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10.幻遥けく(2)
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「……お前を連れて逃げよう
この世界の果てまで逃げよう
死の女神も
運命さえも
追いつけない夜を逃げよう
お前を連れて逃げよう…」
「…あれは…」
ミダス公邸の回廊の中、リディノは立ち止まって首を傾げた。
降り注ぐ陽射しの中、花粉を運び蜜を集めるブーコ飛び交い、ラフレスをはじめとする花々の薫りが溢れ満ちる苑から、憂いを含んだ豊かな歌声が聴こえてくる。
「…珍しい。アシャ様のようですが」
側に付き従っていたジノも、瞬きをして花苑を見やった。
「そのようね」
頷いて、リディノは数日前のことを思い出す。
アシャが出て行ってから不安な夜が続いていた。
リディノはジノの昔語りを聴いて夜を過ごすことが多くなったし、レスファートも彼女の側で膝を抱えて過ごすことが増えていた。
大切な人が側にいない。
大切な人が戻らない。
側に温もりがないだけで、人は容易く、一人ぼっちで荒野を彷徨っていた原始の夜に引き戻される。
仲間はどこだ。
背中を温め、ひもじさを分かち合い、危険に寄り添い、互いの盾となるべき者はどこへ行った?
ジノの声だけが、唯一闇に抗する呪文でもあるかのように、いろいろな詩を繰り返しねだって歌わせ続ける。レスファートもそのうちの幾つかを覚えては歌い、それでささやかな慰めは得るものの、そんな夜が繰り返された後は、疲れ切ってベッドに入ることもなく、ジノに叱られつつも、床の敷物の上で二人、身を寄せ合って眠ってしまう。
そんなある夜、ふと何かのざわめきがして、リディノは体を起こした。
窓の外に細かな砂を落とすような音が満ちている。雨が降っているのだ。
だが、いつもなら、雨は公邸に沈黙をもたらすものなのに、この雨はひどく騒がしい。
「どうしたの、リディ…」
眠たげにレスファートが見上げてくるのに首を振る。
「さあ…何か…」
ジノは側に居ない。屋敷が奇妙な興奮に揺れているような感覚だ。
と、リディノの答えを待つまでもなく、唐突にレスファートがぴょこんと立ち上がった。扉の方をじっと見つめ、まるで草原に住む小動物のように意識を集めて目を凝らす。
次の瞬間、ぱっと弾けるような明るい笑みがレスファートの顔に広がった。
「レス?!」
「ユーノだ!」
いきなり部屋から走り出しながら、少年は高らかに宣言する。
「ユーノが帰ってきたっ!」
「えっ?!」
慌てて立ち上がり、同じように部屋を走り出たリディノは、回廊の向こうから、顔を紅潮させたジノが駆け寄ってくるのを見て取った。
「姫さま!」
その側をレスファートが駆け抜けて、まっすぐ入り口へ走っていく。入れ違いに距離を縮めてきたジノが、
「アシャ様がお帰りになりました!」
「アシャ兄さまが!」
身内が沸き立つような興奮が溢れた。
「はい、ユーノ様もご一緒です!」
「わかったわ! ジノ、一緒に来て!」
「はいっ」
姫らしくない、ミダス公が見ていれば、そう窘められただろう。ドレスの裾を蹴散らすような激しさで、リディノは公邸の中を急ぐ。
(アシャ兄さま……アシャ!)
それでは皆無事なのだ。無事に生きて戻ってきてくれたのだ。
やがて赤々と灯のともった公邸入り口に、茶色のマントも革靴も、見事な金髪さえ濡れそぼったアシャが、そのマントで抱え込むように、白いチュニック姿のユーノを連れて入ってくるのが見えた。
「ああ、すまない」
迎えの者がいそいそと布を差し出し、濡れたマントを受け取ろうとするのに、アシャが溜め息まじりに謝罪して、ちらりと隣のユーノを見下ろす。
「ラズーンじゃ雨の日の方が少ないのに、わざわざ今夜帰るなどと言い出してな」
「何言ってんのさ」
苦笑したアシャをじろりとユーノがねめつける。
「アシャこそ、少しでも早く戻ろうって急かしたくせに」
受け取った布で濡れた髪を拭くユーノは元気そうだ。そこへ、
「ユーノぉ!!」
銀色の髪を振り乱して、レスファートがユーノの腰にしがみついた。涙で汚れた頬を容赦なくユーノに押しつけて、泣きじゃくりながら訴える。
「し、っ、しんっ…死んだっ……死んだ…って、アシャっ……アシャが…っ、いっ…いったん……もん……っ」
「ああ…ごめんよ、レス」
とても痛い場所をもう一度抉り直されたような悲痛な表情で、ユーノが唇を噛み、俯いて跪いた。二度と離すまいとするかのようにしがみつくレスファートを、包むように抱き締める。
「ごめんな……ほんと……いつも…ごめん…」
謝られても、もちろん、レスファートにはユーノに向ける矛先などない。必然、怒りはアシャに向けられる。
「あ…っ…アシャ…っ…なんか…っ…き……嫌い…だあっ…」
「おいおい」
聞きとがめて、不服そうに唇をねじ曲げたアシャがレスファートを覗き込む。
「命の恩人に対して、その言い草はあんまりだろ、レス」
「だっ…だってぇ…っ」
なおも怒りをぶつけようと振り仰ぐ少年の顎をぐいと掴み、顔を深く覗き込む。
「ユーノを助けたのは俺だぞ?」
「う…っ」
ことばは失ってもアクアマリンの瞳の雄弁さは健在だ。たちまち大粒の涙をぼろぼろと零し、切なげに眉を寄せたかと思うと、噛み締めていた口を開いた。
「うっ、わあああっっっっ!」
「おっっ」
「うん、今のはアシャが悪い」
うろたえて顎を離すアシャに、ユーノが頷いて断言する。
「ちょっと待て、ユーノ、俺は!」
「こんな小さな子を脅しつけたりして」
「いつ俺が!」
「いいよレス、怖かったよね、心配させたのはほんと、私が悪いんだ、ごめんよ」
口をぱくぱくさせているアシャにくるりと背中を向けて、ユーノはレスファートを抱え込み慰めあやしてやる。
「ユーノぉっ」
その胸に自分を溶け込ませるように甘えているレスファートを見ながら、リディノも溢れる涙が止まらなくなった。
「アシャ兄さま!」
飛びつき、しがみつく。
「ご無事だったのね、アシャ兄さま!」
雨に濡れた衣服からは戦場を駆け抜けたような埃と汗の匂いがした。今までアシャからそんなものを嗅ぎ取ったことなどないだけに、安堵とともに不安も滲む。
確かに噂は知っている、アシャは剣士でもあるのだ、戦の経験も重ねている。
だが、リディノにとって、アシャはいつも極上の微笑をたたえた上品な詩人、リディノの甘えを卒なく受け止めてくれる騎士だった。
「ああ、リディ」
耳元で囁かれる声はいつもより掠れている。それでも、いつも戻って来た時に与えられるキスは、優しく頬を撫でていく。
「大丈夫だったよ」
安心させる声音に戻って、リディノはほっとした。アシャが全く見知らぬ誰かになりそうだったのを、そっと胸の内に押し込めかけて、はっとする。
「兄さま、これは…」
しがみついた掌の下、薄い短衣の中に重なり合った布の感触があった。ぎくりと体を強張らせて問いかける。
「怪我が、まだ…?」
「掠り傷だよ、すぐに治る」
アシャは快活に応じた。
「それより、リディ…」
だが、続いたことばはリディノの耳には入らなかった。
包帯を幾重にも巻かなくてはならないような傷。
そんな怪我が掠り傷などではないことは、リディノにもよくわかっている。百歩譲って、リディノが案じるほどの傷ではなかったのだとしても、治りかけているような傷をいつまでも包帯で覆っておくようなアシャではないことを、リディノはよく知っている。
(そんな傷で)
胸の内に湧き上がった黒い雲。
(そんな傷を押して…ユーノを助けに向かわれたの…?)
何だろう、この不愉快で苦しい気持ちは。
(もし、私が)
リディノが同じような窮地に陥ったなら。
(アシャ兄さまは)
「リディ?」
「あ、はい」
改めて呼びかけられて、リディノは我に返った。
「もう一人、お客様をお連れした」
アシャが背後の闇に呼びかける。
「レアナ姫、どうぞ」
「…っ」
薄暗がりの中から、一人の女性が近づいてくる。雨粒を宝石のように光らせた、栗色の波打つ髪、卵形の整った顔立ちは滑らかで白く、深く鮮やかな宝石を思わせる瞳はけぶるような睫毛に囲まれている。伸びやかな首筋、しなやかで気品ある物腰、一目見ればわかる、この女性こそ姫君と呼ばれるべき人であると。
ほっそりとした脚が、背後にイルファを従えて静かに歩み寄ってくる、と、一瞬、歩を止めた。
「……リディノ姫」
名前を教えられていたのだろうか、それにしても親しげな、まるで懐かしい友人に出逢ったような喜びが見る見る広がって、にっこりとリディノに微笑みかけた。
「レアナ・セレディスです。どうぞよろしく」
(綺麗な人だった)
ぼんやりと花苑から響いてくる歌声に耳を傾けながら、リディノはレアナの微笑を甦らせる。
(ううん、綺麗なだけじゃない……大人っぽくて、すてきな女性)
あれが名高いレアナ姫。
辺境の国にレアナ姫という類稀な美姫がいる、そういう噂は聞いたことがあるけれど、どこかで軽く見ていた、統合府であるラズーンに居並ぶ姫達よりも抜きん出ているはずなどない、と。飾りものもドレスも、夜会も作法も殿方達も、辺境の小国ならば限られているだろう、ラズーンのように諸国からの品々が巡っているとは考えにくい。そうした中での美しい姫、であるならば、きっと噂は風に巻かれて大きく高く舞い上がっているのだと。
事実、ユーノを見た時には、異質さに驚きはした、見知らぬ美しさを感じもした、だがそれは所謂『姫』の美とはまた全く別のもの、そう思えた。
だが、あの女性は違う。
リディノや『西の姫君』や、いや、夜会に集まるラズーン周辺諸国の姫君の誰と並んでも、決して引けはとらぬだろう。ラズーンの品で身を飾れば、溜め息ばかり零れる中を歩くことになるのだろう。
輝く大輪の花ではない。けれど誰もが、側で花開く様を愛しみ味わい楽しみたいと願う、そういう女性の極みとも言える美しさだ。
(ひょっとすると……アシャ兄さま、も)
「しかし珍しい」
ジノがほとほと信じ難いと言いたげな声で繰り返す。
「あのような熱烈な恋歌を、一体誰に謳っておられるのやら」
「恋歌?」
思わずぎくりと振り返る。
「あれは恋歌なの?」
「はい」
ジノは頷き、歌詞を諳んじるように目を閉じた。
「許されぬ恋をしたが、お前を諦め切れない。いっそお前を攫って、世の終わりまで逃げ続けてしまおうか。そうして二人を引き裂く運命を欺いてしまおうか」
低い声で呟いて目を開ける。
「というような意味の詩です」
「そ…う…」
ならばアシャは許されぬ恋をしていると言うのか。
あのアシャが、想いを告げられぬような恋に苦しみ、詩に気持ちを吐き出していると言うのか。
(一体、誰に)
脳裏に閃いた、夜闇をほのかに照らすようなレアナ姫の笑顔。
(まさか)
「姫さま?!」
ジノの声にも振り返らず、リディノは身を翻して、花苑の中に続く扉を抜け、小道を走り出していた。
「お前を連れて逃げよう
月と星の谷間を潜り
天の流れを泳ぎ渡る
彼方の異国へ逃げ続けよう…」
立風琴(リュシ)の音が激しくかき鳴らされる、許されぬ恋人達の逃避行のように、極める甘い切なさに砕け散る悲鳴のように。
眉を潜め、目を閉じて、アシャが腰を降ろしているのは、かつてユーノが凶剣に倒れたその場所だ。
あの日ラフレスは紅に染まり、愛しい少女は連れ去られて遠く、突き立てられた剣だけが残ってアシャを嘲笑っていた。
(いつもいつも、ユーノは俺の腕から奪われていく)
目を閉じたまま、胸に砕けた傷みに顔を歪めた。
愛しい。
愛しい。
こんなにも、あの娘が愛おしくてたまらない。
けれど、その想いを告げるには、既に遅すぎる。
アシャの想いは、ユーノの命と引き換えに、あの『沈黙の扉』の中に封じ込められてしまった。
「お前を連れて逃げよう
草の波を蹴立てる白馬に
行く手を照らす金の星かけて
この世の果てまで逃げ続けよう…」
あの雨の日、ユーノが気づくまで、昏々と眠り続ける彼女を抱いて横になりながら、額に垂れかかる熱にうだった髪の下で、幾度も考えていた、このまま連れ攫ってしまおうか、と。
だがその度に、ラフィンニのことばが耳に甦って、最後の決断をためらわせた。
(ユーノには、誰か、愛する者がいる)
自分の腕に包み込んでしまえるほど華奢な体には無数の傷痕、それはユーノを見えない鎖で縛りつけているかのように、滑らかな肌に白々とした刻印を残している。
その傷痕の理由を、アシャは半分も知らない。知り合わぬ前のものは我慢ができるとして、付き人として側に従いながらも、なおも知らぬ傷が増えていくという意味に、いいようのない苛立ちが広がる。
(俺が知らないところで、お前は繰り返し裂かれ、傷つけられ、倒れ込む……けれど、お前は怯まない、その度に何度も立ち上がり、再び渦中に飛び込んでいく。その気力の源には一体、誰の姿があるんだ…?)
唇の柔らかさは知っている。うなじの細さも、手足のしなやかさも、強く抱き締めて跳ね返る弾力や抵抗される切ない甘さも、十分味わったことがある。
(けれど)
ユーノの心だけがわからない。
たじろがぬ心の強さの源泉は、きっとどこかにあるはずなのだ。遠く離れたセレドの家族や民の安楽への願い、ラズーンへの忠誠、レスファートやイルファ達仲間への思いやり、そういったものより、もっと激しく強く、ユーノを支える何かの存在が。
(お前の体はここにあるのに)
眠り続ける体とは別に、ユーノの魂は誰かとともに遠く彼方を駆け去っている。たとえ、アシャが思いのままに、ユーノを組み敷いて蹂躙したところで、そうやって彼女を連れ攫ってしまったところで、ユーノの心は、何よりも欲しいその魂は、きっと、決してアシャの手には入らない。
それでも。
(このままお前を攫っていきたい)
そう叫ぶ心を宥めるのに、どれほど克己心を振り絞ったか。
「お前を連れて逃げよう
この両腕に抱きかかえ
この熱い胸に抱き締めて
時の境を逃げ続けよう
お前を連れて逃げよう……」
(ユーノ)
ツィーン、と高い一音の余韻、最後の旋律に快楽を極める瞬間の解放を重ねて、アシャは口を噤む。弾む呼吸を呑み込んで、内側を駆け上がり跳ね散る甘い波に堪えて、しばらく息を詰める。
静まり返った邸内には、人の声さえ聴こえない。最近いろいろと物騒な出来事ばかりが続いていた日々、その中にある空白のような平和な憩いに心を寛がせ、皆、うたた寝でもしているのだろう。
身動きしないアシャの側を、ブーコの羽鳴りが掠めていく。
「…ふ」
沈黙していたアシャは唐突に唇を綻ばせた。どこか甘く、どこか自嘲する気配の苦笑を浮かべる。
(どうしようもない、男というものは)
思い定めて、ゆっくりと目を開けた。
眩い陽射しの中、ラフレスが盛りを過ぎて咲き崩れようと艶を競っている。溢れかえる白の誘惑の彼方に、一瞬、花嫁衣装を身に着けたユーノの姿が過っていく。
(あんなことで、お前を俺のものだと決めてしまっている)
あえて花嫁衣装を選んだのはアシャだ。ユーノを広間に連れていきながら、この先何が起ころうと構わないと思っていた。
(俺のために着てくれるとは限らないのに)
むしろ、他の男のために装う可能性が高い、その運命に挑戦するような気持ちがあったのも確かだ。
奪えるものなら奪ってみろ。見ろ、俺はこの位置から引かないぞ。
幼くて向こう見ずな宣言、それが後々、まさか『泉の狩人』(オーミノ)の干渉によって覆されるとは思いもしない、ユーノの心を思いやることさえない、自己中心的で傲慢な男の雄叫び。
それはつまり、天誅だったのかも知れない。
ユーノにはふさわしき出逢いが既に定められており、それはアシャなど及ぶべくもないのだと、何度も示されたのに納得できず、歯ぎしりする前に認めることさえなく、ただひたすらに突っ走ってきた男に下された鉄槌。
それでも。
アシャは立風琴(リュシ)を置き、ごろりと寝転がった。
(結局、俺はユーノを追い続けるんだろう)
それこそ、他の男の所へ一心に駆けて行っているのかも知れないユーノを。その身の無事を願い、その心の安寧を祈り、ついに辿り着く、その瞬間に歯噛みする自分の姿を嘲笑いながら。
(止められないんだ)
請い伸ばす手が止まらない。
振り返る視線が外せない。
笑って見送って欲しいと望まれたなら、ユーノがアシャに望むものがそれしかないのなら、迷わず差し出すことがわかっている。
(俺を望んでくれ、ユーノ)
たった一本の指でもいい。
そのためなら、残り全てを犠牲にしても、ユーノの元に届けよう。
確かに想いを告げるのは封じられたが、想いそのものを封じられたわけではない、と自分に言い聞かせかけて、はたと我に返り、くつくつ嗤った。
(本当に、どうしようもない、男というものは)
無理もない、そうやって人は生き残ってきたのだ。
女という海の中に、自分を切り刻んで注ぎ込み、未来への時間を手に入れて来た。
(ただ、俺は…)
ゆっくりと思考が霞んでくる。ここ連日の疲労は、荒れ狂う心が静まっていけば、見る見る肉体の支配を取り戻す。四肢が重くなりだるくなり、地面に自らが吸い込まれていくような感覚の中、アシャは一瞬眉を寄せる。
(俺は…その繋がりの中には……最初から、いなかった…)
ならば、どこへ還ればいいのだろう。
幼い頃からの問いが柔らかに繰り返される頃、アシャは寝息を立て出した。
「……」
アシャが眠りに落ちて少し後、リディノはラフレスの花影からそっと顔を覗かせた。
「アシャ兄さま…」
小さく呟いて、果実のようなと評される唇をきゅっと結ぶ。
ジノを置いて駆けつけてきて、アシャが誰に恋歌を歌っているわけでもないと知って、一時はほっとしたものの、こっそり様子を窺ってしまったので出るにも出られなくなり、しばらく身を潜めて、陽射しの中で眩く輝くアシャの姿を見つめていた。
キャサランの金細工のように輝かしい髪。奥深い山で取れる紫水晶のような鮮やかで深い瞳。男性にしてはやや色白で、華やかな宮廷衣装を身に着ければ、姫君達よりも艶やかな姿。端麗な顔立ちは確かに女性的ではあるものの、響く声は柔らかく低く、耳を澄ませていれば天上の楽音もかくやと思われる豊かさ。甘く優しい仕草でダンスを誘い、この指先を導いてくれる巧みさ、すがりつけば、しなやかな体がしっかりと抱きとめてくれる確かさと温かさ。
(望まない娘なんて、きっといない)
だから、アシャは誰を想っても苦しい想いなどするはずがない、そう思っていた。
なのに、花の影で見つめていたアシャの横顔は、これまで見たどんな時の顔より情熱に満ちて、薄紅を帯びた頬に浮かんだ表情は官能的とでも言うのだろうか、見つめていると、体の奥が切ない波に疼くように思えた。やや掠れた声を無理に押し上げるような声音は、いつまでも聞いていたいような、けれど二度と聞きたくないような響きでこう叫んでいた。
お前が、欲しい。
「……」
ごくり、と唾を呑み込んで、リディノは静かに脚を踏み出す。
あの声は、何だろう。
誰に向けて、叫ばれたのだろう。
(一体,誰を想って、歌っておられたの?)
これまで、あれほど熱を込めてアシャが詩を歌うのを聴いたことがない。
もちろん、今までリディノに向かっても歌ってくれたことはある。どれも優しく甘美な声だったが、今さきほど聴いた歌と引き比べればはっきりとわかる。
あれらはどれも他人行儀だった。整えられ飾られ、丁寧に奏でられてはいるが、心が噴き出し溢れ落ちるような激しさは微塵もなかった。
(兄さま…)
間近まで近づいても、よほど疲れているのだろう、アシャは目を覚ます気配もない。そろそろと薄桃色のドレスに包まれた膝をつく。
(アシャ…)
「ん…」
さすがに振動が伝わったのか、アシャが軽く眉をしかめて顔を背けた。が、すぐにほわりと頼りなく口許が緩み、聡明そうな額に乱れた髪の房のせいか、無防備な子どものような寝顔に戻る。
以前、アシャはリディノにこう話してくれた。
『戦士が眠っている時に近づいて、相手が目を覚まさないとしたら、それは彼がリディノに心を許している証拠だよ』
「……アシャ…兄さま…」
リディノは微笑んだ。
先ほどまでの不安が、空を漂った薄雲のように消えて行く。
何を心配しているのだろう。アシャが名だたる剣士であることは間違いない。そのアシャが、今こうしてリディノがこれほど近づいても、目を開くことさえない。
それはそれほどアシャがリディノに心を許しているということではないか。無限の信頼がここに示されているではないか。
じっと見下ろしていたリディノの目が、ふと、アシャの唇に止まった。薄く開かれた唇は、つやつやとした薄赤に染まっている。
アシャの髪に触らないように、そっと両手を地面についた。そろそろと顔を降ろしていく。目を閉じ、微かな呼吸を目当てに、轟くように打つ胸の鼓動を堪えながら、唇を近づけていく…が。
「…ゆーの…」
「っ!」
アシャの唇が唐突に動き、掠れた声が零れてどきりとした。目を見開く、その耳が拾ったことばの意外さに、思考が追いつかない。そのリディノを嘲笑うように、アシャは再び、優しい不安げな声で繰り返した。
「…ユーノ……そっちへ……行くな…」
「…アシャ……」
聞いたことのない声、だが、その声色に感じ取ったのは、紛れもなく、さっきの恋歌に含まれていた切ない、愛しい、熱っぽい懇願。
(まさか)
視界が衝撃に眩み、歪む。
否定しようとする心を嘲笑う確信。
「、う…」
ドレスの裾がアシャに触れないようにかろうじて捌いて立ち上がり、リディノは走り出しながら漏れかけた嗚咽を必死に掌で押さえ込む。
(ユーノ? ユーノ? 兄さま、ユーノ、そう、呼ばれたの?)
信じられない。
ユーノ、あのユーノが、アシャの想いの相手だと言うのか、あの、あの、あの、傷だらけの、小汚い姿で現れた、可愛らしさとも美しさともほど遠い、男のような、あの子が。
(ユーノ? どうして? どうしてなの、アシャ兄さま?)
心の中で繰り返しながら、花苑を抜け、回廊を駆け、部屋の中へ飛び込んでいく。
「姫さまっ?!」
うろたえたようなジノの声を背中に、ベッドへ身を投げ出した。両腕で顔を覆い、体を竦めて踞る。心の中に、今まで感じたことのないどす黒いものが蠢いている。
(レアナ姫ではなくて、ユーノなの? 私ではなくて、ユーノなの?)
なぜ? なぜ? なぜ?
「姫さま?」
「来ないで!」
自分の声がひび割れていた。
「姫さま」
「来ないでジノ! 私きっと、とても嫌な顔をしているわ!」
そうだ、この感情を知っている。今まで知らぬふりをしてきたが、幾度も感じてきたものだ。アシャが美しい姫君達と寄り添うたび、夕闇の中をそぞろ歩いたり、月光の中で逢瀬を重ねたと聞くたび、胸の片隅に燻りながら体の内側を這い昇ろうとしてきた闇。
「姫さま!」
ジノは一旦は引いた気配だったが、リディノの悲鳴じみた声がただ事ではないと察したのだろう、すぐに駆け寄ってきてリディノを覗き込んだ。
「姫さま! どうなされたのです、姫さま!」
「…ジノ……ジノ!」
呑み込まれるわ、私。
「ジノ……私…」
助けてちょうだい、こんなもの、私は要らない。
ひくひくとしゃくり上げながら、リディノは顔を上げた。自分をずっと守ってきてくれた顔が、温かな心配を浮かべて見下ろしている。
同じような心配を、おそらくはアシャもユーノに向けているのだ、この、自分ではなくて。
そう思った瞬間、溢れる涙が止まらなくなった。
「ジノっ!!」
「姫さま……姫さま……」
しがみついた胸は震えていた。それがジノがどれほどリディノを案じているかの証明に思えて、リディノは身悶えるように体を揺さぶった。
「私…私……私……っ」
何が間違っていた? ちゃんとラズーンでアシャを待っていた。何が間違っていた? アシャの安らぐ所を整え、守り、美しく装っていた。何が間違っていた? 無理を言わなかった、我が儘を訴えなかった、だだをこねなかった、アシャを困らせたことなどないはずだ。
なのに。
なのに。
愛情を全て受け止めるべく、あらゆる準備を整えてきた自分に、この仕打ちなのか。しかも相手はレアナではない。至上の美姫ではない。ごく普通の娘でさえない。傷だらけの、教養もない、剣を振り回し、人を殺すような娘。リディノとユーノの最大の違いは、ただ。ただ。
「……ただ……一緒に居た…だけだわ……っ!」
引き裂かれたような自分の声に、そっと体を撫でてくれていたジノの手がぴたりと止まる。
やがて、密やかな声が囁いた。
「……大丈夫ですよ、姫さま」
「…っう」
「ご心配ごとはジノにお任せ下さいませ」
力強い口調にリディノは瞬く。嵐に揉まれた小舟のようだった心が、ゆりかごに揺られるように、少しずつ治まってくる。
「ジノ…」
「きっとうまくやってご覧にいれますから」
「……ジノ…」
そうだ、とリディノは慰められつつ思う。
何を取り乱しているのだろう。
彼女はラズーン四大公、『銀羽根』率いるミダス公の一人娘、言わば、統合府ラズーンの聖なる姫なのだ。そして、アシャはラズーンの第一正統後継者。その称号(クラノ)を負う彼が、辺境の小国の、ことさら目を惹くわけもない姫に魅かれるわけがない。
「……ジノ…」
リディノは小さく頷いて安堵し、ジノは再びリディノの体を撫で始める。
薄く開いた戸口に一つの影が動いた。
その影が静かに歩み去るのに二人は気づかなかった。
ましてや、その影が視察官(オペ)ジュナ・グラティアスであることや、その顔に浮かんでいた、およそラズーン支配下(ロダ)にあるまじき、禍々しい笑みに、気づくはずもなかった。
この世界の果てまで逃げよう
死の女神も
運命さえも
追いつけない夜を逃げよう
お前を連れて逃げよう…」
「…あれは…」
ミダス公邸の回廊の中、リディノは立ち止まって首を傾げた。
降り注ぐ陽射しの中、花粉を運び蜜を集めるブーコ飛び交い、ラフレスをはじめとする花々の薫りが溢れ満ちる苑から、憂いを含んだ豊かな歌声が聴こえてくる。
「…珍しい。アシャ様のようですが」
側に付き従っていたジノも、瞬きをして花苑を見やった。
「そのようね」
頷いて、リディノは数日前のことを思い出す。
アシャが出て行ってから不安な夜が続いていた。
リディノはジノの昔語りを聴いて夜を過ごすことが多くなったし、レスファートも彼女の側で膝を抱えて過ごすことが増えていた。
大切な人が側にいない。
大切な人が戻らない。
側に温もりがないだけで、人は容易く、一人ぼっちで荒野を彷徨っていた原始の夜に引き戻される。
仲間はどこだ。
背中を温め、ひもじさを分かち合い、危険に寄り添い、互いの盾となるべき者はどこへ行った?
ジノの声だけが、唯一闇に抗する呪文でもあるかのように、いろいろな詩を繰り返しねだって歌わせ続ける。レスファートもそのうちの幾つかを覚えては歌い、それでささやかな慰めは得るものの、そんな夜が繰り返された後は、疲れ切ってベッドに入ることもなく、ジノに叱られつつも、床の敷物の上で二人、身を寄せ合って眠ってしまう。
そんなある夜、ふと何かのざわめきがして、リディノは体を起こした。
窓の外に細かな砂を落とすような音が満ちている。雨が降っているのだ。
だが、いつもなら、雨は公邸に沈黙をもたらすものなのに、この雨はひどく騒がしい。
「どうしたの、リディ…」
眠たげにレスファートが見上げてくるのに首を振る。
「さあ…何か…」
ジノは側に居ない。屋敷が奇妙な興奮に揺れているような感覚だ。
と、リディノの答えを待つまでもなく、唐突にレスファートがぴょこんと立ち上がった。扉の方をじっと見つめ、まるで草原に住む小動物のように意識を集めて目を凝らす。
次の瞬間、ぱっと弾けるような明るい笑みがレスファートの顔に広がった。
「レス?!」
「ユーノだ!」
いきなり部屋から走り出しながら、少年は高らかに宣言する。
「ユーノが帰ってきたっ!」
「えっ?!」
慌てて立ち上がり、同じように部屋を走り出たリディノは、回廊の向こうから、顔を紅潮させたジノが駆け寄ってくるのを見て取った。
「姫さま!」
その側をレスファートが駆け抜けて、まっすぐ入り口へ走っていく。入れ違いに距離を縮めてきたジノが、
「アシャ様がお帰りになりました!」
「アシャ兄さまが!」
身内が沸き立つような興奮が溢れた。
「はい、ユーノ様もご一緒です!」
「わかったわ! ジノ、一緒に来て!」
「はいっ」
姫らしくない、ミダス公が見ていれば、そう窘められただろう。ドレスの裾を蹴散らすような激しさで、リディノは公邸の中を急ぐ。
(アシャ兄さま……アシャ!)
それでは皆無事なのだ。無事に生きて戻ってきてくれたのだ。
やがて赤々と灯のともった公邸入り口に、茶色のマントも革靴も、見事な金髪さえ濡れそぼったアシャが、そのマントで抱え込むように、白いチュニック姿のユーノを連れて入ってくるのが見えた。
「ああ、すまない」
迎えの者がいそいそと布を差し出し、濡れたマントを受け取ろうとするのに、アシャが溜め息まじりに謝罪して、ちらりと隣のユーノを見下ろす。
「ラズーンじゃ雨の日の方が少ないのに、わざわざ今夜帰るなどと言い出してな」
「何言ってんのさ」
苦笑したアシャをじろりとユーノがねめつける。
「アシャこそ、少しでも早く戻ろうって急かしたくせに」
受け取った布で濡れた髪を拭くユーノは元気そうだ。そこへ、
「ユーノぉ!!」
銀色の髪を振り乱して、レスファートがユーノの腰にしがみついた。涙で汚れた頬を容赦なくユーノに押しつけて、泣きじゃくりながら訴える。
「し、っ、しんっ…死んだっ……死んだ…って、アシャっ……アシャが…っ、いっ…いったん……もん……っ」
「ああ…ごめんよ、レス」
とても痛い場所をもう一度抉り直されたような悲痛な表情で、ユーノが唇を噛み、俯いて跪いた。二度と離すまいとするかのようにしがみつくレスファートを、包むように抱き締める。
「ごめんな……ほんと……いつも…ごめん…」
謝られても、もちろん、レスファートにはユーノに向ける矛先などない。必然、怒りはアシャに向けられる。
「あ…っ…アシャ…っ…なんか…っ…き……嫌い…だあっ…」
「おいおい」
聞きとがめて、不服そうに唇をねじ曲げたアシャがレスファートを覗き込む。
「命の恩人に対して、その言い草はあんまりだろ、レス」
「だっ…だってぇ…っ」
なおも怒りをぶつけようと振り仰ぐ少年の顎をぐいと掴み、顔を深く覗き込む。
「ユーノを助けたのは俺だぞ?」
「う…っ」
ことばは失ってもアクアマリンの瞳の雄弁さは健在だ。たちまち大粒の涙をぼろぼろと零し、切なげに眉を寄せたかと思うと、噛み締めていた口を開いた。
「うっ、わあああっっっっ!」
「おっっ」
「うん、今のはアシャが悪い」
うろたえて顎を離すアシャに、ユーノが頷いて断言する。
「ちょっと待て、ユーノ、俺は!」
「こんな小さな子を脅しつけたりして」
「いつ俺が!」
「いいよレス、怖かったよね、心配させたのはほんと、私が悪いんだ、ごめんよ」
口をぱくぱくさせているアシャにくるりと背中を向けて、ユーノはレスファートを抱え込み慰めあやしてやる。
「ユーノぉっ」
その胸に自分を溶け込ませるように甘えているレスファートを見ながら、リディノも溢れる涙が止まらなくなった。
「アシャ兄さま!」
飛びつき、しがみつく。
「ご無事だったのね、アシャ兄さま!」
雨に濡れた衣服からは戦場を駆け抜けたような埃と汗の匂いがした。今までアシャからそんなものを嗅ぎ取ったことなどないだけに、安堵とともに不安も滲む。
確かに噂は知っている、アシャは剣士でもあるのだ、戦の経験も重ねている。
だが、リディノにとって、アシャはいつも極上の微笑をたたえた上品な詩人、リディノの甘えを卒なく受け止めてくれる騎士だった。
「ああ、リディ」
耳元で囁かれる声はいつもより掠れている。それでも、いつも戻って来た時に与えられるキスは、優しく頬を撫でていく。
「大丈夫だったよ」
安心させる声音に戻って、リディノはほっとした。アシャが全く見知らぬ誰かになりそうだったのを、そっと胸の内に押し込めかけて、はっとする。
「兄さま、これは…」
しがみついた掌の下、薄い短衣の中に重なり合った布の感触があった。ぎくりと体を強張らせて問いかける。
「怪我が、まだ…?」
「掠り傷だよ、すぐに治る」
アシャは快活に応じた。
「それより、リディ…」
だが、続いたことばはリディノの耳には入らなかった。
包帯を幾重にも巻かなくてはならないような傷。
そんな怪我が掠り傷などではないことは、リディノにもよくわかっている。百歩譲って、リディノが案じるほどの傷ではなかったのだとしても、治りかけているような傷をいつまでも包帯で覆っておくようなアシャではないことを、リディノはよく知っている。
(そんな傷で)
胸の内に湧き上がった黒い雲。
(そんな傷を押して…ユーノを助けに向かわれたの…?)
何だろう、この不愉快で苦しい気持ちは。
(もし、私が)
リディノが同じような窮地に陥ったなら。
(アシャ兄さまは)
「リディ?」
「あ、はい」
改めて呼びかけられて、リディノは我に返った。
「もう一人、お客様をお連れした」
アシャが背後の闇に呼びかける。
「レアナ姫、どうぞ」
「…っ」
薄暗がりの中から、一人の女性が近づいてくる。雨粒を宝石のように光らせた、栗色の波打つ髪、卵形の整った顔立ちは滑らかで白く、深く鮮やかな宝石を思わせる瞳はけぶるような睫毛に囲まれている。伸びやかな首筋、しなやかで気品ある物腰、一目見ればわかる、この女性こそ姫君と呼ばれるべき人であると。
ほっそりとした脚が、背後にイルファを従えて静かに歩み寄ってくる、と、一瞬、歩を止めた。
「……リディノ姫」
名前を教えられていたのだろうか、それにしても親しげな、まるで懐かしい友人に出逢ったような喜びが見る見る広がって、にっこりとリディノに微笑みかけた。
「レアナ・セレディスです。どうぞよろしく」
(綺麗な人だった)
ぼんやりと花苑から響いてくる歌声に耳を傾けながら、リディノはレアナの微笑を甦らせる。
(ううん、綺麗なだけじゃない……大人っぽくて、すてきな女性)
あれが名高いレアナ姫。
辺境の国にレアナ姫という類稀な美姫がいる、そういう噂は聞いたことがあるけれど、どこかで軽く見ていた、統合府であるラズーンに居並ぶ姫達よりも抜きん出ているはずなどない、と。飾りものもドレスも、夜会も作法も殿方達も、辺境の小国ならば限られているだろう、ラズーンのように諸国からの品々が巡っているとは考えにくい。そうした中での美しい姫、であるならば、きっと噂は風に巻かれて大きく高く舞い上がっているのだと。
事実、ユーノを見た時には、異質さに驚きはした、見知らぬ美しさを感じもした、だがそれは所謂『姫』の美とはまた全く別のもの、そう思えた。
だが、あの女性は違う。
リディノや『西の姫君』や、いや、夜会に集まるラズーン周辺諸国の姫君の誰と並んでも、決して引けはとらぬだろう。ラズーンの品で身を飾れば、溜め息ばかり零れる中を歩くことになるのだろう。
輝く大輪の花ではない。けれど誰もが、側で花開く様を愛しみ味わい楽しみたいと願う、そういう女性の極みとも言える美しさだ。
(ひょっとすると……アシャ兄さま、も)
「しかし珍しい」
ジノがほとほと信じ難いと言いたげな声で繰り返す。
「あのような熱烈な恋歌を、一体誰に謳っておられるのやら」
「恋歌?」
思わずぎくりと振り返る。
「あれは恋歌なの?」
「はい」
ジノは頷き、歌詞を諳んじるように目を閉じた。
「許されぬ恋をしたが、お前を諦め切れない。いっそお前を攫って、世の終わりまで逃げ続けてしまおうか。そうして二人を引き裂く運命を欺いてしまおうか」
低い声で呟いて目を開ける。
「というような意味の詩です」
「そ…う…」
ならばアシャは許されぬ恋をしていると言うのか。
あのアシャが、想いを告げられぬような恋に苦しみ、詩に気持ちを吐き出していると言うのか。
(一体、誰に)
脳裏に閃いた、夜闇をほのかに照らすようなレアナ姫の笑顔。
(まさか)
「姫さま?!」
ジノの声にも振り返らず、リディノは身を翻して、花苑の中に続く扉を抜け、小道を走り出していた。
「お前を連れて逃げよう
月と星の谷間を潜り
天の流れを泳ぎ渡る
彼方の異国へ逃げ続けよう…」
立風琴(リュシ)の音が激しくかき鳴らされる、許されぬ恋人達の逃避行のように、極める甘い切なさに砕け散る悲鳴のように。
眉を潜め、目を閉じて、アシャが腰を降ろしているのは、かつてユーノが凶剣に倒れたその場所だ。
あの日ラフレスは紅に染まり、愛しい少女は連れ去られて遠く、突き立てられた剣だけが残ってアシャを嘲笑っていた。
(いつもいつも、ユーノは俺の腕から奪われていく)
目を閉じたまま、胸に砕けた傷みに顔を歪めた。
愛しい。
愛しい。
こんなにも、あの娘が愛おしくてたまらない。
けれど、その想いを告げるには、既に遅すぎる。
アシャの想いは、ユーノの命と引き換えに、あの『沈黙の扉』の中に封じ込められてしまった。
「お前を連れて逃げよう
草の波を蹴立てる白馬に
行く手を照らす金の星かけて
この世の果てまで逃げ続けよう…」
あの雨の日、ユーノが気づくまで、昏々と眠り続ける彼女を抱いて横になりながら、額に垂れかかる熱にうだった髪の下で、幾度も考えていた、このまま連れ攫ってしまおうか、と。
だがその度に、ラフィンニのことばが耳に甦って、最後の決断をためらわせた。
(ユーノには、誰か、愛する者がいる)
自分の腕に包み込んでしまえるほど華奢な体には無数の傷痕、それはユーノを見えない鎖で縛りつけているかのように、滑らかな肌に白々とした刻印を残している。
その傷痕の理由を、アシャは半分も知らない。知り合わぬ前のものは我慢ができるとして、付き人として側に従いながらも、なおも知らぬ傷が増えていくという意味に、いいようのない苛立ちが広がる。
(俺が知らないところで、お前は繰り返し裂かれ、傷つけられ、倒れ込む……けれど、お前は怯まない、その度に何度も立ち上がり、再び渦中に飛び込んでいく。その気力の源には一体、誰の姿があるんだ…?)
唇の柔らかさは知っている。うなじの細さも、手足のしなやかさも、強く抱き締めて跳ね返る弾力や抵抗される切ない甘さも、十分味わったことがある。
(けれど)
ユーノの心だけがわからない。
たじろがぬ心の強さの源泉は、きっとどこかにあるはずなのだ。遠く離れたセレドの家族や民の安楽への願い、ラズーンへの忠誠、レスファートやイルファ達仲間への思いやり、そういったものより、もっと激しく強く、ユーノを支える何かの存在が。
(お前の体はここにあるのに)
眠り続ける体とは別に、ユーノの魂は誰かとともに遠く彼方を駆け去っている。たとえ、アシャが思いのままに、ユーノを組み敷いて蹂躙したところで、そうやって彼女を連れ攫ってしまったところで、ユーノの心は、何よりも欲しいその魂は、きっと、決してアシャの手には入らない。
それでも。
(このままお前を攫っていきたい)
そう叫ぶ心を宥めるのに、どれほど克己心を振り絞ったか。
「お前を連れて逃げよう
この両腕に抱きかかえ
この熱い胸に抱き締めて
時の境を逃げ続けよう
お前を連れて逃げよう……」
(ユーノ)
ツィーン、と高い一音の余韻、最後の旋律に快楽を極める瞬間の解放を重ねて、アシャは口を噤む。弾む呼吸を呑み込んで、内側を駆け上がり跳ね散る甘い波に堪えて、しばらく息を詰める。
静まり返った邸内には、人の声さえ聴こえない。最近いろいろと物騒な出来事ばかりが続いていた日々、その中にある空白のような平和な憩いに心を寛がせ、皆、うたた寝でもしているのだろう。
身動きしないアシャの側を、ブーコの羽鳴りが掠めていく。
「…ふ」
沈黙していたアシャは唐突に唇を綻ばせた。どこか甘く、どこか自嘲する気配の苦笑を浮かべる。
(どうしようもない、男というものは)
思い定めて、ゆっくりと目を開けた。
眩い陽射しの中、ラフレスが盛りを過ぎて咲き崩れようと艶を競っている。溢れかえる白の誘惑の彼方に、一瞬、花嫁衣装を身に着けたユーノの姿が過っていく。
(あんなことで、お前を俺のものだと決めてしまっている)
あえて花嫁衣装を選んだのはアシャだ。ユーノを広間に連れていきながら、この先何が起ころうと構わないと思っていた。
(俺のために着てくれるとは限らないのに)
むしろ、他の男のために装う可能性が高い、その運命に挑戦するような気持ちがあったのも確かだ。
奪えるものなら奪ってみろ。見ろ、俺はこの位置から引かないぞ。
幼くて向こう見ずな宣言、それが後々、まさか『泉の狩人』(オーミノ)の干渉によって覆されるとは思いもしない、ユーノの心を思いやることさえない、自己中心的で傲慢な男の雄叫び。
それはつまり、天誅だったのかも知れない。
ユーノにはふさわしき出逢いが既に定められており、それはアシャなど及ぶべくもないのだと、何度も示されたのに納得できず、歯ぎしりする前に認めることさえなく、ただひたすらに突っ走ってきた男に下された鉄槌。
それでも。
アシャは立風琴(リュシ)を置き、ごろりと寝転がった。
(結局、俺はユーノを追い続けるんだろう)
それこそ、他の男の所へ一心に駆けて行っているのかも知れないユーノを。その身の無事を願い、その心の安寧を祈り、ついに辿り着く、その瞬間に歯噛みする自分の姿を嘲笑いながら。
(止められないんだ)
請い伸ばす手が止まらない。
振り返る視線が外せない。
笑って見送って欲しいと望まれたなら、ユーノがアシャに望むものがそれしかないのなら、迷わず差し出すことがわかっている。
(俺を望んでくれ、ユーノ)
たった一本の指でもいい。
そのためなら、残り全てを犠牲にしても、ユーノの元に届けよう。
確かに想いを告げるのは封じられたが、想いそのものを封じられたわけではない、と自分に言い聞かせかけて、はたと我に返り、くつくつ嗤った。
(本当に、どうしようもない、男というものは)
無理もない、そうやって人は生き残ってきたのだ。
女という海の中に、自分を切り刻んで注ぎ込み、未来への時間を手に入れて来た。
(ただ、俺は…)
ゆっくりと思考が霞んでくる。ここ連日の疲労は、荒れ狂う心が静まっていけば、見る見る肉体の支配を取り戻す。四肢が重くなりだるくなり、地面に自らが吸い込まれていくような感覚の中、アシャは一瞬眉を寄せる。
(俺は…その繋がりの中には……最初から、いなかった…)
ならば、どこへ還ればいいのだろう。
幼い頃からの問いが柔らかに繰り返される頃、アシャは寝息を立て出した。
「……」
アシャが眠りに落ちて少し後、リディノはラフレスの花影からそっと顔を覗かせた。
「アシャ兄さま…」
小さく呟いて、果実のようなと評される唇をきゅっと結ぶ。
ジノを置いて駆けつけてきて、アシャが誰に恋歌を歌っているわけでもないと知って、一時はほっとしたものの、こっそり様子を窺ってしまったので出るにも出られなくなり、しばらく身を潜めて、陽射しの中で眩く輝くアシャの姿を見つめていた。
キャサランの金細工のように輝かしい髪。奥深い山で取れる紫水晶のような鮮やかで深い瞳。男性にしてはやや色白で、華やかな宮廷衣装を身に着ければ、姫君達よりも艶やかな姿。端麗な顔立ちは確かに女性的ではあるものの、響く声は柔らかく低く、耳を澄ませていれば天上の楽音もかくやと思われる豊かさ。甘く優しい仕草でダンスを誘い、この指先を導いてくれる巧みさ、すがりつけば、しなやかな体がしっかりと抱きとめてくれる確かさと温かさ。
(望まない娘なんて、きっといない)
だから、アシャは誰を想っても苦しい想いなどするはずがない、そう思っていた。
なのに、花の影で見つめていたアシャの横顔は、これまで見たどんな時の顔より情熱に満ちて、薄紅を帯びた頬に浮かんだ表情は官能的とでも言うのだろうか、見つめていると、体の奥が切ない波に疼くように思えた。やや掠れた声を無理に押し上げるような声音は、いつまでも聞いていたいような、けれど二度と聞きたくないような響きでこう叫んでいた。
お前が、欲しい。
「……」
ごくり、と唾を呑み込んで、リディノは静かに脚を踏み出す。
あの声は、何だろう。
誰に向けて、叫ばれたのだろう。
(一体,誰を想って、歌っておられたの?)
これまで、あれほど熱を込めてアシャが詩を歌うのを聴いたことがない。
もちろん、今までリディノに向かっても歌ってくれたことはある。どれも優しく甘美な声だったが、今さきほど聴いた歌と引き比べればはっきりとわかる。
あれらはどれも他人行儀だった。整えられ飾られ、丁寧に奏でられてはいるが、心が噴き出し溢れ落ちるような激しさは微塵もなかった。
(兄さま…)
間近まで近づいても、よほど疲れているのだろう、アシャは目を覚ます気配もない。そろそろと薄桃色のドレスに包まれた膝をつく。
(アシャ…)
「ん…」
さすがに振動が伝わったのか、アシャが軽く眉をしかめて顔を背けた。が、すぐにほわりと頼りなく口許が緩み、聡明そうな額に乱れた髪の房のせいか、無防備な子どものような寝顔に戻る。
以前、アシャはリディノにこう話してくれた。
『戦士が眠っている時に近づいて、相手が目を覚まさないとしたら、それは彼がリディノに心を許している証拠だよ』
「……アシャ…兄さま…」
リディノは微笑んだ。
先ほどまでの不安が、空を漂った薄雲のように消えて行く。
何を心配しているのだろう。アシャが名だたる剣士であることは間違いない。そのアシャが、今こうしてリディノがこれほど近づいても、目を開くことさえない。
それはそれほどアシャがリディノに心を許しているということではないか。無限の信頼がここに示されているではないか。
じっと見下ろしていたリディノの目が、ふと、アシャの唇に止まった。薄く開かれた唇は、つやつやとした薄赤に染まっている。
アシャの髪に触らないように、そっと両手を地面についた。そろそろと顔を降ろしていく。目を閉じ、微かな呼吸を目当てに、轟くように打つ胸の鼓動を堪えながら、唇を近づけていく…が。
「…ゆーの…」
「っ!」
アシャの唇が唐突に動き、掠れた声が零れてどきりとした。目を見開く、その耳が拾ったことばの意外さに、思考が追いつかない。そのリディノを嘲笑うように、アシャは再び、優しい不安げな声で繰り返した。
「…ユーノ……そっちへ……行くな…」
「…アシャ……」
聞いたことのない声、だが、その声色に感じ取ったのは、紛れもなく、さっきの恋歌に含まれていた切ない、愛しい、熱っぽい懇願。
(まさか)
視界が衝撃に眩み、歪む。
否定しようとする心を嘲笑う確信。
「、う…」
ドレスの裾がアシャに触れないようにかろうじて捌いて立ち上がり、リディノは走り出しながら漏れかけた嗚咽を必死に掌で押さえ込む。
(ユーノ? ユーノ? 兄さま、ユーノ、そう、呼ばれたの?)
信じられない。
ユーノ、あのユーノが、アシャの想いの相手だと言うのか、あの、あの、あの、傷だらけの、小汚い姿で現れた、可愛らしさとも美しさともほど遠い、男のような、あの子が。
(ユーノ? どうして? どうしてなの、アシャ兄さま?)
心の中で繰り返しながら、花苑を抜け、回廊を駆け、部屋の中へ飛び込んでいく。
「姫さまっ?!」
うろたえたようなジノの声を背中に、ベッドへ身を投げ出した。両腕で顔を覆い、体を竦めて踞る。心の中に、今まで感じたことのないどす黒いものが蠢いている。
(レアナ姫ではなくて、ユーノなの? 私ではなくて、ユーノなの?)
なぜ? なぜ? なぜ?
「姫さま?」
「来ないで!」
自分の声がひび割れていた。
「姫さま」
「来ないでジノ! 私きっと、とても嫌な顔をしているわ!」
そうだ、この感情を知っている。今まで知らぬふりをしてきたが、幾度も感じてきたものだ。アシャが美しい姫君達と寄り添うたび、夕闇の中をそぞろ歩いたり、月光の中で逢瀬を重ねたと聞くたび、胸の片隅に燻りながら体の内側を這い昇ろうとしてきた闇。
「姫さま!」
ジノは一旦は引いた気配だったが、リディノの悲鳴じみた声がただ事ではないと察したのだろう、すぐに駆け寄ってきてリディノを覗き込んだ。
「姫さま! どうなされたのです、姫さま!」
「…ジノ……ジノ!」
呑み込まれるわ、私。
「ジノ……私…」
助けてちょうだい、こんなもの、私は要らない。
ひくひくとしゃくり上げながら、リディノは顔を上げた。自分をずっと守ってきてくれた顔が、温かな心配を浮かべて見下ろしている。
同じような心配を、おそらくはアシャもユーノに向けているのだ、この、自分ではなくて。
そう思った瞬間、溢れる涙が止まらなくなった。
「ジノっ!!」
「姫さま……姫さま……」
しがみついた胸は震えていた。それがジノがどれほどリディノを案じているかの証明に思えて、リディノは身悶えるように体を揺さぶった。
「私…私……私……っ」
何が間違っていた? ちゃんとラズーンでアシャを待っていた。何が間違っていた? アシャの安らぐ所を整え、守り、美しく装っていた。何が間違っていた? 無理を言わなかった、我が儘を訴えなかった、だだをこねなかった、アシャを困らせたことなどないはずだ。
なのに。
なのに。
愛情を全て受け止めるべく、あらゆる準備を整えてきた自分に、この仕打ちなのか。しかも相手はレアナではない。至上の美姫ではない。ごく普通の娘でさえない。傷だらけの、教養もない、剣を振り回し、人を殺すような娘。リディノとユーノの最大の違いは、ただ。ただ。
「……ただ……一緒に居た…だけだわ……っ!」
引き裂かれたような自分の声に、そっと体を撫でてくれていたジノの手がぴたりと止まる。
やがて、密やかな声が囁いた。
「……大丈夫ですよ、姫さま」
「…っう」
「ご心配ごとはジノにお任せ下さいませ」
力強い口調にリディノは瞬く。嵐に揉まれた小舟のようだった心が、ゆりかごに揺られるように、少しずつ治まってくる。
「ジノ…」
「きっとうまくやってご覧にいれますから」
「……ジノ…」
そうだ、とリディノは慰められつつ思う。
何を取り乱しているのだろう。
彼女はラズーン四大公、『銀羽根』率いるミダス公の一人娘、言わば、統合府ラズーンの聖なる姫なのだ。そして、アシャはラズーンの第一正統後継者。その称号(クラノ)を負う彼が、辺境の小国の、ことさら目を惹くわけもない姫に魅かれるわけがない。
「……ジノ…」
リディノは小さく頷いて安堵し、ジノは再びリディノの体を撫で始める。
薄く開いた戸口に一つの影が動いた。
その影が静かに歩み去るのに二人は気づかなかった。
ましてや、その影が視察官(オペ)ジュナ・グラティアスであることや、その顔に浮かんでいた、およそラズーン支配下(ロダ)にあるまじき、禍々しい笑みに、気づくはずもなかった。
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