乙女ゲームのモブキャラから離脱してみせます。

沖城沙音

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14話 魔力変換 前編

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お父さんの弟子にしてもらって以来、生活が激変した。
僕もお父さんと一緒に王宮まで毎週行くことになったからだ。

週5は王宮でお父さんの指示を受けながら、訓練をしている。
体を鍛えるのはもちろん、魔法の細かい使い方や制御方法、また王宮に保管されている本を読んで知識も付けるようになった。

ちなみに今は王宮の敷地内を走り込んでいる。この走り込みは疲れるけど嫌いじゃない。
それはきれいに整備されている庭や噴水など、目が飽きないからだ。

「お!フランツ!やってるな!」
「あ!ルーカスさん。おはようございます!」

騎士団の訓練所の付近を通ったとき、そこで仲間の騎士と剣の訓練していたルーカスさんが話しかけてきてくれた。

「今日も走ってるのな!」
「はい。ルーカスさんも訓練中ですか?」
「まあな。また一緒に訓練しような!」
「ありがとうございます!行ってきます!」
「頑張れ!」

ルーカスさんは時々僕に付き合ってくれて、一緒に走ってくれたり筋トレをしてくれたりする。
すごく忙しいはずなのにありがたい。

他にも王宮で働いている人に、すれ違うたび挨拶をするようになって、応援もされるようになって。
1人じゃないって思うとより訓練が捗る。

よし。今日も走りきった!とりあえず芝生のことろで休憩しよう。
寝転がりたいけど流石にここでは出来ないから、足を伸ばして後ろに手をついた状態で座る。

あー風が気持ちいい。今日も良い天気だなぁ。雲の流れもずっと見ていられる。
ほんと、ここがゲームの世界なんて考えられないんだよな。

よし。息も整ってきたし、汗を拭いてお父さんのところに行きますか。

「お疲れ。」
「あれ?お父さん?」
お父さんは自室で仕事をしていると思ってたんだけど……。

「そろそろ走り終わる頃かなって思って。」
「うん。さっき終わったところ。少し休憩して、今からお父さんのところに行こうかなって思ってたんだ。今日はどうしたの?」

「今日は魔力変換の訓練をしようかと思って、このまま外の方が良いかなって。」
「そうだったんだ。」

「じゃぁ始めようか。」
「お願いします。」

「今日は、魔力をエネルギーに変換する際に、魔力のロスをなくすって事を目標に訓練をしようか。」
「はい。」

「ちなみにフランツは自分が魔法を使うたびにどれくらい魔力をロスしているか把握してる?」
「いや、あんまり考えたことはないかな。」

「そうだよね。そんなフランツのために今日はこんなのを持ってきたんだ。」
そう言ってお父さんはポケットから指輪のような物を2つ取り出した。

「指輪?」
「はい。これはフランツのね。はまる指にしてみて。」
「あ、ありがとう。」

指輪は、輪が少し太めのマットがかった銀色で、波のようなマークが2本引かれている。
普通に着けていてもおしゃれなデザインだ。
サイズ的に右手の人差し指にはめることにした。

「これは魔道具で、このリングを付けて魔法を放ったときに魔力のロスがどれくらいあるかを教えてくれるものなんだ。」
「なるほど。」

「例えば、魔力からエネルギーに変換するときのロスが多いと水が出てくる。こんな風にね。」
お父さんが魔法で火を出したとき、右手の小指に付けているリングから水が溢れて出てきた。
確かにこれは外の方が都合が良いやつだね。

「もちろん、ロスがなければこんな風に水は出なくなる。」
さっきと同じ魔法なのに、リングからぴたっと水が出なくなった。

「すごい。」
「仕組みとしては、ロスした魔力をこのリングが感知して水が出るようになってるだけなんだけどね。フランツも何か簡単な魔法を使ってみて、リングから水が出なくなる用に訓練しようか。」
「はい。」

試しにお父さんと同じように魔法で火を出す。

「うわぁ!」

蛇口をひねったかのように勢いよく水が出てきた。足下がびちょびちょだ。こんなに魔力をロスしてたってこと?

「勢いよく出たね。これを出ないように魔力をコントロールしていこうか。」
これは、思ったより難しいかもしれない。

ここからは自分との戦いのため、お父さんは一旦仕事に戻った。
くぅー。難しい。同じところでやっていると水たまりが出来てしまうので、庭の植木に沿うように徐々に移動しながら挑戦することにした。

「あれ?フランツ。今度は水やりか?」
あぁこんな方まで来ていたのか。手ばかりに集中していていつの間にか騎士団の訓練所の方まで来ていた。
でも確かに端から見たら水やりと間違われてもおかしくない。

「ルーカスさん。水をやるつもりはないんですけど、今魔力ロスをなくす訓練中で……。」
「おっ!何かおもしろそう。」
そう言うと、ルーカスさんは訓練を抜け出し僕の方に走ってきた。

「魔法を使うとき、このリングが魔力のロスを感知して、ロスした分だけ水が出るそうです。」
「へぇー俺初めて見た。」
「えっ!そうなんですか?」

「うん。俺も付けてみたい。」
「良いですよ。どうぞ。」
リングをルーカスさんに渡すと、ルーカスさんは左手の小指にリングをはめた。

「よし。やるぞ。」
ルーカスさんの手から勢いよく火が出た瞬間、それを消火しようかとばかりの勢いで水があふれ出てきた。
これ、僕より出てる……?

「うわぁ!すごい出てくるぞこれ!これ本当にそういう道具なのか!?」
「おっおそらく……。」

「まっまぁ俺、魔法普段使わないからな。」
「そ、そうですよね。」

2人して水の勢いにびっくりしていると、あきれた顔をしているシリルさんが通りかかった。
何か言いたそうな顔をしていたが、そのまま何事もなかったかのように通り過ぎようとしていた。

「シリル待った!」
ルーカスさんがシリルさんを引き留める。
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