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それはあんまりだ、と正志も思った。
確かにどこの病院でどのような医療を受けるかは、患者の責任であって医者が決められるものではない。こうした方がいいと意見は言えても、それ以上の選択に口出しはできない。
「彼女は不安がっていて、それを大丈夫だ、次でもちゃんと診てもらえるから、と倉沢が説得したんだ。けれど、移送にはついていけなくて………」
「………家族はどう言ってるんです」
「病院できちんと説明されなかった、と」
「そんな」
猛がそこを怠るはずがない。聞き入れられなくても何度も主張したはずだ。けれど、家族が聞かされていないと言うなら、それはもう水掛け論になってしまう。
「……録音しておけ、と言ったんだ」
「え?」
「あそこの家族は医療費についても一度怒鳴り込んできている。子どものためを思ってこそはわかるが、どうも不安だから、説明は録音しておけと言ったんだが、そこまで疑うようなことはしたくない
と倉沢が言うから」
三上は悔しそうに唸った。
「僕は馬鹿だった」
「……三上さん」
「勝手に録音でも何でもしておけばよかったんだ、予測はしてたんだから」
「…でも」
猛の手を包んだまま俯いている三上に思わず反論した。
「それやったら、きっと猛、激怒したと思うな」
「……」
ゆら、と三上が顔を上げてくる。
「自分の領分を犯すな、って。これは俺の責任だって」
「………」
「そういう融通きかないとこ、あるし」
「………ああ、そうだ」
三上が薄い色の瞳を微かに見開いた。
「そう、言われた」
「言ったの?」
「うん……家族が遺体を引き取って、この病院を訴えてやるって言ったのを聞いた後で、僕がそう言ったら………これは俺の責任だから口出しするなって」
「……猛らしいや」
そういうところはほんと昔から頑固で。
けど、それなら三上も跡継ぎとしてその場に居たのかもしれない。三上もあれこれ対処に追われて大変だったのかもしれない。
そうしてよく見ると、三上の唇の端が少し切れて血がついている。
「……どうしたんですか?」
「え?」
「ここ……切れてる」
とんとん、と自分の唇を叩いてみせた。
「ああ………殴られた」
「は?」
「倉沢に」
「おいおい」
思わず突っ込んでしまった。
確かにどこの病院でどのような医療を受けるかは、患者の責任であって医者が決められるものではない。こうした方がいいと意見は言えても、それ以上の選択に口出しはできない。
「彼女は不安がっていて、それを大丈夫だ、次でもちゃんと診てもらえるから、と倉沢が説得したんだ。けれど、移送にはついていけなくて………」
「………家族はどう言ってるんです」
「病院できちんと説明されなかった、と」
「そんな」
猛がそこを怠るはずがない。聞き入れられなくても何度も主張したはずだ。けれど、家族が聞かされていないと言うなら、それはもう水掛け論になってしまう。
「……録音しておけ、と言ったんだ」
「え?」
「あそこの家族は医療費についても一度怒鳴り込んできている。子どものためを思ってこそはわかるが、どうも不安だから、説明は録音しておけと言ったんだが、そこまで疑うようなことはしたくない
と倉沢が言うから」
三上は悔しそうに唸った。
「僕は馬鹿だった」
「……三上さん」
「勝手に録音でも何でもしておけばよかったんだ、予測はしてたんだから」
「…でも」
猛の手を包んだまま俯いている三上に思わず反論した。
「それやったら、きっと猛、激怒したと思うな」
「……」
ゆら、と三上が顔を上げてくる。
「自分の領分を犯すな、って。これは俺の責任だって」
「………」
「そういう融通きかないとこ、あるし」
「………ああ、そうだ」
三上が薄い色の瞳を微かに見開いた。
「そう、言われた」
「言ったの?」
「うん……家族が遺体を引き取って、この病院を訴えてやるって言ったのを聞いた後で、僕がそう言ったら………これは俺の責任だから口出しするなって」
「……猛らしいや」
そういうところはほんと昔から頑固で。
けど、それなら三上も跡継ぎとしてその場に居たのかもしれない。三上もあれこれ対処に追われて大変だったのかもしれない。
そうしてよく見ると、三上の唇の端が少し切れて血がついている。
「……どうしたんですか?」
「え?」
「ここ……切れてる」
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