乙女ゲームのモブキャラから離脱してみせます。

沖城沙音

文字の大きさ
2 / 48

2話 散歩

しおりを挟む
僕が転生してから、3年がたった。
「お父さん。おはよう。」
この通り、少し舌は回ってないが話せるようになった。

「おはよう。フランツ。今日も早いな。もっと寝ていても良いんだぞ?」
「そう言うお父さんは僕より早起きだね。」
「そりゃ仕事があるからね。」

そっか。もう行っちゃうのか。
お父さんは王都に仕事に行っているらしく、週末しか家に帰ってこない。
楽しい時間はあっという間だったな。

そんなことを考えていると、お父さんの手が僕の頭を襲う。
「うわー。髪の毛わしゃわしゃしないでー。」
僕は犬じゃないぞ!
「ごめんごめん。今日も我が息子はかわいいなって思ってね。今週も頑張れそうだ。」

中身が30歳の僕は、20代半ばの青年に頭をくしゃくしゃ撫でられるのは未だに慣れない。
でも……
「ぎゅーってする?」
「もちろん。ぎゅー。」
「ちょっ、ちょっと苦しい。」
不思議とこんなやりとりが好きな自分がいる。

「あら、朝からフランツに癒やされているの?おはよう。フランツ。」
「おはよう。お母さん。」
「お母さんにもぎゅーってして欲しいな。」
「うん。お母さんもぎゅー。」
なんて幸せな朝なんだろう。

「フランツ。今日も寝癖がすごいわね。」
「ちがうよ。お父さんがぐしゃぐしゃにしたんだ。」
「ほら。ちょっとじっとしてて。直すから。」
「うー。風が……。」

この世界では魔法が使えるらしい。まるでゲームの世界みたいだ。
でも、ゲームと違うのは無意識的に使ってるって事かな?
今みたいに寝癖を直すときも水と風が勝手にお母さんの手元から出てくる。
ランプに火をともす時だって自然に指から火が出る。
詠唱とかはいらないらしい。

「はい。完璧。」
「ありがとう。お母さん。」
「どういたしまして。」

「僕も自分でできるようになりたいな。」
「フランツがもう少しお兄ちゃんになったら、自然と出来るようになるわよ。」
「今すぐできるようになりたいよ。ねぇお母さん、どうやってるの?」

「うーん。フランツの寝癖直しは、お母さんにやらせて欲しいな。ねっお願い。」
うまくはぐらかされてる……。
でもそんな顔されたら、引き下がるしかないよ。
「わかった。」

実際、僕も魔法を使えるんじゃないかと何度も試してみたけど、うまく出来ない。
詠唱とかするのであれば、とっかかりが掴めそうなんだけど……。

そんなわけでここ最近は魔法に関する本を読み漁ってる。
っていっても、そこまで裕福な家庭ではないだろうから本の数は限られているけどね。

親に魔法のことをしつこく聞いた時も、まだ危ないって言われるし、今は本から学ぶのみ。


というわけで、本日も自分の部屋に持ち込んだ本とにらめっこをしているわけだけど……。

だめだ。全然分からない。書いていることは理解できるのに、実践でうまくいかない。
そもそも魔力ってなんだ?全く感じない。

もしかして僕は両親と違って魔法が使えないって事があるのだろうか。

一旦休憩して、散歩でもしてこようかな。

「おかあさん。ちょっとお外に行ってくるね。」
「お外に行きたいの?お母さんも一緒に行っていい?」
「うん。一緒に行こう。」
「ちょっと待ってて。すぐ準備するね。」
「はーい。」

遠くに行くつもりはないけど流石に3歳児を1人で行かせはしないか。

「お待たせ。はい。帽子かぶって。」
「うん。ありがとう。」
「じゃ行きましょ。」

んっ。太陽がまぶしい。見渡す限り青い空。白い雲。緑の芝生。そして奥には山!
すぅーーはぁーー。良い空気。やっぱり外は気持ちいいな。
今日はまだ行ったことのない方に行ってみようかな。

「おかあさん。あっち行こう。」
「フランツの行きたい方に行っていいわよ。お母さんついて行くから。」
「ありがとう。」

この辺は国境付近らしく、お隣さんというお隣さんはない。
でも一応集落にはなっていて、僕の家はその端っこの方に位置している。

今日はあっちの丘の方に行こうと思ったんだけど、果たしてどこまで行けるか。
僕の体力と応相談ってとこかな。

勢いよく歩き出したはいいけど、やっぱり3歳の体では厳しいか。疲れてきた。
「フランツ。そろそろ休憩したら?」
くっお母さんに見破られている。
「そうする。」

外で寝転がるって気持ちいいな。
青い空が永遠に続いている。風も心地よい。雲の動きをいつまでも見ていられる。

「フランツ。寝る前にお水飲んで。」
「うん。ありがとう。」
お母さんはそのまま僕の隣に座る。

今日は目的の丘までは行けなかったけど、ここまで来れたからよしとしよう。

自然の音だけの空間。
なんか何も考えずにぼーっしちゃうな。

「――僕、魔法使えるようになるのかな。」
「大丈夫よ。大きくなったら使えるようになるわ。」
あっ本音が口に出ちゃってたか。

今のところ全く出来そうな気配は無いけど、お母さんがそう言うなら信じよう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

強くてニューサーガ

阿部正行
ファンタジー
人族と魔族が争い続ける世界で魔王が大侵攻と言われる総攻撃を仕掛けてきた。 滅びかける人族が最後の賭けとも言うべき反撃をする。 激闘の末、ほとんど相撃ちで魔王を倒した人族の魔法剣士カイル。 自らの命も消えかけ、後悔のなか死を迎えようとしている時ふと目に入ったのは赤い宝石。 次に気づいたときは滅んだはずの故郷の自分の部屋。 そして死んだはずの人たちとの再会…… イベント戦闘で全て負け、選択肢を全て間違え最終決戦で仲間全員が死に限りなくバッドエンドに近いエンディングを迎えてしまった主人公がもう一度やり直す時、一体どんな結末を迎えるのか? 強くてニューゲームファンタジー!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...