雪が成長するに従って、女に近づくに従って、中谷に植え込まれたスイッチが、違う方向へ中谷を動かしてしまう。
(深雪)
中谷は本当に深雪の自殺を悲しんでいたのだろうか。
それとも、本当は、自分を危うい記憶に、人としての理性を吹き飛ばす衝動に押しやる存在が消えることを望んではいなかった、か?
「止めて……くれ……っ」
「中谷!」
背後から抱きかかえられる。崩れた体には力が入らない。座り込む、もっとめり込んでいく。
「中谷っ!」
「水が………止まら……ねぇ………っ……」
必死に絞り出した声が遠く虚空に吸い込まれていく。
「止めて……誰……か………止めてくれ………止めて……れ…っ」
「中谷っ! しっかりしろっ!」
「水の……おと………とめ……て………」
「中谷っっ!」
キィの切羽詰まった声を聞きながら、中谷は意識を失った。
目覚めは最悪だった。
それほど長く気を失っていたわけではないのは、窓の外が明るいのでもわかる。
「気がついたか」
窓から外を眺めていたキィが中谷の気配に気づいて振り返る。その目に濃い憂いがあるのを見つけて、中谷は視線を逸らせた。左手に数日前に取れたばかりの点滴が再び繋がってるのを見ながら、
「俺は…倒れたのか?」
「シャワーの水が止まらない、と言って」
びくっと体が強ばった。
「いや、正確には違うな。『水音』が止まらない、と言った」
「話すな」
沈黙して応えないキィを振り返る。
「笙子に話すな」
また呼び捨てにするなと怒られるかと思ったが、キィは無言のまま中谷を見下ろしている。やがて、重苦しい吐息をついた。
「中谷…」
「笙子のせいじゃない。俺の……俺の抱えてるもののせいだ、彼女のせいじゃない」
「中谷」
「笑うだろ、ガキの頃のことをずるずる引きずって、誰だってあることなんだ、終わったことだ、男なら自然な欲求で、当たり前のことだったんだ、なんてことないんだ、つまんないことだ、ちょっとしたことで、ただ急に思い出したからびっくりしただけだ」
キィのことばを遮るように、中谷は早口に言い募った。吐き出したことばが誰かのことばにそっくりだと気づきかけて、それから気を逸らせるように無意識に震える右手で腹を探った。傷は開いていない、そんなことはわかってる。あれは幻、いや、中谷の心の奥底に沈んでいた記憶が開いた光景だったのかもしれない。指を傷に突き立ててひきむしりたい衝動が襲い、慌ててこぶしを握り締める。
「カウンセリングは受けたのか」
キィが低い声で聞いてきた。
「カウンセリング?」
今にもがくがく震えそうな体を必死に堪えていると、キィが静かな口調を重ねた。
「親から受けた性的虐待はカウンセリング対象のはずだ」
茫然とした。ゆっくり近づいてくる相手に体が小刻みに震え出すのがわかる。自分がとんでもなく幼い子どもになったような気分だ。
「俺は……何をしゃべったんだ」
絞り出した声が惨めに掠れていた。
「『やめて、おかあさん、僕は、そんなこと、したいんじゃない』」
キィが中谷の口調そっくりに応えた。
「!」
「『違う、これは違う、いやだ、助けて、もう、で』」
「やめろっ」
キィのことばを遮った声が悲鳴じみていた。続きそうになる声を口元を覆った手で握りつぶす。冷たい汗が全身を濡らして寒くてがたがた震えている。
「……中谷」
キィは静かに深い息を吐いた。どこか憐れむように中谷を見下ろし、
「無理をするな」
どんなに優しい微笑みも
どんなに甘い囁きも
突き放すときには潔く
心残り一つも感じさせず
痛む胸も震える吐息も
にじむ声さえ嘘にして
一瞬の夢
幻の時
存在したかどうかもわからぬ
それほど淡い記憶の果てへ
緩やかに今消え失せる
8
「まずは謝っておく」
十日後、中谷の病室に顔を見せたキィは、険しく顔をしかめたまま言った。
「田尾を取り逃がした」
それがよほど不愉快だったのだろう。苦い口調で、
「考えられるかぎりの手は打ったのだが、どこへどう隠れたのか、何の網にもひっかからない。お前の傷害については立証は難しくなった」
「殺人未遂だぞ、間違えるな」
「…そうしておこう」
中谷がまぜっ返すのに、キィは平然と応じた。
「それから、『ソシアル』についても、残念だが、今のところ打つ手がない。笙子が歌わなければ、確かに自殺者が出る可能性は減る。だが…」
キィはますます不機嫌な顔になった。
「笙子に歌うなと言うことは、死んでいろと言うことと同じだ。わたしとしては、そうするぐらいなら、他の人間がいなくなってくれるほうがすっきりしていいと思っている」
「あいかわらずだな」
中谷は苦笑した。
キィのこの、何があっても笙子が一番大事な存在だという態度は、どれほど笙子の支えになってきただろう、そう思って、何度目かの嫉妬を抱く。
(無駄なあがき、という奴だけどな)
「で…打つ手はまったくないのか」
「ない…こともない…だが…」
キィは言いよどみ、やがて思い切ったように、
「それこそ、笙子の問題だ。いっそのこと、彼女の『声』が本当に、暗示を消すぐらいの力を持ってくれればいいんだ。だが、それも…」
「難しいか」
中谷は考え込んだ。
(罪悪感を打ち消す力、か)
そんな力が、本当に人間に生み出せるものだろうか。
『そんな力』がみんな欲しくて、いろんな宗教に頼っているのが現状ではないのか。
第一、この間の話からすると、笙子自身がひどい傷を抱えているのだ。その自分の傷を治さずに、人の傷など治せるのだろうか。
確かに今まではそうできた。だが、今の笙子では、人間の『負い目』を刺激する『ソシアル』に対抗するにも、弱点をさらして歩いているようなものだろう。
「まあ、しばらく『周囲』に死んでもらうことにしよう」
キィはあっさりと言い切った。
「ところで、お前の方の経過はいいのか」
まんざら演技でもないらしい仕草で、キィは中谷の腹の辺りをのぞき込んだ。どうやら、この間の笙子の落ち込みを、多少なりとも回復させたことで、中谷に対する評価が上がったらしい。
「まあな。ぎりぎりで、死に損なったみたいだな」
「殺してほしくなったら言ってくれ、わたしがいつでも役に立とう。お前には十分恨みがあるからな」
物騒なことをさらりと口にした。
「しかし……もうそろそろシャワーに入れるんじゃないのか?」
軽く眉をしかめてつぶやいたキィに、中谷はぎくりとした。
「ずいぶん汗臭いぞ」
強ばった体を気づかれまいと、ことさらさり気なく応じる。
「ああ、そうだな、抜糸も済んだし、入れるんだろうな」
「入れるんだろうなって……まだ試してないのか?」
キィは訝しげな顔を中谷に向けた。
「まだ……説明を受けていなかったから」
苦しい言い訳をしながら、キィの凝視から顔を背ける。
「ふうん? 髭も……剃ってないようだな……むさ苦しいのがもっと見苦しくなっているみたいだが」
探るような視線になったのを、肩を竦めて苦笑して見せる。
「なんだ? 男には興味がなかったはずだろ?」
「洗面もまだタオルを使ってると聞いたが」
今度は明確な意図を持ってキィが尋ねた。まっすぐな視線を中谷に向ける。
「中谷……水が怖いのか?」
「ばかな」
平然と笑い返したつもりが唇が引きつれたのがわかった。
「じゃあ、シャワーに入れ」
「ああ、入るよ、お前が帰ったらな」
「いや、今すぐだ」
「何?」
「ここは個室だ。そこにあるだろ、シャワー室が」
中谷は無意識に固まった。ごく、と唾を飲み下し、自分が凍りついたようにキィを見返しているのに気づく。
「は、はは」
上げた声が掠れていた。
「なんだなんだ、宗旨変えか? 俺みたいなむさいのを選ばなくても、お前なら見栄えのするやつがいくらでも手に入る…」
「笙子が」
びく、と体が震えた。
「気にしている」
「……何、を」
「お前が、意識が戻ってからこっち、水を使いたがらない、と」
今度こそ確実にことばを失ってしまった。
まさか気づかれているとは思わなかった。確かに毎日昼からの面会時間には顔を見せている笙子だが、側にいるのは一時間ほどのことだったし、その間ぐらい飲み物を口にしなくてもわからないだろうと思っていた。
「使いたがらないだけじゃない、飲み物もコップから飲めないそうだな? 蓋のあるカップにストローを入れてならかろうじて飲める。だが、それもやっと昨日からだ。傷の回復に比べてまだベッドを離れられないのは、飲み食いが十分できなかったせいだ。固形物は大丈夫でも、流動物、特に滴るほど水に近いものは口にできない。だから点滴するしかなくて……」
「違う」
中谷は声を絞り出した。布団の下の足が震えだしたのを必死に押さえ付ける。
「誰からそんなこと…」
「笙子に言われて看護師から。医師にも確かめた。中谷、お前ひょっとしてまだ」
「違う」
中谷は首を振った。口調に嘲りを響かせて、
「天下の『ハレルヤ・ボイス』が関わっている以上、間違いがあっちゃいけないってか? 安心しろ、俺は大丈夫だ、笙子が心配するようなことは」
「中谷」
キィが眉をひそめた。憂いの浮かんだ顔に思わずひやりとすると、相手は険しい口調で続けた。
「お前が呼び捨てにするな」
「……あ……すまん」
「わたしはお前がさっさと回復して、一刻も早く笙子の側から消えてくれることを望んでいるんだ」
「ああ、わかってる」
話が逸れたのにほっとしたのも束の間だった。
「と言うことで、わたしにはお前の回復を見届け、笙子の不安を取り除く義務がある。これからすぐにシャワーを浴びてもらう」
「待て…」
「もちろん、医師にも確認済みだ」
キィは立ち上がると、ベッドの下の衣装缶を勝手に引出して開いた。手近のタオルと着替えを取り出し、中谷の目の前に突き出す。
「さ、行け」
「……お前って……ほんと嫌なやつだな」
中谷は溜息をついた。きっと中谷がシャワーに入らない限り、キィは側を離れないつもりで来ているのだろう。タオルと着替えを手にして、のろのろとベッドから降りる。
部屋の隅には小さいながら洗面所つきのシャワー室がある。さすがキィの手配した部屋だけあって、支払額が恐ろしいところだった。今回の入院に関する限りこちらで持つと言ってくれていなければ、すぐに大部屋に移っている。
じっと自分の動作を検分するように眺めているキィの視線を浴びながらシャワー室のドアを開けると、使っていなかったのに水の匂いが押し寄せて、思わず立ち止まってしまった。
「中谷……お前」
「…入るよ」
「痩せたな?」
「……ヘンタイ」
吐き捨ててキィの視界を遮るようにシャワー室に入り、ドアを閉める。
洗面所で汗じみた寝巻きを脱ぎ捨てながら、自分の顔を鏡で見た。もう無精髭ではおさまらないほどに伸びた髭の底に、澱んだように青白い皮膚、異様に大きく見開かれている目がはっきりと怯えている。
「くそっ……」
本当は動けるようになってすぐ、髭を剃ろうとしてここに入ったのだ。始めは微かな違和感だった。何かの音が聞こえた気がして、それでも無理に押し殺して蛇口のコックを捻り、水を流しながら髭を剃った。久しぶりにさっぱりして、無精髭さえない自分の顔を見たら笙子はどう思うだろうかと、そんな他愛ない空想を楽しみ、さて、コックを捻って水を止め始めたとき、それは起こった。
止まりかけて滴る水。透明でぽとぽとと落ちるその音が、いやに耳についた。しっかりと蛇口のコックを捻る。強く捻る。水が止まる、だが、止まり切らない。落ちる。落ちる。不安が過る。止まらない水に苛立ちが募り、焦りが広がる。強く捻る。まだ止まらない。まだ、止まらない。なお捻る……そして、気づく。水は一滴ももう落ちていないことに。それなのに、耳の内側で、体の奥で、滴る水の音が聞こえる。
恐怖が募った。その水の滴りが流れに変わったときに、何が、起こるのか、中谷は知っている……。
「…っ」
乱れかけた呼吸に中谷は我に返った。首を強く振り、顔を擦り、下着を蹴り捨て、腹の傷がずきりと疼くのをことさら無視してシャワーの下に立つ。それでも、すぐにコックに手が延ばせない。
「中谷?」
「うるせえな!」
ドアの外から促すようにキィの声が響いて、中谷は震えている手に舌打ちしながら、一気にコックを捻った。ばしゃっ、と派手な飛沫が降り落ちてきて、一瞬息を詰める。うっかりしていて水だけだ。いくら夏に向かう季節とはいえ、水浴びにはまだ早い。急いで湯のコックも捻りながら、汚れが流されていく快感と安堵に吐息をついた。
(何だ……大丈夫じゃねえか)
あれは回復途中の気の迷いというやつで、『ソシアル』の暗示が残っていたとかいうのではないのだろう。
ほっとして温度を上げ、備えつけのボディシャンプーで髪も顔も体も一気に泡立て汚れを流し落とす。
(気持ちいい)
体と同時に気持ちも弛んだ。自分がどれほど緊張していたか思い知って、いささか情けない。これで『ジャーナル』の中谷とは高岡が聞いたらがっくりするだろう。いや、お前も人の子だってことだと大笑いするか。
(そうだ、連絡を入れてない)
刺されて病院に運び込まれた、その直後に病室へ現れたみたいだが、中谷の意識が戻っていなかったので顔を合わせていない。それ以降姿を見せていないが、修羅場を潜ってる部下の一人一人の安否を心配するような男でもないから、気にはしていない。むしろ、ものにすると言った『ハレルヤ・ボイス』の記事が書き辛くなってる自分がいて、今はかえって顔を合わせない方が気楽だ。
(笙子)
澄んだ黒い瞳を思い出して、中谷は我知らず微笑んだ。
(俺のことを気にしてくれた)
正直なもので体の方が微妙に反応してしまう。シャワーに叩かれたせいか、熱っぽく潤んでくるような気配があって、慌て気味に水に切り替えてさっさと止めた。
「よし、と」
ほら、大丈夫だったじゃねえか。
そうつぶやきかけた中谷はシャワーの下から立ち去ろうとして、ぽたぼた、と雫を肩に受けた。やっぱりどっか上の空だったかな、と苦笑して適当にもう一度手を延ばしてコックを締める。だが、また、ぽたぽたぽた、と雫が滴る気配がして、仕方ねえなあ、ここは緩いのかよ、と顔を上げたとたん、声にならない悲鳴があがった。コックを握った手にはまだぽたぽたと水が当たる気配があるのに、視界に入ったのは一雫も水を垂らしていないシャワーヘッドで。
「う…ぁ」
全身の血が引いた。揺らめいて倒れかけた体が支え切れない。どん、と壁にぶつかって、その衝撃で俯いた視界に腹の傷がぱくん、と口を開いたのが目に入る。それはみるみる真っ赤な液体を音をたてて吐き出しはじめる。
「あ……ああ……あ…っ」
「中谷? おい、どうした?」
「水が……血が……」
ぽた、とシャワーヘッドから止めたはずの水滴が光りながら落ちてきた。蛇口からも、ぽた、ぽた、ぽた、ときらめきながら水滴が落ちる。中谷の体から、いつの間にかシャワーヘッドと似たような形に突き出していた下半身のものから、奇妙に歪んだ裂け目のような腹の傷から、ぽた、ぽた、ぽた、と雫が滴り落ちていく。赤の、透明の、いや、銀の、白の雫が、止めようとしても止められない、内側からの圧力に、押されて。
いやだ、たすけて。
座り込んだ足が、膝が、体ががくがく震え出す。けれど、体の奥が疼くように熱くて。身動きができない、あの日のように。自分の体なのに、自分の思うように動かなくて、煽られる、暴走する、過熱する頭に真紅の霧がかかっていく。とろけていく感覚が、ぞっとするほど気持ちいいのに、心が闇に塗り潰される。
もう、やめて。
誰かがささやく。大丈夫よ、誰だってあること、すぐに終わるわ、自然なこと、当たり前のこと。
違う。
胸の中で激しくかぶりを振ってもがくのは、中学生になったばかりの自分の姿だ。風呂場で、籠る熱気にあてられてのぼせたから、いや、そうじゃない。
これは、違う。
震えが止まらない。滑らかな感触が、張りつく髪の毛が、上気した顔の母親が、なぜ自分の目線より下から見上げてくるんだ? がたがた全身震わせて、寒いのか? いや、熱い、熱くて気が狂いそうだ。手でしっかり湯舟を掴んでいないと、落ちる、背後から、熱い湯の中へ、今さっきまで浸かっていたところへ、ああ、けれど、体が揺れてじっとしていられない、足が跳ねる、体を竦めて、絶頂が近い、けど、これは違う、これはこれは、違う違う違う、だって。
『おにいちゃんっ?』
「ひ…ぅっ」
(み・ゆ・き)
その瞬間、耳の奥に弾けた声に、中谷は息を引いた。視界が眩む。体が崩れる。
(み・ゆ・き・に・み・ら・れ・た)
下半身に熱い飛沫が弾けた。振り返る幻の視界にはっきり映るのは、呆然とした顔の深雪の姿だ。意識を飛ばしそうな快感に体を解放されながら、同時に果てしない奈落に落ち込む恐怖。頬を濡らしていた涙が流れ落ちるシャワーに消される。突き放されて湯舟の中に沈む自分の体が桜色に染まっているのが目に焼き付く。興奮の名残りにまだ疼いている体が。深雪が不安そうに尋ねる声がみるみる遠ざかっていく。
『何してるの、おかあさん?』
「ぅあ…ああ……っ」
悲鳴をあげるしかなかった。
響いてくる声から、内側に満ちる水音から、耳を封じ意識を切り離すためには。
それでも、滴る水の音が、中谷を侵す。
一番遠くに押しやっていた記憶が、水音に呼び覚まされて。
ぽたっ……。ぽたぽた……っ。ぽたぽたぽた………。
滴っているのは、水なのか、それとも、中谷の吐いたもの、なのか……。
深雪を見るとあの日の記憶が甦る、体の奥で蠢く妖しい火を感じ取る、意識しまいと切り離していたのに、あの瞳に見つめられると、まばゆげな、あの瞳、中谷を兄としてではなく男として見つめるかのような、あの瞳に晒されると、まるで別のスイッチが入るように不安定に揺れ出す自分を感じ取る。深雪が成長するに従って、女に近づくに従って、中谷に植え込まれたスイッチが、違う方向へ中谷を動かしてしまう。
(深雪)
中谷は本当に深雪の自殺を悲しんでいたのだろうか。
それとも、本当は、自分を危うい記憶に、人としての理性を吹き飛ばす衝動に押しやる存在が消えることを望んではいなかった、か?
「止めて……くれ……っ」
「中谷!」
背後から抱きかかえられる。崩れた体には力が入らない。座り込む、もっとめり込んでいく。
「中谷っ!」
「水が………止まら……ねぇ………っ……」
必死に絞り出した声が遠く虚空に吸い込まれていく。
「止めて……誰……か………止めてくれ………止めて……れ…っ」
「中谷っ! しっかりしろっ!」
「水の……おと………とめ……て………」
「中谷っっ!」
キィの切羽詰まった声を聞きながら、中谷は意識を失った。
目覚めは最悪だった。
それほど長く気を失っていたわけではないのは、窓の外が明るいのでもわかる。
「気がついたか」
窓から外を眺めていたキィが中谷の気配に気づいて振り返る。その目に濃い憂いがあるのを見つけて、中谷は視線を逸らせた。左手に数日前に取れたばかりの点滴が再び繋がってるのを見ながら、
「俺は…倒れたのか?」
「シャワーの水が止まらない、と言って」
びくっと体が強ばった。
「いや、正確には違うな。『水音』が止まらない、と言った」
「話すな」
沈黙して応えないキィを振り返る。
「笙子に話すな」
また呼び捨てにするなと怒られるかと思ったが、キィは無言のまま中谷を見下ろしている。やがて、重苦しい吐息をついた。
「中谷…」
「笙子のせいじゃない。俺の……俺の抱えてるもののせいだ、彼女のせいじゃない」
「中谷」
「笑うだろ、ガキの頃のことをずるずる引きずって、誰だってあることなんだ、終わったことだ、男なら自然な欲求で、当たり前のことだったんだ、なんてことないんだ、つまんないことだ、ちょっとしたことで、ただ急に思い出したからびっくりしただけだ」
キィのことばを遮るように、中谷は早口に言い募った。吐き出したことばが誰かのことばにそっくりだと気づきかけて、それから気を逸らせるように無意識に震える右手で腹を探った。傷は開いていない、そんなことはわかってる。あれは幻、いや、中谷の心の奥底に沈んでいた記憶が開いた光景だったのかもしれない。指を傷に突き立ててひきむしりたい衝動が襲い、慌ててこぶしを握り締める。
「カウンセリングは受けたのか」
キィが低い声で聞いてきた。
「カウンセリング?」
今にもがくがく震えそうな体を必死に堪えていると、キィが静かな口調を重ねた。
「親から受けた性的虐待はカウンセリング対象のはずだ」
茫然とした。ゆっくり近づいてくる相手に体が小刻みに震え出すのがわかる。自分がとんでもなく幼い子どもになったような気分だ。
「俺は……何をしゃべったんだ」
絞り出した声が惨めに掠れていた。
「『やめて、おかあさん、僕は、そんなこと、したいんじゃない』」
キィが中谷の口調そっくりに応えた。
「!」
「『違う、これは違う、いやだ、助けて、もう、で』」
「やめろっ」
キィのことばを遮った声が悲鳴じみていた。続きそうになる声を口元を覆った手で握りつぶす。冷たい汗が全身を濡らして寒くてがたがた震えている。
「……中谷」
キィは静かに深い息を吐いた。どこか憐れむように中谷を見下ろし、
「無理をするな」
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