『よいこのすすめ』

segakiyui

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「っ」
 うあっ。
 背後で三上が一気にぴりぴりした気配を漂わせるのに、思わず首を竦めて振り返ると、目を見開いて猛を凝視している三上がいる。
 ばか? 猛、お前って、凄いばか?
「あ、あのっ、コーヒーでも淹れますねっ!」
「………ごちそうになろう」
 暗くどっしりした重い声と一緒に三上が冷ややかな視線を上げてくる。
「けれど、君を呼んでいるようだから、僕が淹れてもいいが?」
「めっそうもないっ」
 敬語を吹っ飛ばした口調は視線と同じぐらい鋭い。
「そうだな……」
 三上はベッドに仰向けに転がった猛の側に膝をついた格好のまま、目を細めて薄笑いした。
「僕はこの家のことを何も知らないしな。君らのことも」
「あ、あの」
「君らがどうして暮らしてるのかも、何をしているのかも知らないからな」
「誤解してますって」
「誤解? 何を誤解しているって?」
 三上がく、と皮肉な笑みを押し上げる。
「一緒に寝起きしている仲をどう考えろと?」
「だから、それがそもそも」
 単に従兄弟同士ってだけなんですってば、あんたの理論でいくと、同居してる同性は全部怪しくなっちゃうでしょうが、と反論しかけた正志の前で、ひょいと猛の腕が上がる。
「まーちゃぁん」
 優しい甘えた声で囁きながら、猛が三上の腕をぎゅ、と握った。目を閉じたまま切なそうに、
「慰めてよ~、俺、凄く辛いよ~」
「うひゃ」
「……っ」
 三上が苦しそうに顔を歪める。かと言って、必死に掴まれた腕を振り解けもしないのだろう、眉をきつく寄せたまま猛を見下ろした。
「………僕は」
「は、い」
「………君が倉沢と付き合ってるなら、それでもいい」
「あー……」
 いや、もうどうしたらいいの、これは、と正志は固まる。
「ただ………できれば、ああいう飲み方をさせないように……してやってほしい」
 三上が俯いたまま猛の手をそっと包む。
「……何かあったんですか」
「……今日、小児科の患者が亡くなったんだ」
「……晶子ちゃん?」
「……聞いてるのか」
 ふぅ、と三上が少し肩を落とす。
「そうだ。病状が落ち着かないから、もっと専門のところへ転院させると家族が言い張って……倉沢が動かせる状態じゃないと説明したんだが納得してもらえなかった。その移送中に急変して」
「……亡くなったんですか」
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