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好き・3
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「アリーシャ。実は君を国に帰そうと思う」
「えっ……」
腕の中からオルキデアを見上げていたアリーシャが、口を小さく開いたまま固まった。
「このまま、君をこの部屋に置き続けていても、いずれは君の正体が俺たち以外にバレてしまう。
そうなれば、軍に、国に、その存在を利用されてしまうだろう。そうなる前に君を国に帰そうと思う」
オルキデアは昼間にクシャースラに説明した方法を説明する。
最初こそアリーシャは黙って聞いていたが、やがてオルキデアから離れると、「嫌です!」と首を振った。
「私はあんな国に帰りたくありません」
「しかし、このままここに居ても、君を捕虜として扱うしかない。
いずれは独房に入って、国に強制送還されるのを待つしかないぞ」
「オルキデア様のご迷惑になるのなら、それでも構いません。どんな扱いを受けても」
「アリーシャ……」
「ようやく、あの家を……国を出られたんです。父は体裁を保つ為に、私が屋敷から出て自立することも、働きに行くことも禁じていました。
だから、私は父の迷惑にならないように……存在しないように、息を潜めて生きていくしかなかったんです」
アリーシャーーアリサがシュタルクヘルト家に居た頃、元王族の血を引く資産家の娘が、外に出て働くなど言語道断と、アリサの父は使用人を介して、アリサが市井で働くことを許してくれなかったらしい。
家を出て一人で生きていきたいと言っても、家を出るなら、二度とシュタルクヘルトを名乗ることも許さず、支援も一切しないと、これも使用人を介して言われたとのことだった。
アリサは別に構わなかったらしいが、アリサ付きの使用人がそれを止めた。
シュタルクヘルトの名を捨てて、家を出ても、シュタルクヘルトの国内はどこに行ってもアリサの父の息が掛かっており、生きづらいと。
ーーもし、一人で生きるなら、国外でなければならないとも。
「国外に出るなら、中立国であるハルモニアが無難だと思っていました。ハルモニアなら、ペルフェクト語も、シュタルクヘルト語も通じるので」
シュタルクヘルトとペルフェクトのどちらにも与せずに、中立国を貫いているハルモニアなら、元王族の血を引くアリーシャでも亡命者として受け入れてくれるだろう。
「シュタルクヘルトが嫌なら、一度ハルモニアに連れて行こう。国に帰るのも、そこで生きるのも、好きに選ぶといい」
それならいいだろうと、オルキデアは言外に言ったが、アリーシャは納得しなかった。
ただ、嫌だというように首を振ったのだった。
「わ、私は……この国で、オルキデア様の側で生きていたいんです……」
「俺の? なんで、また……」
「オルキデア様の側に居る時が、一番心地良かったんです。……安心出来たんです」
「……俺は君を監視していただけに過ぎないぞ」
オルキデアは眉を顰める。アリーシャに気に入られるようなことを、自分はしただろうか。
すると、アリーシャは「でも!」と頬を赤く染めながら興奮気味に話す。
「私が最初に目を覚ました時も、薬を盛られた時も、薬を盛った犯人を捕まえる時も、ここに来る時も、オルキデア様は気にかけてくださいました。それが堪らなく嬉しかったんです。……それに報いたい。与えてくださった恩をお返ししたいんです」
「あの時も言ったが、俺は、俺が保護した捕虜に責任を持っただけに過ぎない。
それに、君がただのシュタルクヘルト人じゃないって、最初から気付いていたからな」
「えっ……」
腕の中からオルキデアを見上げていたアリーシャが、口を小さく開いたまま固まった。
「このまま、君をこの部屋に置き続けていても、いずれは君の正体が俺たち以外にバレてしまう。
そうなれば、軍に、国に、その存在を利用されてしまうだろう。そうなる前に君を国に帰そうと思う」
オルキデアは昼間にクシャースラに説明した方法を説明する。
最初こそアリーシャは黙って聞いていたが、やがてオルキデアから離れると、「嫌です!」と首を振った。
「私はあんな国に帰りたくありません」
「しかし、このままここに居ても、君を捕虜として扱うしかない。
いずれは独房に入って、国に強制送還されるのを待つしかないぞ」
「オルキデア様のご迷惑になるのなら、それでも構いません。どんな扱いを受けても」
「アリーシャ……」
「ようやく、あの家を……国を出られたんです。父は体裁を保つ為に、私が屋敷から出て自立することも、働きに行くことも禁じていました。
だから、私は父の迷惑にならないように……存在しないように、息を潜めて生きていくしかなかったんです」
アリーシャーーアリサがシュタルクヘルト家に居た頃、元王族の血を引く資産家の娘が、外に出て働くなど言語道断と、アリサの父は使用人を介して、アリサが市井で働くことを許してくれなかったらしい。
家を出て一人で生きていきたいと言っても、家を出るなら、二度とシュタルクヘルトを名乗ることも許さず、支援も一切しないと、これも使用人を介して言われたとのことだった。
アリサは別に構わなかったらしいが、アリサ付きの使用人がそれを止めた。
シュタルクヘルトの名を捨てて、家を出ても、シュタルクヘルトの国内はどこに行ってもアリサの父の息が掛かっており、生きづらいと。
ーーもし、一人で生きるなら、国外でなければならないとも。
「国外に出るなら、中立国であるハルモニアが無難だと思っていました。ハルモニアなら、ペルフェクト語も、シュタルクヘルト語も通じるので」
シュタルクヘルトとペルフェクトのどちらにも与せずに、中立国を貫いているハルモニアなら、元王族の血を引くアリーシャでも亡命者として受け入れてくれるだろう。
「シュタルクヘルトが嫌なら、一度ハルモニアに連れて行こう。国に帰るのも、そこで生きるのも、好きに選ぶといい」
それならいいだろうと、オルキデアは言外に言ったが、アリーシャは納得しなかった。
ただ、嫌だというように首を振ったのだった。
「わ、私は……この国で、オルキデア様の側で生きていたいんです……」
「俺の? なんで、また……」
「オルキデア様の側に居る時が、一番心地良かったんです。……安心出来たんです」
「……俺は君を監視していただけに過ぎないぞ」
オルキデアは眉を顰める。アリーシャに気に入られるようなことを、自分はしただろうか。
すると、アリーシャは「でも!」と頬を赤く染めながら興奮気味に話す。
「私が最初に目を覚ました時も、薬を盛られた時も、薬を盛った犯人を捕まえる時も、ここに来る時も、オルキデア様は気にかけてくださいました。それが堪らなく嬉しかったんです。……それに報いたい。与えてくださった恩をお返ししたいんです」
「あの時も言ったが、俺は、俺が保護した捕虜に責任を持っただけに過ぎない。
それに、君がただのシュタルクヘルト人じゃないって、最初から気付いていたからな」
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