『ラズーン』第三部

segakiyui

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7.国境(2)

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「きゃ…」
「レス!」
 危うく剣に薙払われかけ、首を竦めたレスファートをイルファが引っぱり寄せる。
「つっ!」
 一瞬遅く、レスファートの滑らかな頬を切っ先が擦った。真紅の筋が浮かび上がり、つうっと紅の糸を引く。
「てめえらあっ!」
 ガシィッ!
 目を剥いたイルファは、怒りに任せて相手を剣でぶん殴った。呻き声一つ立てずに絶命し倒れていく男、その向こうを見やったレスファートがいきなり頓狂な声を上げる。
「ユーノ!」
「レス?!」
「ユーノ!!」
 ぱあっと明るい笑みを浮かべて走り出そうとするレスファート、その先を見たイルファの視界に、地響きをたてて押し寄せてくる竜の群れが映った。あれこそは、噂に聞くラズーン守護の野戦部隊(シーガリオン)と呼ばれる隊、しかもその先頭付近、黒髭の男の隣に、短い焦茶の髪を乱した小柄な少年が馬を駆っている。きっとこちらへ向けた瞳は黒、表情が以前より険しいものの、それは紛れもなく探し求めたユーノの姿だ。
 相手も追い詰められたレスファートとイルファの姿を見て取ったのだろう、頷いて速度を上げ、見る見るこちらへ駆け寄ってくる。
「ユーノ! ユーノ!」
 レスファートが歓声を上げて無鉄砲に走り寄ろうとするのに、慌てて手近の敵を片付ける。少年の目にはユーノしか入っていないのだ。
(相変わらず凄い腕をしてやがる)
 これほどの混戦の中を楽々と切り抜けてくるユーノに、イルファは思わず満足の笑みを漏らす。
(たいした奴だ)
 離れている間にまた一層、動きに切れが増したんじゃないか。
「ん?」
 だが、その視界の端にアシャの慌てた表情が飛び込んできて、眉を寄せた。コクラノ、ジャルノン、二人の男をあしらいながら、アシャが何かを伝えようとしている。
(何だ?)
 レスファート? 確かにそうだ。レスファートを何とかしろと言っているようだ。
(どういう意味だ?)
 しきりと合図を送ってくるが、こちらも、駆けつけてくれている味方の軍勢を頼りにかろうじて保っている状態、飛び出そうとするレスファートを庇うので手一杯だ。そうこうしている間に、ユーノは二人の前にやってきていた。
「大丈夫か?!」
 ヒストの上から二人を見下ろす。
「ああ! 久しぶりだな、ユーノ」
「久しぶり?」
 思わずほっとして笑いかけたイルファに、ユーノは訝るような視線を向けた。イルファの側に居るレスファートには目もくれない。
「どういうことだ?」
 不審そうに問い返されて、思わず苦笑いする。
「どういうことって」
 悪い冗談だぞ、と言いかけたイルファは、レスファートがびくっと身を強張らせたのに気づいた。少年を振り返ると、今の今まで浮かべていた、この上なく幸せそうな表情を失っていた。顔色は蒼く、いつもよりなお色素を失ったように白々としたアクアマリンの瞳が、馬上のユーノを信じられぬように見つめている。
「ユー……ノ…?」
 レスファートは掠れた声を絞り出した。
「うそ…だよ…ね……」
「?」
 ユーノは訳がわからぬように、ようやくレスファートへ目を向けた。気が逸れたと思えたのだろうか、背後の野戦部隊(シーガリオン)が押さえ損ねたモス兵士の一人が飛びかかったのを、瞬間振り向く動作で防ぎ、あっさり相手を敗退させる。そのまま、再びレスファートを振り返ったが、いつものような笑顔は見せない。ただただ不審げな、不安そうなレスファートを見つめる視線の違和感に、イルファもようやく気づいた。
「ユーノ?」
「うそ……で…しょ…?」
 レスファートがもう一度、堪え切れぬように問いかけるのに振り向く。
「レス、どうしたんだ?」
「ユー…ノ…」
 きゅうっとレスファートの眉が切なげに寄った。瞳が見る見る曇り、白くなった唇が震え出す。
「そ…んな…」
「おい! レス!」
 異常な様子に思わず少年の肩を掴む。とたん、ぐらりと揺れた相手の体を危うく支える。レスファートはユーノを食い入るように見つめている。信じたくないことを見ないために、より心の奥深く入っていくような視線だ。きょとんとした顔のユーノと、瞳一杯に涙を溜めているレスファートを、イルファは交互に見比べた。
(何だ?)
 聞こえないことばで会話しているようなユーノとレスファートの間に、何が起こったのかわからない。
「星の剣士(ニスフェル)!」
 戦い続けている野戦部隊(シーガリオン)から呼ばれて、ユーノは振り返った。ユカルを始めとする野戦部隊(シーガリオン)が楽な戦いをしているのではないと見て取ったのだろう、
「アシャの側に居てくれ! すぐに加勢に戻る!」
 言い捨ててあっさりと身を翻す。あり得ない振舞いにイルファも呆気にとられた。
「おい! ユー…!!」
 呼び止めようとして、レスファートの体から力が一気に抜けていくのにはっとする。
「レス?!」
「…い…ない…」
「え?」
「ユーノ……心の…中……ぼく……いな…い」
 俯いたレスファートの目から涙が零れ落ちて散る。
「どこ……にも……ぼく……い…ない……」
「レス!! おい!…っ!」
 イルファの背筋を寒くするような虚ろな口調で呟き、レスファートはイルファの腕に倒れ込んだ。

「はっ……っ!」
 ヒストを駆って戦場のただ中へ戻ったユーノは、アシャの姿を認めて思わず息を呑んだ。
(凄い)
 短剣たった一振りで、コクラノとジャルノンを相手にしている。円弧を描く手足、緩やかな舞踏を思わせる動きは、よく見れば全て細かく計算されていて、どこにも死角を作らず、隙も生み出さない。鮮やかに空を切り裂いていく金の短剣は、一見、荒々しく凄まじい破壊力を持っているように見えるコクラノとジャルノンの剣を、一瞬さえも近づけない。
(もし、この世に戦神がいるとしたら、きっとアシャのような人だろうな)
 眩くて、思わず目を細めて見惚れたユーノは、次の瞬間殺気を感じて身を伏せた。パサッ…と一房の髪が流れて落ちる。視界の端に動いた人影に、ユーノは叫んでヒストの向きを変えた。
「卑怯だぞ! ジャントス! それがモスに名高いジャントス・アレグノのやり方か!」
「卑怯…」
 相手はくっくっくっ、と妙に嗄れた笑い声を上げた。
「卑怯などということばは、我らのことばにはない、星の剣士(ニスフェル)」
 ジャントスはゆっくり唇の両端を吊り上げた。禍々しい気配を満たして剣を構える。その背後に、黒く重い霧のようなものが漂っているのに、ユーノはぞくりと身を震わせた。
(何だ?)
 この世ならぬもの、だが、決して見知らぬものではない、その気配。記憶にはなかったが、それは自分に命の危険をもたらすものだと知っていた。同時に、根拠などないのに、この戦いに負けるかも知れないという恐怖が湧き起こる。なぜなら、
(剣に隙があるんだ)
 心の中で誰かのことばが弾けた。
(私はそれを埋め切っていない)
 だからこそ、殺されかけたんだ。
(あの城で……あの湖で……あの荒れ地で…)
「え…?」
 がつり、と後頭部を殴られたような気がした。一瞬視界が霞んでぶれたような奇妙な衝撃。心のどこかに穴があって、そこからポロポロと零れてくるものがある。
(城? 湖? 荒れ地?)
 そんなところへ遠征しただろうか。
(どこ……?)
 覚えがない。
(私…は……私は?……)
 踵から崩れ落ちていくような不安に瞬きする。
「覚悟!」
 一瞬の隙を、ジャントスは、いや、その背後の黒い霧は見逃さなかった。翻った剣が、ユーノが咄嗟に反応し切れない経路を生き物のように襲ってくる。
 ガッ!
 激しい音とともに、かろうじてその一撃を受け止めたものの、ユーノの頭は混乱し切っていた。
(この次、相手は腹を狙ってくる)
 何かが囁く。
(前もそうだった、あの時は腹を抉られて)
 激痛に崩れれば、鮮血が乾いたバルコニーと大地に散った……。
(前…?)
 いつ?
(私…?)
 どこで?
「あ…ぅ…」
 ギチギチと剣が鳴った。必死に支えている右肩に痛みが溢れる。引き千切られるような激痛とともに、生温かなぬめりが肩を濡らし始める。骨がきしみ、筋肉がたわみ、傷が新たな血を吐く。
(右肩が…)
 剣を構えたまま、逆らい難い圧力で体から削ぎ落とされていく感覚。
「く…っ」
(誰か…助……けて…)
 心の片隅がついに小さく悲鳴を上げた。が、次の瞬間、
(何を言ってる! それでも、セレドのユーノか!)
 厳しい檄が飛んできた、でも、
(だめ…だ…)
 ぐらりと体が揺らめいた。ヒストの背から滑っていくのがわかる。目の前が一気に暗くなる。
「!」
 だが、体はがっしりと中空で抱き止められた。薄目を開けると、ユーノを抱えた人間はいつの間にかヒストに跨がって、彼女の代わりにジャントスと剣を交えている。
(誰…)
 しっかりした腕だった。ユーノを胸に抱きとめ、しかも柔らかく包んでくれている。
「く…くそっ」
 ジャントスの歯噛みする声が聞こえる。何とか体を動かして、自分の剣を探そうとした腕は、そっと、しかし断固として押さえられた。
「じっとしていろ……俺がいるから大丈夫だ。守ってやるから…」
 低い声が胸から直接響いてくる。
(アシャ…)
 そのことばもどこかで聞いた気がする。
(守ってやる……本当……? ……姫として…守って…くれるの…?)
 体から力を抜く。それでも、腕はユーノを支え続ける。
(アシャ…)
 小さく息を吐いて安堵する。
(私……このままで……いても……いい……?)
「ぐっ…あっ……ああっ!!」
 ジャントスの絶叫が響いた。どうっ、という重い地響きが続く。ジャントスが倒れたのだろう。
「くそっ……退けえっ! 退けえーっ!!」
 切羽詰まったモス兵士の声がした。目を開け、体を起こそうとするユーノを、アシャがやんわりと拘束する。
「動くな……軽傷じゃないんだ」
「うん…」
 頷くユーノにアシャは深い色の目で覗き込んでくる。
「コクラノ…は?」
「…シートスがケリをつける」
 厳しい表情になって言い放ったアシャは、すぐに瞳を和らげた。
「ばか」
 甘い声で囁く。
「こんな怪我で動く奴があるか」
「ごめん…」
「ほんとにお前ときたら…」
 小さくついた吐息が睦言のように切なげに聞こえた。
「こうして永久に抱き締めててやろうか…? もう無茶をしないように」
「アシャ…」
 蕩ける声音、耳元で呟かれて、こちらの胸まで甘くなる。極上の酒を体中に注がれたようだ。ユーノは目を伏せて温かな感情に浸る。包まれて温められて、心が溶けていく……溶けて小さな流れとなり、アシャへアシャへと流れていく……。
「星の剣士(ニスフェル)!」
「ん…」
 ユカルの声がした。慣れ親しんだ、平原竜(タロ)の駆け寄ってくる音も。瞬きするユーノに、アシャは無言で手を添えて体を起こしてくれる。
「大丈夫かあっ!」
 すぐ側まで駆け寄ってきたユカルは心配に顔を歪めている。
「大…」
 丈夫、と続けようとしたユーノは、そのユカルの向こうのコクラノ達に気づいた。踞り身動きできないようなジャルノンとは対照的に、石突きを地面に突いて仁王立ちしたコクラノが、今しもその槍を持ち上げ、ユカルの背中めがけて投げつけようとしている。
「コクラノ、貴様っ!」
 まっすぐに駆け寄っていくシートスの叫びとともにその手から槍が飛び、寸分違わずコクラノの胸を貫いたが、槍は既にコクラノの手を離れている。
「ユカル…っっ」
「星の剣士(ニスフェル)!!」
「ユーノ!! 」
 迷う間もためらう間もなかった。アシャの腕を離れ、渾身の力でユカルを突き飛ばしたユーノの右肩を、飛んできた槍が掠める。
「あ、うっ!」
 悲鳴を上げて空に投げ出した体を、ユカルとアシャが伸ばした腕が受け止める、その瞬間、体を駆け抜けた鮮烈な痛みと共に、頭の中に閃光が走った。
(あ、あ、あ!)
 今までの出来事が絵巻物のように一気に巡る。所々に空いていた小さな黒い穴が裂かれるように開き、そこから一気に記憶がなだれ込んでくる。
(私…私は…)
 視界に入り交じる光景、脳裏を駆け抜ける幻、アシャ、野戦部隊(シーガリオン)、ユカル、星の剣士(ニスフェル)………ぐるぐる回りながら右肩の痛みを増していく。
「……ーノ! ユーノ!!」
 どれぐらい我を失っていたのだろう。
 『自分の名』を呼ばれているのに、我に返る。
「う…」
 瞬きして見上げる真上にアシャの顔、そしてその横に、見慣れてはいるが、遥か遠い昔の知り合いのように思える顔……野戦部隊(シーガリオン)の物見(ユカル)が激しい口調で吐き捨てる。
「畜生っ! コクラノの奴、最後の最後まで見苦しいっ!」
「大丈夫か?」
「ユカル……アシ……!」
 苛立つ二人を宥めようと一人ずつの名前を呼びかけ、ユーノはぎくりとした。
「ユーノ?」
 不審そうにアシャがユーノを覗き込んでくる。
 鮮やかで華やかな、その、美貌。
(思い出した……)
 熱い波が見る見る心に広がっていく。
 思い出したのだ、『すべて』。
(『姉さまの』、アシャ)
 傷ついた自分の体を抱えてくれている人の名前はアシャ・ラズーン。
 ラズーンの第一正統後継者であり、視察官(オペ)の中の視察官(オペ)であり……幾度もその名を呼ぼうとした人であり……結局はいつもいつもその名を呼べなかった人、であり………セレドのレアナの想い人……であり…………。
 右肩から再び激しい波が広がって、心を揺さぶっていく。
 体が重い。熱っぽく燃え上がっていく視界が潤む。
(私は……ユーノだ)
 レアナの妹、セレドの第二皇女、『銀の王族』。
(ユーノ……なんだ…)
 ふ、と目を閉じた。呼吸が荒く乱れていくのがわかる。ついに限界を越えてしまったらしい。
「ユーノ!」
「星の剣士(ニスフェル)! しっかりしろ!」
「ユカル、天幕(カサン)の用意を頼む!」
「わかった!」
 慌てたように、平原竜(タロ)が側から駆け去っていくのをぼんやり感じた。
「ユーノ」
 低い声でアシャが囁き、そっと髪を撫でてきた。思わず体を強張らせるユーノに手を止める。
「傷に障るか?」
「う…ううん…」
 首を振り、ユーノはきつく唇を噛んだ。ことさら肩の痛みに意識を集める。
(アシャ…)
 揺れる心が呻く。そうしなければ、口に出してしまいそうだった、思い出さねばよかったと。
(アシャは………レアナ姉さまの想い人だった……んだ……)
 それでも打ち明けてしまいたい。
 強烈な衝動が心を揺さぶる。
(アシャ……好きなんだ…)
 ことばが胸から唇まで膨れ上がり、目を見開いた。アシャが心配そうに自分を覗き込んでいるのに気づく。
 打ち明ければ、この温かな目を失ってしまうかも知れない。
(でも…こんな風に抱かれたままなんて……苦しすぎる)
 いくら動けないとはいえ、これでは一種の拷問だ。
(でも……でも)
 決心がつかずに目を逸らせ、ふとアシャの腕に一筋紅が走っているのに目を止めた。きりり、と心の奥が一気に硬直する。
(傷を…負わせた?)
「ア、シャ…」
「え? ああ、大丈夫だ。かすり傷だ、お前の肩に比べれば、な」
 軽く片目を閉じて笑うアシャに胸が詰まった。
(打ち明けてどうする)
 ユーノは『運命(リマイン)』だけではない、カザドにも狙われている。
(アシャが優しいから……守ってくれるからといって……打ち明けて? 引き込むのか? 私の戦いに?)
 そしてまた、こんな風に血を流させるのか?
(嫌だ)
 強い想いが胸に砕けた。
(あなたが傷つくぐらいなら、私が血を流した方がいい。あなたが苦しむぐらいなら、私は……どこかの闇に沈んだ方がいい)
 きつく噛み締めたせいで唇を噛み切ったのか、鉄の味が口の中に広がった。
(ご…めん……アシャ…)
「ユーノ?」
 訝しげなアシャの顔を見上げても、声にならない。
(私のせいで……傷つけた……守れなくて……ごめん……)
 そろそろと俯いてしまったユーノの顎を、唐突に掴んだアシャがそっと押し上げる。
「どうした? 傷が痛むのか? ……ああ……唇…切ってるな…」
 惑うような声、顎に当てられていた指がゆっくりと唇を拭っていく。走った痛みに顔を引き攣らせたユーノを、アシャは奇妙な表情で見つめた。
「ユーノ…」
「……ん」
「……こんな時になんだが…」
 アシャは珍しく口ごもった。瞬きを繰り返す、紫の目が濡れているように艶を帯びる。
「……これ以上、お前を放っとくと……本当にどこかへ行ってしまいかねないから…」
「…?」
 口調は柔らかくて熱っぽい。
 荒く呼吸を繰り返しながら、ユーノはそっと首を傾げた。アシャが何かを伝えようとしている、けれど、何を言いたいのかがわからない。紫の瞳は真剣な色の中に、妙に心を震わせる光を含んでいる。
「ユーノ…いや、ユーナ・セレディス」
 本名を呼ばれて瞬きする。
(何、だろう?)
 もう旅は続けたくないと言うのだろうか。もうユーノの側にいるのはごめんだとでも言うのだろうか。
「お前……その……もし、よければ、だな……その……俺の」
「アシャ! 天幕(カサン)の用意ができたぞ!」
「っ」
 ユカルの叫びにアシャは複雑な表情でことばを途切れさせた。そのまま少し迷っていたが、やがて自分に言い聞かせるように、低く呟いた。
「手当が先だな」
(何を…言うつもりだったんだ?)
 ユーノは閉じられたアシャの唇をじっと見る。
(俺の、の後は…?)
 胸を過ったのは、優しく甘い空想。
(アシャの……付き人として、ずっと側に、とか…)
「くっ…」
 すぐに自分の愚かさを嗤った。
(いいかげんにしろ、ユーノ)
 自分を詰り、目を閉じる。
(ただ今は、傷に甘えて一時の休息を取るだけだ)
 もう少しだけ、もう少し気力が戻るまで。
 繰り返し自分に言い聞かせて、ユーノはきつく口を噤んだ。
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