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やけ酒した夜・1
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ティシュトリアが来た日の夜。
オルキデアは空になった酒瓶を床に転がす。
そうして、何本目になるか分からない酒瓶を空けたのだった。
あの後、執務室に戻ってきたアリーシャは、そのまま仮眠室に引きこもってしまった。
オルキデアは何度か仮眠室の扉の前に立って、ノックをしようと腕を上げるが、結局、何もかける言葉が無く、そのまま下げてしまった。
夕方になり、アリーシャに付き添っていた兵から事情を聞いたラカイユが、心配して様子を見に来た。
本日の郵便物を届けながら、夕食の確認をしたが、オルキデアは落ち込んでおり、何もする気になれなかった。
仮眠室にこもっているアリーシャにも声を掛けたようだが、オルキデアと反応は同じだったらしい。
ラカイユは諦めると、そっと部屋を出て行ったのだった。
ラカイユが去ると、オルキデアは執務室に持ち込んでいた酒瓶を空けた。
グラスに注いでは空にして、また酒を注いでは空にして……と繰り返したが、いくら飲んでも気分が晴れなかった。
それから、誰も来ないのをいい事に、何時間も飲んでいたのだった。
(もう夜か……)
カーテンを閉めるのも、明かりを点けるのも億劫で、月明かりを頼りに酒瓶を開けるオルキデアは窓から外を眺める。
常闇の空には、遠い三日月と点々と星が輝いていた。
国に返すまで、アリーシャを守るつもりが、ここ数日は傷つけてばかりいた。
そんなつもりじゃなかった。
自分は、ただ、アリーシャが国や軍に利用されないように、そっと帰したかっただけだった。
アリーシャが住む国にーー敵国・シュタルクヘルトに。
「駄目だな……」
いくら飲んでも、気が晴れない。
こんな時は、自身の酒に強い体質が恨めしくなる。
ーーこんな気持ちになるのなら、早くアリーシャを手放せば良かった。
この基地に移送した時か、あるいは傷が治った時に。
「アリーシャ……」
手放したくなかったのは、オルキデア自身もアリーシャといる時間が心地良かったから。
アリーシャは、オルキデアと一緒にいる時が、一番心地良くて、安心出来る、と言っていた。
その時は、緊張感が続く生活を送るアリーシャが、数少ない頼れる相手であり、気を許せる相手として、オルキデアに懐いただけだと思った。
けれども、それはいつの間にか、アリーシャだけでなく、オルキデアもそう思っていたのだった。
アリーシャといると、心が穏やかになれた。自然と笑みを浮かべるようになった。
これまでは上手く表情が作れず、無表情になりがちで、部下に「冷たい」、「怖い」と噂されていた。
オルキデアの仕事に対する厳しさもあって、噂に拍車をかけてしまったというのもあるが。
ーーそういえば、アリーシャが来てからは酒を飲んでいないな。
父が亡くなってからは、酒の力を借りないと夜もまともに眠れなかった。
けれども、アリーシャが来てからは、酒を飲まなくても、毎晩、眠れていた。
知らず知らず、オルキデアも不安や悩みを忘れてしまう程に、アリーシャとの生活に充足感を得ていたのだった。
グラスが空くと、酒瓶を傾けるが中身が残っていなかった。
空になった瓶を転がすと、また酒瓶を開けてはグラスに注ぐ。
こんなに飲んで、執務室を散らかしたら、またクシャースラに怒られるだろう。
アリーシャにもーー。
頭に浮かんだアリーシャを追い払おうと、今度は瓶に口をつけて酒を飲む。
(アリーシャ、俺はお前の事が……)
グラスに満たした酒の上に三日月が写る。
いつしか、オルキデアは眠りについたのだった。
オルキデアは空になった酒瓶を床に転がす。
そうして、何本目になるか分からない酒瓶を空けたのだった。
あの後、執務室に戻ってきたアリーシャは、そのまま仮眠室に引きこもってしまった。
オルキデアは何度か仮眠室の扉の前に立って、ノックをしようと腕を上げるが、結局、何もかける言葉が無く、そのまま下げてしまった。
夕方になり、アリーシャに付き添っていた兵から事情を聞いたラカイユが、心配して様子を見に来た。
本日の郵便物を届けながら、夕食の確認をしたが、オルキデアは落ち込んでおり、何もする気になれなかった。
仮眠室にこもっているアリーシャにも声を掛けたようだが、オルキデアと反応は同じだったらしい。
ラカイユは諦めると、そっと部屋を出て行ったのだった。
ラカイユが去ると、オルキデアは執務室に持ち込んでいた酒瓶を空けた。
グラスに注いでは空にして、また酒を注いでは空にして……と繰り返したが、いくら飲んでも気分が晴れなかった。
それから、誰も来ないのをいい事に、何時間も飲んでいたのだった。
(もう夜か……)
カーテンを閉めるのも、明かりを点けるのも億劫で、月明かりを頼りに酒瓶を開けるオルキデアは窓から外を眺める。
常闇の空には、遠い三日月と点々と星が輝いていた。
国に返すまで、アリーシャを守るつもりが、ここ数日は傷つけてばかりいた。
そんなつもりじゃなかった。
自分は、ただ、アリーシャが国や軍に利用されないように、そっと帰したかっただけだった。
アリーシャが住む国にーー敵国・シュタルクヘルトに。
「駄目だな……」
いくら飲んでも、気が晴れない。
こんな時は、自身の酒に強い体質が恨めしくなる。
ーーこんな気持ちになるのなら、早くアリーシャを手放せば良かった。
この基地に移送した時か、あるいは傷が治った時に。
「アリーシャ……」
手放したくなかったのは、オルキデア自身もアリーシャといる時間が心地良かったから。
アリーシャは、オルキデアと一緒にいる時が、一番心地良くて、安心出来る、と言っていた。
その時は、緊張感が続く生活を送るアリーシャが、数少ない頼れる相手であり、気を許せる相手として、オルキデアに懐いただけだと思った。
けれども、それはいつの間にか、アリーシャだけでなく、オルキデアもそう思っていたのだった。
アリーシャといると、心が穏やかになれた。自然と笑みを浮かべるようになった。
これまでは上手く表情が作れず、無表情になりがちで、部下に「冷たい」、「怖い」と噂されていた。
オルキデアの仕事に対する厳しさもあって、噂に拍車をかけてしまったというのもあるが。
ーーそういえば、アリーシャが来てからは酒を飲んでいないな。
父が亡くなってからは、酒の力を借りないと夜もまともに眠れなかった。
けれども、アリーシャが来てからは、酒を飲まなくても、毎晩、眠れていた。
知らず知らず、オルキデアも不安や悩みを忘れてしまう程に、アリーシャとの生活に充足感を得ていたのだった。
グラスが空くと、酒瓶を傾けるが中身が残っていなかった。
空になった瓶を転がすと、また酒瓶を開けてはグラスに注ぐ。
こんなに飲んで、執務室を散らかしたら、またクシャースラに怒られるだろう。
アリーシャにもーー。
頭に浮かんだアリーシャを追い払おうと、今度は瓶に口をつけて酒を飲む。
(アリーシャ、俺はお前の事が……)
グラスに満たした酒の上に三日月が写る。
いつしか、オルキデアは眠りについたのだった。
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