乙女ゲームのモブキャラから離脱してみせます。

沖城沙音

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15話 魔力変換 後編

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「どうしてそんなに濡れているんですか?」
シリルさんは呆れた表情で聞いてきた。

「このリング、知ってるか?」
ルーカスさんは、初めておもちゃを買ってもらってはしゃいでいる子供のように、シリルさんに話す。
「もちろん知ってます。」

「ちょっと試してくれないか?壊れてると思うんだよな。これ。」
「良いですよ。恐らく壊れてはいないと思いますが。」

ルーカスさんがシリルさんにリングを渡し、シリルさんが魔法を使う。
リングは魔法を使う前のまま、水は一切出なかった。

「まじで?」
ルーカスさんは自分との違いにすごく驚いた様子だった。

「す、すごい。流石です。」
「これくらいは当たり前です。一応賢者なので。どうぞ、壊れてませんよ。」
シリルさんはリングを指から外すと僕に差し出してきた。

「あ、ありがとうございます。あの、コツってありますか?」
「コツ……。そうですね。魔力の流れを追いながら魔法を使ってみたらどうでしょうか。」
「魔力の流れ。」

「ええ。一定量の魔力を具現化するわけですから、その魔力の流れを追えば自分がどの過程でロスしているのか気づけるかもしれません。」
「ありがとうございます。やってみます。」

「いえ。では俺はここで。」
そう言い残すと、シリルさんはすたすたと歩いて行ってしまった。


日が暮れてきた。

シリルさんに言われたとおり、魔力の流れに意識を向けて魔法を放つと、確かにロスしているなってのが実感出来るようになってきた。

最初に比べたら大分水は出なくなってきたので、魔力の流れを集中して追うために、花壇前にあるベンチに座って挑戦していたが、それでもちょろちょろと出ている。

「どうですか?」
誰かに話しかけられたと思い、後ろを振り向くとそこにはシリルさんがいた。

「え?シリルさん?あ、はい。初めに比べればでなくはなりました。シリルさんがおっしゃっていた魔力の流れを追うようにしたら、なんとなく解るようになってきました。」

「そうですか。隣良いですか?」
「はい。もちろんです。」
シリルさんが僕の右隣に座る。
もしかして僕のこと気に掛けてくれている?

「やってみてもらっても良いですか?」
「はい。今はまだこれくらいは出てしまってて。」
リングからはちょろちょろと水が出ている。

「なるほど。あと少しですね。」
「はい。でもここから先がなかなかうまくいかなくて。」

「少し魔法を使ったままにしてもらえますか。」
「はい。」
ここからどうするんだろうと思いつつ、言われるがまま魔法を使い続ける。

「失礼。」
そう言うとシリルさんは僕が魔法で火を出している右腕をそっと触れた。

少し経った後、リングから水がぴたっと止まった。
シリルさんが、僕がロスしている部分を補助してくれているみたいだった。

「ここ。わかりますか?」
「はい。わかります。」

ここか。

「ここでロスしているので、自分で修正してみてください。」
「はい。ありがとうございます。」
僕は補助してくれている部分を意識しながら修正していく。

しばらくしてシリルさんの手が僕の腕から離れる。
シリルさんの手が離れてもリングから水が漏れることはなかった。

「で、できた……。」
「おめでとうございます。」
「ありがとうございます。シリルさんのおかげです。」

「いえ。自分の実力ですよ。その感覚を忘れないようにしてください。」
「はい。ありがとうございます!」

なんか、シリルさん僕がイメージしていた人と違うのかも。

「ところで一つ聞いても良いですか?」
「はい。なんでしょう。」

「あなたはなぜ、この世界でこんなにも努力をしているんですか?」

「それは、人生を全力で歩みたいからです。これは僕が決めた人生なんだって、死ぬとき思えるように。あと、聖女様を守れるようになりたいからですかね。」

最後の一文は言うか迷ったが、こういうことは言葉にしておいた方が良いと思った。

「そうですか。その気持ち、大切にしてください。」

「あの、シリルさんの原動力は何ですか?」
「俺の原動力ですか。フレデリックさんかもしれません。」

「お父さんですか?」
「えぇ。俺はフレデリックさんに一生返せない恩があるので。」
「そうだったんですか。」

「まぁ、これ以上は話しませんが。」
普段あまり笑わないシリルさんが少し微笑んだ気がする。

「はい。僕も無理には聞きません。でも、なんかお父さんのこと褒められているみたいで嬉しいです。」

「少し長居しすぎました。では、もう行きます。」
「はい。今日はありがとうございました。」
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