開かない箱

segakiyui

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 みやは普通の女子高校生だと言っている。
 けれども、ときどきどきりとするほど容赦のないところがあって(それは、保護され庇われている学生が身につけられるほど甘いものではなく)、僕はそのたびに、みやの本当の姿を感じ取ってこわくなる。
 ひょっとして、このグループの中で現実にこれという拠り所を持っていないのは僕だけなんじゃないのか、と。
 まるで、それを裏付けるように、オオトモの声が響いた。
『酸、あるいは塩基性の腐食剤』
 いつもへらへらとして軟派ぶっている奴にしては、ひどく現実的な声だった。
 それを感じたのは僕だけではなかったらしく、カタミチがどこかからむような口調で、
『へえ、オオトモ、まともなことも言えるんだな』
『ばかにするなよ、これでもT大の大学院……おっと』
『へえ、オオトモ君って、T大だったの。知らなかった』
 桜子が心底感心したような声をあげて、僕は落ち込んだ。
 そんなに順調に人生やっている男が、こんなところへ電話してんじゃねえよ。
 心の中でぼやいてみせる。
『どうして、ここへ電話する気になったの?』
 みやの声がした。
 みやもオオトモに興味を持ったのか、結局この世の中は力のある奴に有利にできているのか、と僕はますますがっかりした。
『教授にこきつかわれ、学生にからかわれ……院生なんていいもんじゃないさ』
 オオトモは苦々しい口調で吐き捨てるようにつぶやいた後、
『それより、さあ、今話してるのはボックスのことだろ? 続きを聞こうよ』
「もちろんだ」
 僕は我に返って急いで割り込んだ。
「ボックス、すまない、話を続けてくれないか」
 だが、ボックスの返事はない。
「ボックス?」
『切ったんじゃねえのか、別の話が始まったんで』
 カタミチが言った。
「ああ、そうかもしれない」
『だけど、今の話。何か変よね』
 みやがゆっくりと言った。
『海底から引き上げられた小箱か。中に何が入ってると思う?』
 オオトモが尋ねる。
『お金』
 打てば響くように答えた声に、瞬間みんなが口をつぐんだ。
「え? 今の、桜子?」
 ややあって、みやが尋ねた。
 それほど、その声はいつもの桜子らしくなく、切羽詰まって聞こえたのだ。
『金って、おまえんところにゃ、腐るほどあるんだろうが』
 カタミチがあきれたようにまぜっ返す。
『え……うん……そう、そうよね……ごめん、あたし、もう切る。じゃ、ね』
『何だよ…感じ悪いな……俺ももう切るぜ』
『じゃ、ぼくも』
 急にばたばたあわてたように三人がラインから離れ、僕はみやと二人で残された。
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