『ラズーン』第三部

segakiyui

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12.創世の詩(うた)(2)

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「ん?」
 話を止めて、ユーノは耳を澄ませ、窓の外を見やった。
「立風琴(リュシ)だね」
「…」
 ハイラカの声に頷いて、花苑の中に立つアシャとリディノを見つめる。
 紫の長衣、同色の飾り紐で髪を後ろでひとまとめにしただけでも、目にしみるほど美しいアシャの隣に、深緑の衣で同じような姿をしたリディノが、ほっそりとアシャに甘えるように立っている。まとめ方を変えてはいるものの、アシャより淡い金髪が肩に背に白い額に乱れて、衣の色が濃いだけに一層引き立って眩く見える。
(いいなあ)
 胸の中でことばが零れた。
 たとえ、アシャに好きだと言ってもらわなくともいい。レアナの妹でも、セレドの第二皇女でも、『銀の王族』という繋がりだけでもいいから、あんな風にアシャに甘える時間が欲しい。ほんの少しだけ、アシャの側で目を閉じて、体を休めていたい。
 アシャの詩が響いてくる、甘く切なく、遠い夜の昔語りのように。
(そういえば…夢を見ていたっけ)
 眠り続けていた五日間、何かとてもいい夢を見ていた。全部が全部いい夢というのではなかったのだが、苦しさが極限に達して、これ以上は耐えられないと心が悲鳴を上げて崩れ落ちていこうとした瞬間、抱きとめてくれた人がいた。驚いて、怯えて、体を固くしたユーノをそっと、けれど逃れようのない熱っぽさで抱き締めて、その人は低く囁いてくれた、ユーノの名前を繰り返し繰り返し、ユーノの心が溶けていくまで。応えなくては、ともがくユーノを黙って待っていてくれた。
 その体に包まれて、その腕で体の自由を奪われるほど抱き締められても、抵抗しようとは思わなかった。ただ、泣きたいような安堵感があって、じっとただ、相手の腕に身を任せていた。
(あれは…誰だったんだろう)
 妙に生々しく、抱きついた体の感触も覚えている。
(もう一度抱き締められたら、きっとわかる)
 安堵とは裏腹の、もっと近くもっとたくさん欲しくなるような切ない気持ちが溢れて、唇を引き締める。
(ひょっとして、アシャ…とか?)
 慌てて首を振った。
(ないないあり得ない、どうにかしてる、こんなこと考えるなんて)
「ユーノ?」
「あっ」
 ハイラカが怪訝そうにこちらを見つめているのに気づいて、顔が熱くなる。
「ごめん。何の話だっけ」
「……君はアシャが好きなのかい?」
「っっ」
 ぎょっとしてユーノはハイラカの青い目を見返した。
「アシャを見つけてから、そっちばかりを見ている」
「…そうかい?」
 一瞬息を呑み、かろうじてユーノはにこりと笑ってみせた。
「そりゃ、ま、ね。だって、レアナ姉さまの想い人なんだもの。将来の兄になる人だから、気にもなるさ」
「君の姉の?」
 ハイラカは少し目を細めた。
「アシャも、お姉さんが好きなのかい?」
「ああ」
 何気なく応えると、胸でセレドの紋章が揺れるのを感じた。
「守ってやりたい女なんだって。一生かけて心を捉えたくなるひとだって、アシャ、ベタ惚れだったんだ。何せレアナ姉さまは、セレドはおろか、他国にも聞こえた美姫だもの……お似合いだと思わない?」
 そうだ、あらゆる意味で、レアナは本当にアシャによく似合う。
「セレドのレアナなら聞いたことがあるよ」
 ハイラカは静かに同意した。
「美しくて気品があって…」
「心根優しく、物腰柔らかく。私もずっと思ってきたもの、守ってあげたいって」
 ハイラカのことばの後を続け、ユーノは笑みを絶やさないまま続けた。
「姉さまみたいな優しいひとが泣いたり、悲しんだりするのはみたくない。ううん、姉さまだけじゃない、父さまも母さまも、妹も……セレドの国民も…誰も悲しませたり怯えさせたりしたくない……私は……守りたいんだ…」
 優しく虚ろな声になっていた。
「ユーノ…」
「あ、それにさ」
 ハイラカの気遣わしげな声に、ユーノは我に返った。
「私も剣を扱う方が好きだしね。それに、女の子に見られることが少ないからさ」
 ちょいと肩を竦めてみせる。
(アシャにも女の子扱いはされない)
 だから期待なんかしない。守られることを願わない。
 脳裏を眠るレスファートの顔が掠める。旅で出会った人々の笑顔が、差し伸べてくれた手が、一つ一つ蘇る。動乱の波に呑み込まれていきかねない命との絆がもう、両手に余るほど繋がれているのを感じる。
(だから、守る、皆を)
 破滅が近いというなら立ち塞がろう、全身全霊かけて。また、ユーノが傷つくことで悲しむ存在のことも忘れない。その気持ちもちゃんと胸に覚えておく。
(覚えておいたまま、逃げないでいる)
 難しいことだけど、それでもきっとやれるはずだ、伊達や酔狂で戦い続けてきたわけではない。
(私は、強い)
 ああ、そうだとも、だけど、なんだって今日は、わかりきっているこんなことが、これほど心に痛い?
「ユーノ…」
 ハイラカは椅子を立って、ユーノの側へ寄った。
「僕は君に何もしてあげられないけど……少しぐらいなら抱き締められるよ」
「ハイラカ…」
 ユーノは思わず目を見開いた。
「いいよ、泣いても」
 柔らかな相手の微笑に慌てて取り繕う。
「あは、大丈夫だって。そんな…」
 必死に紡いだことばを裏切って、突然涙が零れた.
「ユーノ」
 ハイラカがためらうことなく、ぐい、とユーノの頭を抱き寄せる。
「ごめ……傷が…ちょっと痛くて…」
「うん」
 そっと腕を回してくれるハイラカの体に頭をもたせかけ、ユーノは嗚咽を噛み殺した。


「姫の心を溶かすには
 どれほど熱い想いがいるのか
 どれほど深い祈りがいるのか
 泉の側にたたずむ騎士の心は
 妖しく乱れてままなら…ず…!」
 詩いながら、何気なくユーノの部屋に目をやったアシャはどきりとした。
 椅子を立ったハイラカがユーノを抱き締めている。ユーノもまた拒みもせずにハイラカの腕に身を委ねている。
「兄さま?」
「あ、ああ」
 詩うことを頭からすっぱり放り出しかけたアシャは、促され慌てて続けた。
「……いつしか泉のほとりで
 恋にうかされ
 石と化す…」
(くそっ)
 俺のユーノに何をしてくれている。
 焼け付く怒り、荒々しく苛立ちながら最後の一音を弾き終わる。
「変わってるわね…恋歌、でもないみたいだし」
「ああ、そうだ。ガズラの古い詩で、昔語りの一つだよ」
 リディノの問いかけに上の空で応える。
「ふふ…でも素敵だわ。だって、泉の底のお姫さまを想って、騎士がついに石になっちゃうんでしょう? ……私もそれほど想われてみたい」
「リディは大丈夫だよ。いつかそれほど惚れる男も出て来るさ」
「そうかしら、嬉しい」
 はしゃぐリディノを見つめながら、アシャの目の奥には、さっきの光景が焼き付いている。
(肩が震えていた……泣いていたのか?)
 ユーノはアシャの前ではめったに泣かない。ましてや、あれほど弱々しい姿を見せることなどないのに。
(俺ではだめなのか? おまえを受け止めてやれないのか?)
 なぜなんだ? 何が足りない?
「あら…」
 が、アシャの思考はそこで断ち切られた。
 花苑の端から一人の男が走り出してくる。『銀羽根』ではない。しかも、相手はまっすぐにこちらに走り寄りながら呼びかけて来た。
「アシャ!」
「何だ」
 ミダス公の客人として滞在している彼に、これほど早急に接近してくる相手は刺客か密使に限られている。側にリディノがいるのは一目瞭然、なのに呼びかけて来たことに眉を寄せた。
「すぐにおいでを! ギヌア・ラズーンの一行が『泉の狩人(オーミノ)』の所へ向かったと『羽根』から知らせがありました!」
「何っ」
 今この時期に、『運命(リマイン)』が『泉の狩人(オーミノ)』に接触してくる理由は、おそらく一つしかない。
「すぐに行く!」
 アシャはリディノに立風琴(リュシ)を渡し、走り出した。


「ごめん…」
 ユーノは、ぐい、とハイラカの体を押して離れた。
「…どうかしてるんだ、今日は」
「君は女の子なんだから…」
 ハイラカは抵抗することもなく椅子に戻り、優しく微笑んだ。
「もっと人に頼ることを覚えてもいいと思うよ」
「そう、だね」
 笑み返しながら、ユーノは心の中で応える。
(でも、そうしていたら、きっと私はもっと多くの人を巻き込んで死なせていた…)
 体に残っている傷痕がその証だ。まだ、アシャだったから、イルファだったから、自分の身は自分で守れ、しかもレスファートまで守る力を残している二人だったからこそ、仲間として側に居られた。
(もし、ハイラカ、あなただったら、私はきっと巻き込まないようにしただろう)
 ハイラカは『銀の王族』、それとは知らずに守られることに慣れて来た人間なのだ。『運命(リマイン)』に出くわせば、ひとたまりもない。
(え?)
 ふいに、ユーノは自分の考えたことにびくりとした。
(そうだ……無意識に守られてきた人間……『銀の王族』……だけど、私は)
 覚えている限り、そういった保護を感じたことはない。それどころか、幾度も幾度も死の危険に自分を晒して生きて来た。
(性分だから? 守りたかったから? ううん、そんなことで破れる掟なら、特別な力を持たない『銀の王族』が生き残って来たはずはない。だって、『運命(リマイン)』は、私達が旅に出る前からラズーンに歯向かい出していたんだし)
 それを言うなら、本来ならカザドに対しても、セレド皇族は『銀の王族』として手出しできない存在として『条件付け』されていたはずではないか。
「どうしたんだい?」
「あ…ううん…何でもない」
 答えながら、ユーノは妙な違和感を覚えた。
(どこか変だ……どこか、おかしい)
 『氷の双宮』から帰って来た夜、寝付けぬままに考えていたことが、心の中でもやもやと固まり始める。
(来訪者が、そこまで素晴しい力を持っていたなら、どうして二百年ごとの狂いをどうにかしなかったんだろう。狂い自体をどうにもできなかったとしても、何とかそれまでの安全な期間を伸ばすとか、別の再生方法をもたらすとか、狂い始めたら『銀の王族』が集まるまで装置を止められるようにするとかしなかったんだ?)
 ユーノでさえ思いつく疑問に眉を寄せる。
(いや、それより前に、生命を再生するほどの力を持っていた前の世代の人々は、『種の記憶(デーヌエー)』の狂いを予想できなかったんだろうか? ほんの少しのずれでもずれはずれだ。気づかないにしては、あまりにも大きな問題じゃないか)
 現に、その『ずれ』のために、『氷の双宮』に生き残っていた人々は、お互いに殺し合って滅びてしまった。来訪者が来なければ、この世界は死に絶えていたかも知れないのだ。
(ほんの僅かな偶然が重なって、やっとこの世界は回復したのか?)
 自らの滅ぶ先を見据えて、その先へ新たに命を繋ごうとした人々がすがるには、あまりにも細すぎる糸のような気がする。
(ならば……どういうことなんだ?)
 ユーノは目の前のハイラカに意識を戻した。
「ハイラカ」
「ん?」
「あなたも『銀の王族』として、『太皇(スーグ)』に謁見したんだよね?」
「うん」
 相手は呆気にとられたような顔で頷く。まじまじと見つめる瞳は、ユーノの顔とそこに現れた何かを読み取ろうとするような表情、やがて茫然とした驚きの顔が次第に妖しい惑いにためらうような顔になる。ユーノをじっと見つめながら、ハイラカは何かを待ち望むように、軽く首を傾げ、身を乗り出した。
「その時、どんなことがあったの?」
「…どんなこと、って」
 ユーノの問いに、ハイラカはゆっくりと瞬きした。夢に落ち込もうとしていたのを堪えるように、軽く唇を噛み、低い囁きで応じる。
「いずれ…わかるよ」
「今、知りたいことがあるんだ」
「…わかった」
 何を聞きたいのか、よくわからないけど。
 ハイラカはそう前置きして話し出した。
「イシュトに連れられて、あの白い壁の中に入っただろう? それから『氷の双宮』の右の宮に入って、僕は『太皇(スーグ)』に謁見した。『太皇(スーグ)』は中央の玉座におられて、純白の衣に白髪、長く白い髭のご老人だった。『太皇(スーグ)』が合図されると、イシュトが姿を消して、やがて物憂いような音楽が聞こえてきた。立風琴(リュシ)じゃないし、弧管(クート)の音色に似てたけど、それでもなかったな。その音楽に埋もれるように、『太皇(スーグ)』の声が聴こえてくるんだ」
「埋もれるように?」
 ユーノはより眉を寄せた。
(何だろう、何か、ひっかかる)
「ああ。音楽と入れ替わるようにふっと聞こえてきては、ふっと遠ざかるんだ。それからしばらくの間、『太皇(スーグ)』は僕にいろんなことを話して下さったよ。ラズーンの成り立ち、『銀の王族』の意味、視察官(オペ)のこと、『運命(リマイン)」のこと……昔語りでよく聞かされたようにね」
「……どんなふうに?」
 ユーノは遮った。昔語りのように、というのが気になる。
 ハイラカは奇妙な顔をしたが、自分を励ますように一つ頷いて、話を続けた。
「普通の話だよ。昔、東西の神々の争いがあって、地上が滅び、魔と荒廃の支配する世となった。わずかに生き残っていた賢人達は、生命(いのち)の種を保って、ラズーンの性のない神が目覚めるまで地下にいた。その後、ラズーンの性のない神が目覚め、世に生命(いのち)を送り出し、そうして世界は回復した。だが、平和な世に疑いの芽が伸び、世を治める者としてつくられた『太皇(スーグ)』の下の視察官(オペ)と『運命(リマイン)』の間に争いが起こり、『運命(リマイン)』は自分達こそ世を治めようとして暗躍するようになった。『銀の王族』とはラズーンの歴史を覚えているもので、歴史は繰り返すという古い伝えの通り、その歴史を聞けば未来の予見も叶う。そのため、ラズーンは『銀の王族』を集めるのだが、ラズーンを滅ぼそうとする『運命(リマイン)』にとっては、『銀の王族』はラズーンを長らえさせる邪魔な因子に他ならない。よって、『運命(リマイン)』は『銀の王族』を狙い、太古生物を復活させては、この世を脅かす。諸国の動乱は、今その『運命(リマイン)』の暗躍によるものなのだ……」
 ハイラカは覚えたものを暗誦するように一息に語った。それからふと、我に返ったように、
「ユーノ?」
「あ…うん……何でも、ない」
 歯切れの悪い返事に、ハイラカは訝しそうに瞬きする。
「それならいいけど……そうか、君は半分しか洗礼を受けていなかったんだね」
 ゆっくりと笑う。
「じゃあ、今の話はずいぶん突飛な話に聞こえてしまうだろうなあ」
 口調に微かに誇らしげな、大人が子どもに苦笑するような気配が混じった。
 だが、ユーノはなおも問いを重ねた。
「……それで?」
「え?」
「それで、その後は何があるんだい?」
「ああ……それから、『太皇(スーグ)』が僕の国の様子や、世界のことをどう考えているか、どんなふうに聞いているかについて尋ねられたよ。答えられる範囲でいいとおっしゃったから、思うままに答えていたけど…」
 ハイラカがふと、ことばを濁した。
「その…実はね」
 ユーノの困惑に気づいたのだろう、照れくさそうに淡色の髪をかきあげる。
「『太皇(スーグ)』がこの世の成り立ちや『銀の王族』なんかについて話して下さったことはよく覚えているんだけど、その後、『太皇(スーグ)』がいろいろ尋ねられたあたりから、どうも記憶があやふやなんだ。何かこう、頭の中に白い霧がかかってきて、一所懸命、それを振り払って答えようとするんだけど、だんだん身動きとれなくなってきて……こともあろうに、僕はそのまま眠り込んでしまったらしいんだ」
「眠り込んだ?」
「たぶんね」
 ハイラカは考え込んだ目の色になった。
「僕は夢の中でも答えを探していた気がするよ」
 ほ、と小さく吐息をついた。
「『太皇(スーグ)』が尋ねられることが、だんだん難しくなってくるのがわかるんだ。それに対して、僕は必死で考えなくちゃならなかった。いや、考えるというより、思い出そうとする、と言った方がいいかもしれないな。……でも、それもひょっとしたら全部夢だったのかも知れない。目が覚めたら、『氷の双宮』で白いシーツをかけられたベッドの上にいたから」
「ふうん…」
「側には同じようにベッドに寝ている人が居たよ。『銀の王族』だとイシュトは言ってた。洗礼の後は、いつもこんな風に眠り込んでしまう人が多いとも言ってた。『氷の双宮』は、言い換えれば命を眠らせておく宮だから、その眠りの呪文が、僕ら…視察官(オペ)や『太皇(スーグ)』以外の者には強く効いてしまうんだとも説明してくれたよ。僕は、『太皇(スーグ)』にどのようにお返事したのかよく覚えていないけれど、イシュトは、馬鹿なことや無作法な振舞いはしなかったって教えてくれた……ほっとしたな」
 『太皇(スーグ)』に会ったことを思い出して、わずかに興奮したように見えるハイラカを、ユーノは正面から見つめた。
 彼は全く嘘を言っているようには見えない。むしろ、自分の体験した未知の出来事を、出来る限り丁寧に正確に話そうとしてくれたように思える。
 けれど。
(本当だろうか)
 ユーノの胸にはそんな声が聞こえてくる。
 例えば、ラズーンの成り立ちだ。
 確かに昔語りとほぼ同じで、野戦部隊(シーガリオン)のユカルが話してくれたこととも重なる。その限りでは、間違っているとは言えない。
 だが、ユーノの頭の中にあるラズーンの成り立ちは、ハイラカが語ったものとは、少し様相が違っている。
 まず、ハイラカの話では、来訪者については一言も触れられていない。その気配の片鱗もない。来訪者がいないから、賢人達が自滅してしまったことの件(くだり)もない。
 『銀の王族』が未来を語ると言われるのは、その脳の中の世界の記憶と体にある『種の記憶(デーヌエー)』によって、『氷の双宮』にある世界の記憶と『種の記憶(デーヌエー)』を新たにするためであり、未来を『語る』のではなく、未来を『生み出す』もととなるためだ。
 また、『運命(リマイン)』が『銀の王族』を狙う目的は同じであっても、そのために太古生物を復活させたというのは大きな違いだ。
 確かに『運命(リマイン)』は諸国の動乱を引き起こし、人々の間に争いを生むことができるが、太古生物はラズーンの『氷の双宮』での『種の記憶(デーヌエー)』の狂いからくるもので、その点においては、同じように『種の記憶(デーヌエー)』の狂いから生まれた『運命(リマイン)』に太古生物を復活させることができるわけはなかった。
(どうして食い違ってるんだ?)
 ラズーンにのみ伝わるという『創世の詩(うた)』をジノから聞いたことがある。あれは、ユーノが覚えている方に近かった。
(待てよ?)
 そこでふと、ユーノはジノが一くさり詩った後で、正式にはもう一くさり、詩があるのだと言っていたのを思い出した。
(ひょっとして…)
「ハイラカ」
「うん?」
「悪いけど、ジノを呼んでくれる? 聞きたい詩があるって」
「わかったよ。じゃあ、僕はこれで」
 ハイラカは唐突なユーノのことばに気分を害した様子もなく出て行った。
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