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2.隠者
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『隠せ、重ねて隠せ、その衣が弾け飛ぶ』
『親愛なる鏡子へ
アシュレイ家に来て、もう6日です。
こちらでも、気候はこれから寒くなっていくそうですが、今は多少涼しいぐらい、アシュレイ家を囲む森と湖がなければ、日本にいるような気がします。
この前も書いたと思うけど、アシュレイ家は昔この辺りを治めていた領主の末裔だそうで、今でもここはアシュレイ家のものなのだとクリスが話してくれました。クリスは、マースの弟、19歳です。マースと同じ兄弟とは思えないぐらい親切でいい人で、後、家族にはマージがいます。彼女はマースの遠縁にあたるそうで、今年25歳、落ち着いた上品な女の人です。
ところで、前に書きかけた不思議なこと、実は2つあって、1つは髪の色です。
マージもクリスも、北欧系のプラチナブロンドです。アシュレイ家では、マースだけが黒髪です。でも、一族の中に黒髪の人が居たみたいで、廊下や居間に飾ってある肖像画を見ると、ときどきそういう人が描かれています。たいてい、マースと同じような淡青色の目で、ぞっとするような青白い美形ぞろいだけど。
私はいや。どうせなら、クリスの方がいいぐらい。
もう一つの不思議なことは、ことばです。
こっちへ来ても、私はずっと日本語で通せます。クリスもマージもきれいな日本語を話します。少し前に、こちらで日本ブーム(?)があって、そのときに覚えたそうです。マースは日本に留学したこともあったらしいよ。屋敷でいろいろ世話をしてくれる人もカタコトなら日本語が話せるし、でも、普通、ブームでもここまでしないよね? マースの母国語はあまり聞いたことのないことばです。英語でもフランス語でもないみたい。マースに聞いても「わかるはずがない」としか言わないので、最近は聞きません。
今は私はクリスとマージと一緒にいることが多いかな。マースは仕事だか何だかでほとんど会いません。ほっとします。そのうち、ここを抜け出せないかって考えてるところ。クリスに相談してみようかな。
それではまた。
めり 』
窓に面した机で手紙を書き上げた芽理は、顔を上げた。
「よし、と」
コンコン。
「はあい」
響いたノックに後ろを振り返る。
重々しい凝ったレリーフが施された木の扉が開いて、ひょい、とクリスが顔を出した。マースに似てはいるけれど、温かな笑顔を浮かべた顔にプラチナブロンドを揺らして眉をあげる。
「じゃまかな?」
よく通るテノールでクリスは問いかけた。
「ううん、今終わったところ」
「手紙?」
「うん」
マースよりははるかに濃い青色の目が、穏やかに芽理を見つめている。
「日本にいる友達に書いたの」
「そう。あ、もう夕食だよ。兄さんが降りて来てほしいって言ってたけど」
「…ここで食べちゃだめ?」
芽理は上目遣いでクリスを見た。
何度も同じ質問をして答えもわかってはいるのだが、マースと一緒にとる夕食の気詰まりなことを考えると、クリスが困るとわかっていても尋ねてしまう。
「ごめん」
クリスはどこか情けなさそうな顔で詑びた。
「兄さんが、どうしてもって」
「ううん、いいの、ごめんね」
芽理は相手を心配させないように元気よく答えた。
「マースの言うことには逆らえない、んでしょう?」
「そうなんだ」
クリスがほっとしたようにうなずく。それから、そのかわりだとでもいいたげに、
「その手紙、僕が出しておこうか」
「ありがとう」
芽理は急いで封をして、クリスに手紙を渡した。
「確かに預かったよ。じゃあ、もう少ししたら降りて来てくれる?」
「…はい」
芽理は溜息をついてうなずいた。
マースはぼんやりと部屋に座っている。
もうすぐ夕食が始まる。
マースにとっては、ようやく芽理と会える、大事な時間だ。
(今日も芽理は怒っているんだろうか)
夕食の席で芽理はマースをほとんど見ない。始めのころは多少話しかけてみたものの、すぐにクリスの方へ向いてマースを無視する。
(それでも、芽理に会える)
マースは目を閉じた。胸の中に広がった微かな温かみをそっと抱き締めてみる。
(芽理はこの家で暮らしているんだ)
「兄さん」
ふいにクリスの刺々しい声が響いて、ぎくりと体を起こした。ノックもなしで荒々しくドアを開けて入ってくるクリスに、顔を引き締める。
「しっかりしてほしいな、兄さん」
ぶっきらぼうに言い放つと、どこかぎらついた目の色でマースを見据えて、クリスはテーブルの上に封筒を投げた。
「もう少しで、あの子、これを出してしまうところだった」
マースは封筒を見つめた。表書きに書かれた丸みを帯びた紺色の文字をゆっくりと目で追う。甘い香りを感じて胸が痛くなる。
「兄さんには、アシュレイ家の当主としての自覚っていうものはないのかい? あの子を選んだのはそもそも…」
「よせ」
マースは先を言わせまいとして遮った。自分の声が異様なほど冷えているのがわかった。
「よくわかっている、から言わなくていい」
「言わなけりゃ、何もしないくせに」
クリスは不満そうに唸った。
「何を待ってるんだい? あの子はもう、兄さんの妻なんだろ、どうしようと、兄さんのものじゃないのか」
「妻、か」
(芽理が聞いたら怒るだろうな。平手打ちが飛んでくるかもしれない)
ぼんやりと苦笑した。そんな想像にさえ切なくなるのに眉を寄せる。
あの日、あの校庭で、車から降りたマースを見ていた強い視線が蘇る。聞き慣れた女達の騒ぎ声の中で、芽理だけが何も言わずにマースを凝視していた。
鋭くて容赦のない、輝く意志を漲らせた瞳。
(初めて会ったときのように、僕の胸を鮮やかに射抜いて)
芽理は気づいている、と胸の奥でつぶやいて、重みに胸が塞がる。
芽理はきっと、マースの後ろにある闇を、マースの抱えている黒い影を、他の女達が騒ぎ見愡れるマースの外見を透かして感じ取っている。
だからこそ、他の女のように騒がずに、警戒を満たしてマースを見たのだろう。
(芽理だけがいつも僕をわかってくれる)
この姿の中に捕らわれた、マース・アシュレイの運命を。
(けれど)
その運命を見ても怯まない、そんなことまでは期待してはいない。それがどれほど難しいことか、マースにはわかっている。だから、今マースが芽理に望んでいるのは、側に居てくれること、だけだ。
(ただ……側で笑ってくれたら)
それさえももう十二分に危険なのだが。
マースは無意識に目を閉じた。そのマースの表情に気づいたように、クリスが煽るようにことばを重ねる。
「とにかく、アシュレイ家の当主としての役目は果たしてくれよ。夕食に誘っておいたからね、今日こそ多少は機嫌を取って、芽理を従わせてくれなくちゃ」
それでも、マースが答えないままじっと封筒を見ているのに、うんざりしたようなため息を放って、クリスは部屋を出て行った。
激しく閉まったドアの音で、ようやく体の力を抜き、目を上げる。
(夕食、に)
また苦い思いをするのだろうか。また芽理はマースが同席するのを不愉快がって、デザートを残して立ち上がってしまうのだろうか。芽理の好きなものはいつも揃えているつもりなのだが。
弱々しく笑って、テーブルの上の芽理の封筒を撫でる。
(芽理が書いた手紙)
静かに取り上げ、差出人の名前をしみじみと眺める。やがて、ためらいながらペーパーナイフを取り出して封を開け、マースは目を見開いた。
(芽理の匂いがする)
同じ家に暮らしていても、近づくことができない相手の、柔らかな薫りが。
唇を噛んで、中身を取り出した。
本当は黙って読むつもりはなかったのだ。いつも、そのまま片付けるつもりなのに、気がつけばこうして手紙を盗み読んでいる。
日本語の文章は漢字まじりになると難しいけれど、芽理と手紙をやりとりできるかもしれないと必死に学んでいた。
もっとも、そんなことは、夢よりも儚いことだと、よくわかっているのだが。
マースは丁寧に文面を追った。その目が、ある部分でぴたりと止まる。
「どうせならクリスの方がいいぐらい…」
低い声で読み上げて、眉を寄せる。
「めり」
最後の名前の部分をひどく優しく読み上げて、マースはそっとほほ笑んだ。
(これは、幻)
胸の中で吐く。
(決して手にいれてはいけない夢)
手紙を胸にあてる。まるでそのまま、自分の体に埋め込みそうな激しさで強く押し当てて目を閉じる。
「芽理」
今度の声はうめくように部屋に響いた。
どれぐらいそうしていただろう。
やがて、マースは目を開けてよろめきながら立ち上がり、封筒に手紙をいれた。部屋の隅の棚の上、周囲には不似合いな可愛らしい彫り物細工の箱を降ろし、ふたを開ける。
ころころと小さな音色が流れ出す。ショパンの『別れの曲』のオルゴール。よく見れば、ふたの内側に小さく『めりへ』と彫り込まれているのが見えるはずだ。
(諦めたつもりだった)
これを贈って、名前も告げずに消えていこうと思っていた時もあったのに。
無言で、そのオルゴールを見つめたまま、曲を聞いていたが、何度目かになる重い溜息をついた。
オルゴールの中には計6通の手紙が入っている。それらは実はすべて、芽理が日本へ送ったと思っているものだ。
1通目にマースは指を触れた。
「冷たいエゴイストで、クリスやマージとは大違いの、神話の魔王のようなマース」
中に書かれていたことばを、一字一句間違えずに繰り返す。
「思いやりのかけらもなくて、きっとこの家で、一番最初に地獄へ落ちるだろうマース」
次の手紙も、その次の手紙の内容も、マースはそらんじるほどに覚えている。
1つ1つに指を触れながら、マースはつぶやいた。
「人間の心なんか持っていない卑劣な男で、これっぽっちも温かみを持っていないマース」
「死んでも、生まれ変わっても、好きになることはないマース」
「結婚するぐらいなら、世界一嫌な人間だと言われている別の男の方がいいと思わせるマース」
そして、今日の6通目に指を載せて、
「クリスの方がいいぐらい…」
自分の声がひどく幼く頼りなげに聞こえた。『別れの曲』が無邪気に旋律を繰り返す中に幻のように消えていく。
「芽理…僕は…」
次の瞬間、マースはつぶやきかけた声を慌てて飲み込んだ。きつく唇を引き締め、オルゴールの蓋を閉める。部屋の隅の棚の上にうやうやしく差し上げ、丁寧に載せ直す。
次の一瞬でマースは表情を消した。それまでのことがなかったように、無表情なままで部屋を出て行った。
「おかしいなあ」
数日後、芽理は、日差しの跳ね回る机に肘をつきながら、眉間にしわを寄せていた。
「もう6通も出したのに」
「どうしたの、芽理」
突然後ろから声がして、飛び上がる。
振り返ってみると、開いたドアからクリスが覗き込んでいた。
「ごめんね、驚かせたかな」
にこにこといつものように明るく笑いながら、クリスは部屋に入って来る。クリスの気配はいつも光を帯びていて華やかで明るい。側に近づいてくると、太陽が差し込んできたみたいに感じる。
「ううん」
芽理はそのきらきらした笑顔に見愡れながら、首を振った。
「何、悩んでたの?」
「返事がこないの、友達から。絶対返事書くって言ってたのに」
「ああ、日本の」
「そう。おかしいなあ、一番初めに出した手紙なんか、もうずいぶんたってるのに」
芽理は唇をとがらせた。
「そんなにここから出す郵便って、日本に届くのが遅いの?」
「エア・メイルだけど、遠回りになるからね。時間がかかるかも知れない」
クリスは穏やかに解説したが、ふと気になることを思い出したという顔になって、
「手紙はいつも兄さんが出してくれているはずだから…」
つぶやいた後、はっとしたように安心させるように笑みを広げ、慌てて付け加える。
「大丈夫だよ、芽理」
「マースが?」
芽理はぎょっとした。
(マースなら、ひょっとしたら、手紙を読んだりしてるかも)
それに自分に不都合なことが書かれてあったりしたら、破り捨てたりするかもしれない。
(まずいよね、手紙にはマースのこと、悪口しか書いてないし)
でも、人の手紙を勝手に処分する権利なんてないはずだ、たとえ形だけの夫でも。
(そうだ)
芽理はあることを思いついた。
「ねえ、もう1通書くから、クリスが出して来てくれる? マースじゃなくて、クリス、が」
「わかったよ」
クリスが生真面目な顔でうなずいた。
「じゃ、ちょっと待っててね」
芽理は急いで手紙を書き上げた。
難しくはなかった。便箋にはたった1行、『マースなんか死んでしまえ!』と書いたきり、それをことさら丁寧に畳んで封筒にいれて封をする。宛名も書き込み、クリスに手渡す。
「お願いします」
「うん、出しておくよ」
クリスは訳知り顔に片目をつぶって見せ、
「できるだけ、僕が、ね」
出て行くクリスを見送ってから、芽理は窓の近くに寄ってカーテンの陰に隠れた。ここから敷地内のポストへ行くのはよく見える。豪邸だからか、アシュレイ家だからかわからないが、ここでは郵便物をわざわざ回収に来てくれる。
だが、それを見張っていると思われるのはいやだった、少なくとも、クリスには。
やがて、下の出口からクリスが出て行き、まっすぐ歩き始めた。銀色の髪が日をはねて輝いている。 と、クリスはすぐに立ち止まった。近くの庭園の入り口から出て来たマースに話しかけられて向き合う。二、三言ことばを交わす。クリスが首を振り、マースが説得するようにクリスに近寄って行く。振り払うような仕草で歩きだそうとしたクリスの手をいきなりマースが掴んだ。
「あ」
クリスの手からマースが手紙を奪い取る。
(やっぱり!)
芽理は部屋を飛び出した。階段を駆け降り、出口から走りだす。正面にクリスが立っていて一瞬ぎくりとした顔で芽理を見たが、すぐに済まなそうに、
「芽理、あの手紙は…」
「マースは?」
「庭園の…四阿の方にいったけど」
「ありがと!」
そのままクリスの側を走り抜けて庭園に飛び込む。走り続けてまもなく、芽理は四阿のベンチに座っているマースを見つけた。
「マース!」
はっとしたようにマースが腰を浮かせた。
「芽理」
驚きに見張った目はきららかに光を跳ねるアクアマリン、どうしてこんなところにと言いたげな表情が妙に無防備で人目を引き付ける。けれど、その手にやっぱり確かに、さっきクリスに渡したばかりの封筒がある。
芽理は唇を噛んだ。ためらいもせず、手を差し出し、
「返して」
「芽理…」
マースはさすがにうろたえたような顔になっていた。珍しく不安そうに瞬きしながら、こちらを見つめる。
「人の手紙をどうするの?」
「…僕が、君の手紙を破く、とでも…?」
芽理の冷ややかな問いかけに、一瞬わけがわからないと言う顔になったマースが瞬きし、やがて掠れた声で尋ね返した。色のほとんどない瞳がゆらゆらと揺れている。
「あなたなら、やりかねないでしょ」
芽理はたじろがずに言い返した。すうっと白い顔になったマースが眉をひそめる。けれど何も言い返さないまま、手にした封筒に視線を落とし、そっと指先で挟んで持ち上げてみせた。
「僕の悪口が書いてあるの?」
妙に幼い声だった。ほんの小さな子どもが、隠してあったプレゼントを見つけて期待に胸をどきどきさせながら、「これ、ぼくの?」と尋ねるような、そんな無邪気な声音だった。
(ううん、だまされない、だまされない)
芽理は唇を引き締めた。
(これがこの人の手口なんだ)
ことさらはっきり手を突き出し、胸を張りながら、
「うん」
ぴく、と手紙を支えた手を震わせたマースは手紙を破るかと思いきや、丁寧に掌で持ち直した。
「どんな?」
低い声で尋ねて首を傾げる。
「返してくれたら教える」
芽理は固い声で応じた。
すると、まるで、それが一番知りたかったことなのだといいたげに、マースはいそいそと芽理に封筒を渡した。教えてくれないとは露ほども考えていないような顔で、じっと芽理のことばが続くのを待っている。
一瞬、芽理はためらった。
書いたことばの意味はマースに十分通じるはずだ。それをそのまま伝えれば、相手が傷つくのもわかっている。
(でも、マースの方がもっと私を傷つけてる、よね?)
日本から攫われるように連れてこられて、この先一生、望んでもいない男の妻として暮さなければならない。芽理の現在だけではなく、未来さえも奪った相手なのだ。
「こう書いてあるの」
息を大きく吸い込んで芽理は一気に言い放った。
「『マースなんか死んでしまえ』」
マースは体を強ばらせ大きく目を見開いた。何を聞かせてくれるのかと今にも笑みにほころびそうだった唇が真っ白に色を失う。やがて、その唇が少し、開いた。中途半端に、ことばを紡ぐほどではなく、けれども閉じていることもできなくなったといいたげな不安定さで、ゆるやかな弧を描く。
にじむように寂しい笑みだった。
(ひどいこと、した?)
芽理はふいにきりっとした傷みを胸の底に感じた。
マースはぼんやりと反論もせずに立っている。こちらを見ているはずの瞳がまた一段と色を失って、ガラス玉のように虚ろになった。その体の内側からざらざらと崩れていくものが透けて見えているような気がする。
「ああ……そう、なんだ」
聞こえたのが空耳だったかと思うほどの微かな声がつぶやいた。
一瞬にしてあたりの日が陰ったようだった。それと一緒に、マースの姿も、弱まった光と景色に飲み込まれて薄れていきそうな気配を漂わせる。
「じゃあ」
低くかすれた声が形ばかり微笑んだ唇から漏れた。
「自分で出しておいで。ポストの位置はわかってるね」
「う、うん」
芽理は封筒をマースの手から奪い取った。
手紙を取られても、マースは中空に手を浮かせたまま、身を翻す芽理にも身動きしなかった。
マースは去って行く芽理の姿を見送っていた。
少しの期待はまもなく絶望に変わった。
クリスが芽理を見つけ、走り寄って行く。
芽理の手紙はクリスに奪われ、投函されることはないだろう。
さっきは手紙を破り捨てようとするクリスを、自分が処分するからと何とか止めたものの、今度はもうクリスだってマースを信じないだろう。
「マースなんか死んでしまえ」
芽理の口にしたことばを繰り返してみる。
「大丈夫、そんなこと、願わなくったって」
淡い笑みはひきつけるような笑いの発作に変わった。
「死んでしまえ、か、芽理。そうしたい、できれば、そうしたいよ、芽理」
体を揺さぶりながらベンチに座り込み、笑い続ける。
「だけど」
胸に詰まったことばを吐き出せなくて身もがいて、やがてようやくマースは呻いた。
「できないんだ」
『親愛なる鏡子へ
アシュレイ家に来て、もう6日です。
こちらでも、気候はこれから寒くなっていくそうですが、今は多少涼しいぐらい、アシュレイ家を囲む森と湖がなければ、日本にいるような気がします。
この前も書いたと思うけど、アシュレイ家は昔この辺りを治めていた領主の末裔だそうで、今でもここはアシュレイ家のものなのだとクリスが話してくれました。クリスは、マースの弟、19歳です。マースと同じ兄弟とは思えないぐらい親切でいい人で、後、家族にはマージがいます。彼女はマースの遠縁にあたるそうで、今年25歳、落ち着いた上品な女の人です。
ところで、前に書きかけた不思議なこと、実は2つあって、1つは髪の色です。
マージもクリスも、北欧系のプラチナブロンドです。アシュレイ家では、マースだけが黒髪です。でも、一族の中に黒髪の人が居たみたいで、廊下や居間に飾ってある肖像画を見ると、ときどきそういう人が描かれています。たいてい、マースと同じような淡青色の目で、ぞっとするような青白い美形ぞろいだけど。
私はいや。どうせなら、クリスの方がいいぐらい。
もう一つの不思議なことは、ことばです。
こっちへ来ても、私はずっと日本語で通せます。クリスもマージもきれいな日本語を話します。少し前に、こちらで日本ブーム(?)があって、そのときに覚えたそうです。マースは日本に留学したこともあったらしいよ。屋敷でいろいろ世話をしてくれる人もカタコトなら日本語が話せるし、でも、普通、ブームでもここまでしないよね? マースの母国語はあまり聞いたことのないことばです。英語でもフランス語でもないみたい。マースに聞いても「わかるはずがない」としか言わないので、最近は聞きません。
今は私はクリスとマージと一緒にいることが多いかな。マースは仕事だか何だかでほとんど会いません。ほっとします。そのうち、ここを抜け出せないかって考えてるところ。クリスに相談してみようかな。
それではまた。
めり 』
窓に面した机で手紙を書き上げた芽理は、顔を上げた。
「よし、と」
コンコン。
「はあい」
響いたノックに後ろを振り返る。
重々しい凝ったレリーフが施された木の扉が開いて、ひょい、とクリスが顔を出した。マースに似てはいるけれど、温かな笑顔を浮かべた顔にプラチナブロンドを揺らして眉をあげる。
「じゃまかな?」
よく通るテノールでクリスは問いかけた。
「ううん、今終わったところ」
「手紙?」
「うん」
マースよりははるかに濃い青色の目が、穏やかに芽理を見つめている。
「日本にいる友達に書いたの」
「そう。あ、もう夕食だよ。兄さんが降りて来てほしいって言ってたけど」
「…ここで食べちゃだめ?」
芽理は上目遣いでクリスを見た。
何度も同じ質問をして答えもわかってはいるのだが、マースと一緒にとる夕食の気詰まりなことを考えると、クリスが困るとわかっていても尋ねてしまう。
「ごめん」
クリスはどこか情けなさそうな顔で詑びた。
「兄さんが、どうしてもって」
「ううん、いいの、ごめんね」
芽理は相手を心配させないように元気よく答えた。
「マースの言うことには逆らえない、んでしょう?」
「そうなんだ」
クリスがほっとしたようにうなずく。それから、そのかわりだとでもいいたげに、
「その手紙、僕が出しておこうか」
「ありがとう」
芽理は急いで封をして、クリスに手紙を渡した。
「確かに預かったよ。じゃあ、もう少ししたら降りて来てくれる?」
「…はい」
芽理は溜息をついてうなずいた。
マースはぼんやりと部屋に座っている。
もうすぐ夕食が始まる。
マースにとっては、ようやく芽理と会える、大事な時間だ。
(今日も芽理は怒っているんだろうか)
夕食の席で芽理はマースをほとんど見ない。始めのころは多少話しかけてみたものの、すぐにクリスの方へ向いてマースを無視する。
(それでも、芽理に会える)
マースは目を閉じた。胸の中に広がった微かな温かみをそっと抱き締めてみる。
(芽理はこの家で暮らしているんだ)
「兄さん」
ふいにクリスの刺々しい声が響いて、ぎくりと体を起こした。ノックもなしで荒々しくドアを開けて入ってくるクリスに、顔を引き締める。
「しっかりしてほしいな、兄さん」
ぶっきらぼうに言い放つと、どこかぎらついた目の色でマースを見据えて、クリスはテーブルの上に封筒を投げた。
「もう少しで、あの子、これを出してしまうところだった」
マースは封筒を見つめた。表書きに書かれた丸みを帯びた紺色の文字をゆっくりと目で追う。甘い香りを感じて胸が痛くなる。
「兄さんには、アシュレイ家の当主としての自覚っていうものはないのかい? あの子を選んだのはそもそも…」
「よせ」
マースは先を言わせまいとして遮った。自分の声が異様なほど冷えているのがわかった。
「よくわかっている、から言わなくていい」
「言わなけりゃ、何もしないくせに」
クリスは不満そうに唸った。
「何を待ってるんだい? あの子はもう、兄さんの妻なんだろ、どうしようと、兄さんのものじゃないのか」
「妻、か」
(芽理が聞いたら怒るだろうな。平手打ちが飛んでくるかもしれない)
ぼんやりと苦笑した。そんな想像にさえ切なくなるのに眉を寄せる。
あの日、あの校庭で、車から降りたマースを見ていた強い視線が蘇る。聞き慣れた女達の騒ぎ声の中で、芽理だけが何も言わずにマースを凝視していた。
鋭くて容赦のない、輝く意志を漲らせた瞳。
(初めて会ったときのように、僕の胸を鮮やかに射抜いて)
芽理は気づいている、と胸の奥でつぶやいて、重みに胸が塞がる。
芽理はきっと、マースの後ろにある闇を、マースの抱えている黒い影を、他の女達が騒ぎ見愡れるマースの外見を透かして感じ取っている。
だからこそ、他の女のように騒がずに、警戒を満たしてマースを見たのだろう。
(芽理だけがいつも僕をわかってくれる)
この姿の中に捕らわれた、マース・アシュレイの運命を。
(けれど)
その運命を見ても怯まない、そんなことまでは期待してはいない。それがどれほど難しいことか、マースにはわかっている。だから、今マースが芽理に望んでいるのは、側に居てくれること、だけだ。
(ただ……側で笑ってくれたら)
それさえももう十二分に危険なのだが。
マースは無意識に目を閉じた。そのマースの表情に気づいたように、クリスが煽るようにことばを重ねる。
「とにかく、アシュレイ家の当主としての役目は果たしてくれよ。夕食に誘っておいたからね、今日こそ多少は機嫌を取って、芽理を従わせてくれなくちゃ」
それでも、マースが答えないままじっと封筒を見ているのに、うんざりしたようなため息を放って、クリスは部屋を出て行った。
激しく閉まったドアの音で、ようやく体の力を抜き、目を上げる。
(夕食、に)
また苦い思いをするのだろうか。また芽理はマースが同席するのを不愉快がって、デザートを残して立ち上がってしまうのだろうか。芽理の好きなものはいつも揃えているつもりなのだが。
弱々しく笑って、テーブルの上の芽理の封筒を撫でる。
(芽理が書いた手紙)
静かに取り上げ、差出人の名前をしみじみと眺める。やがて、ためらいながらペーパーナイフを取り出して封を開け、マースは目を見開いた。
(芽理の匂いがする)
同じ家に暮らしていても、近づくことができない相手の、柔らかな薫りが。
唇を噛んで、中身を取り出した。
本当は黙って読むつもりはなかったのだ。いつも、そのまま片付けるつもりなのに、気がつけばこうして手紙を盗み読んでいる。
日本語の文章は漢字まじりになると難しいけれど、芽理と手紙をやりとりできるかもしれないと必死に学んでいた。
もっとも、そんなことは、夢よりも儚いことだと、よくわかっているのだが。
マースは丁寧に文面を追った。その目が、ある部分でぴたりと止まる。
「どうせならクリスの方がいいぐらい…」
低い声で読み上げて、眉を寄せる。
「めり」
最後の名前の部分をひどく優しく読み上げて、マースはそっとほほ笑んだ。
(これは、幻)
胸の中で吐く。
(決して手にいれてはいけない夢)
手紙を胸にあてる。まるでそのまま、自分の体に埋め込みそうな激しさで強く押し当てて目を閉じる。
「芽理」
今度の声はうめくように部屋に響いた。
どれぐらいそうしていただろう。
やがて、マースは目を開けてよろめきながら立ち上がり、封筒に手紙をいれた。部屋の隅の棚の上、周囲には不似合いな可愛らしい彫り物細工の箱を降ろし、ふたを開ける。
ころころと小さな音色が流れ出す。ショパンの『別れの曲』のオルゴール。よく見れば、ふたの内側に小さく『めりへ』と彫り込まれているのが見えるはずだ。
(諦めたつもりだった)
これを贈って、名前も告げずに消えていこうと思っていた時もあったのに。
無言で、そのオルゴールを見つめたまま、曲を聞いていたが、何度目かになる重い溜息をついた。
オルゴールの中には計6通の手紙が入っている。それらは実はすべて、芽理が日本へ送ったと思っているものだ。
1通目にマースは指を触れた。
「冷たいエゴイストで、クリスやマージとは大違いの、神話の魔王のようなマース」
中に書かれていたことばを、一字一句間違えずに繰り返す。
「思いやりのかけらもなくて、きっとこの家で、一番最初に地獄へ落ちるだろうマース」
次の手紙も、その次の手紙の内容も、マースはそらんじるほどに覚えている。
1つ1つに指を触れながら、マースはつぶやいた。
「人間の心なんか持っていない卑劣な男で、これっぽっちも温かみを持っていないマース」
「死んでも、生まれ変わっても、好きになることはないマース」
「結婚するぐらいなら、世界一嫌な人間だと言われている別の男の方がいいと思わせるマース」
そして、今日の6通目に指を載せて、
「クリスの方がいいぐらい…」
自分の声がひどく幼く頼りなげに聞こえた。『別れの曲』が無邪気に旋律を繰り返す中に幻のように消えていく。
「芽理…僕は…」
次の瞬間、マースはつぶやきかけた声を慌てて飲み込んだ。きつく唇を引き締め、オルゴールの蓋を閉める。部屋の隅の棚の上にうやうやしく差し上げ、丁寧に載せ直す。
次の一瞬でマースは表情を消した。それまでのことがなかったように、無表情なままで部屋を出て行った。
「おかしいなあ」
数日後、芽理は、日差しの跳ね回る机に肘をつきながら、眉間にしわを寄せていた。
「もう6通も出したのに」
「どうしたの、芽理」
突然後ろから声がして、飛び上がる。
振り返ってみると、開いたドアからクリスが覗き込んでいた。
「ごめんね、驚かせたかな」
にこにこといつものように明るく笑いながら、クリスは部屋に入って来る。クリスの気配はいつも光を帯びていて華やかで明るい。側に近づいてくると、太陽が差し込んできたみたいに感じる。
「ううん」
芽理はそのきらきらした笑顔に見愡れながら、首を振った。
「何、悩んでたの?」
「返事がこないの、友達から。絶対返事書くって言ってたのに」
「ああ、日本の」
「そう。おかしいなあ、一番初めに出した手紙なんか、もうずいぶんたってるのに」
芽理は唇をとがらせた。
「そんなにここから出す郵便って、日本に届くのが遅いの?」
「エア・メイルだけど、遠回りになるからね。時間がかかるかも知れない」
クリスは穏やかに解説したが、ふと気になることを思い出したという顔になって、
「手紙はいつも兄さんが出してくれているはずだから…」
つぶやいた後、はっとしたように安心させるように笑みを広げ、慌てて付け加える。
「大丈夫だよ、芽理」
「マースが?」
芽理はぎょっとした。
(マースなら、ひょっとしたら、手紙を読んだりしてるかも)
それに自分に不都合なことが書かれてあったりしたら、破り捨てたりするかもしれない。
(まずいよね、手紙にはマースのこと、悪口しか書いてないし)
でも、人の手紙を勝手に処分する権利なんてないはずだ、たとえ形だけの夫でも。
(そうだ)
芽理はあることを思いついた。
「ねえ、もう1通書くから、クリスが出して来てくれる? マースじゃなくて、クリス、が」
「わかったよ」
クリスが生真面目な顔でうなずいた。
「じゃ、ちょっと待っててね」
芽理は急いで手紙を書き上げた。
難しくはなかった。便箋にはたった1行、『マースなんか死んでしまえ!』と書いたきり、それをことさら丁寧に畳んで封筒にいれて封をする。宛名も書き込み、クリスに手渡す。
「お願いします」
「うん、出しておくよ」
クリスは訳知り顔に片目をつぶって見せ、
「できるだけ、僕が、ね」
出て行くクリスを見送ってから、芽理は窓の近くに寄ってカーテンの陰に隠れた。ここから敷地内のポストへ行くのはよく見える。豪邸だからか、アシュレイ家だからかわからないが、ここでは郵便物をわざわざ回収に来てくれる。
だが、それを見張っていると思われるのはいやだった、少なくとも、クリスには。
やがて、下の出口からクリスが出て行き、まっすぐ歩き始めた。銀色の髪が日をはねて輝いている。 と、クリスはすぐに立ち止まった。近くの庭園の入り口から出て来たマースに話しかけられて向き合う。二、三言ことばを交わす。クリスが首を振り、マースが説得するようにクリスに近寄って行く。振り払うような仕草で歩きだそうとしたクリスの手をいきなりマースが掴んだ。
「あ」
クリスの手からマースが手紙を奪い取る。
(やっぱり!)
芽理は部屋を飛び出した。階段を駆け降り、出口から走りだす。正面にクリスが立っていて一瞬ぎくりとした顔で芽理を見たが、すぐに済まなそうに、
「芽理、あの手紙は…」
「マースは?」
「庭園の…四阿の方にいったけど」
「ありがと!」
そのままクリスの側を走り抜けて庭園に飛び込む。走り続けてまもなく、芽理は四阿のベンチに座っているマースを見つけた。
「マース!」
はっとしたようにマースが腰を浮かせた。
「芽理」
驚きに見張った目はきららかに光を跳ねるアクアマリン、どうしてこんなところにと言いたげな表情が妙に無防備で人目を引き付ける。けれど、その手にやっぱり確かに、さっきクリスに渡したばかりの封筒がある。
芽理は唇を噛んだ。ためらいもせず、手を差し出し、
「返して」
「芽理…」
マースはさすがにうろたえたような顔になっていた。珍しく不安そうに瞬きしながら、こちらを見つめる。
「人の手紙をどうするの?」
「…僕が、君の手紙を破く、とでも…?」
芽理の冷ややかな問いかけに、一瞬わけがわからないと言う顔になったマースが瞬きし、やがて掠れた声で尋ね返した。色のほとんどない瞳がゆらゆらと揺れている。
「あなたなら、やりかねないでしょ」
芽理はたじろがずに言い返した。すうっと白い顔になったマースが眉をひそめる。けれど何も言い返さないまま、手にした封筒に視線を落とし、そっと指先で挟んで持ち上げてみせた。
「僕の悪口が書いてあるの?」
妙に幼い声だった。ほんの小さな子どもが、隠してあったプレゼントを見つけて期待に胸をどきどきさせながら、「これ、ぼくの?」と尋ねるような、そんな無邪気な声音だった。
(ううん、だまされない、だまされない)
芽理は唇を引き締めた。
(これがこの人の手口なんだ)
ことさらはっきり手を突き出し、胸を張りながら、
「うん」
ぴく、と手紙を支えた手を震わせたマースは手紙を破るかと思いきや、丁寧に掌で持ち直した。
「どんな?」
低い声で尋ねて首を傾げる。
「返してくれたら教える」
芽理は固い声で応じた。
すると、まるで、それが一番知りたかったことなのだといいたげに、マースはいそいそと芽理に封筒を渡した。教えてくれないとは露ほども考えていないような顔で、じっと芽理のことばが続くのを待っている。
一瞬、芽理はためらった。
書いたことばの意味はマースに十分通じるはずだ。それをそのまま伝えれば、相手が傷つくのもわかっている。
(でも、マースの方がもっと私を傷つけてる、よね?)
日本から攫われるように連れてこられて、この先一生、望んでもいない男の妻として暮さなければならない。芽理の現在だけではなく、未来さえも奪った相手なのだ。
「こう書いてあるの」
息を大きく吸い込んで芽理は一気に言い放った。
「『マースなんか死んでしまえ』」
マースは体を強ばらせ大きく目を見開いた。何を聞かせてくれるのかと今にも笑みにほころびそうだった唇が真っ白に色を失う。やがて、その唇が少し、開いた。中途半端に、ことばを紡ぐほどではなく、けれども閉じていることもできなくなったといいたげな不安定さで、ゆるやかな弧を描く。
にじむように寂しい笑みだった。
(ひどいこと、した?)
芽理はふいにきりっとした傷みを胸の底に感じた。
マースはぼんやりと反論もせずに立っている。こちらを見ているはずの瞳がまた一段と色を失って、ガラス玉のように虚ろになった。その体の内側からざらざらと崩れていくものが透けて見えているような気がする。
「ああ……そう、なんだ」
聞こえたのが空耳だったかと思うほどの微かな声がつぶやいた。
一瞬にしてあたりの日が陰ったようだった。それと一緒に、マースの姿も、弱まった光と景色に飲み込まれて薄れていきそうな気配を漂わせる。
「じゃあ」
低くかすれた声が形ばかり微笑んだ唇から漏れた。
「自分で出しておいで。ポストの位置はわかってるね」
「う、うん」
芽理は封筒をマースの手から奪い取った。
手紙を取られても、マースは中空に手を浮かせたまま、身を翻す芽理にも身動きしなかった。
マースは去って行く芽理の姿を見送っていた。
少しの期待はまもなく絶望に変わった。
クリスが芽理を見つけ、走り寄って行く。
芽理の手紙はクリスに奪われ、投函されることはないだろう。
さっきは手紙を破り捨てようとするクリスを、自分が処分するからと何とか止めたものの、今度はもうクリスだってマースを信じないだろう。
「マースなんか死んでしまえ」
芽理の口にしたことばを繰り返してみる。
「大丈夫、そんなこと、願わなくったって」
淡い笑みはひきつけるような笑いの発作に変わった。
「死んでしまえ、か、芽理。そうしたい、できれば、そうしたいよ、芽理」
体を揺さぶりながらベンチに座り込み、笑い続ける。
「だけど」
胸に詰まったことばを吐き出せなくて身もがいて、やがてようやくマースは呻いた。
「できないんだ」
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