27 / 48
『瑠璃色玩具』
しおりを挟む
「これなんかどうですか?」
「んー」
色とりどりの石が並ぶ店で、京介は首を傾げる。
ここは天然石を扱っている店で、所狭しと並べられたアクセサリー素材としての石とは別棚で、祈りや儀式に使う類や、既に加工してすぐ身につけられるようになっているものも飾られている。
「あ……これ綺麗」
美並が指差したコバルトブルーに近い美しい石を、京介は覗き込む。
「ああ、いい感じ」
美並によく似合いそうだな、と微笑みかけた矢先、くるりと何かを首に巻かれて瞬きした。
「似合いますよ?」
「え?」
促されて鏡を振り返ると、そこにはボタンを二つ外したシャツの首に、くるりと黒いビロードのチョーカーを巻かれた自分の姿。少し背伸びをして、そのチョーカーの端を摘んでいる美並がにこりと満足そうに笑う。
「オパールに似てますね、この石」
「そうだね」
チョーカーには少し大きめの虹色に色を変える石が通されているだけのシンプルさ。けれどその石にまとわりつくように小粒の透明な石と青い石が配置されていて、今その中央の石が海から浮かび上がったようにも見える。
「ふぅん」
意外に僕、こういうのも似合うんだなあ。
「…って、」
美並が合わせてくれたというだけでにっこりしかけて、京介ははたと我に返る。
「男がするもんじゃないんじゃないの?」
「一般的には」
「でしょ?」
「でも、ほらこうすると」
「んっ」
きゅ、と軽く紐を引かれて美並の側に顔を寄せると、
「まるで私の飼い猫みたいでしょ?」
「猫?」
犬の方がいいな、僕。
「そう? 京介、猫っぽいでしょ?」
いじっぱりなところもあるし。
「犬だって。僕は美並の犬なの!」
「うーん」
店の隅で怪しげな会話を始める二人に、明は眉をしかめて七海の肩を抱える。
「なに?」
「他人のふりしよう、七海」
最近美並もかなりおかしいよなあ。
深い溜め息をつく明に七海がくすくす笑った。
「んー」
色とりどりの石が並ぶ店で、京介は首を傾げる。
ここは天然石を扱っている店で、所狭しと並べられたアクセサリー素材としての石とは別棚で、祈りや儀式に使う類や、既に加工してすぐ身につけられるようになっているものも飾られている。
「あ……これ綺麗」
美並が指差したコバルトブルーに近い美しい石を、京介は覗き込む。
「ああ、いい感じ」
美並によく似合いそうだな、と微笑みかけた矢先、くるりと何かを首に巻かれて瞬きした。
「似合いますよ?」
「え?」
促されて鏡を振り返ると、そこにはボタンを二つ外したシャツの首に、くるりと黒いビロードのチョーカーを巻かれた自分の姿。少し背伸びをして、そのチョーカーの端を摘んでいる美並がにこりと満足そうに笑う。
「オパールに似てますね、この石」
「そうだね」
チョーカーには少し大きめの虹色に色を変える石が通されているだけのシンプルさ。けれどその石にまとわりつくように小粒の透明な石と青い石が配置されていて、今その中央の石が海から浮かび上がったようにも見える。
「ふぅん」
意外に僕、こういうのも似合うんだなあ。
「…って、」
美並が合わせてくれたというだけでにっこりしかけて、京介ははたと我に返る。
「男がするもんじゃないんじゃないの?」
「一般的には」
「でしょ?」
「でも、ほらこうすると」
「んっ」
きゅ、と軽く紐を引かれて美並の側に顔を寄せると、
「まるで私の飼い猫みたいでしょ?」
「猫?」
犬の方がいいな、僕。
「そう? 京介、猫っぽいでしょ?」
いじっぱりなところもあるし。
「犬だって。僕は美並の犬なの!」
「うーん」
店の隅で怪しげな会話を始める二人に、明は眉をしかめて七海の肩を抱える。
「なに?」
「他人のふりしよう、七海」
最近美並もかなりおかしいよなあ。
深い溜め息をつく明に七海がくすくす笑った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる