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3話 初王都

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僕が転生してから、今日で5年。
つまり今日は僕の誕生日。

ちなみにまだ魔法は使えない。知識はあるけど……。
結局僕は魔法が使えない体質なのかもしれない。転生者だし。

でもまだ諦めたくないから、体力作りはしっかりするようにしてる。
魔法が使えようが使えまいが、体力はあるに越したことはないしね。

そして今日は王都に行く日。
初めての王都!
ずっと行ってみたいと思ってたけど、なかなか行く機会が無かったんだよね。遠いし。

そんな訳で、誕生日プレゼントは何が良い?って聞かれたときに、王都に行ってみたい!って答えたところ、連れていってもらえることになった。

この大自然も好きだけど、でもやっぱり王都の方はどうなってるんだろうって気になる。
人も多いだろうし、お店とか色々ありそうだし、何よりこの世界の事をもっと知りたいし。
準備は満タン!

「お母さん!準備出来たよ!」
「じゃぁちょっと早いけど、出発しましょうか。」

お父さんは仕事で王都にいるから、王都で待ち合わせ。
王都まではお母さんと2人旅。わくわくするな。
この日のために馬に乗る練習もしてきたし、完璧だ。


家を出てからしばらく走り、来たことの無い土地まで来ていた。

こんな方に川があったんだ。水が透き通ってて、太陽がキラキラ反射しててきれいだな。

「フランツ、この辺でお昼休憩にしましょうか。」
「そうだね。」

外でお弁当ってテンション上がるな。
お母さんの料理は何でもおいしいし。
川の音に癒やされて、ここまでの疲れも吹き飛ぶ。

「お母さん、王都まではあとどのくらいで着きそう?」
僕はお母さんが作ってくれたお弁当を食べながら質問をする。

「そうね。この調子だったら日が沈む前には着けると思うわ。」
「やっぱり遠いんだね。」

「そうね。大丈夫?疲れてない?しんどかったらすぐに言ってね。」
「うん。まだ大丈夫。お母さんの料理で元気出たから。」
「ありがとう。」

ん?ふと川の方を見ると、川を挟んだ向こう側に黒っぽい何かが動いているのが見える。
あれは何だ?
熊みたいな……。こっちの世界であんな生物は初めて見た。
熊みたいな生物との距離はそこそこあるけど、見るからに大きいし、襲われたら大変そう。

「お母さん、あれ何?」
僕は例の生物を指さす。

「ん?あぁあれはジャイアントベアっていう魔物よ。」
「え、魔物?」
魔物ってあの襲ってくるで有名な魔物?何でお母さんはそんなに冷静なの?

「そう。でも何もしなければ襲ってこないから大丈夫よ。」
「そうなの?でもすごく強そうだよ。襲われたらどうしよう。」
「大丈夫よ。何があってもお母さんが守るから。」

お母さんは襲ってこないって言ってたけど、
ジャイアントベアが気になりすぎてお昼休憩どころじゃない。

僕はジャイアントベアをチラチラ確認しながら弁当を掻き込んだ。

「お母さん、そろそろ出発しよう?」
「そうね。行きましょうか。」

ふぅ。襲われなくて良かった……。


もうすっかり夕方。
あれからずいぶん走ったな。

徐々にだけど道がきちんと整備されていたり、人とすれ違うことが多くなってきた。
日が沈む前には着けるって言ってたからそろそろかな?

もしかしてあれが王都かな?
まだ遠いからはっきりはしないけど、大きな橋が架かっていて、その奥に門らしき物がある。
そしてその門伝えに塀があるのが見える。

「お母さん、もしかしてあれが王都?」
「正解。あそこに見えているのが王都よ。後もう少しね。」

徐々に大きくなっていく王都にテンションが上がってきた。
とうとうやってきたぞ。王都!

でもなんか初めて来たわけではないくらい、外観とか想像通りでびっくりしてる。
まぁでも王都なんてどこもそんなもんなのかな?

馬から降りて入り口の列に並ぶ。
とうとう王都の中に入るぞ。
ふぅー。まずは深呼吸しよう。

門をくぐると、王都の街並みが目の前に広がる。

わぉ。今まで過ごしてきたところとはやっぱり全然違う。なんというか久しぶりに文明を感じる。

何もかもが新鮮で情報量が多すぎる。
もうすごいとしか言えないよ。建物がいっぱい建ち並んでいるし、人もいっぱいいる。
あー語彙力が無さすぎる。

「どう?フランツ。初めての王都は。」
「すごいね。お家の方とは真逆って感じ。」
「まぁそうね。お店や建物もいっぱいあるし、人も多いしね。」

なんだかヨーロッパみたいな雰囲気だ。
石畳の街並みで、どの建物も形や色合いが統一されていてきれいだ。

そしてあそこの高いところに建ってるのが王宮だよね!一目で分かる!すっごい!
本当すごい。お城だよ……。あんなの現実にあるんだ。

感動だなぁ。自然とはまた違う美しさがある。

でもやっぱなんか見たことあるんだよな。
日本にいたとき行ったテーマパークのお城と雰囲気が似ているからかな?

それか異世界に転生したと思ってたけど、案外地球にいるとか?
いやでも魔法があるからな……。

「フランツ。ぼーっとしてたら迷子になっちゃうから、手つなぎましょうか。」
「あっ、うん。」
確かに、この人の量だと迷子になりそう。

「ここが今日の宿よ。さっ馬預けて行きましょうか。」
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