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彼の秘密と過去・5
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アズールスが十四歳の時、アズールスは士官学校の長期休暇を利用して屋敷に戻るはずだった。
その途中、大雨に降られたアズールスは、足止めを余儀なくされたのだった。
「ようやく屋敷に戻った時、家族は既に避暑地に向かっていた。我が家では毎年、夏は別荘がある避暑地で休暇を過ごすんだ」
足止めされたアズールスを待つ事が出来ず、先に出掛けてしまったと、アズールスは留守番をしていたマルゲリタから聞いたのだった。
「その頃、ファミリアを産んでからずっと産後の肥立ちが良くなくて、寝たきりになっていたマルゲリタの娘ーーファミリアの母親が亡くなったばかりでな。
ファミリアの父親は屋敷の御者だったから、家族が乗っていた馬車を操っていたらしいんだ。いつもファミリアの父親が仕事の間、ファミリアの面倒を見ていたのが、マルゲリタだった」
マルゲリタから話を聞いたアズールスは、明日にはファミリアの父親が屋敷に戻ってくるはずだから、それに乗って行くつもりで待っていた。
しかし、次の日になってもファミリアの父親は戻って来なかった。
そして、屋敷で待っていたアズールスにもたらされたのは。
「大雨で崖がぬかるんでいたらしい。家族が乗った馬車は、馬車ごと崖から滑落したらしい」
滑落する瞬間を、後続の馬車が見ていたらしい。
馬が足を滑らし、御者台にいたファミリアの父親が馬を操作したらしいが、間に合わなかったとの事だった。
馬車はそのまま、崖下へと落下していった。
「その数日後、家族の遺体が屋敷に運ばれた。ファミリアの父親も。発見した人達によると、父と母は弟達を守るように亡くなっていたらしい」
馬車の数を減らす為に、家族で同じ馬車に乗っていたのが仇となった。
しかし、跡継ぎとなるアズールスだけが生き残ったのが幸いだと言われた。
アズールスが跡を継げばよいと、周りには言われた。
だがーー。
「他の使用人達は、『こんな子供に仕えられない』と辞めていった。中には、俺が子供である事を甘くみて、屋敷の財産に手をつけた者もいて俺が解雇した」
一人、また一人と辞めて、解雇させられて。
残ったのは、マルゲリタとまだ幼いファミリアだけだった。
「そんなある日、家族の葬儀がまだ終わる前に、叔父が屋敷にやってきたんだ」
アズールスの叔父ーー父の弟で軍人だったが、部下に暴力を振るったとされて解雇されていた、が『自分がアズールスの後見人になるから、兄の財産を寄越せ』と言ってきた。
アズールスは拒否したが、叔父はアズールスが子供である事、アズールスが軍人になりたがっている事を理由に執拗に迫ってきた。
ただの使用人であるマルゲリタには意見をする権利が無かった。
アズールスは叔父の言う通りにするしかなかった。
「叔父に後見人になってもらい、俺は士官学校を卒業して軍人になった。
その頃には、叔父にほとんど財産を使われてな。借金もあった」
軍人になったアズールスは、後見人が不要になったという理由で、叔父と縁を切ろうとした。
元々、叔父はアズールスを利用して爵位と土地を手に入れようとしていたのだ。
これに激昂した叔父からは、二択を選ばされた。
「爵位と土地と屋敷を捨てて縁を切るか、借金を抱えて叔父を切り捨てるか、を」
家族との思い出が詰まった屋敷と、代々治めてきた土地ごと爵位を捨てるか。
家族との思い出を守る為に、叔父が作った借金を抱えながら叔父を切り捨てるか。
「俺は、俺の元に残ってくれたマルゲリタとファミリアを守る為に、爵位と屋敷を捨てて、一族と縁を切ることを選んだ」
アズールスは爵位と土地を叔父に渡して、屋敷ーーその頃には借金でほとんど差押えをされていた。を捨てたのだった。
持ち出せたのは、家族が死んだ時に持ち出した家族の姿絵ーー柚子が書斎で見つけた。と柚子を召喚する時に使用した召喚書だけだった。
その途中、大雨に降られたアズールスは、足止めを余儀なくされたのだった。
「ようやく屋敷に戻った時、家族は既に避暑地に向かっていた。我が家では毎年、夏は別荘がある避暑地で休暇を過ごすんだ」
足止めされたアズールスを待つ事が出来ず、先に出掛けてしまったと、アズールスは留守番をしていたマルゲリタから聞いたのだった。
「その頃、ファミリアを産んでからずっと産後の肥立ちが良くなくて、寝たきりになっていたマルゲリタの娘ーーファミリアの母親が亡くなったばかりでな。
ファミリアの父親は屋敷の御者だったから、家族が乗っていた馬車を操っていたらしいんだ。いつもファミリアの父親が仕事の間、ファミリアの面倒を見ていたのが、マルゲリタだった」
マルゲリタから話を聞いたアズールスは、明日にはファミリアの父親が屋敷に戻ってくるはずだから、それに乗って行くつもりで待っていた。
しかし、次の日になってもファミリアの父親は戻って来なかった。
そして、屋敷で待っていたアズールスにもたらされたのは。
「大雨で崖がぬかるんでいたらしい。家族が乗った馬車は、馬車ごと崖から滑落したらしい」
滑落する瞬間を、後続の馬車が見ていたらしい。
馬が足を滑らし、御者台にいたファミリアの父親が馬を操作したらしいが、間に合わなかったとの事だった。
馬車はそのまま、崖下へと落下していった。
「その数日後、家族の遺体が屋敷に運ばれた。ファミリアの父親も。発見した人達によると、父と母は弟達を守るように亡くなっていたらしい」
馬車の数を減らす為に、家族で同じ馬車に乗っていたのが仇となった。
しかし、跡継ぎとなるアズールスだけが生き残ったのが幸いだと言われた。
アズールスが跡を継げばよいと、周りには言われた。
だがーー。
「他の使用人達は、『こんな子供に仕えられない』と辞めていった。中には、俺が子供である事を甘くみて、屋敷の財産に手をつけた者もいて俺が解雇した」
一人、また一人と辞めて、解雇させられて。
残ったのは、マルゲリタとまだ幼いファミリアだけだった。
「そんなある日、家族の葬儀がまだ終わる前に、叔父が屋敷にやってきたんだ」
アズールスの叔父ーー父の弟で軍人だったが、部下に暴力を振るったとされて解雇されていた、が『自分がアズールスの後見人になるから、兄の財産を寄越せ』と言ってきた。
アズールスは拒否したが、叔父はアズールスが子供である事、アズールスが軍人になりたがっている事を理由に執拗に迫ってきた。
ただの使用人であるマルゲリタには意見をする権利が無かった。
アズールスは叔父の言う通りにするしかなかった。
「叔父に後見人になってもらい、俺は士官学校を卒業して軍人になった。
その頃には、叔父にほとんど財産を使われてな。借金もあった」
軍人になったアズールスは、後見人が不要になったという理由で、叔父と縁を切ろうとした。
元々、叔父はアズールスを利用して爵位と土地を手に入れようとしていたのだ。
これに激昂した叔父からは、二択を選ばされた。
「爵位と土地と屋敷を捨てて縁を切るか、借金を抱えて叔父を切り捨てるか、を」
家族との思い出が詰まった屋敷と、代々治めてきた土地ごと爵位を捨てるか。
家族との思い出を守る為に、叔父が作った借金を抱えながら叔父を切り捨てるか。
「俺は、俺の元に残ってくれたマルゲリタとファミリアを守る為に、爵位と屋敷を捨てて、一族と縁を切ることを選んだ」
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持ち出せたのは、家族が死んだ時に持ち出した家族の姿絵ーー柚子が書斎で見つけた。と柚子を召喚する時に使用した召喚書だけだった。
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