3 / 39
2.セレド皇宮(2)
しおりを挟む
「旅から旅をしていたと聞いたが」
皇は警戒心の一つも見せず穏やかに尋ねてくる。
「ええ、いろいろなものを見て参りました」
背後で音楽が流れ、ダンスが始まった。緩やかにきらびやかに入れ替わり立ち代わり踊り出す人々を見ながら、アシャは曖昧に微笑む。
「美しいもの、楽しいもの、悲しいもの、苦しいもの………敵意、妬み、企み、誠意、愛、友情……真実の姿も……」
「急がれる旅かな?」
「いいえ、気の向くままで………しかし、今度ばかりは」
アシャはゆっくりとレアナに会釈した。
「助けて頂き感謝しております」
「さぞ困られたことでしょう」
ミアナ皇妃が優しく応じた。
レアナとセアラは母親似、性格の違いがあるが、この柔らかで無防備な感触は共通しているな、と笑い返す。
「何かお役に立てることがあれば、是非お申し付け下さいませ」
「……お父さま」
レアナが思いついたように口を挟んだ。
「よろしければ、しばらくお役目をお願いするわけにはいかないでしょうか」
「何をだね?」
「ほら、ユーノの付き人に……この間、唐突にサルトが家に戻ってしまってから、あの子はずっと1人ですもの」
(おいおい、仮にも皇女の付き人に流れ者を付けようと言うのか)
お姫さま育ちにしても気楽すぎるだろう、とさすがにアシャが呆れていると、それをミアナ皇妃は別な意味に取ったらしく、心配そうに首を傾げる。
「しかし、そのようなことをいきなりお頼みしても」
「あなた、武芸もするわね?」
セアラがきらりと視線を上げた。なかなかに鋭い、と目を細めて見返す。
「歌も歌える? 楽器は? ダンスは?」
「セアラ」
「…一通りは」
微笑むとそう、と頷いたセアラが皇に向き直る。
「この人が付けば、姉さまの無謀なところも少しは直るわ。優雅そうだし、あれこれ教えてもらえば、『セレドには皇子がいる』と言われなくてすむんじゃない?」
容赦ない糾弾は実の姉に対するものとも思えない。
「あの、ユーノ、とお呼びになっているようですが」
「ああ……本当はユーナ、なのですけれど」
皇妃はほっと小さく溜め息をついた。
「ユーナと呼ばれるのを嫌って……美しいものにも、ドレスも夜会にも興味がなく、いつも男のような格好ばかりして馬を走らせ剣を取り……どうしたものでしょうか」
最大の悩み事だと言いたげに美しい眉を寄せる。
「いいではないか。わしは息子がいるようで心強い」
セレディス4世は嬉しそうだ。
「親衛隊員の中で、ユーノと互角なのは隊長のゼランだけだぞ」
「そうやってあの子を男に育てるおつもりですか? 年頃というのに、花一つ贈られることがないのを不憫に思われませんの?」
柔らかく咎める皇妃に皇が苦笑する。
(平和な国…というより、平和な人々、ということか)
微笑を浮かべながらアシャは目を伏せた。
ここにいる誰も先ほど起こったことに気づいていない。自分達のすぐ側で、3つの命が一瞬に消え失せたことを知らない。
それはこの世界に共通の認識だ。世界の裏側に何があるのか気づく者はほとんどいない。そして、どれほど多くの命が瞬きする間に散っているのかにも興味がない。いずれ自分達の未来に降り掛かってくるかもしれないとも考えない。
けれどその無関心が世界を安定に導いているとも言える。うっとうしく倦怠に満ちた現実。
アシャは微笑を浮かべ続ける、ふと、闇に舞ったユーノを思う。
(同じものを…見ている、か?)
穏やかな人々が気づかぬ影で命を屠り続ける剣。
「どうかしら……いけません?」
レアナの声に我に返った。
「姉さまの相手は大変だと思うけど」
小首を傾げながらレアナに続いて、セアラが真剣な顔で見上げた。
「でも、姉さまだって誰かが側に欲しいときもあるはずだから」
「構いませんよ」
アシャは微笑を深めた。
「急ぐ旅ではないのですし……ユーノ様さえよろしいのなら」
表面上は平和で穏やかに見えるこの小国に見えない嵐が吹き荒れている。それはひょっとするとラズーンの嵐と関連しているかもしれない。
捨てたはずだが、気になった。
「大丈夫よ、あの子なら………あら、ユーノは?」
尋ねられてはっとした。
いつの間にかユーノの姿が消えている。
(俺が気づかなかった?)
確かにアシャはレアナに見愡れていたが、人1人消えるのがわからないほど鈍感なつもりはなかった。
「また抜け出したな、客人がいるというのに」
「では、探して参りましょう。付き人の初仕事として」
満足そうに微笑む皇族一家に一礼してその場を離れ、アシャは広間を出た。
「ふ、ぅ」
涼やかな外気にあたり、汗に濡れた髪をかきあげてアシャは溜め息をついた。
熱っぽく絡みつく女達の視線には慣れてはいるが、久々にずっと浴びていると気疲れする。見かけに不似合いな野放図さもある身としては、自由気侭に旅を謳歌する方が性に合う。
しかし。
「いつ抜け出した…?」
首を捻った。紹介された時は居たはずだ。視線を移していくと眩そうな目をしてこちらを見、一瞬怯んだ顔になったがすぐに不敵に笑い返してきた。
今ならあの笑みの理由がわかる。万が一にもアシャが家族に危害を加えるようなら、容赦なく切り捨てるという宣戦布告のようなものだろう。
それから談話が始まって、その時もまだ確かにユーノは居た。気配を消して身を引いたのはわかるが、その動きで場の空気を乱さなかった制御力に舌を巻く。
他の人間ならまだしも。
(俺を相手に)
このアシャを。
(シートスあたりが聞いたら何と言うやら)
『名だたるアシャも随分温くなったものだ、放浪で人恋しさに溺れておられたのか』
豪胆に笑う声が聞こえそうだ。
月光が影を落とす靄がかかった夜の庭園、静まり返った木々は立ち尽している。意識を澄ませ、人の気配を探りながら進んでいくが、どこにも何も感じ取れない。一旦立ち止まって気を沈めたとたん、微かに馬の蹄の音がした。
「こっちか」
華やかな皇宮内と対照的に木立の影に一頭の馬の姿があった。側に誰もいない。
(こんな状態で馬を放置するとは)
盗人の存在どころか悪用されることさえ考えないのか。
吐息まじりに近づいて、夜に溶けるような馬の背に小さな人影が乗っているのに気付いた。
「……ユーノ?」
呆気に取られた。
さっきのドレス姿で馬に跨がったまま、ユーノは俯せて馬の背中にしがみついている。もっと近づいて、相手が気持ち良さそうに寝息を立てているのに気づいてなお呆れる。
「……おいおい」
よくもそんな姿勢で、それもなぜこんな夜露に濡れる場所で。しかも妙にほっとした顔で眠っていないか。
思った瞬間に気がついた。
「……警護、しているのか」
思わず皇宮内を振り返った。
広間からは温かな明りが零れ、人々は笑いさざめき踊っている。窓から見える場所を今通り過ぎたのは、親衛隊の長、それこそゼランではなかったか。
皇を守り、皇宮を警備するはずの兵が職務を離れ、守られているはずの皇女が一人夜闇に潜んで敵を警戒している。
こんな暗い庭の片隅に、闇に沈んでたった1人で。
「どうして……こいつだけ……」
なぜ守られていない、他の皇族のように。何か特別な理由でもあるのか。単に男勝りというだけではあるまい。
考えながら、アシャは振り返って馬に近寄った。主の睡眠を守る役目を負った馬が瞳を凝らせて顔を上げるのに笑みかける。
忠実な馬だ。主を大事に思っている。それは、ユーノがこの馬と丁寧に関係を結んできたことを示している。
気配を殺してアシャはユーノに両手を差し伸べた。やはりどうしても苦しそうな体勢に見える。抱え降ろして、草の上にでも、できれば軒の下にでも寝かせてやりたい。
その間の護りは自分がすればいいなどと似合わないことを思いついてしまったのは、夜闇に休める場所さえなく1人居るユーノに、遠い日の自分を重ねてしまったからだろうか。
だが、近づくアシャの手に馬は警戒を緩めなかった。首を振り、蹄の音を立てて身構える。同時に押し殺した叫びが響いて、闇に光が閃いた。
「何者っ!」「っっ!」
ガシャッ、と激しい音が鳴って、アシャの目の前で剣が噛み合った。一方は馬上から振り降ろされた細身の剣、もう一方はアシャが抜き放った黄金の剣。
「……な、んだ……あなたか」
苦笑したユーノがそれでも剣から力を抜かず、じろりとアシャの剣を見て眉を寄せる。
「……どこが、武器は所有していない、だ」
「……そうすぐには見つかるような扱いをしていない、許してやれ」
親衛隊の愚を責める声にアシャも苦笑しながらユーノを見返した。黒い瞳が瞬きもせず、厳しい顔でこちらを見据える。街中で見たものとも皇宮で見たものとも違う、冷酷で鋭い目、見下ろされているからだけではないだろう、一瞬『泉の狩人』(オーミノ)の姿を思い起こした。
「暗殺者か………カザドがお前を雇ったのか」
「カザド?」
冷ややかな問いかけにアシャは眉を上げた。
確かカザド、というのはセレドより北西にある国の名だ。主はカザディノ、権力志向の脂ぎった中年男だなと思い出し、なるほどユーノが警戒しているのは隣国の王なのか、と気づく。
「……違うのか」
アシャの沈黙をユーノは的確に読み取った。訝しそうに首を傾げ、そうするとようやく年相応に見える顔に戻る。乱れた髪を頬から拳で払い、
「何の用?」
すぐに剣を引いて鞘におさめた。
その思いきりの良さにまた呆れる。
「自分から剣をおさめていいのか」
「あなたには殺気がない。それに、私を殺るつもりならとっくに殺ってる」
「君が今手控えたように?」
「………用件は何?」
ユーノは静かに視線を逸らせた。
「レアナ様に頼まれた。君の付き人になるように、と」「っ」
体を震わせて振り返るユーノに一気に緊張が満ちた。
(えらく警戒されてしまってるな)
アシャは苦笑する。どこでも誰にでも長年の知己のように受け入れられるのはうまいはずだが、ユーノには手管が効かないらしい。
(どこかでへまをしたか?)
ざっと検証するが思い当たらない。微かな不安が過った。
「危ないところを救ってもらった。お役に立てるなら本望だが……得体の知れない男は苦手か?」
滑らかな口調で柔らかく尋ねてみた。
「…………」
ユーノは無言で見下ろしている。黒い瞳は警戒を緩めない。
仕方がない。アシャはぼそりと呟いた。
「夕方のような時には、1人で戦うよりは助けになると思うが」
ユーノは明らかに顔を強張らせた。
「……見たのか」
「凄い殺気だったからな。それに……見事だった」
「………」
ユーノは少し頬を染めた。小さな顔がうっすらと紅を広げて、何だか儚く可愛らしく見える。
「そう…か」
軽く噛まれた唇が柔らかそうだと思った。
「了解は?」
惑うようにユーノの視線が揺れ、またそっと逸らされる、誰かの視線を気にしたように。けれどももちろん、他には誰もいないとアシャの感覚が教えている。
「………私の付き人は…危険だよ?」
掠れた声で吐いて、一旦外した視線をゆっくり絡めてくる。
「命の保証ができない……」
黒い瞳にいきなり滲むように寂しい笑みが広がって、アシャはどきりとした。
その笑みの中には絶望がある。悲しみがある。傷みがあって、それを堪える強さがある。痛々しいほどの、強さが。
(こんな目を)
女性が、するのか。
思わず知らず輝きにアシャが見愡れていると、静かな声でユーノは続けた。
「こんな性分だから、いつ何時何があるかわからない。………でもさっきのが受けられるなら、あなたはそこそこ使えるんだろう……いざとなったら何とか生き延びてくれるよね…?」
(いざとなったら何とか生き延びてくれる?)
おかしなことを言う。付き人ならば、主を捨てて生き延びてはまずいだろう。見捨てることこそ咎めなければならないだろうに、ユーノの物言いでは、何かあれば自分を捨てて生き延びろと言っているようにさえ聞こえる。
アシャの無言の問いかけに、ユーノは目を細めた。
(泣くのを、堪えた)
背筋に奔った感覚に息を呑む。
「ユーナ様……」
「ユーノでいい。そう呼ぶなら付き人を認める。改まったことばも要らない………さっきのままで十分……」
低い声で命じると、ユーノはふいに顔を振り上げ体を立て直した。慌てて身を引くアシャに構わず手綱を握る。
「では、付き人として命じる。皇宮に戻り、私が付き人を了解したと伝えろ。それから、私はしばらく戻らない、その間……姉さま達を頼む」
了承しかけて法外な命令だと気づく。
「どちらへ!」
とっさに身を翻して行く手を封じようとしたのに、ユーノは予想していたように軽々とアシャを振り払った。
「ちょっと馬を駆けさせてくるっ!」
はぁっ、と激しい声を響かせ、振り返りもせずに駆け出す相手を、アシャは茫然と見送った。
カッカッカッカッ……。
蹄の音が街を駆け抜ける。馬の背に身を伏せてユーノは手綱を握り締める。
(付き人? アシャが付き人? 私の付き人?)
胸が轟く。息が上がる。
馬を激しく急がせるからではない、思いもかけぬ幸運に身体中が熱くなって、その熱を放ってしまいたくてたまらない。まっすぐに、いつもより数倍早く街から離れた丘に駆け上ってようやく、汗を蒸気に立ち上らせるレノを止めた。
「ア……シャ……」
小さく呟き、慌てて唇を指で押さえた。それでもついつい嬉しくて綻ぶ顔でことばを零す。
「………ずっと一緒に居られるんだ…………あ」
ふいにぞっとした。
「付き人………つけちゃいけなかったのに……」
サルト。
心の中で名前を呼ぶと、胸がきつく締まって顔を歪めて目を閉じた。
守りたかったのに守れなかった笑顔。あんな思いは二度とするまいと、2つに1つしか選べないなんてことがないようにしようと思っていたのに、アシャが側に居てくれる、その喜びで思わず受け入れてしまった。
「……夢かと思った……夢なんだと……思っちゃった……」
呟きながらそっと目を開ける。
夢であるなら頷いてもいいだろうと、一瞬自分をごまかした。
「そのツケって………そのうち払うことになるんだろうか…レノ…」
尋ねたがレノは応えない。風に白いたてがみを舞わせて、沈んだ主を気づかうように微かに振り向く。その首を静かに撫で、黒い瞳を覗き込んで、ユーノは広間でのアシャの表情を思い出す。
レアナに注がれた喜びの笑み。セアラに向けられた慈しみの眼差し。
それと比較して、ユーノに与えられた訝しげな不思議そうな戸惑いの顔。
「……違う……のかもしれないな……本当はレアナ姉さまの側に居たかった……のかもしれない……。それなら……わかるな……うん……だって……」
ユーノは自分の片腕を掴んでそっと撫でた。服の上からでも明らかにわかるでこぼこした肌触り。そのまましばらくじっと動きを止め、はは、と乾いた笑いを漏らした。
「……今は考えないでおこうか……そうしようか………だって、私、そんなこと考えている暇……ないもの………カザドのことだってあるし……守らなくちゃいけないもの、一杯あるし……レアナ姉さまにセアラ……父さまに母さまに……セレド……」
どこまでいっても自分は入らない。
一際強く吹いた風に固く目を閉じ、ユーノは竦んだ体を抱き締めた。
皇は警戒心の一つも見せず穏やかに尋ねてくる。
「ええ、いろいろなものを見て参りました」
背後で音楽が流れ、ダンスが始まった。緩やかにきらびやかに入れ替わり立ち代わり踊り出す人々を見ながら、アシャは曖昧に微笑む。
「美しいもの、楽しいもの、悲しいもの、苦しいもの………敵意、妬み、企み、誠意、愛、友情……真実の姿も……」
「急がれる旅かな?」
「いいえ、気の向くままで………しかし、今度ばかりは」
アシャはゆっくりとレアナに会釈した。
「助けて頂き感謝しております」
「さぞ困られたことでしょう」
ミアナ皇妃が優しく応じた。
レアナとセアラは母親似、性格の違いがあるが、この柔らかで無防備な感触は共通しているな、と笑い返す。
「何かお役に立てることがあれば、是非お申し付け下さいませ」
「……お父さま」
レアナが思いついたように口を挟んだ。
「よろしければ、しばらくお役目をお願いするわけにはいかないでしょうか」
「何をだね?」
「ほら、ユーノの付き人に……この間、唐突にサルトが家に戻ってしまってから、あの子はずっと1人ですもの」
(おいおい、仮にも皇女の付き人に流れ者を付けようと言うのか)
お姫さま育ちにしても気楽すぎるだろう、とさすがにアシャが呆れていると、それをミアナ皇妃は別な意味に取ったらしく、心配そうに首を傾げる。
「しかし、そのようなことをいきなりお頼みしても」
「あなた、武芸もするわね?」
セアラがきらりと視線を上げた。なかなかに鋭い、と目を細めて見返す。
「歌も歌える? 楽器は? ダンスは?」
「セアラ」
「…一通りは」
微笑むとそう、と頷いたセアラが皇に向き直る。
「この人が付けば、姉さまの無謀なところも少しは直るわ。優雅そうだし、あれこれ教えてもらえば、『セレドには皇子がいる』と言われなくてすむんじゃない?」
容赦ない糾弾は実の姉に対するものとも思えない。
「あの、ユーノ、とお呼びになっているようですが」
「ああ……本当はユーナ、なのですけれど」
皇妃はほっと小さく溜め息をついた。
「ユーナと呼ばれるのを嫌って……美しいものにも、ドレスも夜会にも興味がなく、いつも男のような格好ばかりして馬を走らせ剣を取り……どうしたものでしょうか」
最大の悩み事だと言いたげに美しい眉を寄せる。
「いいではないか。わしは息子がいるようで心強い」
セレディス4世は嬉しそうだ。
「親衛隊員の中で、ユーノと互角なのは隊長のゼランだけだぞ」
「そうやってあの子を男に育てるおつもりですか? 年頃というのに、花一つ贈られることがないのを不憫に思われませんの?」
柔らかく咎める皇妃に皇が苦笑する。
(平和な国…というより、平和な人々、ということか)
微笑を浮かべながらアシャは目を伏せた。
ここにいる誰も先ほど起こったことに気づいていない。自分達のすぐ側で、3つの命が一瞬に消え失せたことを知らない。
それはこの世界に共通の認識だ。世界の裏側に何があるのか気づく者はほとんどいない。そして、どれほど多くの命が瞬きする間に散っているのかにも興味がない。いずれ自分達の未来に降り掛かってくるかもしれないとも考えない。
けれどその無関心が世界を安定に導いているとも言える。うっとうしく倦怠に満ちた現実。
アシャは微笑を浮かべ続ける、ふと、闇に舞ったユーノを思う。
(同じものを…見ている、か?)
穏やかな人々が気づかぬ影で命を屠り続ける剣。
「どうかしら……いけません?」
レアナの声に我に返った。
「姉さまの相手は大変だと思うけど」
小首を傾げながらレアナに続いて、セアラが真剣な顔で見上げた。
「でも、姉さまだって誰かが側に欲しいときもあるはずだから」
「構いませんよ」
アシャは微笑を深めた。
「急ぐ旅ではないのですし……ユーノ様さえよろしいのなら」
表面上は平和で穏やかに見えるこの小国に見えない嵐が吹き荒れている。それはひょっとするとラズーンの嵐と関連しているかもしれない。
捨てたはずだが、気になった。
「大丈夫よ、あの子なら………あら、ユーノは?」
尋ねられてはっとした。
いつの間にかユーノの姿が消えている。
(俺が気づかなかった?)
確かにアシャはレアナに見愡れていたが、人1人消えるのがわからないほど鈍感なつもりはなかった。
「また抜け出したな、客人がいるというのに」
「では、探して参りましょう。付き人の初仕事として」
満足そうに微笑む皇族一家に一礼してその場を離れ、アシャは広間を出た。
「ふ、ぅ」
涼やかな外気にあたり、汗に濡れた髪をかきあげてアシャは溜め息をついた。
熱っぽく絡みつく女達の視線には慣れてはいるが、久々にずっと浴びていると気疲れする。見かけに不似合いな野放図さもある身としては、自由気侭に旅を謳歌する方が性に合う。
しかし。
「いつ抜け出した…?」
首を捻った。紹介された時は居たはずだ。視線を移していくと眩そうな目をしてこちらを見、一瞬怯んだ顔になったがすぐに不敵に笑い返してきた。
今ならあの笑みの理由がわかる。万が一にもアシャが家族に危害を加えるようなら、容赦なく切り捨てるという宣戦布告のようなものだろう。
それから談話が始まって、その時もまだ確かにユーノは居た。気配を消して身を引いたのはわかるが、その動きで場の空気を乱さなかった制御力に舌を巻く。
他の人間ならまだしも。
(俺を相手に)
このアシャを。
(シートスあたりが聞いたら何と言うやら)
『名だたるアシャも随分温くなったものだ、放浪で人恋しさに溺れておられたのか』
豪胆に笑う声が聞こえそうだ。
月光が影を落とす靄がかかった夜の庭園、静まり返った木々は立ち尽している。意識を澄ませ、人の気配を探りながら進んでいくが、どこにも何も感じ取れない。一旦立ち止まって気を沈めたとたん、微かに馬の蹄の音がした。
「こっちか」
華やかな皇宮内と対照的に木立の影に一頭の馬の姿があった。側に誰もいない。
(こんな状態で馬を放置するとは)
盗人の存在どころか悪用されることさえ考えないのか。
吐息まじりに近づいて、夜に溶けるような馬の背に小さな人影が乗っているのに気付いた。
「……ユーノ?」
呆気に取られた。
さっきのドレス姿で馬に跨がったまま、ユーノは俯せて馬の背中にしがみついている。もっと近づいて、相手が気持ち良さそうに寝息を立てているのに気づいてなお呆れる。
「……おいおい」
よくもそんな姿勢で、それもなぜこんな夜露に濡れる場所で。しかも妙にほっとした顔で眠っていないか。
思った瞬間に気がついた。
「……警護、しているのか」
思わず皇宮内を振り返った。
広間からは温かな明りが零れ、人々は笑いさざめき踊っている。窓から見える場所を今通り過ぎたのは、親衛隊の長、それこそゼランではなかったか。
皇を守り、皇宮を警備するはずの兵が職務を離れ、守られているはずの皇女が一人夜闇に潜んで敵を警戒している。
こんな暗い庭の片隅に、闇に沈んでたった1人で。
「どうして……こいつだけ……」
なぜ守られていない、他の皇族のように。何か特別な理由でもあるのか。単に男勝りというだけではあるまい。
考えながら、アシャは振り返って馬に近寄った。主の睡眠を守る役目を負った馬が瞳を凝らせて顔を上げるのに笑みかける。
忠実な馬だ。主を大事に思っている。それは、ユーノがこの馬と丁寧に関係を結んできたことを示している。
気配を殺してアシャはユーノに両手を差し伸べた。やはりどうしても苦しそうな体勢に見える。抱え降ろして、草の上にでも、できれば軒の下にでも寝かせてやりたい。
その間の護りは自分がすればいいなどと似合わないことを思いついてしまったのは、夜闇に休める場所さえなく1人居るユーノに、遠い日の自分を重ねてしまったからだろうか。
だが、近づくアシャの手に馬は警戒を緩めなかった。首を振り、蹄の音を立てて身構える。同時に押し殺した叫びが響いて、闇に光が閃いた。
「何者っ!」「っっ!」
ガシャッ、と激しい音が鳴って、アシャの目の前で剣が噛み合った。一方は馬上から振り降ろされた細身の剣、もう一方はアシャが抜き放った黄金の剣。
「……な、んだ……あなたか」
苦笑したユーノがそれでも剣から力を抜かず、じろりとアシャの剣を見て眉を寄せる。
「……どこが、武器は所有していない、だ」
「……そうすぐには見つかるような扱いをしていない、許してやれ」
親衛隊の愚を責める声にアシャも苦笑しながらユーノを見返した。黒い瞳が瞬きもせず、厳しい顔でこちらを見据える。街中で見たものとも皇宮で見たものとも違う、冷酷で鋭い目、見下ろされているからだけではないだろう、一瞬『泉の狩人』(オーミノ)の姿を思い起こした。
「暗殺者か………カザドがお前を雇ったのか」
「カザド?」
冷ややかな問いかけにアシャは眉を上げた。
確かカザド、というのはセレドより北西にある国の名だ。主はカザディノ、権力志向の脂ぎった中年男だなと思い出し、なるほどユーノが警戒しているのは隣国の王なのか、と気づく。
「……違うのか」
アシャの沈黙をユーノは的確に読み取った。訝しそうに首を傾げ、そうするとようやく年相応に見える顔に戻る。乱れた髪を頬から拳で払い、
「何の用?」
すぐに剣を引いて鞘におさめた。
その思いきりの良さにまた呆れる。
「自分から剣をおさめていいのか」
「あなたには殺気がない。それに、私を殺るつもりならとっくに殺ってる」
「君が今手控えたように?」
「………用件は何?」
ユーノは静かに視線を逸らせた。
「レアナ様に頼まれた。君の付き人になるように、と」「っ」
体を震わせて振り返るユーノに一気に緊張が満ちた。
(えらく警戒されてしまってるな)
アシャは苦笑する。どこでも誰にでも長年の知己のように受け入れられるのはうまいはずだが、ユーノには手管が効かないらしい。
(どこかでへまをしたか?)
ざっと検証するが思い当たらない。微かな不安が過った。
「危ないところを救ってもらった。お役に立てるなら本望だが……得体の知れない男は苦手か?」
滑らかな口調で柔らかく尋ねてみた。
「…………」
ユーノは無言で見下ろしている。黒い瞳は警戒を緩めない。
仕方がない。アシャはぼそりと呟いた。
「夕方のような時には、1人で戦うよりは助けになると思うが」
ユーノは明らかに顔を強張らせた。
「……見たのか」
「凄い殺気だったからな。それに……見事だった」
「………」
ユーノは少し頬を染めた。小さな顔がうっすらと紅を広げて、何だか儚く可愛らしく見える。
「そう…か」
軽く噛まれた唇が柔らかそうだと思った。
「了解は?」
惑うようにユーノの視線が揺れ、またそっと逸らされる、誰かの視線を気にしたように。けれどももちろん、他には誰もいないとアシャの感覚が教えている。
「………私の付き人は…危険だよ?」
掠れた声で吐いて、一旦外した視線をゆっくり絡めてくる。
「命の保証ができない……」
黒い瞳にいきなり滲むように寂しい笑みが広がって、アシャはどきりとした。
その笑みの中には絶望がある。悲しみがある。傷みがあって、それを堪える強さがある。痛々しいほどの、強さが。
(こんな目を)
女性が、するのか。
思わず知らず輝きにアシャが見愡れていると、静かな声でユーノは続けた。
「こんな性分だから、いつ何時何があるかわからない。………でもさっきのが受けられるなら、あなたはそこそこ使えるんだろう……いざとなったら何とか生き延びてくれるよね…?」
(いざとなったら何とか生き延びてくれる?)
おかしなことを言う。付き人ならば、主を捨てて生き延びてはまずいだろう。見捨てることこそ咎めなければならないだろうに、ユーノの物言いでは、何かあれば自分を捨てて生き延びろと言っているようにさえ聞こえる。
アシャの無言の問いかけに、ユーノは目を細めた。
(泣くのを、堪えた)
背筋に奔った感覚に息を呑む。
「ユーナ様……」
「ユーノでいい。そう呼ぶなら付き人を認める。改まったことばも要らない………さっきのままで十分……」
低い声で命じると、ユーノはふいに顔を振り上げ体を立て直した。慌てて身を引くアシャに構わず手綱を握る。
「では、付き人として命じる。皇宮に戻り、私が付き人を了解したと伝えろ。それから、私はしばらく戻らない、その間……姉さま達を頼む」
了承しかけて法外な命令だと気づく。
「どちらへ!」
とっさに身を翻して行く手を封じようとしたのに、ユーノは予想していたように軽々とアシャを振り払った。
「ちょっと馬を駆けさせてくるっ!」
はぁっ、と激しい声を響かせ、振り返りもせずに駆け出す相手を、アシャは茫然と見送った。
カッカッカッカッ……。
蹄の音が街を駆け抜ける。馬の背に身を伏せてユーノは手綱を握り締める。
(付き人? アシャが付き人? 私の付き人?)
胸が轟く。息が上がる。
馬を激しく急がせるからではない、思いもかけぬ幸運に身体中が熱くなって、その熱を放ってしまいたくてたまらない。まっすぐに、いつもより数倍早く街から離れた丘に駆け上ってようやく、汗を蒸気に立ち上らせるレノを止めた。
「ア……シャ……」
小さく呟き、慌てて唇を指で押さえた。それでもついつい嬉しくて綻ぶ顔でことばを零す。
「………ずっと一緒に居られるんだ…………あ」
ふいにぞっとした。
「付き人………つけちゃいけなかったのに……」
サルト。
心の中で名前を呼ぶと、胸がきつく締まって顔を歪めて目を閉じた。
守りたかったのに守れなかった笑顔。あんな思いは二度とするまいと、2つに1つしか選べないなんてことがないようにしようと思っていたのに、アシャが側に居てくれる、その喜びで思わず受け入れてしまった。
「……夢かと思った……夢なんだと……思っちゃった……」
呟きながらそっと目を開ける。
夢であるなら頷いてもいいだろうと、一瞬自分をごまかした。
「そのツケって………そのうち払うことになるんだろうか…レノ…」
尋ねたがレノは応えない。風に白いたてがみを舞わせて、沈んだ主を気づかうように微かに振り向く。その首を静かに撫で、黒い瞳を覗き込んで、ユーノは広間でのアシャの表情を思い出す。
レアナに注がれた喜びの笑み。セアラに向けられた慈しみの眼差し。
それと比較して、ユーノに与えられた訝しげな不思議そうな戸惑いの顔。
「……違う……のかもしれないな……本当はレアナ姉さまの側に居たかった……のかもしれない……。それなら……わかるな……うん……だって……」
ユーノは自分の片腕を掴んでそっと撫でた。服の上からでも明らかにわかるでこぼこした肌触り。そのまましばらくじっと動きを止め、はは、と乾いた笑いを漏らした。
「……今は考えないでおこうか……そうしようか………だって、私、そんなこと考えている暇……ないもの………カザドのことだってあるし……守らなくちゃいけないもの、一杯あるし……レアナ姉さまにセアラ……父さまに母さまに……セレド……」
どこまでいっても自分は入らない。
一際強く吹いた風に固く目を閉じ、ユーノは竦んだ体を抱き締めた。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる