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『迷子の迷子の』(5)
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「……ああ」
ベッドで起き上がって、ぼんやりした。
「そういう……ことか」
カレンダーを眺める。
次の瞬間、ふ、っと夢が消えてしまった感覚にうろたえる。
「あれ?」
今、私。
何か、夢を。
瞬きして、瞼の腫れぼったさに気づく。
「ああ…」
そうだ、私、泣き寝入りしたんだっけ。
恵子を雨宿りさせた真崎のやり方に傷ついて。あれこれ絡む現実に疲れ切って。差し出された有沢の手を握りそうになって。
辛くて切ない夢を見た、迷子になって、ぬいぐるみのくまに惑わされて。
夢の結論を覚えていないのは、自分への処罰のつもりだろうか。
ブラックのコーヒーの苦さに目を閉じる。
脳裏に浮かんだ、真っ白な雪に落ちた紅の花を思う。
落ちてもなお。
見えない場所で、何かが動き出す。
落ちても、なお。
「うん…」
落ちた椿を、今一つ、静かに拾い上げた。
おわり
ベッドで起き上がって、ぼんやりした。
「そういう……ことか」
カレンダーを眺める。
次の瞬間、ふ、っと夢が消えてしまった感覚にうろたえる。
「あれ?」
今、私。
何か、夢を。
瞬きして、瞼の腫れぼったさに気づく。
「ああ…」
そうだ、私、泣き寝入りしたんだっけ。
恵子を雨宿りさせた真崎のやり方に傷ついて。あれこれ絡む現実に疲れ切って。差し出された有沢の手を握りそうになって。
辛くて切ない夢を見た、迷子になって、ぬいぐるみのくまに惑わされて。
夢の結論を覚えていないのは、自分への処罰のつもりだろうか。
ブラックのコーヒーの苦さに目を閉じる。
脳裏に浮かんだ、真っ白な雪に落ちた紅の花を思う。
落ちてもなお。
見えない場所で、何かが動き出す。
落ちても、なお。
「うん…」
落ちた椿を、今一つ、静かに拾い上げた。
おわり
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