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ティシュトリア・ラナンキュラス・7
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「あら?」
「あっ……」
思わず、ハルモニア語で叫んでしまったオルキデアだったが、何故、アリーシャを大切な想い人と言ったのか分からなかった。
アリーシャをティシュトリアから引き離すだけなら、ただ単にそれを伝えればいいだけだ。
それなのに、何故、口走ったのか……。
「いや、これは、その……」
どうせ、ハルモニア語で話したから、他の者たちは分からないと思った。
実際に、アリーシャに付き添っていた兵は、急に叫んだオルキデアに驚いたものの、首を傾げただけだった。
この時、オルキデアはすっかり忘れていた。
ーーアリーシャは、ハルモニア語が分かるという事を。
「あら、そういう事だったの。オーキッド」
クスクスとティシュトリアは笑うと、アリーシャを頭から爪先まで何度も眺める。
トレーを持ったまま、俯くアリーシャの顎を持ち上げると、ティシュトリアは鼻で笑った。
「こんな貧相な子が好みだったのね。知らなかったわ」
「母上、これは……」
ハルモニア語だからアリーシャが分からないと思ったのだろう。
菫色の瞳に涙を溜めて、怯えるような顔をするアリーシャの顎を乱暴に離すと、ティシュトリアは「帰るわ」と不機嫌そうに吐き捨てる。
「今度はこの子のように、身分は高いけど、貧相な子を探してくるわ」
「母上!」
「だから、その子とは別れなさい。オーキッドに相応しくないもの」
そうして、靴音を高く鳴らしながら、ティシュトリアは去って行ったのだった。
呆然としていたオルキデアだったが、すぐに我に帰ると傍らを振り返る。
ハルモニア語が分からなかった兵は、ただオルキデアの剣幕から、ただならぬ空気を感じてオロオロと戸惑っていただけだった。
だが、アリーシャは耳まで真っ赤になって、肩を震わせていた。
「ア、アリーシャ、これは、その……」
アリーシャは紅潮した顔を上げると、菫色の瞳から涙を流しながらーー笑ったのだった。
「大丈夫です。私は全く気にしていません。
それよりも、飲み物をお持ちしたのに間に合わなくてすみません。これ、食堂に戻して来ます」
「アリーシャ……」
「そんな顔をしないで下さい。悪口を言われるのは慣れています」
アリーシャに言われて、オルキデアは自分が今、悲しい表情をしている事に気づく。
「それに、嬉しかったんです。どんな形であれ、またオルキデア様に助けて頂いて……これで、もうここを離れられます」
「そんな事……」
そんな顔をしてーー今にも泣きそうな顔で言わないで欲しい。
けれども、オルキデアはその言葉を飲み込んだ。
自分にその言葉を言う資格は無い。
アリーシャにそんな顔をさせたのは、他ならぬ自分なのだから。
「最後まで、ご迷惑をおかけしてすみません。このお礼は必ずします」
そうして、アリーシャはくるりとオルキデアに背を向けると、早足で食堂に向かった。
その後を、急にアリーシャが泣き出した事でオロオロしていた付き添いの兵が追いかけたのだった。
「クソッ!」
誰もいなくなった廊下に、オルキデアの声と壁を殴った音だけが響く。
最近の自分は、アリーシャを悲しませてばかりだと、自己嫌悪に陥ったのだった。
「あっ……」
思わず、ハルモニア語で叫んでしまったオルキデアだったが、何故、アリーシャを大切な想い人と言ったのか分からなかった。
アリーシャをティシュトリアから引き離すだけなら、ただ単にそれを伝えればいいだけだ。
それなのに、何故、口走ったのか……。
「いや、これは、その……」
どうせ、ハルモニア語で話したから、他の者たちは分からないと思った。
実際に、アリーシャに付き添っていた兵は、急に叫んだオルキデアに驚いたものの、首を傾げただけだった。
この時、オルキデアはすっかり忘れていた。
ーーアリーシャは、ハルモニア語が分かるという事を。
「あら、そういう事だったの。オーキッド」
クスクスとティシュトリアは笑うと、アリーシャを頭から爪先まで何度も眺める。
トレーを持ったまま、俯くアリーシャの顎を持ち上げると、ティシュトリアは鼻で笑った。
「こんな貧相な子が好みだったのね。知らなかったわ」
「母上、これは……」
ハルモニア語だからアリーシャが分からないと思ったのだろう。
菫色の瞳に涙を溜めて、怯えるような顔をするアリーシャの顎を乱暴に離すと、ティシュトリアは「帰るわ」と不機嫌そうに吐き捨てる。
「今度はこの子のように、身分は高いけど、貧相な子を探してくるわ」
「母上!」
「だから、その子とは別れなさい。オーキッドに相応しくないもの」
そうして、靴音を高く鳴らしながら、ティシュトリアは去って行ったのだった。
呆然としていたオルキデアだったが、すぐに我に帰ると傍らを振り返る。
ハルモニア語が分からなかった兵は、ただオルキデアの剣幕から、ただならぬ空気を感じてオロオロと戸惑っていただけだった。
だが、アリーシャは耳まで真っ赤になって、肩を震わせていた。
「ア、アリーシャ、これは、その……」
アリーシャは紅潮した顔を上げると、菫色の瞳から涙を流しながらーー笑ったのだった。
「大丈夫です。私は全く気にしていません。
それよりも、飲み物をお持ちしたのに間に合わなくてすみません。これ、食堂に戻して来ます」
「アリーシャ……」
「そんな顔をしないで下さい。悪口を言われるのは慣れています」
アリーシャに言われて、オルキデアは自分が今、悲しい表情をしている事に気づく。
「それに、嬉しかったんです。どんな形であれ、またオルキデア様に助けて頂いて……これで、もうここを離れられます」
「そんな事……」
そんな顔をしてーー今にも泣きそうな顔で言わないで欲しい。
けれども、オルキデアはその言葉を飲み込んだ。
自分にその言葉を言う資格は無い。
アリーシャにそんな顔をさせたのは、他ならぬ自分なのだから。
「最後まで、ご迷惑をおかけしてすみません。このお礼は必ずします」
そうして、アリーシャはくるりとオルキデアに背を向けると、早足で食堂に向かった。
その後を、急にアリーシャが泣き出した事でオロオロしていた付き添いの兵が追いかけたのだった。
「クソッ!」
誰もいなくなった廊下に、オルキデアの声と壁を殴った音だけが響く。
最近の自分は、アリーシャを悲しませてばかりだと、自己嫌悪に陥ったのだった。
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