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ファミリアとフェーン【2】
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「楽しそうな声が聞こえてくるから、様子を見に来たが……。ユズも居たとはな」
「アズールスさんは、もう用事は終わったんですか?」
アズールスは書斎にこもって、屋敷やフェーンについての諸々の雑事をこなしていた。
「ああ。ひとまず片付いた。休憩しようと思ってな」
すると、庭から楽しそうな声が聞こえてきて、つられたアズールスも庭にやって来たとの事だった。
「まあ、そうでしたか。申し訳ありません。騒々しくしてしまって」
「いや。いい。フェーンもファミリアと上手くやっているようだしな。それに……」
アズールスはフェーン達を見つめると、目を細めたのだった。
「二人を見ていると、亡くなった弟と妹を思い出すようだ」
「旦那様……」
アズールスの言葉に、マルゲリタはそっと顔を伏せたのだった。
「アズールスさん……」
「いや。そんな事を言ったら、フェーン達に失礼だな。ただ、二人が生きていたら、ああやって楽しそうに遊んでいたのかと思うと、懐かしく思ったんだ」
アズールスの弟妹は、アズールスが子供の頃に遭った馬車の滑落事故で、両親と共に亡くなっている。
生きていたら、フェーン達よりも少し歳上の二人にとって、良き遊び相手になっていただろう。
悲しそうな顔をする二人に、アズールスは謝ったのだった。
「すまない。こんな話をするべきじゃなかったな」
「いえ。いいんです。ところで、アズールスさんの弟さんと妹さんって、どういう子達だったんですか?」
「そうだな……。双子の弟妹だったが、性格は反対だったな。弟は活発で、妹は引っ込み思案で」
アズールスと歳の離れた双子の弟妹は、よく二人で屋敷内を遊んでいたらしい。
活発な弟はよく悪戯をして両親に怒られ、引っ込み思案な妹はアズールスや弟の影に隠れていたそうだ。
「俺が学校に通うまでは、よく俺も含めた三人で遊んでいたな。二人はなんでも俺を頼ってくるから、それが嬉しかったんだ」
「そうですか……」
兄と呼ばれて、弟妹に頼られるアズールスの姿を想像した柚子は微笑んだのだった。
「ああ、そうです」
すると、マルゲリタは何かを思いついたように、顔を上げた。
「食料の買い出しに行こうと思っていたのでした。今日の夕食の分はあるので、明日以降の食料を」
「それなら、私が買いに行きますよ!」
柚子が声を上げると、アズールスも「ユズが心配だから俺も行こう」と申し出てくれたのだった。
「マルゲリタは夕食の支度もあるだろう。買い出しは俺とユズで行こう」
「あら。いいのですか。お願いしても?」
「はい! 私達に任せて下さい!」
柚子は大きく頷く。すると、マルゲリタは「では、お言葉に甘えて」と承諾してくれたのだった。
三人は一度、食堂にやって来ると、マルゲリタからお金とカゴを預かり、買う物をメモしたのだった。
「それから、旦那様。せっかくなので、あそこにも寄って来て下さいませ」
「ああ。だが、いいのか。屋敷は……?」
マルゲリタは頷いた。
「ええ。今はフェーンさんもいるので大丈夫ですよ。最近はファミリア共々、よく働いてくれるので助かっています」
「そうか。なら、ユズを連れて行って来る」
マルゲリタとアズールスが話す中、話の要領を得ない柚子は首を傾げる事しか出来なかったのだった。
「アズールスさんは、もう用事は終わったんですか?」
アズールスは書斎にこもって、屋敷やフェーンについての諸々の雑事をこなしていた。
「ああ。ひとまず片付いた。休憩しようと思ってな」
すると、庭から楽しそうな声が聞こえてきて、つられたアズールスも庭にやって来たとの事だった。
「まあ、そうでしたか。申し訳ありません。騒々しくしてしまって」
「いや。いい。フェーンもファミリアと上手くやっているようだしな。それに……」
アズールスはフェーン達を見つめると、目を細めたのだった。
「二人を見ていると、亡くなった弟と妹を思い出すようだ」
「旦那様……」
アズールスの言葉に、マルゲリタはそっと顔を伏せたのだった。
「アズールスさん……」
「いや。そんな事を言ったら、フェーン達に失礼だな。ただ、二人が生きていたら、ああやって楽しそうに遊んでいたのかと思うと、懐かしく思ったんだ」
アズールスの弟妹は、アズールスが子供の頃に遭った馬車の滑落事故で、両親と共に亡くなっている。
生きていたら、フェーン達よりも少し歳上の二人にとって、良き遊び相手になっていただろう。
悲しそうな顔をする二人に、アズールスは謝ったのだった。
「すまない。こんな話をするべきじゃなかったな」
「いえ。いいんです。ところで、アズールスさんの弟さんと妹さんって、どういう子達だったんですか?」
「そうだな……。双子の弟妹だったが、性格は反対だったな。弟は活発で、妹は引っ込み思案で」
アズールスと歳の離れた双子の弟妹は、よく二人で屋敷内を遊んでいたらしい。
活発な弟はよく悪戯をして両親に怒られ、引っ込み思案な妹はアズールスや弟の影に隠れていたそうだ。
「俺が学校に通うまでは、よく俺も含めた三人で遊んでいたな。二人はなんでも俺を頼ってくるから、それが嬉しかったんだ」
「そうですか……」
兄と呼ばれて、弟妹に頼られるアズールスの姿を想像した柚子は微笑んだのだった。
「ああ、そうです」
すると、マルゲリタは何かを思いついたように、顔を上げた。
「食料の買い出しに行こうと思っていたのでした。今日の夕食の分はあるので、明日以降の食料を」
「それなら、私が買いに行きますよ!」
柚子が声を上げると、アズールスも「ユズが心配だから俺も行こう」と申し出てくれたのだった。
「マルゲリタは夕食の支度もあるだろう。買い出しは俺とユズで行こう」
「あら。いいのですか。お願いしても?」
「はい! 私達に任せて下さい!」
柚子は大きく頷く。すると、マルゲリタは「では、お言葉に甘えて」と承諾してくれたのだった。
三人は一度、食堂にやって来ると、マルゲリタからお金とカゴを預かり、買う物をメモしたのだった。
「それから、旦那様。せっかくなので、あそこにも寄って来て下さいませ」
「ああ。だが、いいのか。屋敷は……?」
マルゲリタは頷いた。
「ええ。今はフェーンさんもいるので大丈夫ですよ。最近はファミリア共々、よく働いてくれるので助かっています」
「そうか。なら、ユズを連れて行って来る」
マルゲリタとアズールスが話す中、話の要領を得ない柚子は首を傾げる事しか出来なかったのだった。
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