『ラズーン』番外編

segakiyui

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『魔法は消える』

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「ん、や、だ、アシャ…」
「っ」
 ベッドの側から立ち上がろうとした矢先に服を掴まれてどきりとした。
 クノーラスの激しい攻防にへたり切ったのか、疲れているのになかなか眠りにつけないでいたユーノは、じわじわと上がっていった熱に朦朧としてきたらしい。
「いか、ないで」
「……」
 一瞬夢でも見ているのかと思った。
 あのユーノが?
 行かないで?
「側に、いて、よ」
 今だけで、いいから。
 切ない声に体が勝手に反応していそいそ椅子に戻ってしまった自分が可愛いというより既に情けない気がする。
 まあもっとも、眠れないから手を握ってくれ、のあたりで、いいかげんいろいろなものがいろいろな状態になりそうだったのだが、まさか。
 いかないで。
「……アシャ…」
「ここにいるから」
「ん…」
 紅潮した頬にほっとした笑みを浮かべるユーノは年相応の少女にしか見えない。
 くたりとした細い首、荒い呼吸に上下する胸から甘い香りがして、いろいろなものがまたいろいろな状態にならないようにするには、いささか克己心が要る。
 熱っぽい吐息を紡ぐ唇が乾いている。少し湿らせてやった方がよくはないか? 苦しげに身もがいているから、服を緩めてやるのが普通じゃないか? ついでにすがりついてくる指をきつく握って引き寄せて、発熱に震える体をしっかり抱き締めて、ドヌーとの一戦で味わった苦痛を胸の中で霧散させてやっても、それは人道的と言えるんじゃないか?
「……馬鹿馬鹿しい」
 そんな人道があってたまるか。
 頭の中で勝手に構築された、自分勝手な男の論理を蹴り倒す。
 これは幻だ。
 恐怖と傷みがユーノを駆り立てているに過ぎない。
 アシャを求めているかどうかもわからない。
 とりあえず手近にアシャが居たからすがってきたということもあるわけで。
「う」
 一気に落ち込んだ。
 同時に気づく。
 ユーノに求めてほしい、そう思っている自分に。
 アシャをアシャとして求めてすがって来てほしい。
 けれど。
「……畜生」
 次第に穏やかになってくるユーノの呼吸に舌打ちした。
 元々鍛えられた体だ。もう既に回復に向かっているのだろう。朝にはきっと元気になって、今夜これほど強くアシャの手を握ったことさえ忘れているに違いない。
「……突っ込んでやる」
 ユーノが綺麗さっぱり忘れていたら、容赦なく突っ込んでやろう。でもって、うろたえるユーノの顔に少しだけ溜飲を下げさせてもらうことにしよう、今夜これほど必死に頑張ったのだ、ほしいものがこれだけ無防備に晒されてるのをひたすら耐えてしのいで我慢して……。
「っ」 
 ふいにユーノがにこりと笑った。
 あどけないほどの安心の笑み、あっさり気持ちを奪われて見惚れてはたと我に返る。
「………ガキかよ」
 俺がな。
 アシャは深く切ない溜め息をついた。
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