乙女ゲームのモブキャラから離脱してみせます。

沖城沙音

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4話 誕生日

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今日はもう遅いから宿の部屋で休憩中。
お父さんが帰ってきたら、一緒に夜ご飯を食べに行こうって話になってる。

宿にはベッドが2つあって、奥には窓がある。

僕はその窓からずっと外を眺めてる。
こんな光景なかなか見られないからね。今のうちに焼き付けておかないと。

外はもうすっかり日が沈んで薄暗くなっている。
夜は夜で建物の窓から漏れる光や、ランプの光で幻想的な世界だ。

あ……。思い出したかも。
あの王宮にこの街並み。姉がやっていた乙女ゲームに似てるんだ。

ことあるごとにゲームのことを話してきて、受け流していたけど、今思えばこんな世界観だった気がする。

確か主人公が聖女で、攻略対象と恋をしながら魔王を倒すゲーム。
攻略対象には、勇者、賢者、騎士団長といった種類の異なったイケメン達。

いや、まさかな……。
とりあえず聖女がいるか聞いてみることにした。

「ねぇお母さん。この世界に聖女様はいるの?」
「聖女様?王宮に住んでいるって聞いてるわよ。聖女様のこと話したことあったっかしら?」

「いや、本で読んだんだ。どんな人なんだろう。」
実際は本で読んだわけでもないが、とっさに嘘をついてしまった。

「そうね。確かフランツより少しお姉さんだった気がするわ。聖女様は16歳になるまでは、人前に姿は現さないから、どんな方かはそれまでのお楽しみ。」
「そうなんだ。ありがとう。」

聖女は居るのか。それに16歳にならないと姿を現さないって、やっぱりゲームの設定と似ている。

僕が思っているゲームも主人公はそれくらいの設定だった気がする。

ゲームの内容は、もちろん恋愛がメインだけど、魔王に勝たないとハッピーエンドにはならない。

乙女ゲームの割に本格的なバトルパートがあるから、そこばっか姉にやらされてた。
レベル上げとか相当やったな……懐かしい。

いや、でもまだゲームの世界と決まったわけではないし、仮にそうだとしても僕には何も関係ないか。


"トントントン"
あ、お父さんが帰ってきた来たみたい。
「ただいま。」
「お帰りなさい。あなた。」
お母さんとハグしてる。次は僕の番。

「お帰り。お父さん。」
「ただいま。フランツ。よく来たな。疲れてないか?」
「大丈夫だよ。お父さんは疲れてない?」

「疲れてたけど、2人の姿を見たら一気に吹き飛んだ。」
「僕もだよ。」
心なしかいつもより少し強めにハグしてる気がする。

「よし!じゃぁみんなでご飯食べに行くか!」
「行くー!」


あっという間にレストランに到着した。宿の隣だった。

入ってすぐの広間にはたくさんのテーブルがあって、奥には生演奏をしている人が居る。
高級そうに見えるけど王都ではこれが普通なんだろうか。
僕たちは元々予約をしていたらしく、奥にある個室に通された。

「よし。乾杯しよう。フランツ。5歳の誕生日おめでとう。」
「おめでとう。フランツ。」
「ありがとう。」

次々と料理が運ばれてくる。
どれも見たことのない料理だし、名前を聞いても覚えられそうにない。
そして言うまでもなく、とてもおいしい。
やはりここは高級レストランの部類に入る気がする。

「フランツ。王都に来た感想は?」
「すごいね。どれも見たことない物ばかりだし、人も多いし、わくわくする。」

「それは良かった。明日はお父さん休みだから、いろんなところ案内するから楽しみにしててな。」
「うん。すっごい楽しみ。」

「フランツはこういうところ行ってみたいとかあるか?」
「うーん。そうだな。まだ何があるかよく分からないからな。お父さんが仕事しているところ行ってみたい。」

「えっお父さんの職場に行きたいのか?」
「うん。お父さんがどんな仕事しているのが気になる。」

「そうか。じゃ行ってみるか。」
「いいの?」
「まぁ大丈夫だと思うよ。」


あぁーお腹いっぱい。
今日はぐっすり眠れそうだな。

「そうだ。フランツに誕生日プレゼントがあるんだ。」

料理も一通り食べ終わり、食器が片付けられたタイミングでお父さんが言う。
誕生日プレゼントは王都に来ることだと思っていたんだけど、なんだろう。

「もう王都に来れたよ?」
「それとは別に。な。」
お父さんはお母さんに目配せをしている。

「ええ。お父さんと相談して、フランツならもう良いかなって。」
「どういうこと?」

2人してにやにやして……。
もったいぶらないで教えてくれ。

「フランツは小さいときから魔法使えるようになりたいって言ってたろ。」
「うん。言ってた。でもまだ出来ないよ。」
「まぁそうだな。魔法についてまだきちんと話していなかったからな。使えなくて当然だ。」
「え?」

使えなくて当然なの?じゃぁ今までの努力は……。

「フランツも本を読んでいたから知っているだろうが、魔法を使うには魔力が必要なんだ。」
「うん。それは知ってる。」

「でも、魔力がどんなものなのか分からないんじゃないか?」
「うん。分からない。」
そうそう。そうなんだよ。なんで魔力が分からないって分かったの?

「フランツ。こっち来てごらん。」
「うん。」
僕は席を立ち、2人の方に向かう。

「右手はお父さんと、左手はお母さんとな。」
「手をつないでどうするの?」
「まぁ良いから。目を閉じて。」
「分かった。」

ん?何だろう。温かい何かか手から全身に流れているのを感じる。
しかも、右手からと左手からで少し違う。もしかしてこれが魔力ってやつ?

「どうだ?」
「なんか温かい。」
「分かるか?これが魔力だ。」
「これが魔力……。」

お父さんとお母さんの魔力が僕の全身を巡ってるのが分かる。そして、僕の魔力も。

「実はな、産まれたときから魔力自体はあるんだが、子供は安全のために魔力を感じ取れないようになってるんだ。」
お父さんが魔力について説明し始める。

「そうだったの?」
「あぁ。胸の近くにトリガーがあって、そこに一定量の魔力を流すと感じ取れるようになる仕組みになってるんだよ。」

「そうだったんだ。全然知らなかった。」
本にも載ってなかったよな……。

「まぁ、大体どの家庭でも7歳くらいの時に、こうして親が魔力を流して感じ取れるようにするんだけど、フランツならもう良いかもなってお母さんと相談してね。」

「ええ。フランツはもう分別があるから大丈夫じゃないかしらって。他の子に比べたら少し早いけどね。」

「お父さん。お母さん。ありがとう。」
僕は嬉しさのあまり2人に抱きついた。

「でも、魔力が分かったからって魔法が使えるとは別物だからな。」
「徐々に覚えていきましょ。」
「うんっ。」

「これが、お父さん達からの誕生日プレゼントだよ。」
「気に入ってもらえたかしら。」
「もちろんだよ。本当ありがとう。今日のことは一生忘れないよ。」

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