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44.『恩情に甘えるなかれ』(3)
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大声で怒鳴るガイルとシャイレンに笑い返して店を出たとたん、オウライカは顔を引き締めた。
「……あんた呼ばわりって、あの人、トラスフィさんみたいですね………どうかしましたか?」
「………本当だろうか」
「え?」
「喰われる人間が、喰われなかった」
「………カークさんのお父さんが、ですね?」
でも、そんなことできるんでしょうかねえ。ルワンが溜息をつく。
「………やりそうな人を知っている」
「ハイトさんですね」
「………探れるか?」
「……………難しいことばかり頼みますね」
「急を要する……トラスフィでは目立ちすぎる」
「……じゃあ、トラスフィさんには『斎京』から『塔京』周辺で騒いで下さいって言っといてください。そっちで陽動かけてもらって人数増やして入ります」
「わかった」
「それと」
「?」
「レシンさんに前払いでワイルドオセラリスが欲しいって」
「……わかった……その、わるいどおせろりす、でいいんだな?」
「ワイルドオセラリス。妙な間違い方しないでくださいよ」
ちょっと膨れたルワンが急ぎましょう、と足を速めて先に立った。
『戻られては困るんですよ』
やんわりとルワンがことばを継いで我に返る。
『こっちはもう始めてるんですから』
「安心しろ」
苦笑しながら約束する。
「それにあっちも俺は好みらしいしな」
『それを聞いて安心しました、それじゃ』
「よろしく頼む」
これだけ無断で動き回ったのがトラスフィに知れるとまた怒られるな、と一旦置いた受話器をすぐに取り上げた。
「……ミコト?」
『人の名前ぐらいちゃんと呼べないの?』
こっちは一人でっかい食い扶持抱えて大変なんだから、と拗ねられて謝る。
「……ところで、カザルは?」
『……いきなりそれか』
「……すまん」
『元気にレシンさんのところへ通ってるわよ。もっとも今日はちょっと、おかしいけれど』
「………今夜会えるか?」
『聞いてみてあげようか』
「是非聞いてくれ」
『………ちょっと待って』
ミコトの声はすぐに戻ってきた。
『あのさ』
「いつ行けばいい?」
『……会いたくないって』
「……は?」
『会いたく、ない。聞こえた? オウライカさんには、今、会いたくない、そう言われたけど』
何やったの?
そう尋ねられて舌打ちする。
「いつ会える? 電話は?」
『……………オウライカさんと、話したくない、そうよ』
「……………………」
オウライカは深く大きなため息をついた。
『オウライカさん?』
「………なんだ」
『川岸屋の五色最中って知ってる?』
「……いや?」
『綺麗なんだって~。見たいな~』
「…………カザルが好きなのか」
『好きかもしんない』
「持っていく」
くすくす笑うミコトの声にもう一度大きく溜息をついて、オウライカは受話器を置いた。
「……あんた呼ばわりって、あの人、トラスフィさんみたいですね………どうかしましたか?」
「………本当だろうか」
「え?」
「喰われる人間が、喰われなかった」
「………カークさんのお父さんが、ですね?」
でも、そんなことできるんでしょうかねえ。ルワンが溜息をつく。
「………やりそうな人を知っている」
「ハイトさんですね」
「………探れるか?」
「……………難しいことばかり頼みますね」
「急を要する……トラスフィでは目立ちすぎる」
「……じゃあ、トラスフィさんには『斎京』から『塔京』周辺で騒いで下さいって言っといてください。そっちで陽動かけてもらって人数増やして入ります」
「わかった」
「それと」
「?」
「レシンさんに前払いでワイルドオセラリスが欲しいって」
「……わかった……その、わるいどおせろりす、でいいんだな?」
「ワイルドオセラリス。妙な間違い方しないでくださいよ」
ちょっと膨れたルワンが急ぎましょう、と足を速めて先に立った。
『戻られては困るんですよ』
やんわりとルワンがことばを継いで我に返る。
『こっちはもう始めてるんですから』
「安心しろ」
苦笑しながら約束する。
「それにあっちも俺は好みらしいしな」
『それを聞いて安心しました、それじゃ』
「よろしく頼む」
これだけ無断で動き回ったのがトラスフィに知れるとまた怒られるな、と一旦置いた受話器をすぐに取り上げた。
「……ミコト?」
『人の名前ぐらいちゃんと呼べないの?』
こっちは一人でっかい食い扶持抱えて大変なんだから、と拗ねられて謝る。
「……ところで、カザルは?」
『……いきなりそれか』
「……すまん」
『元気にレシンさんのところへ通ってるわよ。もっとも今日はちょっと、おかしいけれど』
「………今夜会えるか?」
『聞いてみてあげようか』
「是非聞いてくれ」
『………ちょっと待って』
ミコトの声はすぐに戻ってきた。
『あのさ』
「いつ行けばいい?」
『……会いたくないって』
「……は?」
『会いたく、ない。聞こえた? オウライカさんには、今、会いたくない、そう言われたけど』
何やったの?
そう尋ねられて舌打ちする。
「いつ会える? 電話は?」
『……………オウライカさんと、話したくない、そうよ』
「……………………」
オウライカは深く大きなため息をついた。
『オウライカさん?』
「………なんだ」
『川岸屋の五色最中って知ってる?』
「……いや?」
『綺麗なんだって~。見たいな~』
「…………カザルが好きなのか」
『好きかもしんない』
「持っていく」
くすくす笑うミコトの声にもう一度大きく溜息をついて、オウライカは受話器を置いた。
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